そろいの黄色いジャンパーに帽子をかぶった「放置フンGメン」の面々。泉佐野市のように、専従員が組織的に取り組む自治体は異例だ。(撮影/楠本涼)
そろいの黄色いジャンパーに帽子をかぶった「放置フンGメン」の面々。泉佐野市のように、専従員が組織的に取り組む自治体は異例だ。(撮影/楠本涼)
モラルを守ってこその愛犬家。犬が悪者にされるのは、飼い主に責任がある。飼い主一人ひとりが、ルールさえ守ってくれれば……と思わずにはいられない(撮影/楠本涼)
モラルを守ってこその愛犬家。犬が悪者にされるのは、飼い主に責任がある。飼い主一人ひとりが、ルールさえ守ってくれれば……と思わずにはいられない(撮影/楠本涼)

 散歩中に犬のフンを放置する、悪質な飼い主。それに対抗すべく、大阪府では「放置フンGメン」が結成された。

 夕方5時過ぎ。関西国際空港を擁する大阪府南部の泉佐野市。4人のGメンたちが、路上に放置された「フン」と「イエローカード」を回収していく。男たちは平均年齢75歳。昨年9月、市が同市のシルバー人材センターに委託して発足した。

 国際空港を抱える空の玄関都市として、千代松大耕(ちよまつ ひろやす)市長のフン撲滅への思い入れには並々ならぬものがある。

 昨年1月、犬のフンなどの放置を禁止する条例に罰則を設けた。だが、効果は見られず同年6月、飼い主に税を課す「飼い犬税」(犬税)の導入を表明した。ところが、一部のマナーの悪い飼い主のために税負担を強いられるのはおかしいと苦情が殺到。そこで、「放置フンGメン」を結成したのだ。

 当初、Gメンはフンの回収だけを行っていたが逆効果。放置してもGメンが回収するので、放置する飼い主がさらに増えたのだ。こうして今年2月から、フンのあった場所に警告板を置く「イエローカード作戦」をとるようになったという。

 週3日、朝夕に2人一組で軽トラック2台に乗り込み、住宅地の歩道や空港の対岸に広がるりんくうタウンの緑地帯など“フン害”の多い場所をパトロール。フンが落ちている場所にイエローカードを置いていく。犬が同じ場所にフンをする習性を、逆手にとった作戦だ。カードとフンは約1カ月おいて、その後一緒に回収していく。「作戦」は功を奏し、放置場所はピーク時の1736カ所(今年1月)から1093カ所(3月)に減ったが、放置は今も続いている。

 業を煮やした市は先日、ついに犬のフンを放置した飼い主に対し過料1千円の徴収を始める方針を固めた。6月議会で承認されれば、7月にもスタートする。フンの放置に対する過料徴収を定めた条例は全国にも少なくないが、実際に徴収している自治体はほとんどなく、徴収まで踏み切るのは異例のことだ。

AERA 2013年5月6日・13日号