まさか、ここまでやっているとは! NHKのドキュメンタリー番組に対する組織的な「やらせ抗議」を旧動燃(動力炉・核燃料開発事業団=現・日本原子力研究開発機構)に指示したのは、なんと、霞が関の官僚だった。元総務部次長・西村成生(しげお)氏が残した「西村ファイル」には、その記録が克明に残されていた。ジャーナリストの今西憲之氏と週刊朝日取材班が追及した。

 問題となったのは、NHKが1993年5月21日と23日の2回シリーズで放送したドキュメンタリー番組「NHKスペシャル 調査報告 プルトニウム大国・日本」。当時も今も“国策”である「核燃科サイクル」に疑問を投げかける番組内容は、所管の科学技術庁(現在は文部科学省に統合)の官僚の逆鱗(げきりん)に触れたようだ。2回目の放送後、NHKの担当ディレクターと科学文化部記者2人が科技庁の原子力局長室で抗議を受けたのだ。そして資料によると、この会談後、科技庁から動燃に次のような“指示”があったという。

〈STA(科技庁の略称)より、雑誌、新聞等のマスコミや有識者を用いたNHKへの反論や、寄稿、投稿、電話によるNHKへの対抗手段をお願いしたい、とのこと〉

 これは「やらせ抗議」の指示としか読めない。国が出資する特殊法人である動燃は、科技庁に「命脈」を握られている。指示は、事実上の「命令」と考えていいだろう。

 さらに生々しいのが、資料に添付された2枚の「マニュアル」だ。

 1枚目は〈NHK各放送局一覧〉と題され、東京や大阪など全国の主なNHK放送局の住所と電話番号が書かれていた。「経営委員会」「考査室」などと具体的な部署名まで記されている。その下に再放送の日時と、〈☆電話及び手紙をお願いします〉とある。

 2枚目は、さらに驚愕の内容だった。〈NHKスペシャル「調査報告 プルトニウム大国・日本」を見て(Example)〉と書かれ、電話や手紙による「やらせ」の例文がずらりと並んでいるのだ。

〈日本がエネルギーを確保するために研究開発をすることがなぜいけない。日本は世界から大量のエネルギーを輸入している。将来、途上国が大量にエネルギーを使い出したら、どうするのか。足りるとでも思っているのか〉
〈30年かけて研究開発に取り組んでいることへの非難がおかしい〉
〈報道姿勢が無責任である〉
〈将来のために研究している人に失礼だ。料金不払いも考える〉

「将来のために研究している人」というのは、つまり動燃のことである。

週刊朝日 2013年4月5日号