昨年は「いじめ自殺」問題が大きく報道されたが、いじめの多くは「スクールカースト」(教室内身分)が関係していると、心理学者の小倉千加子氏は指摘する。

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「スクールカースト」における身分秩序について、生徒たちは「先生から見てとてもしょうもないものでも、私達にとってとても重要なこと」(内藤朝雄『いじめの構造』)と見なしている。

 自分たちなりの秩序感覚が内面化されているからこそ、「いじめられた人はその人に悪いところがあるのだから仕方がない」と考えるのである。

 いじめの原因は「スクールカースト」そのものではない。しかし、「スクールカースト」といじめには大きな関係がある。いじめに教室内でのステイタスが関係することは誰もが密かに知っていることである。ステイタスを知れば、誰がいじめられる確率が高いかを予測することができる。

 結論からいえば、ステイタスを決める要因(=いじめ被害から身を守る要因)は「学業成績」ではない。

 今やステイタスを決めるのは「学力」といった個人に属する古典的要因ではなく、「コミュニケーション能力」、具体的には「自己主張力」「共感力」「同調力」「情報発信能力」「情報受信能力」である(「自己主張力」はなくてはならないが、ありすぎてもいけない。帰国子女が人前で英語を話してはならないように)。

 ステイタスが低いといじめ被害に遭いやすいが、いったんいじめに遭うとステイタスが下がるという悪循環が起こる。

「コミュニケーション能力」はもちろん集団の中でうまくやっていく能力であり、個人の能力とはいっても関係性の中にしか存在しない。子どもたちは実体のない社会構成主義と関係性の中に生きている。

週刊朝日 2013年2月1日号