インターンシップというと、これまでは学生が企業で体験するものだったが、最近では新しい形のものがあるという。

 午後7時半。6歳のアマネくんと妹のユウちゃん(2)、そして2人の女子学生というちょっと変わったメンバーで、にぎやかな晩ご飯タイムが始まった。

 この日のメニューは、母親の高安千穂さん(33)が、朝、仕事に行く前に作っておいてくれた、シチューとサラダ。午後6時に女子学生2人が母親の代わりに保育園にお迎えに行ったあと、一緒に食事をし、一緒に遊んだり、寝かしつけたり。両親のどちらかが帰宅するまでの時間を子どもたちと過ごす。

 一見ベビーシッターのようだが、実は違う。2人の女子学生、慶応大学3年の近江里菜さんと東海大学1年の大塚菜々さんは、とあるプログラムの真っ最中。その名も「ワーク&ライフ・インターン」。

 このプログラムは、実際に就職する前に子育てしながら働く家庭を体験する学生向けのもの。要は働くママ、パパの見習い体験みたいなものだ。

 学生たちは週1~2回、大学の授業が終わったあと、2人一組で主に共働き家庭を手伝う。3カ月間、同じ家庭に通い、働きながら子育てをする父母の生活を現場で体験する。学生は36時間に及ぶ研修で育児の仕方などを身につけて、割り当てられた家庭に向かう。交通費以外は無給。月数回、成果や問題点を報告し合い、先輩インターンなどからアドバイスをもらえるチームミーティングなど、フィードバックの場も用意されている。またインターン終了後は、インターンリーダーとなり、有給のインターンもできる。

 このプログラムを提供している「スリール」は2年前、堀江敦子さん(27)が起業した。きっかけは、堀江さん自身が学生時代に、アルバイトで体験したある女性起業家のベビーシッターだった。

「その女性は、仕事場に赤ちゃんを連れて行くことも多く、私も同行して秘書のようなこともさせてもらった。鞄持ちならぬ“ベビーカー持ち”です(笑)」

 そこで働きながら子育てすることの大変さや、喜びを体験した。仕事はどうしよう。子どもはどうしよう。不安だらけだった自分の未来の姿が、ぼんやりと見えてきた。後に続く学生たちにも、同じ体験をしてもらいたい。そんな思いから当時勤めていた大手IT企業を辞め、「ワーク&ライフ・インターン」プログラムを提供するための会社「スリール」を立ち上げた。

AERA 2012年11月19日号