横浜市教委は、学校で渡す通知表に記載ミスが相次いでいることを受け、通知表を保護者に「事前確認」してもらうよう学校に促している。昨年度だけで2600人分以上の記載ミスが起こっているというが、その原因はどこにあるのか。

 複数の現役教師に聞いてみたところ、記載ミスの原因として浮かび上がってきたのが、「多忙」と「パソコン」だった。

 まずは「多忙」。小学校高学年の担任だと、授業のほかに会議や委員会、クラブの指導もある。学期末は通知表づくりが加わる。そうなると4~5時間の残業はざらで、土日も出勤する。

「そのくらい普通だと思う人もいるでしょうが、この通知表が大変なんです」と、小学校教師は言う。各教科について、「関心・意欲・態度」や「思考・判断」といった「観点別評価」を、テストや提出物の完成度を総合的に見ながら判断しなければならない。コメントも必要だ。

「そのうえ、通知表に書く言葉には細かいルールがあるんです」(同)

 この教師の小学校では、通知表の〈表記の留意点〉を示したプリントが教師に配られている。例を挙げると、「~と思います」はすべて「~です」に直す。「思う」は指導、事実ではないからだという。つまり「Aくんは努力したと思います」は×。「~してくれました」は「~しました」に。こんな細かいルールがB4用紙の裏表にびっしりだ。

「丁寧に取り組めば、1人分の通知表に2時間かかることも。全員分となると、気が遠くなります」(同)

 多忙に拍車をかけているのが「パソコン化」だ。IT化で通知表の作成も楽になるかと思いきや、入力のズレや打ち間違いが記載ミスを生んでいる。年配の教師の中には過剰な負担を感じている人もいる。さらにこんな不自由もある。

「1人に1台与えられているパソコンやUSBメモリーは、セキュリティー上、校外に持ち出さないよう命じられています。だから延々と夜中まで学校で仕事するしかない」(中学校教師)

週刊朝日 2012年11月16日号