「(国が)購入するという情報が出た時、それなら仕方がないと思った。私も翻弄されているかもしれない」

 政府と東京都の間で揺れる尖閣諸島(沖縄県石垣市)の購入問題で、あの石原慎太郎都知事(79)が珍しく弱音を吐いた。

 それもそのはず。都が購入に動き、14億7千万円超もの寄付金を集めていた魚釣島、北小島、南小島の3島について、9月3日に政府が所有者のK氏から20億5千万円で買い取ることで合意した、と報じられたのである。

 それまで、政府の買い取り方針について、「(政府の)だまし討ち」と激しくなじっていた石原都知事だが、この売却合意報道を受けて「国が買うのは結構」と容認した。政府はこれまで3島の年間賃料2450万円を払ってきたが、実に約83年分の大金で購入したことになる。

「こんな大きな金額なのに、根拠もはっきりしない」と、ある永田町関係者は憤る。政府も当初は「5億円程度」と見積もっていたといわれるだけに、購入価格の妥当性について懐疑的に分析するメディアも出てきた。不動産調査会社「東京カンテイ」の中山登志朗上席主任研究員が語る。

「領土問題を抱える島の算出根拠を持ち合わせた不動産鑑定士は恐らくいません。賃料の根拠も、国が20億円で買うという根拠も公開されない以上、判断不能です」

 つまり、購入金額はあくまで"政治的価格"に過ぎないというのだ。こんな暴論まで飛び交っているという。

「この金額、石原都知事が手にする分が上乗せされているんじゃないかという説まで囁(ささや)かれています。石原新党、もしくは長男の伸晃さんの天下取りの資金に回るのでは、という見立てです。そもそもここまで金額をつり上げたのは、最初に買い取りをぶち上げた石原都知事ですから」(永田町関係者)

※週刊朝日 2012年9月21日号