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第19回 ブラック・キーズやストライプスなどのファンの中に、ストーンズのファースト・アルバムや『アウト・オブ・アワ・ヘッズ』をipodに入れてエンジョイしているコが一体どれだけの数存在するのであろうか?

文・小浜文晶

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 さて、2014年ストーンズ来日物語のイデア論が、年の瀬の酒場を中心にして徐々にヒートアップしつつある今日この頃。ゲストのミック・テイラー「いる・いらない」問題にはじまり、格差社会を表層化するような高額チケット問題、コンサート・プロモーション用のアーティスト宣材写真使い回し問題などなど、何かと話題に事欠かない(ヒマかっ 笑)ストーンズ周辺。いずれも、「これが彼らにとっても自分にとっても最後の日本公演になるかもしれないから…」とやや萎れ気味の決意を秘めた世代にとってはどうでもよいことなのかもしれないが、すくなくとも将来、わが子を抱いて結成60周年のストーンズを見るぞ! と息巻く世代にとっては、見過ごすわけにはいかない深刻な問題なのである…おそらく。

 ちなみに前回の来日公演は2006年春の「A BIGGER BANG TOUR」。僕も2公演ほどを観に行った。当時、バンドの状態はかつてないほど良好。最新アルバム『ア・ビガー・バン』も大好評。日本公演に先がけた2月には、ブラジル、リオ・デ・ジャネイロのコパカバーナ・ビーチで150万人を集めた巨大フリーコンサートを行ない、その期待値は否が応でも高まっていた。しかし、前回時にあたる2003年の来日公演があまりにもヒドかったため、「どうせ今回も日本じゃ…」とやや懐疑的であったのも事実。だが、いざ蓋を開けてみたら、「完全燃焼!これで見納め!!」と呼べるぐらい質の高いパフォーマンスを観ることができ、また同じ声を周りからもよく聞いたものだ。

 しかしこれは、惚れて通えば千里も一里、恋は盲目、あばたもえくぼ、的熱烈ストーンズ贔屓モノからの声がほとんどであり、決して一般的な音楽リスナー≒非ストーンズ・ファンからの実直な感想ではないということ。聞けば、ライヴ自体の出来の良さにかかわらず地方興行の客入りは空席が目立つ状況、つまりことごとく惨敗だったそうな。ただ、これをチケット代の高さと結び付けるのはやや短絡的であり、もっと問題は根が深いというべきか、ストーンズにしろビートルズにしろクラプトンにしろ、当該ファンのコミュニティに跡目を継ぐような人材があまりにも少ない、それがいよいよ表面化してきたにすぎないのではないだろうか。

 80年代後半、ガンズ・アンド・ローゼズのファンはストーンズを聴いていた。90年代、ベック、プライマル・スクリーム、オアシスのファンもストーンズ、ビートルズのクラシック・ソングを等しく愛した。しかし2013年現在、ブラック・キーズやストライプスなどのファンの中に、ストーンズのファースト・アルバムや『アウト・オブ・アワ・ヘッズ』をipodに入れてエンジョイしているコが一体どれだけの数存在するのであろうか?

 そもそもタテ社会的なマチズモや退屈な歴史観に支配されたルーツ探訪は、今ではすでに神話性も必然性も失っているような気がする。「ポスト・クラシカル」と巷の若者たちが呼ぶフレッシュなスタイルは、むしろ横のつながり、トム・ヨーク(レディオヘッド)やオウテカらの発するエレクトロニカ・サウンド、あるいはブレインフィーダーやストーンズ・スロウに代表される急進的なヒップホップ~トラックメイカー勢のビーツ&ライムなどとのリレーションシップをどうやら最重要視しているようだ。ブラック・キーズやストライプスのファンが、ほっとけば能動的にストーンズ、ヤードバーズ、ボ・ディドリー、スリム・ハーポの古典を掘り下げていくというような単純な時代ではなくなった。そしてそれは、全世界規模の音楽配信コンテンツ拡充のときを迎えて、大御所連中が“貯金”を食いつぶしながらノンベンダラリと余生を過ごすことさえ許されなくなったことをも意味しているのだ。

 だからして、ストーンズはスタッフ一丸となって、この50年の集大成イベントを同窓会的な薄弱とした祝賀ムードのものではない、“次へとつながる”基礎固め(今だからこそ)にしていかなければならないのだと思う。すくなくとも、現在、ロック市場から、アイドル、アニメ、韓流の各チャネルに“お得意さん“が大量流出しているここ日本では、とにかく新規ファン層の獲得が急務なのだ。そう、ミック・テイラーをしたり顔で呼んでる場合ではない。ビル・ワイマン、マリアンヌ・フェイスフル、エリック・クラプトン、ジェフ・ベックの古株関係者なんてもってのほか。今をときめくレディー・ガガやジョン・メイヤー、おそらく誰を呼んでも結果は同じ。「結局ストーンズって何人おんの?」「ぶっちゃけ、ガガ様しか観てなかった…」という大事故を招くだけだ。

 ならば今こそバック・トゥ・ベーシックか。ゴールデン・サークル席だなんてつれない区分けはやめて、たっぷり2時間強、アリーナ中央の小ぶりなBステージに立つ5人だけの丸腰ストーンズを、全席開放オールスタンディングで包囲する。踊るアホウに見るアホウ。巨大なダンスホールが、ストーンズ・ナンバーを合図にレイブと化す。ロンドン・マーキークラブの熱狂がアップデートされて帰ってきたのだ!…と、ならないことは百も承知二百も合点。となれば、いよいよセットリストに大幅なテコ入れを施すしかないのかな。[次回1/22(水)更新予定]


(更新 2014.1. 8 )


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プロフィール

小浜文晶(こはま・ふみあき)

ローソンHMVエンタテイメント EC事業部・末端構成員。神奈川県出身。著作なし、キャリアなし、甲斐性なしの三拍子にもかかわらず、音楽好きの人のために何か力添えできることがないかと日々思索するも挫折の繰り返し。HMVオンラインでは、ジャズときどきロック、歌謡記事コンテンツを担当中。