第118回 ジャンゴ・ラインハルトに愛をこめて |AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

第118回 ジャンゴ・ラインハルトに愛をこめて

文・小熊一実

プロフィール   バックナンバー   ミュージック・ストリート トップへ

このエントリーをはてなブックマークに追加

 わたしがジャンゴ・ラインハルトという名前を知ったのは、1977年、大学2年のときだ。ジャンゴは1910年に生まれ、1953年に亡くなっているので、56年生まれのわたしとは生きている時期は重なっていない。43歳という短い生涯だった。

 ジャンゴ・ラインハルトをご存じない方もいらっしゃると思うのでかんたんに紹介しておこう。

 以前は、ジプシー・ギターとジャズの融合などと言われたが、今ではマヌーシュ・ジャズなどと言われているようだ。ジプシー・スイングなどとも呼ばれ、ロマ(ジプシー)音楽とスイング・ジャズを融合させた音楽ということだ。

 といっても、音楽を想像しにくいと思うので、ジャンゴの音楽や、そのイメージのもとに作られた映画を3本紹介しよう。1作くらいは知っているとよいのだが。

 まずは、1999年に製作されたウディ・アレン監督のアメリカ映画『ギター弾きの恋』だ。

 舞台は1930年代、ジャズの全盛期。主人公はショーン・ペンが演じる天才ジプシージャズ・ギタリスト。彼はジャンゴ・ラインハルトの演奏が世界一で、自分は二番目に天才だと言っている。もちろん、この映画で使われる音楽がマヌーシュ・スイングといわれるものだ。不埒なジャズメンのちょっと哀しい恋物語だが、映画も音楽も素晴らしいので、まだ観てない方にはオススメだ。ちなみに主人公のエメット・レイは架空のミュージシャンで、実在しているわけではない。それからジャズ好きの方にはおなじみの小説家でジャズ批評家のナット・ヘントフが本人の役で出演して、エメット・レイの音楽について語っている。

 もう1作は、2003年公開の『僕のスウィング』だ。監督はフランス人のトニー・ガトリフ。『ラッチョ・ドローム』『ベンゴ』などのジプシー作品を手がけている。

 この映画は、白人の少年とジプシーの女の子の可愛い恋と、ジプシーのギター弾きの交流を描いている。このギター弾きをチャボロ・シュミットが演じている。チャボロはジャンゴ・ラインハルトの後を継ぐというマヌーシュ・スウィングのギタリスト。映画のなかにも演奏シーンがあるので、これも必見といいたい。

 最後に紹介する作品は75年制作の『ルシアンの青春』。ルイ・マルは、57年に『死刑台のエレベーター』で監督デビュー。ご存じの方も多いと思うが、『死刑台のエレベーター』の音楽はマイルス・デイヴィスが担当している。『ルシアンの青春』の内容は、学生時代に見たのだが、正直言ってよく覚えていない。ナチスが絡んでいた話だった。この映画で言いたいのは、音楽にジャンゴ・ラインハルトを使っているということだ。わたしはこの映画の音楽の印象だけが残っている。

 わたしがジャンゴ・ラインハルトをはじめて知ったのは、大学2年生の時だった。1977年、わたしは劇団インカ帝国という名の劇団に役者として入団した。高校を卒業してから一人で東京暮らしをしていたのだが、薬剤師になった従姉妹が、東京に知り合いがいた方がよいだろうと言うことで、大学1年の正月に新年会と称し東京にいる彼女の中学時代の同級生を紹介してくれたのだ。

 それが渡辺弘という名で、今は彩の国さいたま芸術劇場の事業部長をしている。3才年上の彼に「小熊くんは、演劇とか観るの?」と聞かれ、2ヶ月前に観た劇団インカ帝国の『牛若丸』という芝居に感動したと話をした。渡辺弘はとても驚き「その芝居には、ぼくも出演してたのだよ」と話してくれた。これが縁で、わたしは劇団インカ帝国に入団することになり、そこで出会った劇団員たちとは今でも交流している。

 わたしはこの劇団に入ったことで、たくさんの人やことと出会い、経験した。そしてジャンゴのこともここで知った。第69回にも登場した、のちに如月小春と劇団「NOISE」を立ち上げることになる楫屋一之が、芝居の練習場に、ジャンゴとヴァイオリニストのステファン・グラッペリも参加しているフランス・ホット・クラブ五重奏団のレコードを持ってきたのだ。それまで聴いたこともなかった名前だったが、興味をもち、記憶に残った。それからしばらくして、レコードも手に入れたのだった。

 それは、アメリカのジャズ・ギターという音楽とは違うものだったが、わたしは、その音楽、ジプシー・ギターをとても、気に入った。

 そして、この音楽を今でも愛する人たちがいて、「ジャンゴ東京フェスティバル」を開催するという。今年は2回目だそうだ。昼から夕方まで、1日中マヌーシュ・ジャズが楽しめる企画だ。

[次回7/5(水)更新予定]

■公演情報は、こちら
第2回ジャンゴ東京フェスティバル2017


(更新 2017.6.28 )


バックナンバー   コラム一覧   ミュージック・ストリート トップへ

このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール

小熊一実(こぐま・かずみ)

 1956年生まれ。プロデューサー。このサイトの前身「JAZZ STREET」に引き続き、「Music Street」の企画編集を担当。ジャズ、ロックはもちろん、クラシック、歌謡曲からアヴァンギャルドまで、聴きまくっている音楽狂。音楽以外にも、落語会やロボット・イベント、映画も製作している。ここでは、ジャンルを超えて、趣味に走ったライヴ情報をお届けしたい。補足情報をfacebookに掲載します、見て下さい。https://www.facebook.com/kazumi.koguma

あわせて読みたい あわせて読みたい