第113回 もっともたくさん聴いたレコード『天の守護神』サンタナ (1/2) |AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

第113回 もっともたくさん聴いたレコード『天の守護神』サンタナ

文・小熊一実

プロフィール   バックナンバー   ミュージック・ストリート トップへ

このエントリーをはてなブックマークに追加

 生まれてから、60年。その60年の人生の中で、もっともたくさん聴いたレコードってなんだろう?と考えてみた。

 ビートルズの『ラバーソウル』『アビーロード』、ニール・ヤングの『ハーベスト』、ローリング・ストーンズの『スティッキー・フィンガーズ』、レッド・ツェッペリンの2枚目や『フィジカル・グラフィティ』、ピンク・フロイドの『原始心母』『おせっかい』、ジャズでも、マイルス・デイヴィスの『カインド・オブ・ブルー』『ビッチェズ・ブリュー』やビル・エヴァンスの『ワルツ・フォー・デビイ』などなど、いくつかあげてみたが、最終的に、一番たくさん聴いたレコードはこれではないかと自分で思うレコードは、サンタナの2枚目のアルバム『天の守護神』だ。

 故・中山康樹さんと話をしているときに「気がつくと何度も聴いてしまうものを名盤とよびたい」と言っていたことを覚えている。

 よく考えてみると、あるレコードが音楽史に重要な役割を果たしているかとか、そのレコードが傑作かどうか、といった問いには、そんなにシンプルには答えられない。しかし愛聴盤であることは事実だ。

 『天の守護神』の原題は『Abraxas』。神話にも宗教にも出てくる言葉のようだが、サンタナ自身がどんな思いで名付けたのかは調べることができなかった。ご存じの方がいらしたら教えてください。どちらかというと異端のにおいを感じる。

 このミュージック・ストリートで中山啓子さんが[さわりで楽しむ音楽洋書]の中でサンタナの『アブラクサス(天の守護神)』作成秘話を紹介している。マイルスとの交流や楽器との出会いまで、サンタナ自身の言葉で語られている。

 このアルバムが発表されたのは1970年。わたしがラジオで『天の守護神』からシングル・カットされた《ブラック・マジック・ウーマン》を聴いたのが、サンタナとの出会いだった。この曲はヒット・チャートを上がっていた。最終的にチャートの1位にはならなかったが、わたしには強烈なインパクトを与えた。中学2年生の時だ。

 ジャケットのデザインにも強くひかれた。シルバーの紙に、細密画のような、天空から見ているような風景の中に獺祭図のようなものがあったり、アフリカの部族の驚いたような顔の女性たちがいたり、そしてコンガにまたがった全身にタトゥーを入れ天を指さしている真っ赤な女性がいたりする。彼女の指の先には梵字のようなものが空中に書いてある。その真っ赤な女性の横には、リアルな全裸の黒人の女性が描かれ、白い鳩があそこを隠している。中学生の男の子には刺激が強かった絵だ。そして今でも大好きなジャケットである。同じ画家のレコード・ジャケットとしては、マイルス・デイヴィスの『ビッチェズ・ブリュー』や『ライヴ・イヴル』がある。こちらもわたしは好きである。画家の名前は、アブドゥル・マティ・クラーワイン。彼のホーム・ページもあるので興味のある方はぜひ。


(更新 2017.2.15 )


バックナンバー   コラム一覧   ミュージック・ストリート トップへ

このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール

小熊一実(こぐま・かずみ)

 1956年生まれ。プロデューサー。このサイトの前身「JAZZ STREET」に引き続き、「Music Street」の企画編集を担当。ジャズ、ロックはもちろん、クラシック、歌謡曲からアヴァンギャルドまで、聴きまくっている音楽狂。音楽以外にも、落語会やロボット・イベント、映画も製作している。ここでは、ジャンルを超えて、趣味に走ったライヴ情報をお届けしたい。補足情報をfacebookに掲載します、見て下さい。https://www.facebook.com/kazumi.koguma

あわせて読みたい あわせて読みたい