第112回 音楽とのつきあい方いろいろ その2 (1/2) |AERA dot. (アエラドット)

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第112回 音楽とのつきあい方いろいろ その2

文・小熊一実

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16インチのターン・テーブルの前の黒洲氏

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モノラルのオーディオ・システム

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SP盤のセット・コーナー

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 わたしの音楽への向かい方は「まだ聴いたことのない音楽をもっと聴いてみたい」というもの。音楽評論誌で話題になっている音楽を実際に聴いてみたいという、渇望にも似た欲望に突き動かされて進んできた。そのために、食事代やデート代を抑えてレコードを買ったものだ。

 しかし、60歳の今ではどうかというと、その欲望は少し変わってきていると思う。ある時期からだが、新しい音楽を聴きたいというより、自分の同時代の音楽より、もっと前の音楽を知りたいと思うようになった。そこにはわたしが聴いてきた音楽へのルーツがあったからだ。

 そのような聴き方をしていくと、オリジナル盤というものにぶつかることになる。

 ここで、オリジナル盤について、説明しておこう。
 同じ音楽でも、CDで聞いたり、ダウンロードして聞いたりと聞き方にもいろいろあるが、それぞれの音楽が初めて世に出た時の商品をオリジナル盤という。それもアーティストが活動していた国で発表されたものに限る。
 
 わかりやすいので、ビートルズのLPレコードを例に説明すると、彼らのデビュー・アルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』は英国で発売された。発売日は1963年3月22日、モノラル盤である。そして1963年4月26日、ステレオ盤が発売されている。

 このとき発売されたものがオリジナル盤である。つまりビートルズの初期にはモノラル盤とステレオ盤という2種類のオリジナル盤があるわけだ。
 簡単に説明すると、ステレオは1958年にRIAA(アメリカレコード産業連合会)が、ステレオ録音の方式を発表したのが最初といわれている。

 ステレオとは右と左と2つのスピーカーから別々の音がでて、より立体的な音を聞けるシステムをいう。それまでのモノラルは、ひとつのスピーカーから音が出る仕組みだ。

 RIAAでは、それまで普及していたモノラルのプレーヤーでも、ステレオ・レコードが再生できるように考えられた。

 その後、ステレオが音楽再生の主流になっていくが、63年のビートルズのころには、モノラル用に録音したものを最新のステレオ盤といって販売するために作り変えたと聞いている。つまり、メンバーやプロデューサー、スタッフは、モノラルを前提に録音していたのだ。

 そしてジャケットはどのようなものにするのかなどを考えて、最初のレコードが作られる。

 つまり、こうして作られたレコードがオリジナル盤であり、アーティスト、スタッフが作り上げようとしたものということになる。

 その後、レコードは工場で量産されていく。そうなると少しづつ、さまざまなものが変わっていく。音もジャケットも紙の質や、音も変化していくのである。

 つまり、アーティストたちが作ろうとしたものに最も近いのがオリジナル盤ということになる。

 コピーをしたことがある人ならお分かりだと思うが、元の原稿をコピーし、そのコピーしたものをまたコピーしていくと、だんだん画像が乱れていく。レコードも似たようなところがあって、最初に作られたものが一番いい音であることが多い。

 つまり、よい音で聴きたいと思うと、オリジナル盤にさかのぼっていくことになる。ここまで来ると、音楽愛好家というより音楽研究家、あるいは、マニアと呼ばれることになる。


(更新 2016.12.28 )


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プロフィール

小熊一実(こぐま・かずみ)

 1956年生まれ。プロデューサー。このサイトの前身「JAZZ STREET」に引き続き、「Music Street」の企画編集を担当。ジャズ、ロックはもちろん、クラシック、歌謡曲からアヴァンギャルドまで、聴きまくっている音楽狂。音楽以外にも、落語会やロボット・イベント、映画も製作している。ここでは、ジャンルを超えて、趣味に走ったライヴ情報をお届けしたい。補足情報をfacebookに掲載します、見て下さい。https://www.facebook.com/kazumi.koguma

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