第73回 わたしを『ゴジラ』に連れてって!~伊福部昭の世界~ |AERA dot. (アエラドット)

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第73回 わたしを『ゴジラ』に連れてって!~伊福部昭の世界~

文・小熊一実

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 生まれて初めて、親にせがんで連れて行ってもらった映画が、『キング・コング対ゴジラ』だ!
 1962年の8月公開というから、わたしは、まだ、小学校に上がる前ということになる。
 場所は、宇都宮の東宝。当時の国鉄宇都宮駅と東武鉄道、東武宇都宮駅の間にあった。当時は、まだ平屋の映画館だったと記憶している。その後、大きなビルになり、マルイが入った。そのビルの中に、映画館の東宝とニュー東宝という名画座ができる。
 わたしはそのニュー東宝で、アメリカン・ニュー・シネマなどと巡り会い、東京に出た大学生時代には、最大で年間365本を超える数の映画を観るまでの映画中毒者になっていく、きっかけとなった。

 62年の東宝に3歳年下の弟とともに、両親に連れられ『キング・コング対ゴジラ』を観に行った。
 映画館の前には、長蛇の列。その間に、ゴジラとキング・コングの強大なパネルが、わたしたちに襲いかからんばかりに待ち受けていた。
 映画館の中も、超満員。立ち見も出ていて、わたしたちも立ち見。映画はすでにはじまっていた。そんなことをどうして覚えているかというと、中に入ってすぐに、音楽の雰囲気が変わったのだ。父親にせがんで持ち上げてもらうと、海に浮かぶ青く輝く氷山が光りを放ちはじめ、やがて、氷山を崩しながら怪獣が出て来たスクリーンの映像を、今でも覚えているからだ。
 その光景は、それまでの人生の中で(たかだか生まれてから5~6年ではあるが)、もっとも恐ろしく、美しい映像だった。そして、その背景には、世にも邪悪なものが現れてきたことを象徴するような、恐ろしい音楽が流れていたのだ。

 場面は変わって、南の島。今になってみると、日本人が全身を黒く塗って、腰みのを着け、訳のわからない言葉をしゃべる原住民を演じているのだが、南海の島の映像と原住民の歌い踊る音楽は、当時のわたしをわくわくさせたものだ。
 そしてジャングルの密林の中から、巨大な猿が現れる。
 わたしは父にたずねた。
「どっちがゴジラ?」
 父は答えた。
「ゴリラに似ているから、猿の方がゴジラだろう」
 しばらく映画を観ていると、わたしにも猿に似ている方がキング・コングで、恐竜みたいな方がゴジラだとわかってきた。
「お父さん、違うよ、こっちがゴジラだよ」
 父は一言、「そうだな」といった。

 当時の東宝の怪獣映画は、加山雄三の「若大将」シリーズと2本立てだった。
 今でこそ若大将シリーズは大好きだが、この頃のわたしにとって、途中から見てしまった『キング・コング対ゴジラ』を最初から見直すための、次の上映がはじまるまでの若大将の時間はつらかった。

 東宝ゴジラ・シリーズは、いつ頃まで観ただろうか。

64年 4月『モスラ対ゴジラ』、
   12月『三大怪獣 地球最大の決戦』、
65年12月『怪獣大戦争』

 ロードショーで見たのは、これくらいであろうか。
 この頃から、大映のガメラ・シリーズや、ほかの映画にも興味を持つようになったことと、ゴジラ関連の映画が、だんだんこどもっぽくなってきたこともあって、足が遠のいてしまったのだ。『ゴジラの息子』ミニラはないだろう、と思ったものだ。もちろん後年には、テレビ放送やDVDなどで、ゴジラ・シリーズは一通り見ることになるが。

 一方、ゴジラものとは別に、

65年8月『フランケンシュタイン対地底怪獣』
66年7月『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』

などを観に行った。
 洋画で、『フランケンシュタイン』とか『ドラキュラ』などという映画があるのは知り始めていたが、『フランケンシュタイン対地底怪獣』は、だいぶ話が違いそうだな、と想像していた。元の洋画の方も、観たい気持ちになっていた。

 大映の特撮映画では、
65年『ガメラ』同時上映『大魔神』、
66年『ガメラ対バルゴン』『大魔神の逆襲』

を、ロード・ショーで観に行った。

『ガメラ』も『大魔神』も素晴らしく楽しかった。そのため、怪獣映画の新作が出ると、どれも観たくてたまらなくなるのだった。
 しかし、なんでもかんでも見られるわけではなく、母にはどちらか一つにしろといわれ、夜も眠れないほど悩んだものだ。
 加えておくと、『大魔神』の音楽も伊福部昭です。

 さて、今回の紹介は、『伊福部昭百年紀VOL.3 ゴジラ、モスラをオーケストラで』と題されたコンサートだ。
 伊福部昭、生誕100周年記念とゴジラ生誕60周年ということで、企画されたコンサート・シリーズで、伊福部昭が作曲した映画音楽をオリジナル楽譜を元に、組曲形式で編曲して演奏するという企画だ。

 今回が、その3回目。予定されている曲は、

・ゴジラ組曲(改訂初演)
・モスラ対ゴジラより
・キングコング対ゴジラより
・バラン組曲 ほか

 頭の中に、ザ・ピーナッツが歌う「モスラ~やっ、モスラ~」という声とメロディーが流れはじめている。モスラの歌を大声で歌いながら、田んぼの中を走って行く、こどものわたしが見えるようだ。
「おとうさん、おかあさん、ぼくをゴジラに連れて行ってくれて、ありがとう」

 今回、伊福部昭について本を探しに行ったところ、生誕100周年ということで、たくさんの書籍が並んでいた。その中でわたしは、この本を推薦したい。ひとこと付け加えるならば、伊福部昭の発言の出典がほしかったが。[次回10/29(水)更新予定]

『伊福部昭語る―伊福部昭映画音楽回顧録』伊福部昭、小林淳(編集)

■公演情報はこちら
伊福部昭公式ホームページ―暫定版―
http://3scd.web.fc2.com/


(更新 2014.10.22 )


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プロフィール

小熊一実(こぐま・かずみ)

 1956年生まれ。プロデューサー。このサイトの前身「JAZZ STREET」に引き続き、「Music Street」の企画編集を担当。ジャズ、ロックはもちろん、クラシック、歌謡曲からアヴァンギャルドまで、聴きまくっている音楽狂。音楽以外にも、落語会やロボット・イベント、映画も製作している。ここでは、ジャンルを超えて、趣味に走ったライヴ情報をお届けしたい。補足情報をfacebookに掲載します、見て下さい。https://www.facebook.com/kazumi.koguma

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