第35回 ルー・リード追悼とDream Powerジョン・レノン スーパー・ライヴ2013 その1 |AERA dot. (アエラドット)

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第35回 ルー・リード追悼とDream Powerジョン・レノン スーパー・ライヴ2013 その1

文・小熊一実

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 2013年10月27日にルー・リードが亡くなった。71歳だった。

 わたしは、偶然、その数日前に、ルー・リードの『メタル・マシーン・ミュージック(ブルーレイ版)』を注文していた。
 1975年発表で、ルーのアルバムの中でも、もっとも聴かれることの少ないアルバムではないかと思う。全編、ノイズの嵐という作品である。最初から、終わりまで、スピーカーからはノイズしか出てこないのだ。発売当初はLPの2枚組という大作で、賛否両論だった。いや、大方の人は、理解できなかったというところだろう。
 なぜ、そんな作品を、今頃になって購入したかというと、ブルーレイのサラウンドで、それを聴くことができるようになったからだ。紹介文の中で、「ルー・リードが目指した音世界を体現できる…」、などと書いてあったものだから、つい購入してしまった。
 そのブルーレイをプレーヤーに入れると、わたしの家のサラウンド装置のセンターを含む5個のスピーカーからノイズがあふれ出し、わたしのからだを包み込んだ。ルー・リードへの追悼の意味を込めて、最後まで、聴き通したかったのだが、残念ながらかなわなかった。前衛音楽なども進んで聴く方なのだが、このアルバムは、わたしには難しかった。
 しかし、亡くなるまえに、このアルバムを再発するというのには、やはり、思い入れがあるのではないかと、思ってしまうわたしである。

 ルーがインタビューでこのアルバムについて語っているのを見つけた。
「俺はギターのフィードバックのサウンドが好きだった。だから一定のビートを刻みながら、ギターだけで何かやろうと思ったんだ。とてもフリーな感じになるからね。俺はオーネット・コールマンのフリー・ジャズが好きで、彼のようなオープンなフリー・ミュージックにロックのパワーを加えたような音楽をやろうとしたんだ。それがあの曲のコンセプトだった」(THE DIG Vol.37, 2004 July インタヴュー:熊谷朋哉)
 今では、YouTubeで探せば、どんな音かくらいはわかると思うので、興味のある方は、探して聴いてみてほしい。
 ただ、このアルバムを最初に聴いてしまうと、ルー・リードというアーティストを誤解してしまうので、再度言うが、このアルバムは、彼の全アルバムの中でも異質のものなので、気を付けてほしい。

 では、どのアルバムから聴けばよいのか、初心者向けにアルバムを紹介しよう。まず、最初は、アンディ・ウォーホルのバナナのジャケット『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ』(67年)だろう。アンディ・ウォーホルに見いだされてのデビューだったが、レコードは、全く売れなかった。音楽史上、もっとも重要なアルバムでかつ、売れなかったという、伝説的なアルバムだ。
 オリジナルのジャケットは、あのバナナの皮(シールになっている)がむけるという仕掛けだった。わたしの持っているレコードも、その皮をむいてできた皺がバナナの部分についている。一度、むいてしまうと、皺ができてしまうのだ。そういえば、ローリング・ストーンズの『スティッキー・フィンガーズ』のジャケットも、ウォーホルのデザインで、ジーンズの腰の部分の写真にチャックがついていて、それを開けると…。バナナの皮の中も、ジーンズのチャックの中も、興味のある人は、中古レコード店やアマゾンで探して、確認するのが楽しいだろう。どちらも、CDの紙ジャケでも、復刻されている。
 ちなみに、脱線するが、この「アンド・ニコ」のnicoも、二度来日している。わたしは、一回目の時に行ったのだが、このアルバムに参加していたころは、モデルや女優をしていた美しい女性だったが、来日の時には、立派な大人になり、ハーモニウムを演奏しながら、さながら魔女のように低い声で歌っていた。この時のライブは、LDなどでも発売されたが、今は、廃盤のようだ。ニコの一枚を選ぶとすれば『チェルシー・ガール』が、おススメであろうか。

 ルーが、ソロになってからの一枚ということなら『トランスフォーマー』をおススメしよう。《ワイルド・サイドを歩け》などは、退廃的な世界、ゲイやヘロインなどを歌い、自分もバイセクシャルだと宣言していたようだ。そういえば、このアルバムのプロデューサーの一人でもあるデビッド・ボウイとすっぽんぽんな姿で並んで写っている写真を見た記憶がある。
 亡くなった時、妻のローリー・アンダーソンがコメントを発表した。
 ローリー・アンダーソンは、ミュージシャンというより、コンセプチャルなアーティストという存在だ。来日の時ライヴを見に行ったが、一曲ごとに仕掛けをして、それも、むずかしい表現にせずに、楽しく刺激的であった。YouTubeなどで、確認してほしい。
 そのコメントは、いくつかのメディアで紹介された。一片の詩のような内容だった。
 ルー・リードは、大ヒットアルバムなどは生み出さなかったが、ロックという表現を深め、かつ広げた、重要なアーティストの一人だと思う。まだ、聴いたことがない方は、この機会に体験してほしい。

 さて、いつものことながら、前置きが長くなってしまったが、今回の紹介は、「Dream Powerジョン・レノン スーパー・ライヴ2013」。
 コンサートの提唱者であるオノ・ヨーコさんの「教育に恵まれない世界の子どもたちを支援しよう!」という呼びかけにより、日本のトップ・アーティストが毎年、日本武道館に集まって、ジョン・レノンの曲を歌おうという趣向だ。
 今回は、ジョン・レノンについて書こうと思っていたのだけれど、ルーの追悼にページを費やしてしまった。次回に、続きますということで、お許しください。[次回11/20(水)更新予定]


■公演情報は、こちら
http://www.dreampower-jp.com/superlive/index.html


(更新 2013.11.13 )


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プロフィール

小熊一実(こぐま・かずみ)

 1956年生まれ。プロデューサー。このサイトの前身「JAZZ STREET」に引き続き、「Music Street」の企画編集を担当。ジャズ、ロックはもちろん、クラシック、歌謡曲からアヴァンギャルドまで、聴きまくっている音楽狂。音楽以外にも、落語会やロボット・イベント、映画も製作している。ここでは、ジャンルを超えて、趣味に走ったライヴ情報をお届けしたい。補足情報をfacebookに掲載します、見て下さい。https://www.facebook.com/kazumi.koguma

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