第12回 ザ・バンドを特別のバンドにしたガース・ハドソン |AERA dot. (アエラドット)

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第12回 ザ・バンドを特別のバンドにしたガース・ハドソン

文・小熊一実

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 たぶん、多くの人が、ガース・ハドソンって、誰?と思うことだろう。

 先に、言ってしまうと、「ザ・バンド」というバンドの一員です。

 「ザ・バンド」を紹介するには、ボブ・ディランが、フォークからロックに転向した時のバック・バンドと紹介するのがよいのだろうか。

 映画『ラスト・ワルツ』で解散コンサートを行ったバンドというのがよいのだろうか。ザ・バンドのデビューアルバムを聴いて、エリック・クラプトンがぶっ飛んだ、という話も有名だ。

 音楽を聴き始めた頃、と書いて、子どもの頃の話しばかりだな、と思う。しかし、この年になると、あ、2013年現在、56才ですけど、音楽と自分の関係は、年齢とともに続いているということをしみじみ思わないではいられない。

 10代の半ば、ボブ・ディランを聴いてみたいと思った。しかし、当時の友人の誰一人として、ボブ・ディランのレコードを持っていなかった。ラジオで聴いたことはある。変な声だな、と思う。たぶん《風に吹かれて》だったと思う。PPMと呼ばれていたピーター・ポール&マリーの《風に吹かれて》や《くよくよするなよ》の方が、いいように思った。声もハーモニーもきれいだし。

 ボブ・ディランをきちんと聴いたのは、ジョージ・ハリスンの『バングラデシュ・コンサート』のサントラ盤だった。当時、LP3枚組、お年玉を貯めて、買った。バイトなどはまだ、していない。いや、家が町工場だったので、伝票にハンコを押して、1冊100円もらっていた。レコードや本が欲しかったので、小遣いほしさに、手伝いをしたのだ。

 『バングラデシュ・コンサート』は映画も見ていたし、そのレコードには、豪華な写真集もついていた。だから、音楽だけではなく、ミュージシャンたちの姿も、知ることができたのだ。そして、その中にジージャンを着たボブ・ディランがいた。

 変な声、変な歌い方ではあったが、かっこよかった。レオン・ラッセルもかっこよかった。ギターの弦のさきっちょに煙草なんかさしてエリック・クラプトンも、かっこよかった。もちろん、主役のジョージ。ハリスンもかっこよかった。そう、みんな、かっこよかったのだ。かっこいいことが、最高だった。そして、それらの中で、ボブ・ディランが一番かっこよかったのだ。

 今、考えれば、ボブ・ディラン30才。今のわたしから見れば、若造ですよ。でも、貫禄があった。1966年のバイクの事故で半分引退状態からの復活ということもあり、すでに、伝説のような存在になっていたのだ。そして、その間、いっしょに音楽を創っていたのが、ザ・ホークスであり、その後、ザ・バンドと名を変え、デビューするのだ。

 しかし、わたしは、その時、まだ、ザ・バンドを聴いていなかった。音楽誌などを読むとなかなかに評判がよい。エリック・クラプトンもぶっ飛んでいる。しかし、そのレコードを購入する順番が、なかなか回ってこない。ほしいレコードはたくさんあるのに、お金はない、わけだから、その購入競争は熾烈を極めたのだ。

 デビュー・アルバム『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』のジャケットは、下手な絵だったし(あとでボブ・ディランの絵だと知るのだが)、2枚目の『ザ・バンド』の写真も渋いおじさんみたいな人たちだった。これでは、ティーン・エイジャーは手に取らない。

 ザ・バンドとの出会いは、FMラジオだった。レコードが、まだ、高価商品で、思うように買うことができない時代に、ラジオは、サイコーの味方だった。そして、カセット・テープ・レコーダーというものも発売された。レコードを買うより、カセット・テープに録音して聴く方が、安上がりだったのだ。FM放送のスケジュールを掲載した情報誌が何誌も出版されていた。

 そのFMで、ザ・バンドの『ロック・オブ・エイジズ』を聴いた。そして、録音した。かっこよかったのだ。

 その後、ボブ・ディランといっしょに、74年『プラネット・ウェイヴス』を創り、ツアーを行なった。そのツアーを記録したライブ盤『偉大なる復活』も聴いてほしい。

 76年実質的な解散コンサートが開催される。その記録が、映画にもなった『ラスト・ワルツ』だ。このライヴには、たくさんのゲストが参加して、祝祭劇を観るようだ。

 その映画の中で、きちんとした音楽教育を受けていたガース・ハドソンのロック・バンド入りを両親に反対されるのを恐れ、ガースがメンバーの音楽教師として、レッスン料をとるという名目で、バンドに参加したのだと語られる。

 「ガースが入ってきてホークスのサウンドはロックンロールオーケストラのようになった。サウンドがずっと豊かになったのが確実に感じられた。」(リヴォン・ヘルム著・菅野彰子訳「軌跡」1994年 音楽之友社刊より)と、当時のメンバーも書いている。

 『ラスト・ワルツ』の中で、ガース・ハドソンのオルガン・ソロがある。ザ・バンドをただのロック・バンドでない、特別のバンドにしているのが、ガース・ハドソンなのだと、わたしは思う。[次回5/29(水)更新予定]


■公演情報は、こちら
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=8564&shop=1


(更新 2013.5.22 )


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プロフィール

小熊一実(こぐま・かずみ)

 1956年生まれ。プロデューサー。このサイトの前身「JAZZ STREET」に引き続き、「Music Street」の企画編集を担当。ジャズ、ロックはもちろん、クラシック、歌謡曲からアヴァンギャルドまで、聴きまくっている音楽狂。音楽以外にも、落語会やロボット・イベント、映画も製作している。ここでは、ジャンルを超えて、趣味に走ったライヴ情報をお届けしたい。補足情報をfacebookに掲載します、見て下さい。https://www.facebook.com/kazumi.koguma

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