第36回 ザ・グレイトフル・デッドのガルシア語る「俺は、ドアーズを好きになれなかった」 |AERA dot. (アエラドット)

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第36回 ザ・グレイトフル・デッドのガルシア語る「俺は、ドアーズを好きになれなかった」

文・中山啓子

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『カンヴァセーションズ・ウィズ・ザ・デッド:ザ・グレイトフル・デッド・インタヴュー・ブック』デイヴィッド・ガンス監修

●ジェリー・ガルシア( インタヴュアー:ブレア・ジャクソン、デイヴィッド・ガンス、1981年6月11日、カリフォルニア州サンラフェル )より

ジャクソン:今、ドアーズの特集号(BAM誌の)に取り組んでいますが……

ガルシア:俺は、ドアーズを好きになれなかった。彼らは腹立たしかった……共演した時に、そう思った。(ジム・)モリソンは当時、ミック・ジャガーのコピーそのものだった。ヴォーカルじゃない。見た目というか、ステージでの動きが、アメリカ・ツアーをした時のミック・ジャガーにそっくりだった。彼は、何から何まで真似ていたんだ。

 モリソンは、詩人として評価されるようになるまで、ステージで動き回っていた。もっとも俺は、彼が優れた詩人だと思わなかった。悪いが。

 俺にはドアーズというバンドが理解できなかった。彼らのサウンドは、薄くて不安定だった。ベース抜きのスリー・ピース・バンドで、オルガン奏者(レイ・マンザレク)が、ベース・ラインを演奏していた。そのスタイルやラーガ・ロック風のギター表現は、一風変わっていた。俺にとっては、実に危うく鋭いサウンドで、聴いて楽しいものじゃなかった。

 彼らのその後の作品の中には、ある程度評価したものもあるし、モリソンのクレイジーな言動も、多少は理解できた。クレイジーな要素は今も昔も、ロックンロールの特長だからな。いや、俺は彼をよく知らなかった。だが、俺たちと仕事をしているリチャード・ローレンは、彼のエージェントだった。だから、彼が泥酔していざこざを起こしたり、警察沙汰になるたびに、面倒をみる羽目になった。ローレンなら、モリソンに関する話が山ほどあるはずだ。

 とにかく俺は、彼らの音楽に惹かれなかったし、好きな部分を見出せなかった。俺たちが共演したのは、サンフランシスコだった。彼らはたしか、2曲演奏したが、俺は1曲目のステージを見届けると、上の階に行って、ギターをいじっていた。俺の知りたいことが何もなかったんだ。それに、彼がしつこく、ミック・ジャガーを真似るから、イライラした。

 当時のドアーズは、サンフランシスコにやってくる典型的な見掛け倒しのバンドのようにみえた。それは、例のヒット曲≪ライト・マイ・ファイア(ハートに火をつけて)≫を出す、かなり前だった。おそらく彼らは、進化する過程にあり、きちんと評価するには早すぎたんだろう。とはいえ俺は、いつも音楽の中に何かを探し求めていた。それが何であろうと、彼らには見当たらなかった。例えば、彼らのサウンドやフィーリングには、ブルースが微塵も感じられなかった。

ジャクソン:抵抗感があった?

ガルシア:いや、そういうわけじゃない。格好をつけていると思っただけだ。俺に言わせれば、うわべだけで、中身がなかった。だがその後、≪ライト・マイ・ファイア≫を大ヒットさせ、彼らは、コンサートの主役を張るようになった。

 俺たちは数年後に、サンタバーバラでもう一度、共演した。彼らの前座として演奏したんだ。彼らは、前よりパワフルになっていた。サウンドは大分、改善されていた。その頃には、アンプを効果的に使うようになり、マンザレクのベース・ラインやなんかは、ちょっと興奮させた。だが、サウンドにはまだ、厚みがなかった。

 ドアーズは、ザ・フーやジミ・ヘンドリックス、あるいはクリームのような、スリー・ピース・バンドの成功版とは言い難がった。キーボード、ギター、ドラムスという編成は、たしかに面白いコンセプトだが、俺には必要不可欠な要素がないように思えた。それが何か、口に出して説明できないが、彼らを聴くと、とにかく物足りなかった。

 俺たちは、彼らの前座で演奏し、ちょっと気まずい思いをした。俺たちのパワーが勝り、脇役が、主役を食う形になってしまったんだ。俺たちには、2台のドラムスとフィル(・レッシュ)のベースという強力な武器があって、それが、物を言った。彼らのステージは、たとえヒット曲があろうと、盛り上がりに欠け、白けた感じだった。

 俺は多感な思春期に、ロックンロールの洗礼を受けた。当時、大旋風を巻き起こしていたのが、ジェームズ・ディーンとエルヴィス・プレスリーだった。つまり、ロックンロールの創成期だ。俺は、ロックンロールの第一世代の影響を受けているんだ。ジェームズ・ディーンは俺にとって、とてつもなく大きな存在、ロックンロールを象徴するヒーローだった。

『Conversations With The Dead : The Grateful Dead Interview Book』By David Gans
訳:中山啓子
[次回5/9(月)更新予定]


(更新 2016.4. 4 )


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