第23回 『エイント・トゥー・プラウド・トゥー・ベグ:ザ・トラブルド・ライヴズ・アンド・エンデュアリング・ソウル・オブ・ザ・テンプテーションズ』マーク・リボウスキー著 |AERA dot. (アエラドット)

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第23回 『エイント・トゥー・プラウド・トゥー・ベグ:ザ・トラブルド・ライヴズ・アンド・エンデュアリング・ソウル・オブ・ザ・テンプテーションズ』マーク・リボウスキー著

文・中山啓子

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■第4章 ゲット・レディより

 オーティス・ウィリアムスによれば、ジョニー・メイ・マシューズの元を去ろうとしていたディスタンツ(テンプテーションズの前身)が、セント・スティーブンズ教会のコミュニティ・センターでステージに立った時、ゴーディは、彼の右腕スモーキー・ロビンソンと改名したばかりのロビンソンのグループ、ミラクルズに同行し、センターに来ていたという。ちなみに、スモーキー・ロビンソン&ミラクルズは、ゴーディが初めて契約を交わしたモータウンのアーティストだった。

「彼らは当時、人気があった。《ガット・ア・ジョブ》が、地元で大ヒットしていたんだ。それに、ベリー(・ゴーディ)は常々、彼らに付き添い、レコード・ホップに行った。だから、彼があの晩来たのは、仕事の一環だった。振り返ってみれば、俺たちは、鉢合わせしたわけで、運命的なものがあったんだ」

「あの晩は、俺たちの演奏が終わっても、観客が俺たちを、ステージから降ろそうとしなかった。俺たちはアンコールに応えて、2,3回ステージに戻らなければならなかった。それに俺たちは、舞台裏でミラクルズの姿を見て、トリをとるのは彼らだと思った。だから演奏では、彼らに引けをとるわけにいかなかった。ようやくステージを降りた後、俺は、ミスター・ゴーディと並んで、ミラクルズのステージを見ていた。すると彼が、『君たちには興味がある』と言って、“Tamla”の社名が入った名刺を手渡した。で、『君たちが今いるところをやめる場合は、俺に会いに来い』と言ったんだ」

「またしても、運命的なものを感じた。ある日俺が受話器をとると、電話の主は、エディ(・ケンドリックス)だった。彼が藪から棒に、電話をかけてきて、『やあ、ブラザー。何か変わったことでもあるかい?』と切り出した。とてもじゃないが信じられなかった。で、『コーンブレッド(好物コーンブレッドがニックネームとなる)、おまえはまったく、タイミングのいい奴だな。俺はテナーが必要なんだ。しかも今すぐに』と言った」

「俺はエディに、モータウンのオーディションについて話した。すると彼が、『ポール(・ウィリアムス)も一緒に行っていいか? 彼もグループに入れるかい?』と言った。俺は実際、そこまで考えていなかった。だが、考えるまでもなかった。『ポールも同じように必要だ、今すぐ、ここに連れてこい』」
 
「エディとポールが入ったことで、俺たちはすぐに進化した。グループとして完成されたんだ。彼らはもっぱら、ゴスペルの風味づけをしてくれた。俺たちは,《カモン》を教会風のサウンドにすることさえできた。ステージで主の祈りを唱えたんだ。そしてそれが、うまくいった。観客を感動させたし、俺たち自身も感動させた。だから、そういう曲と生々しくセクシーな曲の中で、あれこれ試してみることができた」

「ポールがすべて、組み立てたんだ。あいつはまったく、素晴らしいミュージシャンだ。彼は何もかも、頭の中で計算していた。で、『俺たちは突っ立って歌わずに、踊って見せ、かっこよく決め、セクシーにも、スピリチュアルにもなる。そしてそれを、すべてエレガントにやるんだ』と言った。あのブラザーは全部、計算に入れて、話していた。彼は、先見の明があったんだ」

 1961年3月初旬、オーティスはようやく、モータウンに電話をかけた。そしてオーディションは、ウエスト・グランド・ブールバード2648番地(ミシガン州デトロイト)の本社で、行われることになった。


『Ain’t Too Proud To Beg:The Troubled Lives And Enduring Soul Of The Temptations』By Mark Ribowsky
訳:中山啓子
[次回2/9(月)更新予定]


(更新 2015.1.12 )


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