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第15回 NEIL YOUNG / HARVEST

文・大友博

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 『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』の回でも書いたが、『ハーヴェスト』は、ニール・ヤング信奉者の多くが彼の最高傑作、もしくは次点と認めているアルバムだ。発表は1972年2月。

 71年を迎えるとすぐニールは、ソロ第4弾の制作を視野に入れて、ソロ・ツアーを開始した。だが、ダニー・ホイットゥンのドラッグ依存がますます深刻化し、クレイジー・ホースと組むことは不可能に近くなっていた。CSNと組む気はない。しかし、「ザ・ニードル・アンド・ザ・ダメージ・ダン」など、曲はいくつも書き上がっていた。それらをどうやって仕上げるか?

 同時期、ニールはジョニー・キャッシュ・ショウに招かれ、ナッシュヴィルに向かっている。放送は2月17日。「ニードル~」などを歌っているのだが、収録と前後して彼は、技術者系プロデューサー、エリオット・メイツァーと出会ってさまざまな刺激を受け、ナッシュヴィルを拠点に次のアルバムをつくることを決めた(ディランの『ナッシュヴィル・スカイライン』からの影響もあったに違いない)。ドラムスがケニー・バットリィ、ベースがティム・ドラモンド、ペダル・スティールがベン・キースというミュージシャンの顔ぶれもメイツァーの推薦で固まったものだろう。そこにジャック・ニッチェを加えたバンドに、ニールは、ストレイ・ゲイターズという名前をつけている。

 ゲストにはジェイムス・テイラーとリンダ・ロンシュタットが参加。「孤独の旅路」の邦題で知られる「ハート・オブ・ゴールド」では二人のコーラスが大きくフィーチュアされている。CSNは、CS、SN、CNという異なるカップリングで3曲に参加していて、微妙な人間関係をさり気なく示したりもしていた。

 『ハーヴェスト』は、シンプルなカントリー・ロックから、ロンドン・シンフォニー・オーケストラとの共演、6/8+5/8という複雑なリズムに乗って激しくギターを弾きまくるハードなロックまで、製作中に26回目の誕生日を迎えたニールのすべてを表現したアルバムだ。歌詞も、個人的な体験を背景にしたものでありながら、充分に練り上げられている。自信作であり、その仕上がりには強い手応えを感じていたはずだが、「孤独の旅路」が全米1位を記録するという予期せぬ商業的成功が、しばらく、彼を苦しめることになるのだった。[次回6/24(月)更新予定]


(更新 2013.6.17 )


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プロフィール

大友 博(おおとも・ひろし)

 1953年東京都生まれ。早大卒。音楽ライター。会社員、雑誌編集者をへて84年からフリー。米英のロック、ブルース音楽を中心に執筆。並行して洋楽関連番組の構成も担当。ニール・ヤングには『グリーンデイル』映画版完成後、LAでインタビューしている。著書に、『エリック・クラプトン』(光文社新書)、『この50枚から始めるロック入門』(西田浩ほかとの共編著、中公新書ラクレ)など。

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