第38回 『ライヴ』深町純&ニューヨーク・オールスターズ |AERA dot. (アエラドット)

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第38回 『ライヴ』深町純&ニューヨーク・オールスターズ

文・林建紀

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「深町純? 和ジャズでしょ?」。いやいや、リーダー名は名義貸しみたいなもので、当時のニューヨーク・シーンの息吹きをダイレクトに伝える産地直送傑作ライヴなのだ。深町と葉加瀬太郎との対談記事によれば、経緯はこうだった。深町がニューヨークに乗り込みアルファ移籍第1作『オン・ザ・ムーヴ』を録ったのは本ライヴに5ヶ月先立つ4月半ばのこと。帰国後、セッションに参加した親分格のランディ・ブレッカー(トランペット)から「日本に行ってみたいが何か仕事を作ってくれないか、ライヴの機会があればみんな行きたいと言っている」との電話を受けてアルファに持ちかけたところ、ライヴ盤を録る許可をとったら呼ぼうということになる。深町は再びニューヨークに飛び、来日するメンバーとリハーサルを行い、彼らを引き連れて舞い戻ったというわけだ。スティーヴ・カーン(エレクトリック・ギター)を除く7人は『オン・ザ・ムーヴ』に参加していた。

 これだけの面々だからさぞや大反響を呼んだだろうと当時を知らない方は思うのでは。実際はそれほどでもなかった。大阪公演を観たが、決して超満員ではなかったと記憶する。筆者にしても「スタッフ」のリチャード・ティー(ピアノ)とスティーヴ・ガッド(ドラムス)をはじめ彼らの名はほぼ知っていたが、マイク・マイニエリ(ヴァイブ)は初耳で、オールスターズとは大きく出たなとすら思った。どんなものかいっちょう聴いてみるかと大して期待もせず足を運んだ次第だ。無理もない。やがてブレイクした彼らも当時はまだ駆け出しに毛の生えたようなものだった。第一、売れていたら出稼ぎを持ちかけるはずもエコノミー・クラスで来るはずもないだろう。ところがだ、いい意味で予想は覆された。大阪公演に限らず、熱演の連続に大満足して帰路についたのは筆者ばかりではなかろう。フュージョンが広く認知されたのは、来日公演と推薦盤が切っ掛けだったような気がする。

 熱気がたちこめ、その一体感に驚かされる。フュージョンにありがちな作り物感はなく、フォービートではないがストレート・アヘッドと呼びたい。概ね三管アンサンブルによるテーマ→ 誰か二人のソロ→ 三管によるテーマという流れで、随所にアンサンブルを挿む。

 前半(アナログ盤の1枚目)は、トリッキーなアクセントのテーマに続き、マイケル・ブレッカー(テナー)とデイヴィッド・サンボーン(アルト)、ランディとカーンが熱くかけあうランディ作《ロックス》、サンボーンが涙をふり絞るホール&オーツ作《サラ・スマイル》、ティーらしい軽快で愛らしい好旋律をマイケルが咆哮する《ヴァージニア・サンデー》、弾むビートに乗って深町(シンセサイザー)とマイニエリが自在に駆け巡るランディ作《インサイド・アウト》、バラードから次第に熱情を迸らせていくマイケルとそれを踏まえたマイニエリの巧さに舌を巻くマイニエリ作《アイム・ソーリー》と続く。

 後半は再び深町が大活躍し、ランディがエレクトリック・ギターもどきの怪演! で迫る深町作《ダンス・オブ・パラノイアOp.2》、これもティーらしい好旋律をマイニエリが爽快に綴りソロで躍動する《ジプシー・ジェロ》、マイケルの気迫が半端ないランディ作《ジャック・ナイフ》と続く。本作の白眉はラストのマイニエリ作《ラヴ・プレイ》だ。三管抜きでマイニエリ主導のテーマと素晴らしいソロがひとしきり、カーンを経て再びのマイニエリからラテン調に転換、ガッドのよく歌うソロが続き、終盤は時々刻々と加速、最後は怒涛のような大団円を迎える。マイニエリの才気煥発、スケール感豊かな名演だ。

 とにかくマイニエリに感嘆しきり。実質的リーダーは最年長の彼だったのではないか。次いでマイケルがハジけている。「刺身のつまみたいなものだ」と評されたという深町もソロで気を吐く。ブレイクする前の彼らだったからこそ残しえた熱血ライヴと言えよう。[次回4月14日(月)更新予定]


【収録曲一覧】
Jun Fukamachi & The New York All Stars Live (Sony [Alfa])

1. Rocks 2. Sara Smile 3. Virginia Sunday 4. Inside Out 5. I'm Sorry 6. Dance of Paranoia Op.2 7. Gypsy Jello 8. Jack Knife 9. Love Play

Jun Fukamachi (key), Randy Brecker (tp), David Sanborn (as), Michael Brecker (ts), Richard Tee (p), Steve Khan (el-g, ac-g), Anthony Jackson (el-b), Steve Gadd (ds), Mike Minieri (vib, per).

Tracks 1-3: Recorded at Yubin Chokin Hall, Tokyo, September 19, 1978.
Tracks 4-9: Recorded at Korakuen Hall, Tokyo, September 17 & 18, 1978.


※このコンテンツはjazz streetからの継続になります。


(更新 2014.3.10 )


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プロフィール

林 建紀(はやし・たつのり)

 ジャズ研究家/翻訳家。com-post同人。1950年生まれ。同志社大学軽音楽部出身。著書に『週刊ラサーン ローランド・カークの謎』(プリズム・ペーパーバックス)、訳書に『ローランド・カーク伝 溢れ出る涙』(河出書房新社)、共著に『JAZZ TRUMPET』『JAZZ PIANO』『JAZZ SAX』(シンコーミュージック)、『読んでから聴け! ジャズ100名盤』(朝日新書)などがある。Twitterのアドレスはhttps://twitter.com/#!/tahsaan_h

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