第30回 レーベルによる音楽の傾向 その20 リヴァーサイド[2] |AERA dot. (アエラドット)

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第30回 レーベルによる音楽の傾向 その20 リヴァーサイド[2]

文・後藤雅洋

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 リヴァーサイドの2回目は、このレーベルの特徴とも言えるピアノ・ジャズにスポットを当ててみましょう。というのも、リヴァーサイドのスター・プレイヤーと言えば前回ご紹介したセロニアス・モンクやビル・エヴァンスといったピアニストが最初に挙げられるように、相対的にこのレーベルはピアノに強いのです。

 まず最初に挙げるべきは、内容も良く親しみやすいピアノ・トリオの代表として『ケニー・ドリュー・トリオ』はどなたにも安心して奨められる名盤です。典型的パウエル派ピアニストのドリューの乗りの良い演奏は、多くの方々がジャズ・ピアノに抱いているイメージを裏切りません。

 トリオではありませんが、ケニー・バレルがサイドに入ったウィントン・ケリーのギター入りカルテット『ウィスパー・ノット』も、「脚立のケリー」と通称されて親しまれた名盤です。ちょっと哀感の籠もったケリー節はけっこう病み付きになります。言うまでもありませんが、ケリーもまた「パウエル派」ですね。

 そのパウエル派3人目は、渋好みのピアニスト、バリー・ハリスでしょう。彼のライブ盤『アット・ザ・ワークショップ』はまさに通好みの傑作。とりわけアナログ時代のB面に収録された《ロリータ》は名曲です。彼の聴き所は、基本パウエル・タッチでそこに都会的で洒脱な味付けをしたところ。

 さて、あまり言われることがありませんが、レッド・ガーランドだってけっこうパウエルの影響を受けているのですね。もちろん前出のケリーやガーランドはかなり独自色を打ち出しているので、ドリューやハリスほどではないにしろ、やはり大枠で見ればパウエルの圏内。ガーランドのリヴァーサイドでの名品と言えば『ブライト・アンド・ブリージー』に止めを指すでしょう。彼の輝かしいピアノのタッチにスポットを当てた傑作です。

 ファンキー・ピアノの代表と目されたボビー・ティモンズも、リヴァーサイドに傑作を吹き込んでいます。どれか1枚というなら、まずは『トリオ・イン・パーソン』がオススメです。ファンキーかつソウルフルな《枯葉》が絶品。「ソウルフル」といえば、その名も『ザ・ソウルフル・ピアノ・オブ・ジュニア・マンス』もいいですよ。ことさら大仰な姿勢は見せませんが、じっくり聴けばしみじみと身体に浸みこんでくるタイプ。

 ちょっと毛色は変わりますが、ビリー・テイラーの『ウォーミング・アップ』は、いわゆるパウエル派的ハードバップとは少々趣が異なりますが、微妙なレトロ感とモダンなセンスが同居したなかなかの傑作。一聴の価値アリです。

 さて、ここまでずーっと黒人勢をご紹介してきましたが、リヴァーサイドにはエヴァンス直系とも言うべき逸材がいました。白人エヴァンス派ピアニスト、ドン・フリードマンです。彼の『サークル・ワルツ』は、ピアノ・トリオ名盤選には必ずと言っていいほど登場する折り紙つき名作です。とりわけ、タイトル曲の鮮烈なイメージは一度聴いたら忘れられません。[次回12/21(月)更新予定]


(更新 2015.11.24 )


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プロフィール

後藤 雅洋(ごとう・まさひろ)

ジャズ喫茶店主、ジャズ評論家、ジャズサイトcom-post同人http://com-post.jp/。自ら経営する「いーぐる」でジャズを中心に幅広い音楽ジャンルの連続講演をそれぞれの専門家の方々にお願いし開催、現在495回を迎える。近著『一生モノのジャズ名盤500』(小学館101新書)『ジャズ耳の鍛え方』(NTT出版)『ジャズ・レーベル完全入門・増補版』(河出書房新社)。ブログ「いーぐる後藤の新ジャズ日記」http://d.hatena.ne.jp/eaglegoto/

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