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第58回 ごぶさたしてしまいました 走り続けています ゼイゼイ

文・谷川賢作

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この日は鶴の飛来地で有名な出水の小学校で公演。競演はパーカッションとパン奏者の山村誠一さん。 (撮影/徳田豊志)

この日は鶴の飛来地で有名な出水の小学校で公演。競演はパーカッションとパン奏者の山村誠一さん。 (撮影/徳田豊志)

で、こどもたちからこうやってメッセージが届くと心がなごみます。これはソプラノの岩本直子さんと横須賀の汐入小での公演の感想 (撮影/谷川賢作)

で、こどもたちからこうやってメッセージが届くと心がなごみます。これはソプラノの岩本直子さんと横須賀の汐入小での公演の感想 (撮影/谷川賢作)

大きな原爆の図の絵の目の前で歌った「アトム」そういえばアトムのエネルギー源は核だと、あとで気がついた (琉球新報・落ち穂より)

大きな原爆の図の絵の目の前で歌った「アトム」そういえばアトムのエネルギー源は核だと、あとで気がついた (琉球新報・落ち穂より)

 11月丸一ヶ月書けませんでした。ごめんなさい。書けない言い訳にきこえるでしょうが、11月は4本の学校公演を含めて全部で23本のコンサートとライブをしました。12月に入っても週4本のペースで人前で演奏しています。たぶん今が人生でMAXの状況だと思うのですが。そうでないと身がもたない。ゼイゼイ。そして、声をかけてくださる皆さんは必ず二つのことをおっしゃいます。

 問「そんなに忙しくて、からだに気をつけてくださいね」
 答「はい。十分に気をつけています。腰も鍼灸や整体に行っておりますし。酒も控えています」
 問「忙しいですねえ。儲かるでしょ?」
 答「……どうなんでしょう?それは働いた分の対価としてきちんと報酬を頂いておりますが、あまり儲かっているという実感はないなあ。欲をかいてはいけないと、いつも自戒しています」

「マイペースでいいねえ」ともよく言われるのですが、本当にマイペースな人はもっと仕事を吟味して本当に自分がやりたいこと、自分の成長(いくつになっても成長、進歩はあるものだとして)につながることだけをやるのではないかと思います。

 オヤジに言われて「ガーン」となった一言。

「その歳でそんなにいっぱいやらなければ食えないのか?」

 ちゃうわい! 売れっ子詩人のあんたに言われたかないわい! そういうことではなくて、35年以上もプロとして活動していると「蜘蛛の巣の網の目のようにどこにでも限りなく繋がっていく、音楽を通じた多種多様な人間関係ネットワーク」の中に自分が深く身を浸しているのだな、ということを何度でも実感するということ。それでネットワーク内の今が旬な人、ごぶさたしていた人、はじめましてだけど、実は○○さんを通じてお噂はかねがね、な人等、いろんな人に声をかけてもらえるのだ。それにつきると思う。

 あなただってそうではないか、詩人さん。あなたをそばで見ていると『ゴッドファーザー』の冒頭でいろんな人の“陳情”を受け続けて困った疲れた顔になっているマーロン・ブランドを思いだします。端から見ていても、次々にいろいろな企画が持ち込まれて情にほだされて断れない、おそらく日本で一番売れているであろう老詩人の戸惑いを隠せない素顔がそこにある。

 さて、身内に辛辣になっていないで、11月のおさらい(過去を振りかえっている余裕はないのだけど“網の目ネットワーク”の一例として)

 このところ小学校での公演が着実に増えている(ほめちぎ第14回第37回参照)。子ども達に元気をもらいにいくのは大好きだ。「はやり歌」をやったりして媚びなくても、朝早い開演はちときついが、手も気も抜かず、楽しく真剣にとばしていけば、彼らの気持ちをがっつりとつかむことができる。鹿児島で2本。彦根で1本。横須賀で1本。

 小室等さんを座長にした、障害を持たれた方たちとプロミュージシャン達とのコラボワーク(ほめちぎ第15回参照)も、ずっと継続中。私のライバル「えいちゃん」は今、カホンにはまっていて、今回えいちゃんの住む施設「蛍の里」を訪問しての11/15に行われた、私のピアノと彼のカホンの30分は続いた壮絶な一騎打ちセッションはこれからも語りつがれるだろう。(これは実は二人のステージではなく、踊りとのコラボだったのですが。あはは)

 宮城のアルトサックス奏者名雪祥代さんとのコラボ(ほめちぎ第35回参照)はついに、CD発売記念ツァーにまで展開。11/10から13まで東北各地を転戦してきました。

 「パリャーソ」(ほめちぎ第16回第45回参照)は、結成15周年記念コンサートを多くの仲間たちのゲスト参加を得て、11/27に阿倍野区民センター・大ホールにて開催。ライフワークとしてまだまだ続きます。

 昨年に引き続いての『原爆の図丸木美術館』でのコンサートは11/23。いつ来てもこの空間は身が引き締まる。今回はラストに《イマジン》と《鉄腕アトム》をメドレーで弾いたのだが、その時の模様を学芸員の岡村幸宣さんがコラムに書いてくださった。私が語るよりもそちらをご覧ください(写真参照)

 こんな風に、一つ種をまくと、思いもかけない収穫につながることが多々あるのは、この仕事をしている者の醍醐味だ。当たり前のしめだが、いつも感謝の気持ちとなんにでも驚く心を持って、臨んでいきます。礼!

 しかし「そんなに忙しいとインプットがなくなって、アウトプットが枯渇しませんか?」ともよくきかれます。寸暇を惜しんで映画を映画館で見る。本を読む。音楽を聴く。このことは一年を通して自分に課しています。(積ん読本の山もだいぶ高くなっていますが……)

 さあ、小学校の校歌の作曲の年内しめきりが近づいている。字も書きますが、より得意なほうの音符を書かなくては。ではまた次回! [次回1/16(月)更新予定]


(更新 2016.12.19 )


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プロフィール

谷川賢作

谷川 賢作(たにかわ・けんさく)作/編曲家 ピアニスト

1960年東京生まれ。ジャズピアノを佐藤允彦に師事。演奏家として、現代詩をうたうバンド「DiVa」、ハーモニカ奏者続木力とのユニット「パリャーソ」に所属。また父である詩人の谷川俊太郎と、朗読と音楽のコンサートを全国各地で開催。80年代半ばより作・編曲の仕事をはじめ、映画「四十七人の刺客」「竜馬の妻とその夫と愛人」、NHK「その時歴史が動いた」テーマ曲等を手がける。88、95、97年に日本アカデミー賞優秀音楽賞受賞。2014年度船橋市文化芸術ホール芸術アドバイザー。音楽を担当した最新映画は「カミハテ商店」「SAYAMAみえない手錠をはずすまで」。最新刊『げんきにでてこい』(カワイ出版)、最新CD『うたがうまれる』 谷川賢作オフィシャルサイトhttp://tanikawakensaku.com/