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第21回 中山康樹を読め!

文・谷川賢作

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うざい奴と嫌われちゃったかもしれないけど、一度一緒に飲んでみたかったよ中山さん!(撮影/谷川賢作)

うざい奴と嫌われちゃったかもしれないけど、一度一緒に飲んでみたかったよ中山さん!(撮影/谷川賢作)

この1枚も「中山節」で発見した1枚。汲めどもつきぬ過去の鉱脈 ため息 (撮影/谷川賢作)

この1枚も「中山節」で発見した1枚。汲めどもつきぬ過去の鉱脈 ため息 (撮影/谷川賢作)

読んでから聴け!ジャズ100名盤

中山康樹&ジャズストリート

978-4022731852

amazonamazon.co.jp

 としか言いようがない。中山さんのライフワークであった『マイルスを聴け!』にならって言い過ぎ覚悟で「中山以外読む必要がない」とまで今は口走ってしまいそうだ。新刊が出るたびに「さあ、中山さんと遊ぶぞ! こんどはどんなすごい、今まで見たことのないボールを投げてくるのかな」というワクワク感を持ってむさぼり読んだ私は、単なる黙ってついていく一ファンであるにすぎないことを承知の上で、彼がどんなに魅力的な書き手であったかということは、今後も口角泡を飛ばして人に伝えていきたい。それは私の使命だと思って気張ってやっていく。

 少し心を落ち着かせてまず今一度表明してみたいことは(何回書いても「そんなこと余計なお世話!」だと思っているもう一人の自分がいるのだが)、「ジャズの歴史および、その個々のミュージシャンの歩みを踏まえた上でのオーソドックスな音楽評論」と「一枚のアルバムを、そのアルバムの置かれたジャズ史(音楽史とまで大きく言うべきなのか?)の上での位置、文脈を無視してでも、一人でも多くの「偶然の」聞き手に届けるために、魅力的に(時にはおもしろおかしく)言葉で書き表す」ことのシンクロについてもっと真剣に考えてみたいということだ。

 言い方が乱暴で誤解は怖いが、もっとくだけて言うと、「自分のアンテナの感度のままに聴きまくっているうちにどんどん魅力にとりつかれて奧へ奧へと探求に行きその結果、自然に大きな系統(幹と枝葉)が見えてきてしまうこと」はすばらしいことなのに、「ずっとブラブラそこら辺歩きまわって適当に面白いものをつまみ食いしているだけで、音楽ってつまりそんなものでしょ」にとどまってしまう人が多いのは、いい音楽評論が不足しているからではないからだろうか?

「啓蒙」という言葉は嫌いだが、この過去から現在に至るまで、多種多様な作家と作品がめちゃくちゃに混在している現在の状況だからこそ、もっと音楽評論家の皆さん(絶滅危惧種?)は「音楽感受&咀嚼力を呼び起こすための音楽→言語化美味変換力」(なんじゃそりゃ 日本語か??(^_^;) を「歴史(ジャズ史)の再発見」とともに一から鍛え直してほしいし、人の好奇心を後押しする「柔らかでセンスある啓蒙=魅力あふれるリズミックな文体」を考えてほしい。新たな音楽を発見(からのち探求にいたる)するのは喜びだし、その音楽に付加された情報がとめどなく広がっていくのも同じくらい大きな楽しみだと思うのですが、いかがでしょう? そういうことが「余計なお世話」で片付けられてしまうのであれば、それはちとさみしいなあ。

 それでこの話はまたしても、若い人たちにもっと古いものを聴いてほしいという方向に行ってしまう。いろんな世代がいる現場で過去作品に興奮してはしゃいでいるのがおじさん、おばさんだけというのではいかんでしょ。そんな時生意気に話しに割って入ってくる若者がいるとうれしくてつい「おおっ飲みねえ、食いねえ」の森の石松になってしまう(^^) やっぱり温故知新だぜよ。まずは昔話から始めようよ皆さん!だめかな?

 全然心落ち着いていないばかりか「頑迷な昔信奉系マニアなおっさん」に落っこちている私(^_^; (そういうの中山さんが一番嫌うタイプ。やばっ(^_^;))

 話を中山さんに戻して、中山さんは昔も今も硬軟自在な語り口ができる方だと思う。実際、彼は前(20年くらい前か)はもっと軽いタッチでスイングしまくって書いていらっしゃった。その代表が『マイルスを聴け!』『ジャズ名盤を聴け!』等の諸作であったと思う。中山節全開の軽妙洒脱な「競馬ならぬ、アルバムの中の一曲の実況中継」に何度聴く前から読んでいるだけで興奮させられたことか。「おわっ、この◯分◯◯秒からのマイルスのソロ聴かずして明日はない。すぐにGo!」で実際、何回電車に乗って買いに走ったことか。クリックじゃないけんね。レコード屋に走るだかんね(*^^)v

 軟の中山節からジャズの魅力の底なしの深みにはまった私だが、最近の中山さんの文章には軽いノリは薄れてきた。ファンは「いらだち」と「問題提起」の硬の中山節に静かに耳を傾けてきた感があるが、「使いものにならなくなった今までの『ジャズの歴史』を更新し続け、その上で新たにどれだけ多くの視点を提案できるか」という中山さんのこれからすすめていく仕事だったはずのことを、をあえて「継承」という言葉を使いますが、誰が継承するのかということを、固唾を呑んで見守っていきたいと思う。二代目を襲名したいと表明している柳樂光隆さん。私などからお願いされても迷惑だとは思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。たとえ「反応」しなくとも、ちゃんと楽しく受信している者はいっぱいいますよ(^o^)

 中山康樹さんありがとうございました。私のこのような「妙に物分かりのいい駄文」など関係ありません。とにかく「中山を読め!」もう一度そこから始めましょう。黙祷。[次回3/9(月)更新予定]


(更新 2015.2.23 )


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プロフィール

谷川賢作

谷川 賢作(たにかわ・けんさく)作/編曲家 ピアニスト

1960年東京生まれ。ジャズピアノを佐藤允彦に師事。演奏家として、現代詩をうたうバンド「DiVa」、ハーモニカ奏者続木力とのユニット「パリャーソ」に所属。また父である詩人の谷川俊太郎と、朗読と音楽のコンサートを全国各地で開催。80年代半ばより作・編曲の仕事をはじめ、映画「四十七人の刺客」「竜馬の妻とその夫と愛人」、NHK「その時歴史が動いた」テーマ曲等を手がける。88、95、97年に日本アカデミー賞優秀音楽賞受賞。2014年度船橋市文化芸術ホール芸術アドバイザー。音楽を担当した最新映画は「カミハテ商店」「SAYAMAみえない手錠をはずすまで」。最新刊『げんきにでてこい』(カワイ出版)、最新CD『うたがうまれる』 谷川賢作オフィシャルサイトhttp://tanikawakensaku.com/

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