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第74回 『BBCセッションズ』クリーム

文・大友博

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 クリームの一員としてのエリック・クラプトンのライヴは、1970年代初頭にフェリックス・パパラルディが編んだ第一集と第二集、2005年春のリユニオン公演を記録した2枚組だけでなく、BBC出演時の音源22曲をまとめたアルバムでも聴くことができる。BBCサイドが制作を担当し、03年にポリドールUKからリリースされた『BBCセッションズ』だ。短いものだが、若いクラプトンへのインタビューも4パート収録されている。

 少し沿革を紹介しておくと、英国放送協会と訳されることの多いBBCは、間もなく設立100周年を迎えるイギリスの公共放送。当然のことながら、50年代のロックンロールには冷淡だったようだが、ビートルズの世界的成功を受けてライト・パフォーマンスというフォーマットが組むようになったという。さらにはレイディオ・ルクセンブルグや公海上からの海賊放送などに刺激されて、ロックやポップ専門のレイディオ1を67年にスタートさせたのだった。

 ただし、当時のイギリスではラジオでのレコードの放送を1日数時間に限定する決まりがあった。レコード業界を保護することが目的だったようだが、これを逆手にとってBBCはつぎつぎと登場してくるバンドやアーティストたちを積極的にラジオに出演させるようになった。現場の制作者たちも、限られた予算や時間のなかで、なんとかいい音を提供できるように努力したという。

 こういった背景もあり、レイディオ1のライヴは、いわゆる公開放送ではなく、原則として拍手や歓声はまったくない。若干の音をオーヴァーダビングすることや、オリジナルと近いタイミングでフェイドアウトさせることもあり、エコー処理などを含めて、ライヴとスタジオ録音盤の中間的存在といえるだろう。

 クリームは結成直後の66年10月21日から68年1月にかけて8回の収録を行なっていて、残念ながら初回の音源はいい形では残されていなかったようなのだが、それ以外の7回から前述のとおり22曲がピックアップされ、その時間経過のままに並べられている。つまり、わずか1年半ではあるものの、バンドがいかに進化していったかを実感できるつくりになっているのだ。とりわけ、当初はほぼギタリストの立場に徹していたクラプトンが、ソングライター/ヴォーカリストとしてもその存在感を急速にアピールしていく様は感動的ですらある。

 収録曲は、デビュー作『フレッシュ・クリーム』と2作目『ディスラエリ・ギアーズ』が中心となっているが、レコード音源としては多くのファンが『ホイールズ・オブ・ファイア』ではじめて聴くこととなる《クロスローズ》と《ポリティシャン》も取り上げられている。ちなにみ後者は、BBCの収録にあたってジャック・ブルースとピート・ブラウンがその場で書き上げたものだという。 [次回11/18(水)更新予定]


(更新 2015.11.11 )


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プロフィール

大友 博(おおとも・ひろし)

 1953年東京都生まれ。早大卒。音楽ライター。会社員、雑誌編集者をへて84年からフリー。米英のロック、ブルース音楽を中心に執筆。並行して洋楽関連番組の構成も担当。ニール・ヤングには『グリーンデイル』映画版完成後、LAでインタビューしている。著書に、『エリック・クラプトン』(光文社新書)、『この50枚から始めるロック入門』(西田浩ほかとの共編著、中公新書ラクレ)など。

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