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第73回 『ライヴ・クリーム ヴォリュームII』クリーム

文・大友博

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 クリームのライヴ・アルバム第二集『ライヴ・クリーム ヴォリュームⅡ』がリリースされたのは、1972年初夏のことだが、じつはこの年は、クラプトンのキャリアにとってきわめて重要な意味を持っている。周囲との関係を閉ざして、暗い闇というか、固い殻のなかに閉じこもり、なにもしていなかったからだ。

 今年の春に邦訳版も出版されたマーク・ロバーティ著『エリック・クラプトン 全活動記録 1963-1982』(シンコー・ミュージック)によれば、ジョージ・ハリスンやピート・タウンゼントらがなんとか彼を救い出そうと試み、セッションを行なっているようだが、それも、ほんの数回。きちんとした形で実を結んだものはなく、やはり、「なにもしていなかった」といったほうがいいだろう。

 この年の3月末、27回目の誕生日を迎えたことも大きかったはず。27歳は、ロバート・ジョンソンやジミ・ヘンドリックスがこの世を去った年齢であったからだ。

 そのような時期に発売されたクリームのライヴ盤に、クラプトンがなんらかの形で関わったわけはないのだが、ここでもまた、プロデューサーのフェリックス・パパラルディが、短命に終わったバンドに捧げる形でいい仕事を残している。

 収められているのは6曲。1968年10月4日のオークランド公演から《デザートティド・シティーズ・オブ・ザ・ハート/荒れ果てた街》、《ホワイト・ルーム》、《ポリティシャン》の3曲、同年3月のサンフランシスコ公演から《テイルズ・オブ・ブレイヴ・ユリシーズ》、《サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ》、《ステッピング・アウト》の3曲、という構成だ。第一集ではファースト・アルバムに焦点を当てていたのに対して、第二集はアメリカ進出後の活動に的が絞られていて、《ホワイト・ルーム》と《サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ》もしっかりと収められている。

 クラプトンは、どの曲でも、3人だけのライヴ演奏というハンディをほとんど感じさせることのない(あるいはそれを逆手にとった)、素晴らしいギターを聞かせている。最初の3曲は、いわゆる解散ツアー初日のものであり、気分的には、すでに重圧から解放されていたのかもしれない。

 6曲目の《ステッピング・アウト》は、ブルースブレイカーズの時代にも録音を残している、メンフィス・スリムのカヴァー。オリジナルは約2分だったが、そこに新しい解釈を加え、クラプトンのギターを中心に、13分に及ぶブルース・インストゥルメンタルに仕上げている。 [次回11/11(水)更新予定]


(更新 2015.11. 4 )


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プロフィール

大友 博(おおとも・ひろし)

 1953年東京都生まれ。早大卒。音楽ライター。会社員、雑誌編集者をへて84年からフリー。米英のロック、ブルース音楽を中心に執筆。並行して洋楽関連番組の構成も担当。ニール・ヤングには『グリーンデイル』映画版完成後、LAでインタビューしている。著書に、『エリック・クラプトン』(光文社新書)、『この50枚から始めるロック入門』(西田浩ほかとの共編著、中公新書ラクレ)など。

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