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第72回 『ライヴ・クリーム』クリーム

文・大友博

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 エリック・クラプトンの、半世紀以上に及ぶ音楽活動をアルバム制作・発表の軌跡を追う形で振り返るWEB連載の番外編、セッション・ワークにつづいて、今回からはクリーム時代のライヴ作品を紹介していきたいと思う。

 クリームの3作目で実質的な最終アルバムとなった『ホイールズ・オブ・ファイアー』と、解散後の69年春に発表された『グッドバイ』は、いずれも、収録時間の約半分がライヴという、なんとも中途半端な内容になっていた。66年の結成以来ほぼ休むことなくステージに立ちつづけてきた彼らの、ライヴ・アクトとしての素晴らしさや先進性を多くのファンに届けたい……。そんな想いがあってのことかもしれないが、作品としてはやはり物足りない。『ホイールズ・オブ・ファイアー』など、2枚組にする必要すらなかったと思う。結局、そういう状況そのものが、クラプトンに深い苦悩を与え、新たな方向性を模索させることとなったのだろう。

 そのクリームの本格的なライヴ・アルバムが発売されたのは、解散から1年半後ということになる1970年春。クラプトンに関していえば、すでにブラインド・フェイスも分裂し、ディレイニー&ボニーやリオン・ラッセルの協力を得て最初のソロ・アルバムを録音し終えたころのことだった。手にするギターも、解散コンサートの映像で強烈な印象を残していたギブソン系からフェンダー・ストラトキャスターへの移行が完了している。

 つまり、少なくともクラプトンはその制作にまったく関与していなかったはず。ジャック・ブルース、ジンジャー・ベイカーも同じだろう。残されたライヴ音源からフェリックス・パパラルディらが厳選したテイクをまとめたもの、ということなのだ。

 収められているのは、68年3月初旬のサンフランシスコ公演から《N.S.U.》、《スリーピー・タイム》、《スウィート・ワイン》、《ローリン・アンド・タンブリン》、そして、67年春録音のスタジオ・テイクで、セカンド・シングル《ストレンジー・ブリュー》の原曲と呼ぶべきブルース・スタンダード《ヘイ・ロウディ・ママ》。68年録音の4曲はいずれもファースト・アルバムからの選曲で、バンド結成時に焦点を当てた選曲となっている。

 このうち、《N.S.U.》は約10分、《スウィート・ワイン》は約15分の長尺。多くの人が指摘するとおり、3人だけでの演奏には限界があり、《冗長》の印象は免れないが、彼らの演奏力の高さ、混沌のなかからハーモニーを生み出していくその才能には、やはり、聴くたびに驚かされる。しかも、このとき、クラプトンはまだ22歳だったのだ。 [次回11/4(水)更新予定]


(更新 2015.10.28 )


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プロフィール

大友 博(おおとも・ひろし)

 1953年東京都生まれ。早大卒。音楽ライター。会社員、雑誌編集者をへて84年からフリー。米英のロック、ブルース音楽を中心に執筆。並行して洋楽関連番組の構成も担当。ニール・ヤングには『グリーンデイル』映画版完成後、LAでインタビューしている。著書に、『エリック・クラプトン』(光文社新書)、『この50枚から始めるロック入門』(西田浩ほかとの共編著、中公新書ラクレ)など。

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