第26回 『ザ・ジョニー・キャッシュ・ショウ』ジョニー・キャッシュ、デレク&ザ・ドミノスほか |AERA dot. (アエラドット)

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第26回 『ザ・ジョニー・キャッシュ・ショウ』ジョニー・キャッシュ、デレク&ザ・ドミノスほか

文・大友博

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 1970年10月15日から12月6日まで米国各地を回ったデレク&ザ・ドミノスは、その途中の11月初旬、「カントリー・ミュージックの都」テネシー州ナッシュビルに立ち寄っている。目的は、ジョニー・キャッシュのテレビ番組への出演だった(収録のみで、放送は翌年年明け)。

『ザ・ジョニー・キャッシュ・ショウ』は、68年発表のライヴ盤『アット・フォルソム・プリズン』であらためて高い評価を獲得したキャッシュが司会進行を務めた毎週1時間の音楽番組。彼の存在の大きさがあったからだと思うが、カントリー系の人たちだけではなく、ボブ・ディラン、ニール・ヤング、ジョニ・ミッチェル、アーロ・ガスリー、スティーヴィー・ワンダー、リンダ・ロンシュタットなど、音楽の新しい波を象徴するアーティストも数多く出演している。当時の放送業界の慣習もあり、プリ・レコーディングが基本だったようだが、リアルなライヴ映像を楽しめる番組として、短期間ながら人気を集めたようだ。

 デレク&ザ・ドミノスがここで聞かせたのは、『レイラ』収録の《イッツ・トゥー・レイト》。スタジオ・セットからもキャッシュの紹介コメントからも、メンバー全員が英国人として扱われている感じが伝わってきて、実際、ボビー・ホイットロックはそのことに抗議したそうだが、それはともかく彼らは、ややあがり気味のクラプトンではなく、そのボビーを中心に、ライヴ感あふれるパフォーマンスを残していた。

 この番組は2007年に作品化され、CD版には《イッツ・トゥー・レイト》、映像版では準レギュラーだったカール・パーキンス、キャッシュとの《マッチボックス》を加えた2曲が収められている。ディランやヤングらの曲も収録されていて、70年前後の音楽界の貴重なドキュメタンリーともいえるだろう。

 収録を含めてわずか数日の滞在だったが、この間にクラプトンは、アメリカを代表する音楽都市で6本のストラトキャスターを買っている(まだヴィンテージなどという概念は定着しておらず、たいした値段ではなかったらしい)。イギリスに戻った彼はそのうちの3本を、ジョージ・ハリスン、ピート・タウンゼント、スティーヴ・ウィンウッドにプレゼント。残った3本を分解し、ベストなパーツを組み合わせて、ブラック・ボディ/メイプルネックのストラトキャスターをつくり上げた。1973年から85年まで愛用され、のちに約1億円で競り落とされた名器、ブラッキーだ。[次回11/19(水)更新予定]


(更新 2014.11.12 )


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プロフィール

大友 博(おおとも・ひろし)

 1953年東京都生まれ。早大卒。音楽ライター。会社員、雑誌編集者をへて84年からフリー。米英のロック、ブルース音楽を中心に執筆。並行して洋楽関連番組の構成も担当。ニール・ヤングには『グリーンデイル』映画版完成後、LAでインタビューしている。著書に、『エリック・クラプトン』(光文社新書)、『この50枚から始めるロック入門』(西田浩ほかとの共編著、中公新書ラクレ)など。

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