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『イン・ヴェロナ1990』

文・中山康樹

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イン・ヴェロナ1990

イン・ヴェロナ1990

困った息子エリン・デイヴィスの存在
In Verona 1990 (Cool Jazz)

 この原稿を書いているのは12月16日で、アップされるのは20日ということになります。そしてマイルスの音源に関しては、これが今年最後の更新でもあります。来週もう1回分更新される予定ですが、そちらでは別の音源を取り上げたいと思っています。

 さてマイルス盤ですが、今回は90年6月のイタリアはヴェロナでのライヴ。この時期の音源に関しては「少ない」「いやちょうどいい」「多すぎる」と各種ご意見ありますが、まあ少ないような、ちょうどいいような、場合によっては多く感じるような、そのあたりが微妙な時期ではあります。ひと言でいえば、あまり人気のない時代とでもいえばいいでしょうか。

 毎度毎度同じようなことを書いて恐縮ですが、オープニングが《パーフェクト・ウェイ》というのが、やはり曲者なのでしょう。この曲は、かっこよくキマることもあれば、だいたいにおいては滑稽かつコケることが圧倒的に多く、1曲目がこの曲という段階で投げ出す人も少なくありません。ワタクシもそうなのですが、今回はどうかといえば、「まあまあ」といったところでしょうか。悪くはないが、かといって絶賛するほどのものではないという、いかにもこの中途半端な曲らしい内容ではあります。

 メンバー構成上からみても、この時期は損傷が著しい。まず不要なのが、マイルスの実子、エリン・デイヴィスのパーカッションでしょう。これは、いてもいなくても同じ。では、いなければいいのですが、父親マイルスとしてはいっしょにいたいという、そのような親心が、それなりに胸を打ったり打たなかったり。その塩梅が、この時期のマイルス・バンドに対する決定的な評価を下す際に邪魔になるわけです。音楽か人情か、家族愛か創造性か。うーむ、深い問題ではあります(考えなければ、じつに浅い問題なのですが)。

 音質やバランスに関しては、とくに推奨に値するものではなく、よくあるオーディエンス物というのが正しいように思います。したがって、すでに同時期、同メンバー、同曲の似たような音源を所有している人には不向きかもしれませんが、絶対数が限られている時期のライヴ音源だけに、そういう意味では注目してもいいかもしれません。それではまた。


【収録曲一覧】
1 Perfect Way
2 Star People
3 Hannibal
4 The Senate / Me And You
5 Human Nature
6 In The Night
7 Tutu
8 Time After Time
9 Jilli (2 cd)

Miles Davis (tp) Kenny Garrett (as, fl) Foley (lead-b) Kei Akagi (key) Richard Patterson (elb) Ricky Wellman (ds) Erin Davis (per)
1990/6/27 (Italy)


(更新 2012/12/20 )


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プロフィール

中山康樹

 「スイングジャーナル」元編集長。『マイルス・デイビス自叙伝』やコレクターズアイテムも含めた全作品を解説した『マイルスを聴け!!』等で聴きだしたらとまらない「マイルス地獄」へ誘っている。

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