『トゥー・フェイセズ・オブ・ラリー・コリエルVol.2』 |AERA dot. (アエラドット)

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『トゥー・フェイセズ・オブ・ラリー・コリエルVol.2』

文・中山康樹

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トゥー・フェイセズ・オブ・ラリー・コリエルVol.2

トゥー・フェイセズ・オブ・ラリー・コリエルVol.2

スティーヴ・マーカス参加のコリエル・グループ疾風怒濤ライヴ
Two Faces Of Larry Coryell Vol.2 (Cool Jazz)

 マイルス新着音源枯渇期にお送りしている、マイルス関連ミュージシャン新着音源紹介も、ウェザー・リポート、ゲイリー・バートン(ラリー・コリエル参加)ときて、いよいよ本丸ともいうべきラリー・コリエル・グループの登場とあいなりました。とはいえコリエルとマイルスの関連は、皆無ではないものの極端に薄く、まあ少々の無理は承知の上での、いざ突入ということになります。

 いわゆるジャズ・ロックというジャンルでは、その初期において、ゲイリー・バートンの存在が大きいわけですが、そのバートンをロックに結びつけた張本人として、サックス奏者スティーヴ・マーカスの重要な働きを忘れるわけにはいきません。マーカス自身の『トゥモロー・ネヴァー・ノウズ』や『カウンツ・ロック・バンド(伯爵とロック)』といったリーダー作は、ジャズ・ロックを代表する永遠の名盤といっていいでしょう。ちなみにゲイリー・バートンがタンバリン担当で参加しているあたりに、当時のマーカスとバートンのパワー・バランスが顕著に表れています。

 このコリエル名義のグループ、フォープレイには、コリエルは当然のこと、マーカスまでがレギュラー・メンバーとして参加、それはそれは熱い演奏を展開している。ちなみにフォープレイとは、コリエルがイレヴンス・ハウス以前に結成していた一種のオールスター・グループで、しかしながら音源はほとんど残されていないという、いわば幻の存在。それがこうして2枚組ライヴとして登場したのだから、ここはひとつ大いに喜びたい。しかも音質はサウンドボードということで、決定版といっていいでしょう。

 一説によれば、ジョン・マクラフリン&マハヴィシュヌ・オーケストラのオープニング・アクトとしてのライヴとか。レパートリーは、コリエルのリーダー作『オファリング』や『リアル・グレート・エスケープ』の曲が大半を占め、両作のライヴ・ヴァージョンとしての趣も濃厚に漂っている。ただしライヴゆえにさらに過激に燃焼しまくり、思わず「これぞホンモノの姿!」といいたくなる。

 演奏は甲乙つけがたいが、最大注目はやはりスティーヴ・マーカスだろう。後年はバディ・リッチ・ビッグバンドにきれいに収まったことから、ジャズ・ロック時代の雄姿は完全に封印されたに等しいが、このライヴは、ジャズ・ロック時代に、明らかにチャールス・ロイド以上の魅力と説得力そして実力をもっていたマーカスの神髄を克明に記録した、恐るべきドキュメントとしての側面も有している。スティーヴ・マーカスという巨大な触媒が存在した事実をいまに伝える、いやはやなんとも待望のリリースではあります。


【収録曲一覧】
1. Yin (#1)
2. All My Love's Laughter
3. Foreplay
4. The Real Great Escape
5. Lady Coryell
6. Makes Me Wanna Shout
7. Yin (#2)
8. Unknown
9. Offering
10. Joyride
11. Unknown
12. Ruminations
13. Hen Hopper
14. Scotland Rart 1
15. Unknown
(2 cd)

Larry Coryell (g, synthe, vo) Mervin Bronson (b) Mike Mandel (p, synthe) Steve Marcus (ts, ss) Harry Wilkinson (ds, per)
1-10:1973/3/17 (NY)
11-15:1972 fall (Boston)


(更新 2013/1/31 )


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プロフィール

中山康樹

 「スイングジャーナル」元編集長。『マイルス・デイビス自叙伝』やコレクターズアイテムも含めた全作品を解説した『マイルスを聴け!!』等で聴きだしたらとまらない「マイルス地獄」へ誘っている。

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