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ギル・エヴァンス

文・内山繁

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 ディズニーランドを回るのに大変なエネルギーが要るように、短い滞在の旅行者にとって大人の遊園地と言われるニューヨークで遊ぶには「気力・体力・予習・復習」がすべて(金もかかる)。……昼間はおのぼりさんして観光地、美術館、博物館、ショッピング……。夜は?……夜は?夜はいつも悩みの種。レストラン?ミュージカル?映画?コンサート?いやいや、何はさておきジャズ・クラブと言うジャズ好きのあなた。観たい聴きたい本場マンハッタンのジャズ・クラブ。(でしょ)

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 インターネット情報で事足りる今と違って、’80年代にニューヨークを訪れたジャズ好き(僕)の情報源はヴィレッヂ・ヴォイス。(当時は1$、今は無料配布のタウン情報誌)ジャズ・クラブの広告ページをめくって赤○印を付けるんだけど、そのうちそこらじゅうが赤○印だらけになって、訳の分からない状態になってしまいます。

 訳の分からないままヴィレッジの夜を足の向くまま徘徊しては、行き当たりバッタリのライブに飛び込むのも(ひとり歩きの時は)いいかも知れないけれど……。

 ……でも、月曜日だけは簡単!「ヴィレッヂ・ヴァンガード」や「ブルーノート」は置いといて、月曜の夜は「スイート・ベイジル」と決まってた。(※注:’80年代の話ですよ!)マンハッタンは七番街のダウンタウンにあったこのクラブ「毎週月曜日はギル・エヴァンス:マンデイナイト・オーケストラ」ジャズ好き’80年代の常識です。

※注:看板以外の店構えはほぼそのままに、今は(Sweet Rhythmと言う)別の店になってるので注意! 月曜日は音楽学生の、たまに有名ミュージシャンのライブもあるらしいので注意!

 ギル・エヴァンスは不思議だが強烈な個性を持った音楽家で「音の魔術師」と称された優秀なアレンジャー。ジャズ即興の要素にアレンジ重視のオーケストラを加えて、マイルス・デイビスと協力しジャズに新しい大きな流れを作った。「クールの誕生」、ガーシュインのオペラをジャズ化した「ポギーとベス」「スケッチ・オブ・スペイン」など、ジャズの歴史上重要なマイルスの作品にはギルが絶対不可欠だった。

 さて、月曜の夜のギルのオーケストラ。10人程度のこのバンド、オープニングのアナウンスのあとに遅れてくる者、早退する者、出てこない者も居て不定形ごちゃごちゃで成り立っていた。

 デビッド・サンボーン、ルー・ソロフやジョージ・アダムス、ランディー・ブレッカー、ハイラム・ブロック等々、多くのトップ・ミュージシャンも参加した魅力のオーケストラはギルの没後、息子マイルス・エヴァンスによってそのマジカルかつエキサイティングなサウンド世界がそのままに引き継がれてしばらく続けられた。

 1975年にオープンして「ヴァンガード」や「ブルーノート」と人気を競った「スイート・ベイジル」は、残念ながら9.11テロの年にクローズしてしまったけれど、ギル・エヴァンスの「ライブ・アット・スイート・ベイジル」「バド・アンド・バード」ほか、数種のライブ盤で今でもニューヨークのマンデイ・ナイトをたっぷりサウンド体験できます、マンハッタンのナイト・ライフをお楽しみ下さい。


(更新 2010/11/ 4 )


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プロフィール

内山繁

 多数のレコードジャケット、音楽誌等に精力的に作品を提供。マイルスを10年間にわたって追った写真集「マイルス・スマイルズ」を93年に出版