第20回 Al Cohn / Standards of excellence / Concord |AERA dot. (アエラドット)

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第20回 Al Cohn / Standards of excellence / Concord

文・後藤雅洋

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 アル・アンド・ズートの名テナー・コンビで知られたアル・コーン、しかし正直言ってこのバンド、どちらかというとズート・シムズの名前で売れているんじゃなかろうか。というのも、チーム・プレイではアルの存在が効いているのは間違いないのだけど、各々のリーダー作となるとやはりズートに分がある。

 ズートの演奏はミスター・スインガーの異名を取ったように、わかりやすい。かたやアル・コーンはというと、コンビのときに聴き分けに苦労するように、「コレっ」といった特徴が掴み難い。要するに通好みなのだ。

 加えるに、コンコルドというレーベルが「白人コンフォタブル・ジャズ」の印象が強く、黒人ハードバップ・マニアが多い日本のファンからは若干白い目で見られてるような気もする。しかし何事も「モノによりけり」で、コンコルドにも聴き手を唸らせる名演はけっこうあるのだ。

 聴き所は、いつもは少々カタ目の音色に聴こえるアルが思いのほかふくよかというか豊穣なテナー・サウンドを聴かせてくれるところだろう。そしてノリの良さ。ズートのお株を奪ったような小気味良いスイング感は何度聴いても気持ちよい。

 要するに調子が良かったのだろう。体調だとか気分とか、あるいは、1983年という時代背景。つまり音楽的スタイルがどうしたこうしたといった言い方では説明しづらい、ちょっとした拍子で名演が生まれちゃうのが、ジャズの面白いところではなかろうか。

 まあ、サウンドということでは、ハーブ・エリスの名人芸的ギターが実に塩梅よくアルの演奏を盛り立てているということは言えるだろう。簡単に言ってしまえば洗練されたコンフォタブル・ジャズなのだけど、聴き飽きがしないのは演奏に一本スジが通っているからだろう。

 ジャズにおける「スジ」は、額に青筋立てたフリー・ジャズの専売特許ではないところが面白いところだ。ベース担当モンティ・バドウィックの力強いドライヴ感、ジミー・スミス(オルガン奏者とは別人)の控えめながらメリハリの効いたドラミングといった脇役陣がしっかりと仕事をしているのも、このアルバム成功の大きな原因だろう。付け加えれば、極めて録音の音質がいいことも印象を良くしている。


【収録曲一覧】
1. Russian Lullaby
2. When Your Lover Has Gone
3. O Grande Amor
4. You Say You Care
5. I Want To Be Happy
6. Embraceable You
7. I Remember You
8. When Day Is Done

Bass Monty Budwig
Drums Jimmie Smith
Guitar Herb Ellis
Producer Frank Dorritie
Saxophone [Tenor] Al Cohn

Released November 1983


(更新 2013/2/28 )


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プロフィール

後藤雅洋

 1967年ジャズ喫茶「いーぐる」開店。著書は『マイルスからはじめるJAZZ入門』『ジャズ喫茶のオヤジはなぜ威張っているのか』『ジャズ・オブ・パラダイス』『天才たちのジャズ』等

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