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【連載】「パーフェクトブルー Tokyo Idol Portrait」
【連載】「パーフェクトブルー Tokyo Idol Portrait」  写真家・小野啓が、自らの視点で選んだアイドルたちを活写。「あえて笑顔を撮影しない」というスタンスで、アイドルたちのリアルを写し撮る。 使用機材:ペンタックス67II、マミヤ7II・90mmF2.8、80mmF4L・フジPRO400H *  *  * 風間玲マライカ(sora tob sakana)風間玲マライカさん (C)小野啓 【本人からのコメント】 ――sora tob sakanaのグループとしての特徴はどこにあると思いますか?  ライブの途中にあるMCで自由発言しまくるところです。ライブは割とかっこよく決めるのですが、MCは自由にしています!なので、MCとライブのギャップです!(笑)  もう一つは曲です!音楽プロデュースはハイスイノナサ、siraphのギター照井順政さんにしてもらっています!オシャレな楽曲で聴くと感動する曲が多いです!アイドル好きの方だけでなく音楽好きの方などの方にも好きになってもらえることが多いので、わたしたちの誇りです。 ――風間さんはこの春、中学校を卒業されたそうですが、中学時代の思い出や、これからへの意気込みなどを教えてください。  中学校は合唱コンクールがとても楽しかったです! 高校生になって頑張りたいことは、友達をつくることと、勉強を人並みにできるようにすることが目標です。 ――sora tob sakanaのメンバーは、みなさん若いですが、「若いからできること」や「若いから難しいこと」などがありましたら教えてください。また、他のアイドルグループとの違いはどこだと思いますか?  楽屋で騒ぎすぎてうるさくなっちゃったりしちゃいますね~。話が盛り上がるとそれに集中しちゃってまわりが見えなくなっちゃいます(泣)。あと、年が近くてみんな学生なので、勉強を教えあったりします! ほかのグループさんとの違いはあまりわからないけれど、色んなことで悩んで話し合って、高めあえる仲間で良かったなーって思っています。 ――休日や、仕事がオフの日はどうやって過ごされていますか? 趣味や最近ハマっていることなどを教えてください。  とりあえず遊びに行くことが好きなので、まず家にいることはめったにないです! 映画見たり美術館に行ったりトランポリン(習い事)したり洋服見たり自転車乗ったり美味しいものを食べたりライブ見たり、温泉に行ったりとにかく色んなことをしています! ――その他ファンへ伝えたいことなど、ご自由にお願いいたします。  皆さんこんにちは、風間玲マライカです! ここでしか言えないけど、私たちのことを応援してくださってありがとうございます。感謝しています。これからsoratobsakanaと一緒に最高の人生を歩みましょう~。これからも応援よろしくね! 【sora tob sakana(そらとぶさかな)・プロフィール】 2014年7月21日に結成された平均年齢14歳のユニット。メンバーは、風間玲マライカ(れい)、神崎風花(ふうちゃん)、寺口夏花(なっちゃん)、山崎愛(まな)の中学生、高校生4人からなるユニット。照井順政(ハイスイノナサ、siraph etc)による楽曲は、ポストロックとエレクトロニカを基調にした物語性が強いものとなっており、メンバーの表情豊かでまっすぐなパフォーマンスとの融合で独特の世界感を生み出している。4月30日にはリキッドルーム(恵比寿)でワンマンライブ開催予定 【ライブ・イベント情報】 ●4月6日(木) 恵比寿CreAto(東京都渋谷区東3丁目14-19 オークヒルズ B1F) sora tob sakana定期公演 ~月面の遊覧船~ 18時30分開場 18時40分開演 ●4月9日(日) SHIBUYA WWW X アイドル横丁桜まつり!!~2017~ 11時30分開場 12時開演 出演:AIS-All Idol Songs-/天晴れ!原宿/さきどり発信局/じぇるの!/sora tob sakana/Task have Fun/Chu☆Oh!Dolly/虹のコンキスタドール 青組/26時のマスカレイド/Party Rockets GT/BiS/ぷちぱすぽ☆/Fullfull☆Pocket/mi-na/むすびズム/他 ●4月11日(火) タワーレコード新宿店 1st mini album「cocoon ep」リリース記念インストアイベント 対象商品を購入で整理番号付入場券1枚と特典券2枚配布(整理番号付入場券をお持ちのお客様は、18:30に7Fエレベーター横階段にお集まりください)。 ●4月12日(水) タワーレコード渋谷店4F 1st mini album「cocoon ep」リリース記念インストアイベント 19時開演。観覧フリー(※観覧はフリーですが、お客様が殺到した場合入場規制をかけさせていただく場合がございます。予めご了承ください) ●4月14日(金) タワーレコード錦糸町店 1st mini album「cocoon ep」リリース記念インストアイベント 19時開演。観覧フリー(※観覧はフリーですが、お客様が殺到した場合入場規制をかけさせていただく場合がございます。予めご了承ください) ●4月15日(土) 名古屋クラブクアトロ(愛知県名古屋市中区栄3-29-1 名古屋パルコ東館8F) NAGOYA TOWER RECORDS presents “タワワヒットパレード vol.3” 16時開場 16時30分開演 出演:sora tob sakana/アイドルネッサンス/神宿/フィロソフィーのダンス/Devil ANTHEM. ●4月30日(日) LIQUIDROOM(東京都渋谷区東34-16-6) sora tob sakana 単独公演「月面の音楽隊」 14時15分開場 15時開演 ※その他、詳しい情報は、sora tob sakana official HPをご覧ください! http://zizoo.jp/soratobsakana/ おの けい:1977年京都府出身。2002年より日本全国の高校生のポートレートを撮り続けている。写真集『青い光』で注目され、集大成となる『NEW TEXT』で「写真の会」賞受賞。『桐島、部活やめるってよ』(朝井リョウ)、『アンダスタンド・メイビー』(島本理生)など装丁写真も手がける。『うたうとは小さないのちひろいあげ』(村上しいこ)の表紙にはBELLRING少女ハートのメンバー、甘楽をモデルとして撮影した写真が使用された。また、乃木坂46「ハルジオンが咲く頃」のジャケット写真も手がけている 受賞暦 03年、富士フォトサロン新人賞奨励賞 06年、第26回写真『ひとつぼ展』入選、ビジュアルアーツフォトアワード大賞 14年、写真の会賞 「パーフェクトブルー Tokyo Idol Portrait」の記事一覧
アカデミー賞女優、マリオン・コティアールが語った新作『たかが世界の終わりに』の魅力
アカデミー賞女優、マリオン・コティアールが語った新作『たかが世界の終わりに』の魅力 マリオン・コティヤール (c)yuko takano  2007年の「エディット・ピアフ~愛の讃歌~」でアカデミー賞主演女優賞をはじめ世界の映画賞を総なめにしたマリオン・コティヤール。ブラッド・ピットと共演した「マリアンヌ」、カンヌグランプリを獲得した「たかが世界の終わり」という話題作に立て続けに出演している(どちらも公開中)。 「たかが世界の終わり」は、エイズで自らの死期を知った主人公が、家族に会いに帰郷するというドラマだが、主人公の儀姉を演じたマリオンが映画の魅力について語った。 ――出演した理由は? 「シンプルな筋書きと台詞に惹かれた。監督のグザヴィエと仕事がしたかったの。彼は才能あるアーチストだと思うから。でも脚本を読んだとき、どうやって役を演じればいいのか分からなかった。だからグザヴィエに正直に言ったの。この役が私に合うとは思わない、自分の中に彼女を見つけるのは難しいと。そうしたら、彼は“だからこそ君に演じてほしいんだ”と言われたの(笑い)私がこのキャラクターを自分の中にみつけるまで、助けてくれると確信したわ」 ――若い監督ですが、年上のベテラン俳優を相手の仕事ぶりはどうですか? 「全くものおじした様子はなかったわ。彼は映画の制作にあたって綿密な準備をしていて、この映画をどんな方向にもっていきたいか明確なヴィジョンがあった。私たちキャストをどこへ導いていけばいいか。それでいて、そのヴぃジョンの範囲内で、私たち俳優には演技上の大きな自由をくれた。彼の作り出した世界の中で私たちは自由に演技できたの。彼はとてもキャストを理解し近い関係を保ってくれる。セットではいつも私たちと一緒にいる。彼自身が俳優だから私たちの立場もよく理解できるのだと思うのよ」 ――あなたをはじめ、ギャスーパー・ウリエル、レア・セドウ、ヴァンサン・カッセルなどフランス人のキャストがカナダに行って撮影するのは不思議ではありませんでしたか? 「興味深かった。もしこの映画をフランスで撮影していたら、何かが欠けていたと思う。この映画は、すべてのキャラクターが、自分の家族の中でアウトサイダーであるという点が面白い点なの。一緒にいるのに、全員が孤立している。だからカナダと言う外国で、私たちはよく知らない環境の中に自分を置いた。それがこの映画における演技にとても特別な雰囲気を生んだと思うの」 ――まるで即興演技のように見えますが。 「即興はしていないの。台詞ばかりではなく、一瞬の沈黙まですべて脚本に記されていたわ。難しかったし、とても怖かった。ところが原作のノリや勢いをいったん理解できると、台詞を言うのが簡単になり楽しくなったわ」  俳優の両親のもとに生まれ、人一倍役への取り組み方が厳しいマリオン。近年は戯曲「マクベス」を映画化した作品にも出演した。 ――マクベスの見どころは? 「シェークスピアは古典であるけれど、現代的な面もある。撮影は毎日が悪夢のように厳しかったけれど、同時に楽しくもあった。私はフランス人だから、フランス訛(なま)りを捨ててイギリス英語で台詞を言うのは大きな挑戦だった。時間をかけて練習したけれど、十分ではなかったかもしれない」 ロンドン在 高野裕子 ※週刊朝日オンライン限定記事
第70回『姜泰煥』姜泰煥
第70回『姜泰煥』姜泰煥 『姜泰煥』姜泰煥  1994年に来日したのは134組だ。連載の第68回で補記したように1993年の来日数はつかめないが92年は216組だった。2年で38%減がバブル崩壊を物語る。38組の新主流派/新伝承派/コンテンポラリーが首位に立ち、33組のフュージョン/ワールド/ニューエイジ、27組の主流派、14組のヴォーカル、8組のフリー、7組のR&B/ファンク、同数のビッグバンドが続く。順位は1992年と大して変わらないがヴォーカル、フリー、R&B/ファンクが半減し、トラッド/スイングは見当たらない。  参加作は前年から3作減の27作だった。ホール録音を含むスタジオ録音は20作あり日本人との共演は19作、15作が和ジャズだ。ライヴ録音は7作あり日本人との共演は推薦盤の1作だけで、和ジャズではない。これら7作から姜泰煥『姜泰煥』を取り上げる。選外作の評価や除外要件はページ下部の【1994年 選外リスト】をご覧いただきたい。なかでは、マーク・リボー『ヨー! アイ・キルド・ユア・ガッド』が似非亡命キューバ人楽団系にノイズ系にエスニック・インプロ系にと、楽しく狂った快作だ。では姜泰煥『姜泰煥』を。  姜泰煥、ほぼカン・テー・ファンと表記されている。東アジアの至宝とも謳われる韓国ジャズ界の巨星だ。1944年にソウルで生まれ、9歳でクラリネットを始め、進学後にジャズと出会ってアルトサックスに転向、68年に自己のグループを、78年に韓国初のフリージャズ・グループ「姜泰煥トリオ」を、91年に佐藤允彦らと「トン・クラミ」を結成、単独活動が中心となってからは内外の多くのミュージシャンと共演を重ねてきた。トリオ時代の1985年に初来日、2016年までの来日は少なくとも24度を数える。  推薦盤は、1994年に岡山市の「ペパーランド」と防府市の「カフェ・アモレス」で収録された。後者の経営者が姜のCDを出す目的でスタートさせたレーベルの第一弾だ。ニューヨークのフリー・インプロ奏者、ネッド・ローゼンバーグ(アルト、バスクラ)、大友良英(ターンテーブル)との公演からソロ、彼らとのデュオ、トリオ演奏を収める。 《カン ソロI》  循環呼吸法による極太の持続音がひとしきり、姜泰煥が初めての方は「アルトなの!」と驚かれるのでは。やがて中高音域の断片的フレーズを散発的にからめ執拗な反復でピークに達すると、極太の重音奏法にたたみかけや高音域の持続音を交え、極太の持続音で終える。豊かなダイナミクスと優れた構成力を両輪としてうちなるものを表現し尽くし、内面の旅に付き合ったかのような深い余韻を残す。姜を代表する名演だ。 《カン+ネッド デュオI》  ネッドはバスクラを構える。相手のあるデュオともなれば姜の勝手にはならず、対決か協調か無視かということになる。ここでの両者は協調路線と言っていい。とはいえ予定調和とは無縁で、互いの主張を抑えることなく緊張感に満ちたインタープレイを繰り広げていく。姜のアプローチは全体の構成を意識した即席作曲的な《ソロI》とは異なり即興演奏本位、まとまりは及ばないが別種の凄みが知れる快演だ。 《カン+大友 デュオⅡ》  こちらのデュオも結果的には協調路線と言っていだろう。大友は幾分挑発的だが、姜は煽られることなく刺激を触媒として演奏を深化させていく。アプローチは《ソロI》と《デュオI》の間にくる。大友は音の引き出しを自在に操り、時にエスニックな時にスペイシーな空間を現出させていく。姜の桁外れのダイナミクスと大友の瞬発力が光る創造性があいまった、スケールが大きく精神性の高いデュオ名演だ。 《カン ソロⅡ》  こちらは重音奏法は控え目、トーンと音域はテナーに近いだろう。テンポを上げて反復をたたみかける場面もあるが、概ねゆったりしたテンポで吹き通す。これもやはり構築性に富む。シャーマンの瞑想をも想わせる、《ソロI》に次ぐ名演だ。 《カン+ネッド+大友 トリオ》  ネッドはバスクラとアルトで。相手が複数とあって、それぞれが声高に主張して無意味な阿鼻叫喚に陥るのを嫌ったように思える。良く言えば協調的だが悪く言えば探り合いのまま、ありがちなフリー・インプロに終わったようだ。  2015年の再発時には新たに2枚組LPも用意された。姜を中心にしたCDに対してLPは三者の公演に重きが置かれている。未発表だったネッドの《ソロⅠ》《ソロⅡ》、姜とネッドの《デュオⅡ》の3曲が追加収録され、姜の《ソロⅡ》はカットされた。  決して万人向けとは言えないが、阿鼻叫喚の雑音もどきではないし、邦楽に近い旋律や内省的なアプローチもあって、同じ東アジア人には親しみやすいフリー・インプロ作ではないだろうか。なかでも《ソロI》は東アジアのフリー・インプロ史上、一つの到達点を示した重要な記録であり意を決して取り上げた。意を決して聴いていただければと思う。 【1994年 選外リスト】fine>good>so-so>poor Music Forever and Beyond/Chick Corea (GRP/?) fine, *1 Yo! I Killed Your God/Marc Ribot (Tzadik/?) fine, *2 Concerts Inedits/Michel Petrucciani (Dreyfus/August 14) good+, *3 The Osaka Concert/Barney Wilen (Trema/October 20) good+ Solo Piano Recital-Live In Japan/Richie Beirach (Zyugemu/October 31) good Heavy Jazz Live in Helsinki and Tokyo/Pekka Pohjola (Pohjola/November 19) *4 *1: compi (1964-96), 1/48 on the date. *2: compi (1992,94), 3/14 on the date, 10/14 in US, 1/14 in Zurich. *3: compi (1993,94), CD3 on the date, CD1 in Antibes, CD2 in Copenhagen. *4: compi (1994,95), 2/11 on the date, 9/11 in Helsinki, Rock oriented. ※コンピの評価は当該演奏のみ。 【収録曲】 Kang Tae Hwan/Kang Tae Hwan 1. Kang Solo I 2. Kang+Ned Duo I 3. Kang+Otomo Duo I 4. Kang Solo II 5. Kang+Ned+Otomo Trio Kang Tae Hwan (as), Ned Rothenberg (bcl, as), Yoshihide Otomo (turntables). Tracks 1, 2, 4: Recorded at Cafe Amores, Hofu, on September 1, 1994. Tracks 3, 5: Recorded at Pepperland, Okayama, on August 30, 1994. 【リリース情報】 1995 CD Kang Tae Hwan/Kang Tae Hwan (Jp-Chap Chap) 2015 CD Kang Tae Hwan/Kang Tae Hwan (Jp-Chap Chap) 2015 2LP Solo Duo Trio/Kang Tae Hwan (Jp-Chap Chap) ※このコンテンツはjazz streetからの継続になります。
ミッツ・マングローブ「バブルに迷ったら中山美穂に聞け!」
ミッツ・マングローブ「バブルに迷ったら中山美穂に聞け!」 ...は内容があり過ぎるドラマが社会現象化し、KANが『最後に愛は勝つ♪』と唄ったことで、バブルはついに終焉を迎えました。ミポリンも同年のヒット曲『Rosa』の中で『本当に転ばなきゃ何もかもわからない♪』と時代に別れを告げています。しかし彼女の場合、12年後に『パリ移住』という、もっと向こう...
1坪2品で3億円! 40年間行列が途絶えないあの名店の秘密
1坪2品で3億円! 40年間行列が途絶えないあの名店の秘密 三浦崇典(Takanori Miura)1977年宮城県生まれ。株式会社東京プライズエージェンシー代表取締役。都内書店スタッフを経て、手元資金がない中で2013年9月に天狼院書店をオープン。以降、天狼院書店店主。天狼院書店を展開する中で、雑誌「READING LIFE」編集長、劇団天狼院主宰に就任。映画『世界で一番美しい死体~天狼院殺人事件~』では監督・脚本・製作総指揮を務める。ライター・編集者。著者エージェント。大正大学表現学部非常勤講師。天狼院書店は、オープン後、多くのメディアに取り上げられる。その数、マスメディアだけでも3年間で実に153件。NHK「おはよう日本」、日本テレビ「モーニングバード」、BS11「ウィークリーニュースONZE」、ラジオ文化放送「くにまるジャパン」、J-WAVE、NHKラジオ、日経新聞、日経MJ、朝日新聞、読売新聞、東京新聞、雑誌『BRUTUS』、雑誌『週刊文春』、雑誌『AERA』、雑誌『日経デザイン』、雑誌『致知』、雑誌『商業界』など掲載多数。2016年6月には雑誌『AERA』の「現代の肖像」に登場。天狼院書店は現在、急速にその店舗数を拡大している  ジュンク堂書店池袋本店横の「東(あずま)通り」を入って約5分。 すごい若く綺麗な女性が集まる「天狼院書店」がある。  たった15坪の書店なのに、「本屋にこたつがある!?」と話題になり、開店わずか3年で153件のマスメディアに取り上げられた。  なかでも、店主の三浦崇典氏は『AERA』の「現代の肖像」にも登場した。ただ、その起業のきっかけが、1冊の本だったというから驚きだ。  その1冊とは、稲垣篤子著『1坪の奇跡』。  たった1坪、「羊羹」と「もなか」の2品で年商3億円。吉祥寺ダイヤ街で40年以上行列が途絶えない奇跡の店があるという。  どんなお店なのだろうか?三浦氏に語ってもらった。 ●僕が行列に並んだ理由  数年前の冬、僕は思い立って吉祥寺「小(お)ざさ」の行列に並ぶことにした。池袋から始発に乗り込み、吉祥寺駅に着き、ダイヤ街というアーケード街に向かうと、すでに行列ができていた。  行列には、常連も多かったが、日本全国から来る人もいるという。  僕のように、都内なら始発でなんとか間に合うが、地方の人はそうはいかない。前日入りして、近くのホテルに泊まって並ぶ人もいるという。  行列の先にあるのは、たった1坪の和菓子屋である。  僕らが狙うのは、1日150本限定の「幻の羊羹」だった。  この「幻の羊羹」を求める行列が、40年以上、途切れたことがないという。  このときは、編集者と装丁デザイナーの友人と一緒に並んだのだが、僕らの手には1冊の本が握られていた。  それが、吉祥寺「小ざさ」代表稲垣篤子氏の著書『1坪の奇跡』だった。  つまり、「幻の羊羹」を待つ行列に並びながら『1坪の奇跡』を読もうと僕らは考えたのだ。  僕は2013年9月26日に東京池袋に天狼院書店の1店舗目「東京天狼院」をオープンさせることになるのだが、その当時は、まだ天狼院書店は存在していない。  行列の中で、吉祥寺「小ざさ」のビジネスを研究しようと僕らはしたのだ。  寒い中、朝早くに多くの人がこの行列に並んでいた。この行列の正体は、いったい、何なのだろう。 ●世界に冠たる「小ざさモデル」  あのティファニーの1平方メートルあたりの売上を、アップルストアが抜いたという記事を見たことがあるが、試しに、1坪3億円売り上げる小ざさと比べるとどうなるだろうと計算したことがあった。  それで出てきた数値が驚異的だった。  ティファニーを凌いだアップルストア。吉祥寺「小ざさ」は、なんと、1平方メートルあたり、そのアップルストアの実に20倍ほど売り上げていることがわかった。  もしかして、吉祥寺「小ざさ」こそが、世界最強のビジネスなのかもしれないと僕は考えた。  しかし、どうも、数値が合わないのだ。 「幻の羊羹」は、1本600円ほどでしかなく、1日限定150本である。  と、すれば、1日に羊羹の売上は9万円程度、月に270万円、年間でも3200万円ほどでしかない。3億円には到底至らないのである。年商の1割程度でしかない。  吉祥寺「小ざさ」の商品は、幻の「羊羹」と「もなか」の2品しかない。  そうだとすれば、簡単な引き算で、「もなか」が売上の9割を占めていることになる。実に、「もなか」で年商2億7000万円以上である。 「マーケティング」的にみれば、吉祥寺「小ざさ」のモデルは、こういうことになるのではないだろうか。  幻の羊羹は、「ブランディング」のための商材である。  現に幻の羊羹は、そのずっしりとした重みからその形から、金の延べ棒のように感じられ、到底600円の商品とは思えない。その「幻」という概念が、本来の価値以上のものをもたらしている。それは、羊羹のブランディングが成功した現れと見ることもできる。  そして、その「ブランディング」の成功で上昇したブランド価値を利用して、大量生産している「もなか」を売っていると見れなくもない。  いち早くネット販売も取り入れて、1坪という物理的な制限を突破しているし、店舗自体は1坪と小さいながらも、別な場所で、製造工場が存在している。 ●なぜ、40年も行列が途絶えないのか?  実は、極めて優秀なインターネット通販企業という側面も小ざさにはある――おそらく、吉祥寺「小ざさ」の本質を知らないマーケターなら、そんな分析結果をしたり顔で示すかもしれない。  けれども、一口、「小ざさ」の幻の羊羹を口にすれば、そんな後付のマーケティング理論など、何の意味もなさないことが明白になるはずだ。 「小ざさ」の羊羹は、圧倒的なのだ。それを口にする人を最大限に幸福にさせる「ハイパーコンテンツ」なのである。これを食べてしまえば、ビジネスモデルは、後からまるで水が合理的な山肌を流れて、川となるように、自然な流れで構築されていったに過ぎないことを思い知るだろう。  1坪で年間3億円売り上げ、40年間行列が途絶えない「小ざさ」のビジネスの秘密は、決して、そのビジネスモデルにあるわけではない。その「羊羹」と「もなか」の圧倒的な旨さに秘密があるのだ。  まるで芸術の領域にまで高めた、その創作の秘密は、『1坪の奇跡 』に詳しく描かれている。 「羊羹をつくり続けていると、感動的な喜びを味わえる瞬間があります。  炭火にかけた銅鍋で羊羹を練っているときに、ほんの一瞬、餡が紫色に輝くのです。  透明感のある、それはそれは美しい輝きで、小豆の“声”のようにも感じられます」(本書16頁より)  ヘラを銅鍋の中で動かす時に、「半紙一枚分の厚さを残す」という境地。それこそが、アップルやティファニーを凌いだ、吉祥寺「小ざさ」の強さの秘密なのだ。 ●今こそ、小ざさに学ぶべきもの  我々は商売において、マーケティングやビジネスモデルを優先しがちだが、実際のビジネスとは、マーケティングだけでは成り立たない。  マーケティングを極めようと思えば、やはり、コンテンツ主義に帰結すべきなのではないだろうか。  特に今年は映画界でそれが証明されている。  前評判のあまり芳しくなかった庵野秀明総監督の『シン・ゴジラ』は、圧倒的なコンテンツ力で、SNSやオウンドメディアを中心に拡散されて大ヒットした。  その勢いが衰えない時期に公開された新海誠監督の『君の名は。』は、興行収入が200億円を突破した。これも元々は東宝にとってのエースではなかったので、封切り直後は、上映館数も多くはなかった。  けれども、コンテンツの力によって、口コミで上映館数が広がり、大ヒットとなった  SNSやオウンドメディアが強い、つまりは、個々人の消費者が大きな発言権を持つようになった現代こそ、我々は、吉祥寺「小ざさ」に多くを学ぶべきなのかもしれない。  逆説的に言うと、我々、サービスや商品の提供者は、コンテンツの制作・製造に集中し、良いコンテンツさせ生み出せば、消費者がヒットさせてくれるという、創る人優位の時代に突入したと言えるかもしれない。  もし、ビジネスで何かに迷ったら、始発で吉祥寺に出かけて、ダイヤ街の行列に並んでみるのもいいだろう。  40年以上途絶えたことのない行列に並ぶとき、そして、幻の羊羹を口にしたとき、きっとあなたはマーケティングの本質を理解することだろう。  僕も天狼院書店の経営者として、そして、実際に本をつくる人間として、改めて、コンテンツ主義を実践して行こうと考えている。  ビジネスモデルは、結果論にすぎない。学術のためではなく、実際にビジネスをするのなら、コンテンツ主義こそが、最良のマーケティングだろうと思うのだ。 (終わり)
第68回『クーリン・アンド・グルーヴィン』バーナード・パーディー
第68回『クーリン・アンド・グルーヴィン』バーナード・パーディー 『クーリン・アンド・グルーヴィン』バーナード・パーディー  1993年、来日ジャズ・アーティストの参加作は前年から12作減の30作だった。ホール録音を含むスタジオ録音は12作、日本人との共演は10作で8作は和ジャズだ。ライヴ録音は18作、日本人との共演は8作でいずれも和ジャズだ。後者と長期滞日者の1作を外し候補は9作に。取り上げるのはバーナード・パーディー『クーリン・アンド・グルーヴィン』、ジミー・スミス『ザ・マスター』の2作だ。選外作の評価や選外要件は【1993年 選外リスト】をご覧ください。なかでは、万人向けとは言えないフリー・インプロヴィゼーションとあって選外とした姜泰煥&サインホ・ナムチラク『ライヴ』が快ライヴだった。耳の柔軟な方は聴いてほしい。では、バーナード・パーディー盤から。  ファンク大将、バーナード・パーディー(ドラムス)の初来日は1993年1月とする記事を見かけたが、自身のグループを率いての初来日というのが正しい。古いところでは1975年8月にジェフ・ベック・グループの一員として来日していて、これらを含めて来日は少なくとも11度に及ぶ。なかでも1993年では2度目となる7月の来日公演が顔ぶれも演奏もピカイチとの評判が高い。推薦盤は渋谷「オン・エアー」で収録された。1月のライヴ盤(【選外リスト】先頭行)も発表されているが、ややフュージョン寄りで大将とジェフ・レヴィン(オルガン)を除いては壺にハマらず、今一つピリっとしない。聴かねば恥というほどのものではないだろう。推薦盤は星一つは優に勝る傑作ライヴだ。  パーソネルを見ただけで目眩しそうになる。トランペットはローランド・カーク率いる「ヴァイブレーション・ソサエティ」の準構成員で灼熱のツバをまき散らすヴァージル・ジョーンズ、アルトサックスのミスター・アリゲイター・ブーガルー?は誰あろうルー・ドナルドソン御大、オルガンはクール・ファンクの雄、ソニー・フィリップス、ギターは病気降板したコーネル・デュプリーの代打でデヴィッド・T・ウォーカー師匠、ベースはソウル&ファンクをともに支えてきたチャック・レイニー、パーカッションはレイニーと同じくキング・カーティスの「キングピンズ」時代からの盟友、パンチョ・モラレスと、楽歴不詳のテナーサックスのビル・ビヴェンズはさておき、豪華絢爛強力無比の布陣だ。  アーチー・ベル&ザ・ドレルズの《タイトゥン・アップ》で幕開け。万雷の喝采のなかレイニーがリフを刻みだし、ウォーカー、パーディーが合流、大将の乗りのいいメンバー紹介が興奮を煽る。ゴキゲンなソロが連続し、誰もが腰を揺らす最高の幕開けとなった。  アラン・トゥーサン作の《エヴリシング・アイ・ドゥー・ゴナ・ビー・ファンキー》はルーの持ちネタ。御大のヴォーカルのあと、スタッカート基調で攻め立てるウォーカー、伸びやかなルー、次第に熱気を帯びるフィリップスと続く、ファンキーな快演になった。  マーヴィン・ゲイの《ホワッツ・ゴーイング・オン》ではウォーカーをフィーチャー。いぶし銀のトーンでチョーキングやトリルを交え、時にスウィートに時にビターに綴り、渾身のカデンツァで結ぶ。代打が奏功、ウォーカー節に酔いしれる至福の一曲となった。  エロール・ガーナーの《ミスティ》はルーをフィーチャーしたチェンジオブペースだ。御大はこの名バラードを年季もののジャズ魂でソウルフルに歌い上げる。エンディングの循環呼吸法はご愛敬だが、フィリップスの壺を心得た助演も光る格好の箸休めとなった。  ルー作の《ウイスキー・ドリンキン・ウーマン》は御大とウォーカーをフィーチャー。朗々たるアルトサックスに続いて披露する喉は余芸の域だがウィットに富み頬がゆるむ。ウォーカーのねちっこいソロを挿んで結びも歌で通す。なんとも憎めないおっちゃんだ。  ジェームス・ブラウンの代表曲《コールド・スウェット》はウォーカー、ビヴェンズ、レイニー、パーディーをフィーチャー。主役級のウォーカーを前後にそれぞれが気合いと熱気に満ちたソロを繰り広げ、《ホット・スウェット》と呼びたくなる大熱演になった。  ラストはルーの代名詞《アリゲイター・ブーガルー》だ。御大をはじめ、ビヴェンズ、ジョーンズをフィーチャー。それぞれが持ち味を発揮したソロをタップリ聴かせたあと、再びパーディーの格好いいメンバー紹介が続き、やんやの拍手喝采のうちに幕が下りる。  このうえないグルーヴ供給源としてのパーディーとレイニーを別格とすれば、この夜のヒーローはウォーカーだろう。《ホワッツ・ゴーイング・オン》を筆頭に心底しびれた。余裕綽々としたルーが続き、過不足のないプレイに膝を打つフィリップスがめっけもの。ソウル~ジャズ・ファンクの名手が打ち揃った屈指の名ライヴとして強力にお薦めする。中古盤には法外な値段が付いていて再発を待つしかなさそうだ。それまではYouTubeで。 【補記】  年度の初回は来日したアーティストの組数とスタイル別の順位をあげてきたが、今回は見送らせていただいた。元ネタにしてきた「スイングジャーナル」増刊「モダン・ジャズ読本」等(注)掲載の「来日ジャズメン一覧」が1994年版(93年12月発行)には未掲載なのだ。本誌からの洗い出しも試みたが質量ともに同じ水準にはならず断念した。なお、前年の1992年は216組で、翌94年は142組の見込みだ。1991年から減少が続いていて増加は考えられず、142~216組の間に収まるとみていいだろう。 注:同誌年末恒例の増刊はモダン・ジャズ読本(~82年)、ジャズ読本(~85年)、ジャズ・ブック(~91年)、JAZZ BOOK(~93年)、モダン・ジャズ読本(~01年)、ジャズ読本(~09年)と変遷し、「来日ジャズメン一覧」は98年版で最後となった。 【1993年 選外リスト】fine>good>so-so>poor Bernard Purdie's Jazz Groove Sessions in Tokyo (Lexington/January 26-28) good GRP All-Star Big Band Live! (GRP/January 31) good+ Live/Kang Tae Hwan & Sainkho Namtchylak (FIN/March 8) fine, free improvisation 100 Gold Fingers: Piano Playhouse '93 Vol.1/Various Artists (All Art/June 5) good+ 100 Gold Fingers: Piano Playhouse '93 Vol.2/Various Artists (All Art/June 5) good+ Tokyo Live-The Free Spirits featuring John McLaughlin (Verve/December 16,18) good+ The Master II/Jimmy Smith Trio (somethin'else/December 24-25) fine- 【収録曲】 Coolin' 'N' Groovin' - A Night at On-Air 1. Tighten Up 2. Everything I Do Gonna Be Funky 3. What's Going On 4. Misty 5. Whisky Drinkin' Woman 6. Cold Sweat 7. Alligator Boogaloo Bernard Purdie (ds), Virgil Jones (tp), Lou Donaldson (as), Bill Bivens (ts), Sonny Phillips (org), David T. Walker (g), Chuck Rainey (el-b), Pancho Morales (per). Recorded at On-Air, Shibuya, Tokyo, July 1993. 【リリース情報】 1993 2LP/CD Coolin' 'N' Groovin' - A Night at On-Air (Jp-Lexington) 1993 VHS  Coolin' 'N' Groovin' - Jazz Funk Live! (Jp-G.I.G.BOX) 1994 CD   Coolin' 'N' Groovin' - A Night at On-Air (US-West 47th) 2005 DVD  Coolin' 'N' Groovin' - The Legendary Soul Jazz Session (Jp-Lexington) ※このコンテンツはjazz streetからの継続になります。
サザン、BOOWYも巣立った! 新宿ロフト40年の軌跡
サザン、BOOWYも巣立った! 新宿ロフト40年の軌跡 ...クロマニヨンズ、戸川純、ラフィンノーズにKANA‐BOONら、歴史を彩るアーティストが連日出演する。 何周年とかいう記念はあまり好きじゃないんだけど、大物をくどきやすいんだよね(笑)。 ――今回の企画で出演予定はないが、「最後に狙うのはサザン」と、いたずらっぽい笑みを浮かべる平野氏...
血のにじむような修練で…カラフィナ「世界に羽ばたく日本のハーモニー」
血のにじむような修練で…カラフィナ「世界に羽ばたく日本のハーモニー」 カラフィナ梶浦由記プロデュースにより2008年1月「oblivious」でデビュー。デビュー以来リリースされたオリジナルアルバムはすべてオリコンウィークリーチャートトップ10入り。昨年の日本武道館2days公演は即日ソールドアウトに(撮影/写真部・岸本絢)  上海で開催されたイベント「上海之春国際音楽祭」に招待された、初の日本人ポップスアーティスト・カラフィナ(Kalafina)。9年前、とあるオーディションで3人は巡り合う。アニメやゲームの分野で活躍する音楽家の梶浦由記さんが劇場版アニメ「空の境界」の音楽を担当、そのオーディションで彼女たちの声に惚れ込んだのだ。 「梶浦さんの手がける楽曲は、多重録音でハーモニーも複雑。歌詞には造語も多いし、とにかく難度が高いんです。だから最初は、ライブで歌うという前提では作られていなかった。ただ、3人でのアルバムを制作することになったときに、作品じゃなく、私たちの声にフォーカスした歌も生まれて、イベントで披露する機会にも恵まれるようになって」  そんなふうにデビュー当時を振り返るKeikoさん(写真中央)は、小さい頃は歌って踊れるアーティストを目指していた。それが、中学生のときにたまたま耳にした尾崎豊のライブ音源に衝撃を受け、「ボーカリストになりたい」と思うように。 「尾崎さんの歌声は、生身の人間らしさが出ていて、歌が、心に突き刺さるような迫力があったんです」  合唱団やゴスペル、声楽と、クラシック系の勉強を積んだWakanaさん(同右)は、梶浦さん作の楽曲を初めて聴いたとき、“歌の厚みがすごい”とビックリしたという。 「歌詞とメロディーとハーモニーが、複雑に連動して、“こういう歌もあるんだ!”と(笑)。歌う上で何より難しかったのが、歌詞の解釈でした。歌は、自分の思いを乗せられなければ歌えない。だから、持ち歌が100曲を超えた今でも、私たちなりに言葉の意味を咀嚼することに、すごく時間をかけています」  デビューして1年間は、地元の富山からレコーディングに通っていたのが、メンバー最年少のHikaruさん(同左)だ。小さい頃からJ-POPが好きで、様々なボーカルオーディションに挑戦し、晴れてカラフィナのメンバーとなった。 「私たちの歌は、3人の個性が違うからこそ、多彩なハーモニーが生まれるんだと思います。一人で歌うよりも、楽曲の世界が何倍にも広がる。一人ではなく、3人でやりたいことがたくさんあって、同じ目標を持って進んでいけることは幸せです」 “難解なハーモニーをさらりと歌う”ことにグループとしてのプライドを持っている。実は、2009年から3年ほどは、歌に関して血のにじむような修練を積んでいたらしい。でも、それについて彼女たちは、あまり多くを語ろうとしない。 「苦労や努力を語るのは、私たちらしくない。あくまで爽やかに、クールでいたいんです」(Keikoさん)  NHK「歴史秘話ヒストリア」のテーマを担当して以来、幅広い世代がライブに足を運ぶようになった。“世界で認められた日本のハーモニー”が9月、日本武道館に響き渡る。 ※週刊朝日  2016年9月2日号
第64回 『デア・デヴィル』ペーター・ブロッツマン
第64回 『デア・デヴィル』ペーター・ブロッツマン 『デア・デヴィル』ペーター・ブロッツマン  ユーロ・ジャズでこれまでに取り上げたのは「第47回『ヤーパン・ヤーポン』ミシャ・メンゲルベルク&ICPオーケストラ」にとどまる。推薦盤でやっと2作目というわけだ。スティーヴ・レイシーほかの移住組を含めると作品数は結構あるが、当地出身者に限ると1970年から91年までは17作しかない。15作を選外としたわけで、うち11作がフリー/インプロ系というのが効いた。詳細は【ユーロ・ジャズ選外リスト】に譲るが、最多は入手難の7作、6作がフリー/インプロ系だ。枚数の限られた自主制作盤とくれば無理もない。次に、日本以外での録音と組み合わせたコンピが3作、入手難と重複するが複数年の録音からなるコンピが1作あった。前者の1作を除いてフリー/インプロ系だ。思うに、一発勝負だからこそ出来を優先するとコンピに仕立てる確率が高くなるのでは。「名盤」に届かず見送ったのは5作だ。ともあれ、2作目を取り上げられてありがたい。 「サックス界のヘラクレス」ことペーター・ブロッツマンの初来日は1980年4月、ハン・ベニンク(ドラムス)とのデュオ・ツアーだった。以来、2015年4月までに、確認できただけでも15度は来日している。「ほぼ毎年のように来日して」という紹介は大げさではない。大の親日家に育て上げたのは、一部とはいえ熱烈な支持者たちだろう。日本での録音もリーダー作が6作にサイドマン作が3作ある。リーダー作の2作を除いてライヴ録音だ。推薦盤は1991年9月の来日時に「新宿ピット・イン」で録音された。このときは推薦盤に参加している羽野昌二(ドラムス)の招きでデュオ・ツアーを行い、翌日にはデュオ・ユニット「Funny Rat」の第一弾『Funny Rat』をライヴ録りしている。推薦盤で共演している羽野、山内テツ(エレクトリックベース)、郷津晴彦(ギター)は1985年から90年まで即席作曲的即興演奏ユニット「OPE」として活動していた。  即席作曲的とくれば結果的に全5曲が全員の合作だ。《インプロヴィゼーション#1》《#2》などとしても間に合いそうだが、それぞれに気の利いた曲名が付けられている。 《デア・デヴィル》で幕開け。鉈(なた)の感触を放つ郷津のギターがいなたいリフで切り出す。酔漢の囃子詞も交じえ村祭りの趣きに。テンポを上げ、羽野、ブレッツマン、山内が合流すると、命知らずの一党は地獄の底めがけてまっしぐら。ノリノリの爆演だ。 《ウィ・マスト・ビー・スロウ》は、確かにスロウで。山内の地鳴りする導入部に続きブロッツマンが懊悩と煩悶の美メロを繰る。テンポを上げると一党は破壊工作に向かい、郷津のノイズ三昧を挟み阿鼻叫喚の修羅場に。構成の妙で20分弱を飽かせない力演だ。 《ストリート・コーナー・カレッジ》とは辻音楽師か? ブロッツマンが前面に立ち、ゆったりしたテンポで沈鬱な心情を吐き、叫び、繰り言を並べる。終盤にテンポを上げて周りも本格参戦、各員奮闘のあと山内が地底を駆けブロッツマンが静かに終止符を打つ。 《ボクサーズ・ヒット・ハーダー・ホエン・ウィメン・アー・アラウンド》とはいいね。誰だって張り切る。のっけからブロッツマンはパワー全開、集中力と交感力も半端なく、矢でも鉄砲でも持ってきやがれ!である。終盤のファンキー調も楽しい当夜のベストだ。  ラストは《ウィ・メイ・オール・ゴー・ホーム・ナウ》、さもありなん。アイラー風の詠唱を経て集団即興がひとしきり。中盤にテンポを上げると全員一丸となって爆走するが不意に切断、やがて終演と気付いた聴衆の歓声が湧く。みんなすぐに帰ったのだろうか。  ドシャメシャのフリー・インプロではない。そのときどきで変化するもののビートにも音の強弱にも約束事がある。そのうえでブロッツマンや郷津が奔放に翔けまわるわけだ。それもこれも羽野と山内がいればこそ。羽野の原始のDNAを目覚めさせるドラミングと山内の奇矯なラインと重量級グルーヴに感じ入った。優れた共演者を得たブロッツマンが遠く長い道を狂気をはらんだ形相で猛々しく駆け抜ける前衛エンターテインメント作だ。手頃な価格では入手できそうにないが、たまには骨のある演奏にぶちのめされてみては。 【ユーロ・ジャズ選外リスト】 C'est Tout/European Jazz All Stars (Far East/70.8.18,19) *1 Diggin'-Live at Dug, Tokyo/Albert Mangelsdorff Quartet (TBM/71.2.15) good Misty Burton/Ann Burton with the Kenny McCarthy Trio (Epic/73.3.16) good+ Sabu Brotzmann Duo/Peter Brotzman-Sabu Toyozumi (Improvised Company/82.5) *2 To Whom It May Concern/Evan Parker (Alleopathy/82.11.28,85.11.13) *2,3 Zanzou/Evan Parker (Jazz & Now/82.11.30,12.7,12.10) *1 Assist/Barry Guy (Jazz & Now/85.11.9,12,21) *1 Tai Kyoku/Evan Parker & Barry Guy (Jazz & Now/85.11.9,21) *1 The Jacques Loussier Trio Play Bach Live in Japan (London/86.11.4) *1 Sins 'n Wins 'n Funs/George Gruntz Concert Jazz Band (Swi-TCB/88.10.21) *4 Live in Japan/Valentina Ponomareva (UK-Leo/89.4.5,7,8) poor Jikan to Kuukan/Nachtluft (Jazz & Now/89.7.13) good+ Stephane Grappelli in Tokyo (Denon/90.10.4) so-so|fine- Show-Down/Wadi Gysi & Hans Reichel (Swi-Intakt/90.12.11) *5 Stop Complaining, Sundown-Hans Reichel Duets with Fred Frith and Kazuhisa Uchihashi (Ge-FMP/91.1.25) *6 1: hard to find, analogue only. 2: hard to find, limited edition. 3: 1 title in '82, 2 titles in '85. 4: 1 title in Tokyo, 10 titles around the world. 5: 2 titles in Tokyo, 8 titles in Zurich, 1 title in an unknown place. 6: 1 title in Kobe, 1 title in Berlin. 【収録曲】 Dare Devil/Peter Brotzmann 1. Dare Devil 2. We Must Be Slow 3. Street Corner College 4. Boxers Hit Harder When Women Are Around 5. We May All Go Home Now Peter Brotzmann (ts, tarogato on 2, bcl on 3), Shoji Hano (ds, per), Tetsu Yamauchi (el-b), Haruhiko Gotsu (g). Recorded at Shinjuku Pit Inn, Tokyo, on October 9, 1991. 【リリース情報】 1992 CD Dare Devil/Peter Brotzmann (Jp-DIW) ※このコンテンツはjazz streetからの継続になります。
一言も話せない女の子が落語家に  朝ドラ『ちりとてちん』ヒロインのモデルの知られざる過去とは
一言も話せない女の子が落語家に  朝ドラ『ちりとてちん』ヒロインのモデルの知られざる過去とは  引っ込み思案で超ネガティブ思考なヒロインが上方落語に出会い、女流落語家を目指して成長する姿を描いたNHK朝ドラ『ちりとてちん』(2007年~2008年放映)。笑いあり涙ありの人情ドラマとして好評を博した朝ドラでしたが、同作ヒロインのモデルの1人と言われているのが、落語家・桂あやめさん。 OLや嫁姑など身近な女性を主人公にした創作落語を演じることで、「女に落語はできない」と言われた落語界に新風を吹き込んだあやめさんですが、意外なことに、幼い頃は、幼稚園や小学校に行くと一言も話せない子供だったと言います。 自身のエッセイ『桂あやめの艶姿ナニワ娘』では、そんな子供時代の日々が、以下のように綴られています。「幼稚園へ突然放り込まれた時は、だれとどうしゃべっていいのかわからなくてとまどった。仕方がないので、隅っこに一人でいると、中でも一番活発なKちゃんが近づいてきた。『あんた何でしゃべれへんの?』。何で、と言われても何でかわからんので黙っていると、みんなの方へ行って『この子気持ち悪い、私がしゃべりかけても何にも言えへんねん!』。Kちゃんのよく通る声は、組中に響いた。そのときから私は"しゃべれへん気持ち悪い子"になってしまった」(同書より) この"幼稚園・学校では、一言も話せない"状態、発声器官に器質的障害はなく、家庭では話せるにも関わらず、特定の社会的「場面」では発話が困難な症状は、「場面緘黙(ばめんかんもく)症」というもので、米国精神医学会の診断基準(DSM-5)では「Selective mutism/選択性緘黙」と呼ばれ、不安障害の一種とされています。 いわゆる"人見知り"との違いは、社会生活に支障が出るほど症状が強く、数ヶ月、時には何年間もの長期間にわたって症状が継続する点。 いくら声を出そうとしても、どうしても声が出ない状態だったあやめさんは「いつも明日になったら違う自分になっててみんなと遊べる、と思って寝る。が、行ってみるとやはり同じこと。そしてまた休む」(同書より)という日々を繰り返し、幼稚園という小さな社会生活に不適応を起こし、登園拒否するようになってしまったそうです。 しかし、小学3年生の時、転校生に話しかけられたことが契機となり、症状は徐々に改善。「そのころのくやしい思いが爆発してか、今や舞台の真ん中でしゃべり倒している。人生どうなるかわからんもんだ」(同書より)と語る通り、花形落語家として客席を爆笑の渦に巻き込むのはもちろんのこと、講演会の講師としての顔も持ち、寄席以外の場でも活躍中なのだとか。 来月8月6日(土)には、場面緘黙症の啓発を目的にした催し「かんもくフォーラム2016」が開催されますが、あやめさんも『場面緘黙経験者の落語家が語る ~笑いでコミュニケーション~』と題した特別講演に登壇することが決定しています。講演後には、長野大学社会福祉学部博士(教育学)・臨床発達心理士で、「日本緘黙研究会」事務局長の高木潤野さんによる、あやめさんへのインタビューも予定されており、同症の当事者や保護者、支援者にとっては見逃せないイベントとなりそうです。【関連リンク】「かんもくフォーラム2016」http://kanmokuforum2016.wix.com/0806
「ちょっと自分の意見を言っただけで叩かれる」 ピーター・バラカンが語る日本の社会、そして音楽業界とは
「ちょっと自分の意見を言っただけで叩かれる」 ピーター・バラカンが語る日本の社会、そして音楽業界とは  1974年に来日して以来、テレビやラジオ、紙面を通し、わかりやすい語り口で洋楽の普及に貢献、近年は自ら音楽フェス"LIVE MAGIC!"の監修もしているピーター・バラカンさん。 その多岐に渡る活動のうち、ブルーズ、ソウル、ロックといった音楽への深い理解と、英語と日本語のどちらをも自由に行き来することのできる語学力という両者が見事に結実したのが、2003年に書籍化された『ロックの英詞を読む』。 ひとつの楽曲を取り上げ、その歌詞を解説、英語のリリックには欠かせない韻をはじめとする技巧的なおもしろさはもちろん、言葉の背景にある歴史、人種差別、環境問題、政治的主張などを読み解いていくことで、私たちに数多くの発見を与えてくれました。 このたび、その続編ともいえる『ロックの英詞を読む―世界を変える歌』が完全書き下ろしにて登場。より一層メッセージ性の強い楽曲を扱いながら、英詞の世界へと誘ってくれます。 過去のアーティストたちの残した楽曲から浮かび上がるメッセージとはどのようなものなのか、そして現在の社会に通じる点はあるのか、さらに日本の社会や音楽業界の問題点とは。ビーター・バラカンさんにお話を伺いました。◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆----『ロックの英詞を読む』のいわば続編という形で、今回刊行された『ロックの英詞を読む―世界を変える歌』。まえがきにて"本を出すタイミングはよかったと思います"と綴られていますね。日本では、活字媒体より放送媒体の方が深刻かもしれませんが、いずれにおいても昨今は、表現の自由がかなり制限されています。テレビ局にもラジオ局にも、言いたいことがなかなか言えない雰囲気が漂っていることは否めません。僕もラジオでときどき、「今日は自主規制中です」なんて皮肉の一言をいうときもあるのですけれど(笑)。そのため、この本では、自分より表現力のあるソングライターたちの力をお借りしながら、世の中で起きているさまざまな問題に対してどのような意見が生じ得るのか、しっかりと伝えることができればと思いました。----本書で取り上げられた全22曲は、イラク戦争、ヴェトナム戦争、反アルパトヘイト運動をはじめ、アメリカが辿ってきた歴史、そしてその歴史の渦中に生きる人びとに焦点が当てられています。はい。そうした歴史的事実は知っていても、アメリカで暮らす人びとにとって、ときに歌にするほど、それらがどれほど大きな問題意識として常にあるのかというところまで、日本人の認識はなかなか追いついていないかもしれません。日本のメディアは、どうしても国内の事件ばかりに注目しがちですから、仕方のないことかもしれませんが。 英米のロックやソウル、ブルーズを聴いているという方の多くは、そもそも歌詞の意味や背景まで追うことはないですよね。むしろサウンドを聴いているだけの人の方が圧倒的に多いでしょう。あるいは普通のロックやソウルといったタイプの歌は、バンドサウンドで作られているので、たとえば一番多く繰り返される歌詞だけ印象に残っているという場合も多いかもしれません。この本を通して、今まで好きだった歌についても、こんなことを歌っていたのかと少しでも気付いてもらえれば嬉しいです。----その歌われているメッセージには、時代を超えて響くものがあると?改めて歌詞を見ていると、現在の世の中で起きていることを連想するものがけっこうあるなと感じました。たとえばこの本で取り上げているビリー・ホリデイの「奇妙な果実」や、ウディ・ガスリーの「ドウ・レイ・ミー」は、いずれも30、40年代の歌ですが、そこで歌われている、(当時のアメリカで横行していた白人による黒人の)リンチ事件や、重労働を不法入国者に従事させて問題が起こると国外退去させるといった状況は、現在にも通じるところがあります。似たような事件は今も起きているんです。指摘したからと言ってすぐに変わるわけではないけれど、折に触れて指摘することで、人が気づくようにしないといけないとは思っています。----最近の楽曲のなかでも、プロテスト・ソングは存在するかと思いますが、この22曲を選んだ基準のようなものはあるのでしょうか。もちろんプロテスト的な内容に触れたものもありますね。近年、若い黒人に対する暴力事件が増えていますので、何か言わなければという衝動に駆られているアーティストは多いのでしょう。しかし、その中には僕も理解することのできないスラングが多用されているものもあります。この本では、文章として成り立つ歌をとりあげました。自然な抑揚で歌っていて、真似をしていれば正しい言い方が身に付くようなものですね。----日本の音楽業界ではあまり見受けられない動きですね。日本の音楽業界はいまだに芸能界です。そのノリは、僕が日本に来た頃と本質的に変わっていません。自ら作詞作曲してレコーディングをし、レコードを作る人もいますが、基本的に分業ですよね。そして世の中で起きていることについて触れようものなら、当然一部から反発がくる。僕なんかがちょっとした意見を言っただけで、攻撃を受けることもあるくらいですから(苦笑)。----そういえばそんなこともありましたね。多様な意見を冷静に言い合うという文化が、今一つ根付いていないのかもしれません。1950年代くらいの欧米では、意見を言いたい人はブルーズやフォークといった、マイノリティの音楽を通して発信していました。それが大きく発展したのは60年代。フォークであればボブ・ディラン、ポピュラー音楽であればビートルズ世代のミュージシャンたちは、そうしたそれまでマイノリティだった音楽の影響を受けたため、自身の表現の仕方も変わりました。そして彼らは世界的な成功を収めた。これにより、音楽業界も大きく様変わりしました。しかし日本ではこうした動きは見受けられなかった、少なくともメインストリームにはならなかった。----英詞に注目することにより、音楽的なおもしろさだけでなく、一歩踏み込んだ深く広い世界が開けてきそうです。何かの拍子に気がついて、好奇心が芽生え、興味を持てば、そこから先は個人個人が追求していくことです。しかし、まず気づかせるというところはメディアの役割でもあります。ささやかながら、この本がそのきっかけとなってくれることを願います。 プロフィールピーター・バラカンPeter Barakan1951年ロンドン生まれ。74年に来日。現在、ブロードキャスターとしてテレビ・ラジオを中心に活動。「ウィークエンド・サンシャイン」(NHK-FM)、「ジャパノロジー・プラス」(NHKワールドTV、NHK-BS1)、「Barakan Beat」(InterFM)などの司会を担当。著書に、『魂(ソウル)のゆくえ』(アルテスパブリッシング)、『ラジオのこちら側で』(岩波新書)、『ピーター・バラカン音楽日記』(集英社インターナショナル)などがある。peterbarakan.net
美しき梅雨を堪能 目で味わう“あじさい和スイーツ”
美しき梅雨を堪能 目で味わう“あじさい和スイーツ” 庵昇堂金平糖の「紫陽花」金平糖でできた手のひらサイズの“あじさいの花”。色は、濃い紫、紫、水色、黄色、ピンクの5種あり、梅雨の時期のディスプレーや結婚式のプチギフトとしても重宝する。1個270円。6月末まで。電話で取り寄せ可能(撮影/写真部・岸本絢)  6月に美しく咲き誇るあじさい。花を愛でながら、この時期限定のかわいらしい“あじさい和スイーツ”を楽しんでみては。 ■季節上生「紫陽花」 梅雨の晴れ間に、色彩鮮やかに咲き誇るあじさいをイメージ。ほどよい甘みのつぶあんに薄紫色のきんとんと、白練り切りあんが施され、しっとりとした口当たりの一品。1個389円。店舗でのみ販売で、なくなり次第終了。 榮太樓總本鋪 ■和三盆製「紫陽花」 四国の阿波・讃岐でとれる純日本砂糖「和三盆」を用いて、あじさいの花を繊細に表現した干菓子。品のよい優しい甘さが口にふわりと広がり、すっと溶けていく。13個入り、810円。6月末まで。 七條甘春堂/オンラインショップhttp://7jyo-kansyundo.shop-pro.jp ■金平糖の「紫陽花」 金平糖でできた手のひらサイズの“あじさいの花”。色は、濃い紫、紫、水色、黄色、ピンクの5種あり、梅雨の時期のディスプレーや結婚式のプチギフトとしても重宝する。1個270円。6月末まで。電話で取り寄せ可能。 庵昇堂 ■京・季のこよみ「あじさい」 季節の干菓子を小箱に入れた「季のこよみ」。寒天と砂糖からつくられた色とりどりのこはく・すりこはくは、宝石のような美しさで、食べると外はシャリッと硬く、中はぷるぷると軟らかい。13個入り、864円。6月下旬まで。 鶴屋吉信/オンラインショップhttp://www.tsuruyayoshinobu.jp/shop/ ■錦玉(きんぎょく)紫陽花 錦玉とは、寒天に砂糖と水飴を加えて煮詰めた上生菓子用の寒天。色鮮やかでつるんとした食感の錦玉の中には、もっちりとした白あんがたっぷり。冷やして食べてもおいしい。1個290円。6月下旬まで。 磯子風月堂/Yahoo!店http://store.shopping.yahoo.co.jp/gomadaremochi ■雨景色(あまげしき) 梅と紫蘇の小さなえびせんべいを花に、抹茶のえびせんべいを葉に見立てて、色とりどりに咲くあじさいを表現した。甘党でない方はこちらをどうぞ。3袋入り、648円。数量限定で、なくなり次第終了。一部の店舗で販売、電話で取り寄せも可能。 桂新堂 ■花餅あじさい 上用粉でつくったモチモチの皮で白あんを包み、寒天を飾った。弾力のある歯ごたえで味はさっぱり。富士製菓(宮崎県)がつくり、食彩ネットなどのインターネットで販売。約20グラム×15個入り、788円。なくなり次第終了。 食彩ネット/http://www.syokusai-net.com/ ※週刊朝日 2016年6月17日号
まるで“天空の楽園” 広がる青空と都心の夜景が最高な4店
まるで“天空の楽園” 広がる青空と都心の夜景が最高な4店 ...■都心のアジアンリゾート XEX DAIKANYAMA/The BAR(ゼックス 代官山/ザ バー) アジアンリゾートを彷彿とさせる空間は水のせせらぎが心地よく、都心であることを忘れてしまいそう。カフェやバーとしての利用だけでなく、併設のイタリアンレストランや寿司店の料理もここで味わえ...
大地震に襲われた熊本で、毎日手紙を運ぶ猫とおばあちゃんが起こした奇跡とは?
大地震に襲われた熊本で、毎日手紙を運ぶ猫とおばあちゃんが起こした奇跡とは? ...出場し、準優勝した実話に基づく台湾映画『KANO ~1931海の向こうの甲子園~』の広告が、朝日新聞紙面に掲載された数日後でした。恵子さんと保明さんは『うちのおばあちゃんが当時、甲子園からの決勝戦の実況中継を台湾で聞いていたんです』と教えてくれました。それが、当時106歳の高木波恵さん...
第62回 『枯葉~メル・トーメ・ライヴ・イン・ジャパン'90』
第62回 『枯葉~メル・トーメ・ライヴ・イン・ジャパン'90』 『枯葉~メル・トーメ・ライヴ・イン・ジャパン'90』  再びメル・トーメの登場だ。連載1回おいての再登場は前例がないが、出来がいいので迷わず取り上げることに。彼の1980年代の快進撃を伝える名盤だ。トーメの絶頂期は『シングス・フレッド・アステア』(Bethlehem/1956)、『アット・ザ・クレッシェンド』(同/1957)、『スイングス・シューバート・アレイ』(Verve/1960)などの名盤を残した1950年代半ばから60年代初めというのが定説だったが、なんと老境にさしかかった80年代に第二の絶頂期を迎えた。『ニューヨーク・マイ・ハート』(Finesse/1980)を皮切りに、ジョージ・シアリング(ピアノ)と組んだ『イヴニング・ウィズ』(Concord Jazz/1982)と『トップ・ドロウアー』(同/1983)、マーティ・ペイチ(編曲)と組んだ『リユニオン』(同/1988)と『イン・コンサート・東京』(同/同)などの名盤を連発、名実ともに男性ジャズ・シンガーの頂点に立つ。これらに推薦盤が加わるというわけだ。  再来日の話は初来日公演の大成功をうけて直後には持ちあがっていたものと思われる。トーメは「自分のトリオで来れば5回の異なるステージを毎回全曲異なるレパートリーで構成出来る」と語ったという。おそらくは、初来日公演のようにスタジオ録音にも思えるカッチリ組まれたものではなくて、よりエンターテイナー・サイドに立った普段の自由なパフォーマンスを観てほしいとの思いではないか。翌年は果たせなかったが、1年おいて再来日した。上記の通り自身のトリオを率いての来日で、終盤では同フェスティヴァルに出演したフランク・ウェス・オーケストラ(第61回参照)との豪華な共演も聴かれる。トーメの意をくんだ再来日公演ではどんなパフォーマンスが繰り広げられたのだろうか。 《シャイン・オン・ユア・シューズ》で幕開け。ファスト・テンポで鮮やかに快走し、心浮き立たせる格好のオープナーだ。お次は「ルック・メドレイ」か、ピアノだけを伴い思いの丈を吐露するバラード《ルッキング・アット・ユー》から、ミディアム・テンポの小粋な《ルック・アット・ザット・フェイス》につなぐ。スロウ・テンポの《バークリー広場のナイチンゲール》は情感表出の妙技に舌をまき、やがて心温まる。一転して、《ウェイヴ》は活きのいいファスト・ボッサで。軽妙なスキャットや即興の歌詞を交え、観衆も巻き込む楽しいパフォーマンスになった。スロウ・ナンバーの《スターダスト》は丁寧すぎたというか「歌いにかかった」感が否めない。フランク・ウェスの実直で暖かいテナーサックスのほうが買える。ミディアム・ファスト・テンポの《ドン・チャ・ゴー・ウェイ・マッド~カム・トゥ・ベイビー・ドゥー》は軽妙洒脱な持ち味を発揮した好唱だ。  お待ちかねのスロウ・ナンバー《クリスマス・ソング》はピアノだけを伴って綴るが、これも「歌いにかかった」感が否めない。続く《枯葉》は一転してファスト・テンポで。ドライヴ感と語彙に富むスキャットを中心にしたジャズ・シンガーの骨頂を示す快唱だ。ステージも終盤、ここからフランク・ウェス・オーケストラとの共演が続く。《ユーア・ドライヴィング・ミー・クレイジー》を除いて古いベイシー楽団のヒット曲だ。《クレイジー》はリズム隊だけを従え、《モーテン・スイング》でホーン・セクションが合流する。いずれもミディアム・テンポで軽やかに弾む好唱だ。《セント・フォー・ユー・イエスタデイ》はファスト・テンポで。ウェスが好ソロをとりトーメがスキャットで応じる快演・快唱だ。共演のラストはインスト・ナンバー《スインギン・ザ・ブルース》をファスト・テンポで。トーメがドラムスの腕前を披露するお馴染みの出し物に場内の興奮は頂点に。  ラストは《ニューヨーク・ステイト・オブ・マインド》。ニューヨークをトーキョーに歌い替え、会場の簡易保険ホールなどを織り込んだ当意即妙の歌詞で笑いすら誘いつつ、大都市の哀歓に溢れる感動的な名唱に仕上げて圧巻、このうえないクローザーになった。 『イン・コンサート・東京』には及ばない。スタジオ録音にも勝る入念な準備で臨んだ同作が傑作ライヴなら、推薦盤は普段のままのステージをとらえた快ライヴと言えよう。トーメは翌年も引き続き同フェスティヴァルのステージに立った。クインテットを従えたスイング寄りのプログラムでライヴ盤も残されているが、こちらは好ライヴにとどまる。推薦盤も廃盤だがさほど入手難ではなく、トーメのコレクションに加えられて損はない。 【収録曲】 Fujitsu-Concord Jazz Festival in Japan '90/Mel Torme 1. Shine on Your Shoes 2. Looking at You - Look at That Face 3. A Nightingale Sang in Berkeley Square 4. Wave 5. Star Dust 6. Don't 'Cha Go 'Way Mad - Come to Baby Do 7. The Christmas Song - Autumn Leaves 8. You're Driving Me Crazy - Moten Swing 9. Sent for You Yesterday and Here You Come Today 10. Swingin' the Blues 11. New York State of Mind Mel Torme (vo, ds on 10), John Campbell (p), Bob Maize (b), Donny Osborne (ds), Frank Wess (ts on 5), The Frank Wess Orchestra on 8-10. Recorded at Kan-i Hoken Hall, Gotanda, Tokyo, on December 11, 1990. ※フランク・ウェス・オーケストラのパーソネルは第61回参照。 【リリース情報】 1991 CD/CT Fujitsu-Concord Jazz Festival in Japan '90/Mel Torme (US-Concord Jazz) 1992 CD  Fujitsu-Concord Jazz Festival in Japan '90/Mel Torme (Jp-Concord Jazz) ※このコンテンツはjazz streetからの継続になります。
現役看護師648人に聞いた! ナースのお給料実態調査
現役看護師648人に聞いた! ナースのお給料実態調査 女性ナースたちのキャリア設計は看護職全体の課題(※イメージ写真)  看護師たちはどのように働き、何にやりがいを感じ、どんな時に転職を考えているのでしょうか。週刊朝日ムック『看護師になる2016』が実施したアンケートに回答してくれたのは、237人のママさんナースを含む女性605人、男性43人、合計648人の現役看護師たち。仕事のホンネに迫ります! *  *  *  国税庁の調査によると、2014年の民間の平均年収は約415万円。対して、看護師の平均は473万円と、民間平均年収を大きく上回る。  今回のアンケート調査では、年収300万円以上が全体の64%。400万円以上は全体の31%にとどまったものの、全国の女性の平均年収は約272万円。回答者の9割が女性を占めるなかでのこの結果、他の職種に比べ「稼げる」職業といえる。  ただし、勤務先により収入には大きな開きがある。大学病院や専門病院では年収400万円以上が50%を超え、600万円以上の高所得者層も集中している。一方、保育所などでは300万円未満が半数を占める。  地域格差も大きく、大都市に高所得者が集中した。  働き方による収入差もある。子どもを持つ看護師からは、「夜勤に入らなくなり、給与が下がった」という声が多く寄せられた。  児玉准教授も、結婚や出産により、看護師の収入はどうしても下がる傾向にあると指摘する。 「子どもが幼いうちは、身体的な負担も大きい夜勤を避け、日勤専従やパートを選択する人が多いのが現状です」  結婚・出産の適齢期とされる20代後半から30代にかけては、看護師としてのキャリアの開花が期待される時期でもある。  キャリアを積み、収入があがる人がいる一方で、離職者や時短勤務者が増え、収入差は広がる。看護師の労働力は「M字カーブ」を描く。 「産休・育休後の復帰プログラムも整備されつつありますが、看護師の日ごろの業務には、妊婦にとっては負担の大きい内容の仕事もあります。生涯にわたるキャリアパスの設計は、看護職全体の課題です」(児玉准教授)  出産後、復帰しても育児があるため、以前と同様の勤務をこなすことは難しく、多くの女性看護師が家庭との両立に苦心しているようだ。  とはいえ、看護師不足が続く現状では、子育てが一段落して働こうとした際も、雇用に困ることはまずない。パートでもある程度の収入を得られるというメリットもある。看護師は、貴重な職業といえるだろう。  実際の産休・育休や転職事情についてはどうなのだろうか?  看護師にとって、転職は珍しくない。入職後5~7年目に、キャリアを考え、転職する人が多いようだ。30代の8割は転職経験者で、2回以上の転職経験者も半数にのぼる。  結婚や出産などのライフイベントも、転職のきっかけになる。現場の看護師たちの8割が育休や産休を取らず、退職している。 「産休や育休で欠員が出ても補充がない。残りの人が仕事を負担するので、希望を出しづらい」(40歳・既婚)と、現場の声は切実だ。一方、「看護師ならどこでもやっていける」(33歳・女性)との声もあるように、再就職先には困らないという実状もある。  育休や復職を応援する職場は、もちろん増えてはいる。 「産休や育休の取得の奨励はもちろん、専門看護師・認定看護師といったキャリア構築へのサポートなど、看護師が生涯を通じて安定して働ける環境づくりは、これからの大きな課題です」(児玉准教授) (文/仁井田航、調査/看護師転職サイト「看護のお仕事」) ※週刊朝日ムック『看護師になる2016』より
現役看護師648人に聞いた! ナースはやっぱり忙しい? 勤務時間の実態調査
現役看護師648人に聞いた! ナースはやっぱり忙しい? 勤務時間の実態調査 現役ナースたちの“理想”と“現実”(※イメージ写真)  看護師たちはどのように働き、何にやりがいを感じ、どんな時に転職を考えているのでしょうか。週刊朝日ムック『看護師になる2016』が実施したアンケートに回答してくれたのは、237人のママさんナースを含む女性605人、男性43人、合計648人の現役看護師たち。仕事のホンネに迫ります! *  *  *  激務のイメージが付きまとう看護師だが、実際はどうなのか。  看護師の勤務は、2交代制または3交代制のシフト制を取る病院が多い。1勤務あたりの勤務時間は、時短勤務を除けば、8時間が基本だ。  看護師の就労事情に詳しい星槎大学大学院の児玉有子准教授は、こう話す。 「勤務先や業務により異なりますが、20~30分ほどゆとりを持って出勤し、定時の後もその日に実施したケアの記録や看護計画の作成などで残業することがほとんどのようです」  今回行った調査でも、1勤務あたり8時間以上が全体の約58%。特に20代の勤務時間が長い傾向にあった。 「20代は入職後間もないため、はじめて経験する看護も多く、ベテランのようにスムーズにはできず、勤務時間は長くなりがちです」(児玉准教授)  実際に、多くの20代が、「勉強と勤務の両方をこなさなくてはいけない」と答えている。  年齢が上がるごとに勤務時間は抑えられていき、「若い時の自分の経験がどんどん力になる」(42歳・女性)という頼もしいベテランの意見も。看護師の20代は頑張り時といえそうだ。  一方、1カ月の休日は全体の7割が7~10日取得。ただし、シフト制のため、休日が土日とは限らないうえ、融通も利きにくい。「好きな時に休みが取れない」「長期休暇が取れない」など、不満の声が多数上がった。  勤務の実状は勤務先によっても異なる。大学・総合・専門病院などの医療機関の場合、8~10時間の勤務が4割超、10時間以上も14%いる。特に大学病院や総合病院では、患者対応での時間外勤務のほか、勉強会や学会に参加する機会も多い。一方、診療所やクリニックは、夜勤の設定がないところも多く、勤務時間も短く抑えられている。  医療機関外の介護施設、高齢者ホームや保育所では、8時間未満が5割、10時間以上は6%に。フルタイムとパートタイムの割合を見ると、医療機関に比べて7%ほどパートタイムの割合が多い。ちなみに、診療所とクリニックのフルタイムとパートタイムの割合は、パートが4割超。例えば家庭を持ち子育てをしている場合など、時短でも働きやすい環境といえそうだ。 (文/仁井田航、調査/看護師転職サイト「看護のお仕事」) ※週刊朝日ムック『看護師になる2016』より
第61回 『アントレ・ヌー』フランク・ウェス・オーケストラ
第61回 『アントレ・ヌー』フランク・ウェス・オーケストラ 『Entre Nous』Frank Orchestra Wess  1989年は前年から64組、50%増となる190組が来日した。なんとも凄まじくバブリーというほかない。51組のフュージョン/ワールド/ニュー・エイジが引き続き首位で、38組の主流派、37組のヴォーカル、31組の新主流派/新伝承派/コンテンポラリー、15組のフリー、12組のビッグバンド(スイングが4組にモダンが8組)、4組のスイング、2組のR&B系が続く。フリーとモダン・ビッグバンドが倍増したが、前年が数組なので重要ではない。注目すべきはヴォーカルの76%増で、バブルのほどを雄弁に物語っている。シナトラまでが来日、チケットは20万円に吊りあがったという。恒例のサマー・ジャズ・フェスティヴァルは週末毎に台風に見舞われ中止が相次ぐなか、期待の「ライヴ・アンダー・ザ・スカイ」「ニューポート・ジャズ・フェスティヴァル・イン・斑尾」「マウント・フジ・ジャズ・フェスティヴァル」は幸いにも開催された。  空前の来日ラッシュにもかかわらず作品は前年にすら2作及ばない31作にとどまる。スタジオ録音は16作あり、日本人との共演は11作、8作は和ジャズだ。ライヴ録音は15作あり、日本人との共演は6作、5作は和ジャズだ。候補作は10作ということに。残念ながら推薦該当作はなかった。評価や編集上の弱点は【1989年 作品リスト】をご覧いただきたい。なかでも、後年の録音が併録されていることもあって見送ったレイ・ブラウン・トリオ『ジョージア・オン・マイ・マインド』が実にゴキゲンな好ライヴだ。  気を取り直し1990年に移ったら調査結果に思わず目を疑った。前年の空前の記録をあっさり更新する265組が来日している。月平均22組とは、まさにバブルの絶頂だ。やはり首位は66組のフュージョン/ワールド/ニュー・エイジで、54組の新主流派/新伝承派/コンテンポラリー、53組の主流派、41組のヴォーカル、33組のフリー、8組のディキシー/スイング、6組のビッグバンド(スイングが2組にモダンが4組)、4組のR&B系が続く。内訳を分析しても意味はあるまい。片っ端から招聘した印象だ。再三来日したアーティストも12名はいる。上記の三大フェスティヴァルをはじめとする各地のサマー・ジャズ・フェスティヴァルも来日アーティストに格好の職場を提供した。  なぜか参加作の数はバブリーとはいかない。この年も前年並みの30作にとどまった。スタジオ録音は15作あって、日本人との共演は9作、5作は和ジャズだ。ライヴ録音も15作あって、日本人との共演は3作、みな和ジャズだ。候補作は12作ということに。取り上げるのは「富士通コンコード・ジャズ・フェスティヴァル・イン・ジャパン」からフランク・ウェス・オーケストラ『アントレ・ヌー』と『枯葉~メル・トーメ・ライブ・イン・ジャパン’90』だ。選外作に後ろ髪を引かれるものはなかった。評価や編集上の弱点は【1990年 選外リスト】をご覧いただきたい。ではフランク・ウェス盤から。  リーダー亡きあとに出身者が率いる名門オーケストラを亡霊バンドと呼ぶ。カウント・ベイシー・オーケストラも御大の没後、サド・ジョーンズ、フランク・フォスター、グローヴァー・ミッチェルほかが率いてきた。フランク・ウェスもモダン・ベイシーを支えたOBでここに紹介するオーケストラもベイシー系だが、正統を継ぐ亡霊バンドではない。当時は亡霊バンドの本家がフォスターの指揮下で活動していたし、そもそも臨時編成だ。臨時編成といえば、1989年の同フェスにもフランク・ウェス&ハリー・エディソン・オーケストラとして出演し『ディア・ミスター・ベイシー』を残している。好ライヴだがベイシー・スタンダードを筆頭に月並みな模倣感が拭えず決定打にも乏しく選外とした。スイングとグルーヴの大元、御大とフレディ・グリーン(ギター)を欠いては模倣の限界(The limitations of imitation)があるわけで、独自性を打ち出してほしかったのだ。  オーケストラは総勢17名、【収録曲】のパーソネルで*を付した12名がベイシー・オーケストラの出身者だ。#を付した8名は前回、1989年の来日メンバーでもある。選曲はメンバーのオリジナルが①②③⑧の4曲、ジャズマン・オリジナルが⑨⑩の2曲、スタンダードが④⑥⑦の3曲あり、べイシー・スタンダードは⑤の1曲にとどめている。こうこなくてはいけない。継承すべきは楽曲ではなく精神だ。ベイシー・スタンダードの再演は本家に、模倣はアマチュア・バンドに任せればいい。さて、首尾のほどはどうか。  幕開けはウェス作のブルース《オーダー・イン・ザ・コート》。力感漲る合奏のあと、ビル・ラムゼイのツボを得たアルト、アート・バロンの雄弁なミュート・トロンボーン、ティー・カーソンの省エネ型ピアノと、好ソロが続き、サックスソリ、全合奏で終える。馴染みのベイシー・グルーヴが横溢、いきなりベイシー・ワールドに拉致される快演だ。  ウェス作のバラード《アントレ・ヌー》はウェスのフルート・プレイをフィーチャー、胸に迫る佳演になった。テナーは古臭いのにフルートと編曲はモダン、不思議な人だ。  ドラムスのデニス・マックレル作の《2パーセントのブルース》は奇妙なタイトルだがベイシー・ブルースそのもの。御大が雇った最後のドラマーだけに精髄を体得している。聴き物はグルーヴィーに揺れるサックスソリと、ここでもバロンのミュート・プレイだ。  トラディショナルの《セント・ジェームズ病院》はかつての看板ソロイスト、ジョー・ニューマンをフィーチャーした哀歌だ。リズム隊だけを従えてミュート・トランペットと唄を披露するがどうということもない。コンサートに付き物の余興と大目に見てほしい。  フォスター作の《シャイニー・ストッキングス》は大人気のベイシー・スタンダード、ウェスは「リクエストに応えて」と告げている。ウェスの編曲とあるがオリジナル版との違いはさほどない。「お待たせの」と書きだしたかったのに出来のいい模倣にとどまる。  スタンダードの《ラヴァー》はスピードとパワーの宴。アーサー“ベイブ”クラークのハードなバリトンサックスが疾駆、バックと終盤のパワフルな全合奏が痛快極まりない。  スタンダードの《バット・ビューティフル》はピート・ミンガーのフリューゲルホルンをフィーチャーしたバラードで、リズム隊だけをバックに思いの丈を吐き出す。只のセクションマンではなかったことが知れる名演でテッド・ダンバー(ギター)が華を添える。  トロンボーンのデニス・ウィルソン作の《イマス・ザ・ブルース》も変なタイトルだがベイシー・ブルースそのもの。聴き物は「ミスター・ブルースそのものだ」と紹介されるカーティス・ピーグラーのファナティックでブルージーなアルトと豪放磊落な全合奏だ。  カナダのビッグバンド「ボス・ブラス」のテナーサックス、リック・ウィルキンス作の《リンク・ラット》はベイシー調のファスト・ナンバー。レスターの流れを汲むウェスのテナー、ミンガーのシャープなトランペット、一糸乱れぬパワフルな全合奏と、大満足。  ラストは同じくウィルキンス作の《ピット・パット・ブルース》で、これもベイシー・ブルースそのもの。フレディ・グリーンとあまりにタイプが違いすぎて不満の矛先が向くダンバーが好ソロをとり、デニス・ウィルソンがミュート・トロンボーンの妙技で迫る。  《セント・ジェームズ病院》と《シャイニー・ストッキングス》の星が落ちるものの、ほかは快演だ。メンバーのオリジナルやジャズマン・オリジナルなど、新たな素材を得てベイシー・サウンドが甦る。とりわけベイシー・グルーヴに溢れるブルースが上出来だ。急造ゆえの粗さは力感の前には気にならない。ビッグバンド・ファンには掘り出し物だ。とっくに廃盤で再発されてもいないが入手難ではない。リンク先の結構な価格にめげずに海外のサイトもあたってみては。送料込みでもリーゾナブルな価格で入手できるはずだ。 [次回5/16(月)更新予定] 【1989年 作品リスト】fine>good>so-so>poor Live in Japan/Valentina Ponomareva (UK-Leo/April 5, 7, 8) poor Georgia on My Mind/Ray Brown Trio (Lob/May 23) good+, *1 Black Orpheus/Ray Brown Trio (Paddle Wheel/May 23) good, *2 Jikan to Kuukan/Nachtluft (Jazz & Now/July 13) good+ Live at Good Day Club/Junior Mance Trio (Paddle Wheel/July 19) good Live at Spiral/Sonya Robinson (Newsick/July 19, 20) so-so Let the Juice Loose-Bill Evans Group Live at Blue Note Tokyo (Jazz City/September 9) good Cedar Walton Trio at Good Day Club (Lob/September 20) good+ Dear Mr. Basie/Frank Wess=Harry Edison Orchestra (All Art/November 11) good+ New York State of Mind/Carmen McRae (Victor/November 19) good+ *1: 5 titles on the date, 4 titles on February 7, 1991. *2: 7 titles on the date, 2 titles on February 7, 1991. 【1990年 選外リスト】fine>good>so-so>poor Live at the 6th Tokyo Music Joy '90/Art Ensemble Of Chicago & Lester Bowie's Brass Fantasy (DIW/February 14) good+ A Night in Roppongi/Etta Jones & Houston Person (All Art/March 19, 20) so-so Thanks for the Memory/Ronnell Bright (All Art/April 14) so-so Then!/Alan Holdsworth Group (US-Alternity/May 4, 6) good+ 100 Gold Fingers Vol.1/Various Artists (All Art/May 31) good+ 100 Gold Fingers Vol.2/Various Artists (All Art/May 20, 31) fine- The Gambler-Bill Evans Live at Blue Note Tokyo 2 (Jazz City/September 8) good+ Stephane Grappelli in Tokyo (Denon/October 4) 1st half: so-so, 2nd half: fine- Stairway to the Rainbows/Stanley Jordan (somethin'else/November 7-9) so-so Show-Down/Wadi Gysi & Hans Reichel (Swi??Intakt/December 11) fine-, *1 *1: 2 titles on the date, 8 titles in Zurich, 1 title in an unknown place. 【収録曲】 Entre Nous/The Frank Wess Orchestra 1. Order in the Court 2. Entre Nous 3. Blues in the 2% 4. St. James Infirmary 5. Shiny Stockings 6. Lover 7. But Beautiful 8. Imus the Blues 9. Rink Rat 10. Pit Pat Blues Frank Wess*# (ts, fl), Snooky Young*#, Ron Tooley (tp), Joe Newman*# (tp, vo on 4), Pete Minger* (tp, flh on 7), Art Baron, Grover Mitchell*#, Dennis Wilson* (tb), Doug Purviance (btb), Curtis Peagler*#, Bill Ramsey*# (as), Billy Mitchell*# (ts), Arthur "Babe" Clarke (bs), Tee Carson* (p), Ted Dunbar# (g), Eddie Jones*# (b), Dennis Mackrel* (ds). Recorded at Kan-i Hoken Hall, Gotanda, Tokyo, on December 11, 1990. 【リリース情報】 1991 CD/CT Entre Nous/The Frank Wess Orchestra (US-Concord Jazz) 1991 CD  Entre Nous/The Frank Wess Orchestra (Jp-Concord Jazz) ※このコンテンツはjazz streetからの継続になります。

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