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【ペットばか】元繁殖犬の豆柴が「お帰り、愛してる」? ピノコの日常
【ペットばか】元繁殖犬の豆柴が「お帰り、愛してる」? ピノコの日常
 ペットはもはや大事な家族。読者とペットの愛おしい日常のひとコマをお届けします。今回の主役は、犬のピノコちゃんです。 *  *  *  鷹野ピノコ、9歳女子。繁殖犬として多くの子どもを産んで次々と引き離され、子どもたちは遠くへ売られていった。  豆柴として完璧な身体バランスと、可愛い顔立ちだから、繁殖犬として便利に使われてきたのだろう、きっと。  名前は、ブラック・ジャックの助手である可愛らしい女の子からもらった。  今年3月、里親募集の写真を見た瞬間、以前家族だった柴犬の遼太郎とうり二つのこの子に一目ぼれした。  縁組が決まって、4月1日、わが家にやってきたピノコは、家に上がるやいなや、フローリングの上でおしっこをしてみせた。初めての場所が不安で、マーキングしたのだろう。  今ではすっかり落ち着いて生活している。  保護犬の飼育は難しいといわれる。ピノコは手から餌を食べることがないばかりか、リードをつけることもできなかった。中には、リードをつけるのに3年かかった例もあるという。  そこで、まずリードをつけることと、リードをつけて散歩することを目標に設定した。  首輪をハーネスに変えたり、一番細いリードでドッグランを走らせたりすること3週間。なんとかリードをつけて散歩することに成功した。  今でも、ちょっとした僕の動作に、ビクッと反応することがあるけど、それでも足元から離れようとしない。愛された経験のない保護犬だから、余計に人の愛情が欲しいのだろうか。  仕事から帰ると、この写真の表情で「お帰り、愛ちてゆ」と出迎えてくれ、仕事の疲れが霧消する。この子は、愛情を注ぐとさらに大きな愛情で返してくれる。ピノコなしの生活は考えられない。(長野県茅野市/64歳/高校講師・大学講師) 【原稿募集中!】 「犬ばか猫ばかペットばか」では、みなさまからの原稿をお待ちしております。 原稿は800文字程度で、ペットのお写真(2枚までOK)を添付のうえ、下記メールアドレスまでご送付下さい。 必ず名前、住所、年齢、職業、電話番号のご記入をお願い致します。 尚、掲載は本コーナー(外部配信含む)と「週刊朝日」の誌面となります。謝礼は6千円。 mypet@asahi.com ※著作権は本社に帰属します※週刊朝日  2022年8月5日号
いぬ
週刊朝日 2022/07/30 17:00
加藤清史郎が「演劇界入り」を決意した作品は? 「映像とは違う“生もの”」を実感
加藤清史郎が「演劇界入り」を決意した作品は? 「映像とは違う“生もの”」を実感
加藤清史郎(かとう・せいしろう)/ 2001年、神奈川県生まれ。1歳1カ月で芸能界デビュー。09年、NHK大河ドラマ「天地人」で主人公の直江兼続の幼少時代を演じ、話題に。同時期に放送していたトヨタ自動車のテレビCMで「こども店長」の愛称で親しまれる。3年間、イギリスの高校に留学。20年に帰国後も、ドラマ「ドラゴン桜」(21年)やミュージカル「ニュージーズ」(同)、「るろうに剣心 京都編」(22年)など、話題作に多数出演。7月からは、月9ドラマ「競争の番人」にも出演している。(撮影/写真映像部・高野楓菜)  子役時代に「こども店長」として、人気を博した加藤清史郎さん。ドラマ「ドラゴン桜」(2021年)やミュージカル「るろうに剣心 京都編」(2022年)」など数々の話題作に出演し、活躍の場を広げています。そんな加藤さんが、今年7月から出演中のミュージカル「BEMORE CHILL」への意気込み、演劇の世界に魅了されたきっかけについて、作家の林真理子さんに語ってくれました。 *  *  * 林:加藤さんに私、何回かお会いしてるんですよね。 加藤:はい。お会いしたのはいつだったかなと思いながら来ました。 林:最初は「レ・ミゼラブル」にお出になったときです。すごく小さいときに。 加藤:いちばん最初の「レミゼ」が2011年なので、約10年前ですね。僕、8月で21歳になるので。 林:「レミゼ」のあと、「エリザベート」のときも楽屋でお目にかかりました。それと私、六本木歌舞伎(「地球投五郎宇宙荒事」)も見てるんですよ。だから大人になっていく過程を肉眼で見てるんです。ほんとに立派になって……。 加藤:ありがとうございます。 林:最初に「レ・ミゼラブル」という大きな舞台を帝国劇場でやったわけでしょう。最後に怒濤(どとう)の拍手が来て、ずっと舞台をやっていきたいって子どもごころに思ったんですか。 加藤:初めて出演したミュージカルも、初めて観たミュージカルも「レミゼ」だったんです。最後、一列になって歌うところと、カーテンコールで拍手をいただいているとき、小学校4年生までは映像のお仕事のみだったので、映像とは違う“生もの”を実感したのを覚えています。エンターテインメント、演劇の世界に身を投じたいと思ったのは、それがきっかけでした。 林:そして今回またミュージカルをなさるんですね。この「BE MORE CHILL(ビー・モア・チル)」(7月25日~8月10日 新国立劇場 中劇場)というのは、日本初演ですか。 加藤:日本どころか、アジア初演の作品です。 林:これは地方にも行くんですか。 加藤:博多(8月20・21日 キャナルシティ劇場)と大阪(8月27~29日 COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール)があります。 林:(チラシを見て)これって同じ年ぐらいの皆さんによるミュージカルなんですね。 加藤:内容的には高校生ですが、僕がいちばん役に近い年で、主演の薮宏太さん(Hey! Say! JUMP)は僕より一回り上です。ほかの高校生役のキャストの皆さんも僕より年上の方ばかりです。 林:横山だいすけさんって、「おかあさんといっしょ」(NHK Eテレ)の「だいすけお兄さん」? 加藤:そうです。だいすけさんは高校生役ではないですが、今回「はじめまして」でした。 林:井上小百合さんも? 加藤:井上小百合さんも「はじめまして」です。 林:踊りもすごく激しいですか。 加藤:はい。もともと、オフ・ブロードウェーで上演していた作品なので、キャストも少なく10人だけなんです。だから本役以外も演じます。それも、人だったり、妖精だったりするんです。僕、今回女子高生の役にも挑戦します(笑)。 林:えっ! そうなんだ。 加藤:オフ・ブロードウェーならではの魅力を積んだまま、オン・ブロードウェー、ウエストエンドで上演されて、楽曲がSNSなどで話題になり、日本に来たんです。 林:加藤さんは子どものときからミュージカルをやってたから、この世界は慣れてるんでしょう? 加藤:なじみはあるのですが、声変わりし始めてから少し遠のいていました。イギリスに留学して、帰国後に出演したのは「ニュージーズ」と、この前の「るろうに剣心 京都編」と今作の三つで、正直、舞台上で踊るのも去年の「ニュージーズ」がほぼ初めてでした。だから今回はすごくハードな稽古でした。 林:でも、歌はお手のものでしょう? 加藤:いえいえ、大変なんです。僕が歌う「マイケル イン ザ バスルーム」という曲が、良い曲なんですが、すごく難しい曲で、オフ・ブロードウェーでマイケルを演じていた方が、ものすごく声の高い男性だったんです。その人の音域に合わせて音がつくられているので、苦労が絶えません。 加藤清史郎さん(右)と林真理子さん(撮影/写真映像部・高野楓菜) 林:若いエネルギーがワッと爆発するようなミュージカルなんでしょうね。 加藤:アメリカの高校の話で、ゲームやSNSといった要素がふんだんに詰め込まれている「ハイスクールミュージカル」のような感じで、若者だからダンスも激しいし、エネルギッシュな作品だと思います。(ゲームの)コントローラーを操作しながら歌うシーンもあって、新しいなと思います。 林:新国立劇場の中劇場って、わりと実験的なお芝居をしますよね。 加藤:演劇のアカデミーのようなシステムもありますよね。しっかりとしたストレートプレイもできる劇場ですし、そういうところでアメリカの高校を舞台にしたミュージカルができることに意味があるというか、どんな方たちが観に来てくださるのか、楽しみな部分もあります。 (構成/本誌・唐澤俊介 編集協力/一木俊雄)※週刊朝日  2022年8月5日号より抜粋
林真理子
週刊朝日 2022/07/30 11:30
いま注目のマンガ16作品を専門家が厳選 いじめやルッキズムなど社会問題を描く作品も
井上有紀子 井上有紀子
いま注目のマンガ16作品を専門家が厳選 いじめやルッキズムなど社会問題を描く作品も
【左】『ひばりの朝』ヤマシタトモコ(祥伝社)/【右】『今日からCITY HUNTER』錦ソクラ(コアミックス)  コロナで在宅時間が増え、マンガにハマる人も増えている。マンガに詳しい2人に、最新の注目作品を挙げてもらうと、#MeToo運動やルッキズムなど社会の動きをとらえた新たな名作も続々と誕生。AERA2022年7月18-25日合併号では厳選した16作品を紹介する。 *  *  *  社会現象となった『鬼滅(きめつ)の刃(やいば)』や、初回数話無料のマンガアプリなどをきっかけに、マンガにハマったという人も少なくない。いま注目のマンガは何か。  マンガに詳しいライターの山脇麻生(まお)さんは言う。 「コロナ禍もあり、スマホでマンガを読む層が拡大しました。数多(あまた)あるマンガアプリの中でも特にヒット作を連発しているのが、集英社の『少年ジャンプ+』です」 「週刊少年ジャンプ」の電子版が購入できるうえ、オリジナルの連載や読み切りも多く取りそろえ、新人の作品が一夜にしてヒット作になることも。  例えば、最終話を配信した日の閲覧数が300万回を超え、ジャンプ+で最多だった『タコピーの原罪』のタイザン5(ファイブ)も新人だ。本作に登場するのは、地球にハッピーを広めるためにやってきた宇宙人タコピー。ほのぼのとした内容かと思いきや、テーマは「いじめ」や「家族の問題」と重い。 「最新話が配信されるたび、SNSでは考察や予想合戦で盛り上がり、世間の媒体への信頼度の高さと新人の層の厚さを同時に感じました」(山脇さん)  ジャンプ+発の作品といえば『SPY×FAMILY(スパイ・ファミリー)』も外せない。スパイの男性と殺し屋の女性、そして超能力者の少女・アーニャが世界の平和を守るため仮の家族となって暮らすコメディーだ。設定の妙や展開の緩急、アーニャのかわいさに加え、世界同時配信となったアニメでその人気は世界規模に。 「2023年以降、『少年ジャンプ+』の新連載は、『MANGA Plus by SHUEISHA』を通じて全世界へ配信されるとの発表が6月にあったばかり。今後ますます『ジャンプ+』から目が離せません」(同) ■いにしえのオタク文化  一方、少女マンガの現在の王道作品は何か。京都国際マンガミュージアムの学芸員、倉持佳代子さんは『うるわしの宵の月』を挙げ、「初々しい恋を応援したくなるような作品です」と話す。 『うるわしの宵の月』やまもり三香(講談社) 「主人公は“イケメン王子”と呼ばれている女子高生。転んだ女子をお姫様抱っこして運ぶ女子が、初めて恋に落ちてうぶな一面をみせます。彼との関係が一進一退するのを応援する、少女マンガの醍醐味(だいごみ)があります」  もう一つの王道、男装の麗人系の歴史ファンタジーでは、『リボンの騎士』(手塚治虫)、『ベルサイユのばら』(池田理代子)の流れをくんでいる作品として、倉持さんは『薔薇(ばら)王の葬列』を挙げる。 「シェイクスピアの劇『リチャード三世』がベースになっていますが、斬新な解釈とアレンジがほどこされています。リチャード三世の体は男性でも女性でもある設定なんです。これまで、リチャード三世は見た目も正確もあまりよく描かれることは少なかったのですが、薔薇王では妖艶で男女ともに魅了する主人公として描かれています。ただ、その体ゆえに家族から忌み嫌われ、心通わせる人が現れてもうまくいかず、内なる悪魔に心をとらわれていきます。最後は救われるのか。完結した今、多くの人に読んでほしいです」(倉持さん) 『薔薇王の葬列』菅野文(秋田書店)  新たな流行も誕生している。倉持さんは言う。 「オタクや腐女子(ふじょし)(男性同士の恋愛を扱った漫画などを好む女性)モノは近年のブームですが、最近は1990年代の“いにしえオタク文化”を描いたものが増えています」 『タイムスリップオタガール』は、30歳の腐女子が電車にひかれて、自分の中学生時代にタイムスリップする話。 「30歳の画力や知識をもって、もう一度オタク人生を生き直します。心は思春期ではありませんから、男子から何を言われたって傷つきません。昔は同人誌を販売する交流会に尻込みして参加できなかったけど、それも堂々と参加できます」(同) 『タイムスリップオタガール』佐々木陽子(フレックスコミックス)  また、その系譜の中で異色の作品も。 『今日からCITY HUNTER』は、80年代半ばに始まったマンガ『シティーハンター』が好きな40歳の女性が、電車にひかれてシティーハンターの世界に迷い込み、主人公の妹分になるという物語。 「原作の絵にそっくりで、ストーリーの流れも原作に忠実ですが、そこにオリジナルの要素が絶妙に組み込まれます。原作ファンを裏切らないクオリティーの高さで、スピンオフの域を超えています」(同) 『古オタクの恋わずらい』ニコ・ニコルソン(講談社)  異世界に転生しないが、『古オタクの恋わずらい』もおすすめという。 「オタクが市民権を得ていなかった90年代を思い起こす話です。現在では、マンガやアニメを好きと言っても『キモい』なんて言う人は少数ですが、当時は違いました。ツイッターなどで簡単にファン同士が出会える今と違い、仲間を探すのも一苦労。同人仲間との文通など懐かしい文化が描かれます。世代ではなくても、こんなふうに同人仲間と文通していたんだと新鮮に映るのではないでしょうか」  今まで語られなかった内面を描く社会的な作品も増えてきた。 「社会で#MeToo運動が広がって、性被害に声を上げられなかった人たちの声が拾われるようになってきました。マンガでも、見過ごされていた部分にメスを入れた作品が出ています」(同) ■禁断の恋か性暴力か 『1122(いいふうふ)』などで知られる渡辺ペコさんの『恋じゃねえから』は、倉持さん、山脇さん両者が推薦した作品だ。  中学時代、塾の先生に淡い恋心を抱いていた主人公・茜(あかね)には、紫(ゆかり)という友だちがいた。しかし、紫と先生との関係が縮まっていくのを感じ、友人関係に溝ができる。その後、40歳になった茜は、彫刻家になった先生の作品が中学時代の友だちの裸をモチーフにしたものだと気づき……。 『恋じゃねえから』渡辺ペコ(講談社) 「友だちは先生に裸の写真を撮られていました。当時は同意したかもしれないけど、今なぜ震えてしまうのでしょうか。先生と生徒との恋は『禁断の恋』とマンガで美化されることもありました。でも、現実に起こるそれは、もしかしたら恋とは違うものだったのかもしれません。マンガの功罪があると思います」(倉持さん)  前出の山脇さんも「それまで語られることがなかった問題の核心に、少しずつ、丁寧に迫っていく作品が増えている」と指摘する。 「『恋じゃねえから』で描かれるのは、アーティストと、インスピレーションを与えるミューズの関係ですが、実は、“創作”のベールを剥ぐと、中にはこういった問題が隠されているのかも……と考えさせられます」 『わが子ちゃん』峰なゆか(扶桑社)  山脇さんが勧める作品には、峰なゆかさんの『わが子ちゃん』も。こちらは、自身の妊娠・出産・育児をめぐるエッセーマンガだ。 「お母さんはクリーンな存在でなければならないという圧に威勢のいい啖呵(たんか)を切るような、切れ味最高の作品です」  女性を取り巻く環境に切り込んだ作品も増えているという。 「『女の子がいる場所は』は国も宗教も文化的背景も異なるアフガニスタン、サウジアラビア、モロッコ、日本の少女たちが、『女の子だから』という理由で抱えざるをえない問題にスポットをあてた作品です」 『女の子がいる場所は』やまじえびね(KADOKAWA) ■ルッキズムに切り込む  ルッキズム(外見至上主義)に切り込んだのは『ブスなんて言わないで』だ。 「学生時代、美醜の物差しに翻弄されてきた女性が社会に出て、自分をいじめていた同級生に再会。ルッキズムに影響を受けていた個々の認識が変容し、人間関係も変化していく……。この先が気になって仕方がない作品です」(山脇さん) 『ブスなんて言わないで』とあるアラ子(講談社)  現代社会がはらむ問題を内包した壮大な物語の話題作も多い。 「マンガ大賞2022」大賞の『ダーウィン事変』は、ヒトとチンパンジーとの間に生まれたチャーリーが主人公。好奇にさらされつつ高校に通うチャーリーに友人もできるが、動物解放をうたうテロ組織から目をつけられてしまう。山脇さんは言う。 「異なる種の共存がテーマの硬派な作品です。世界中で分断が進む今こそ読みたいテーマに加え、エンタメとしても超一級。ページをめくるたび作品世界に引きこまれます」 『ダーウィン事変』うめざわしゅん(講談社)  そして、今年の手塚治虫文化賞マンガ大賞にもなった『チ。─地球の運動について─』について、山脇さんは「自分が見つけた真理を証明し、後世に伝えるために命を懸ける人たちに魂が震える」と言う。  本作は15世紀のヨーロッパを舞台に、C教という宗教の支配下で禁じられていた学説「地動説」を証明しようとする人たちを描いた作品。 『チ。―地球の運動について―』魚豊(小学館) 「禁じられた学説を証明しようとすることで犠牲者も出ますが、執行する側の多くは自分が置かれた立場や社会システムのなかで、“そうすべき”理由のもとで動いている。真理に突き動かされる人の美しさと同時に、社会に取り込まれたときの暴力性も描かれていて、現代にも通じるお話だなと思いました」(同) (編集部・井上有紀子) 『AV女優ちゃん』峰なゆか(扶桑社) <専門家2人が厳選する注目のマンガ作品> 【トレンド系】 『うるわしの宵の月』 "王子"と呼ばれる女子高生が、恋に落ちた。一進一退の関係にやきもきする/やまもり三香(講談社) 『薔薇王の葬列』 リボンの騎士、ベルばらなどの流れをくむ男装の麗人系ファンタジー。シェイクスピアのリチャード三世が妖艶/菅野文(秋田書店) 『今日からCITY HUNTER』 40歳の女性が電車にひかれたら、そこはシティーハンターの世界だった。原作に忠実で、絵がそっくり/錦ソクラ(コアミックス) 『腐女子になって四半世紀経つとこうなる』 SNSがなかった1990年代の懐かしいオタク文化を振り返る。オタクモノ流行を予兆する2019年の作/御手洗直子(一迅社) 『古オタクの恋わずらい』 オタクがまだ市民権を得ていなかった、平成初期のオタ活を描いた作品。主人公はオタクな自分を隠す/ニコ・ニコルソン(講談社) 『タイムスリップオタガール』 30歳の女性が、自身の中学時代にタイムスリップ。諦めていた夢を追いかける/佐々木陽子(フレックスコミックス) 【社会問題系】 『恋じゃねえから』 中学時代、先生と友達は恋をしていた……ように見えた。40歳になった主婦が創作と性加害をめぐる問題に迫る/渡辺ペコ(講談社) 『ひばりの朝』 自分の体験を「嫌」と声を上げる人が増えたが、2012年作の本書はその走り。勘違いされる中学生の話/ヤマシタトモコ(祥伝社) 『AV女優ちゃん』 元AV女優としてAV業界の実態とそこで生きるに至った人々の背景を社会構造や家族問題に切り込みながら描く/峰なゆか(扶桑社) 『わが子ちゃん』 妊娠の経験をもとにしたエッセーマンガ。育児にまつわる常識や男女不平等をポップに問い直す新時代のバイブル/峰なゆか(扶桑社) 『ブスなんて言わないで』 ブスと言われてきた知子は、自分をいじめた同級生が美容家として成功していると知り、復讐を誓うが……/とあるアラ子(講談社) 『女の子がいる場所は』 10歳で結婚相手の心配……アフガニスタン、モロッコ、インド、日本などの少女たちが抱える問題を描く/やまじえびね(KADOKAWA) 『ダーウィン事変』 半分ヒト、半分チンパンジーのチャーリーがテロ組織に目をつけられ!? マンガ大賞2022大賞/うめざわしゅん(講談社) 『チ。―地球の運動について―』 15世紀のヨーロッパで、異端とされた地動説の研究に命がけで挑む人たちを描いた。2022年、手塚治虫文化賞マンガ大賞/魚豊(小学館)※AERA 2022年7月18-25日合併号
AERA 2022/07/24 10:00
「僕は勝ちたい」「王者に勝てば自分が王者」 16歳の羽生結弦がAERAに明かした言葉
「僕は勝ちたい」「王者に勝てば自分が王者」 16歳の羽生結弦がAERAに明かした言葉
AERA 2011年11月7日号の表紙 「まだまだ未熟な自分ですけれども、プロのアスリートとしてスケートを続けていくことを決意いたしました」 「競技者として他のスケーターと比べ続けられることはなくなりました」  7月19日17時すぎ、フィギュアスケート男子の羽生結弦(27)が東京都内で会見を開き、競技者としての第一線から退くことを表明し、プロに転向する決意を明らかにした。  2011年11月に週刊誌「AERA」の表紙を飾った羽生。撮影当時は16歳。まだ、あどけなさが残る表情を見せた。  だが、そのインタビューでは力強くこう語った。 「王者になる。まずそう口に出して、自分の言葉にガーッと追いつけばいい」  ここでは、その当時のインタビューを紹介する。 *  *  *  線の細いしなやかな体つき。女子顔負けの柔軟性。そしてあどけない笑顔。思わず「可愛い」と言いたくなるが、口を開けばキャラは一転。  「『いい演技をするのが目標』なんて謙遜する選手が多いけど、完璧な演技で負けたら屈辱的でしょ! 僕は勝ちたい」  この潔さが心地いいのだ。  快進撃の始まりは12歳。全日本ジュニアで3位となり、15歳でジュニアの世界王者に駆け上がった。シャイな日本男子の中では珍しい、演技に入り込む表現派。シニアデビューの昨季は、試合で4回転ジャンプも成功させた。  原動力は負けん気だ。2010年11月のロシア杯。世界最高のスケート技術を持つと言われるパトリック・チャンと一緒の練習で、とった行動は「追跡」。滑る軌道やエッジの使い方を盗むためだ。 「王者に勝てば自分が王者。だからまねして滑ったんです」 7月19日、会見に臨む羽生結弦  今年2月の四大陸選手権では自己ベストを更新したが、その直後、仙台で練習中に東日本大震災に見舞われた。自宅は全壊。ホームリンクも営業停止に。練習場所を確保する目的もあって、夏はショーを転々とした。その数なんと60公演。 「本番だから全力で滑り切る。体力がついたし、新しい強化方法になりました」  転んでも、タダでは起きないのだ。  被災者としての葛藤もあった。 「インタビューには『被災者の代表としてスケートを頑張ることでみんなに勇気を与えたい』なんて答えたけれど、きれいごとじゃないか」  仙台空港へ向かったある日。見慣れた住宅街は消え、ガレキの先には海。海なんか見える場所じゃなかったのに。その衝撃で、もやもやが吹き飛んだ。  「被災したことに甘えたくない。実力で選ばれた日本代表のスケーターとして、結果に責任を持たないと」  今シーズンのGP初戦は11月4日からの中国杯。 「期待されてる感覚が好き。それはプレッシャーじゃなくて快感なんです」 (ライター 野口美恵) ※AERA 2011年11月7日号
フィギュアスケート羽生結弦飛躍の原動力
AERA 2022/07/19 18:28
「女子プロレスラーの名言」といえば? 北斗晶らが残した“男子顔負け”の熱い言葉
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「女子プロレスラーの名言」といえば? 北斗晶らが残した“男子顔負け”の熱い言葉
現役時代は多くの“名言”を残した北斗晶  プロレスラーは対戦相手とともにファンや世間との“戦い”も求められる。勝ち続けても見る人を置き去りにするような戦い方をしてしまうプロレスラーは一流と呼べない。逆に勝てなくてもインパクトを残すことができれば、名レスラーとして語り継がれる。  そして、リング内外で名言を残すのもトップレスラーとして重要な要素の一つである。男子ではアントニオ猪木を筆頭に、ジャイアント馬場、長州力、前田日明など多くのレスラーたちが未だにファンの間で語り継がれるような名言を残してきたが、女子プロレス界にもそれに負けない印象深いものも存在する。そこで今回はそんな女子プロレスラーたちが発した記憶に残る言葉を振り返ってみたい。 *  *  * ●北斗晶(全日本女子など)  女子プロレス界で生まれた名言も数多いが、その中で“際立つ”ものを多く残したのが北斗晶。現役引退後はタレントに転身して成功し、『鬼嫁』として世間一般に幅広く知られる存在となった。バラエティ番組に呼ばれる理由の1つであるコメント力は、現役時代から飛び抜けていた。のちの芸能界成功の予兆だったのかもしれない。 「神取、聞いてるか。お前にはプロレスの心が無い!プロレスはプロレスを愛する者にしかできない。柔道かぶれのお前に負けてたまるか!」  1993年4月2日、横浜アリーナで神取忍とシングルマッチが行われた。北斗は柔道家として数々の実績を残してプロレスに転向した神取を死闘の末に破ったが、「これで終わりじゃねえぞ」と吐き捨てた神取に対して答えたものだ。 「最強じゃないよ……いったい何が起こったのか、勝ったのか負けたのかわからないが……あの柔道かぶれにだけは絶対に負けない、絶対に負けない」  試合後の控室、「神取選手に勝ったのだから、プロレス界最強を名乗っても良いでしょう」と聞かれると噛み締めるようにコメントした。最後までプロレスラーとしてのプライドを誇示した言葉、姿勢が印象的だった。 ●ブル中野(全日本女子など)  女子プロ史上最高のヒールと言われたのがブル中野。大柄な身体ながら空中殺法を使うファイトで観客を魅了、WWWA世界シングル王座(全日本女子)獲得などで「女帝」とも呼ばれた。またCMLL世界女子王座(メキシコ)、WWF世界女子ヘビー級王座(米国)奪取など、世界的に活躍したことでも知られている。 「他のことはすべて捨てて、プロレスのみに生きる」 「ダンプ(松本)さんの試合は技で戦うものではなくて、凶器攻撃でお客さんに魅せるもの。私にはプロレスの心がある」 「強くなければプロレスラーじゃない、頭がよくなきゃ上には行けない、心がなければトップには立てない」  テレビ出演などで有名となった悪役・ダンプ松本の子分的立場でヒールをスタート。しかし誰にも負けないプロレスへの情熱を持ち続けた。 「もういいよ、とお客さんに言わせればいい」  90年11月14日、アジャ・コングとの金網デスマッチ戦(横浜文化体育館)は永遠に語り継がれる一戦。金網上からのギロチンドロップは雑誌・週刊プロレスの表紙を飾ったが、試合前には短い言葉ながらも覚悟を語っていた。 「憎まれて悔いなし、石投げられて悔いなし」  引退興行での言葉にもレスラー、そしてヒールとしての生き様が現れていた。リング内外で存在感を残した素晴らしいレスラーだった。 ●長与千種(全日本女子、ガイアジャパンなど) 「プロレスラーになれて本当によかった。プロレスが大好きです。今度また、この世に生まれてきたら、またプロレスがやりたいです」  女子プロ界のレジェンド・長与千種は1989年5月6日の横浜アリーナ大会で最初の現役引退。盟友ライオネス飛鳥とのクラッシュギャルズでのタッグ戦の他、シングル戦など数試合を行った後にマイクの前に立った。 「プロレスに対する情熱が急速に冷めてしまった」というのが引退理由だったが、プロレス愛は簡単になくなるものではなかった。1993年に現役復帰した後は、団体設立やプロデュースを行いつつ要所でリングにも上がるなど、プロレスへの思いの強さは誰にも負けないものがある。 ●風間ルミ(ジャパン女子、LLPWなど) 「私たちは男子と一緒に試合をするために、ジャパン女子に入ったのではありません」  昨年9月、病気のため55歳で亡くなった風間ルミも忘れられない名言を残している。シュートボクシングをベースにジャパン女子でプロレスを始めた。同団体の顔とも言える存在だったが1992年に退団、LLPWを立ち上げ社長兼レスラーとして奮闘。女子プロレスが男子より下に扱われることに関して思いの丈を語った言葉だ。全ての女子レスラーを代弁した魂の叫びであり、プロレス関係者の誰もが忘れないで欲しい思いでもある。 *  *  *  女子プロレスを取り巻く環境はかつてに比べ良くなった。スターダムは老舗・新日本のオーナー会社であるブシロード・グループ入りすることで急成長を遂げた。試合内容、集客力ともに男子団体を凌駕するまでになっている。またスターダム以外の団体にも注目選手が出現している。リング上の戦いはもちろん、胸に刺さる名言を発信できるなら女子プロレスは世間へさらに広がっていくはずだ。今後はどのような名言が生まれるのか。新たな時代の女子プロレスにも注目したい。
dot. 2022/07/12 18:00
Da-iCE花村想太×FAKYのLil’Fang、TVアニメ『オリエント』OPテーマをリリース
Da-iCE花村想太×FAKYのLil’Fang、TVアニメ『オリエント』OPテーマをリリース
Da-iCE花村想太×FAKYのLil’Fang、TVアニメ『オリエント』OPテーマをリリース  Da-iCEの花村想太とFAKYのLil’Fangがタッグを組み、7月11日にTVアニメ『オリエント』第2クール淡路島激闘編のOPテーマである「Break it down」をリリックビデオと共にリリースした。  同日に初回放送を迎えたTVアニメ『オリエント』第2クール淡路島激闘編は、『マギ』で知られる大高忍のマンガが原作。突如、戦国時代に鬼神が飛来してから150年後の日ノ本を舞台に、武蔵と小次郎が“最強の武士団”結成を夢見て鬼神に立ち向かうバトルアクションである。  OPテーマを務めるのは、Da-iCEの花村想太とFAKYのLil'Fang。OPテーマアーティストが解禁されると、SNSでは、「このコラボ想像してなかったし想像以上です!」「激アツすぎます」「2人ともパワーある歌い方だから楽しみ」といったコメントが多く集まり、早くもこのタッグに期待が高まっていた。  花村想太はDa-iCEにて仮面ライダー50周年記念映画『仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ』の主題歌「Promise」や、TVアニメ『オリエント』第1クールのOPテーマ「Break out」の作詞作曲を手がけ、Lil'Fangは『第36回東日本女子駅伝』大会応援ソング「It's a small world」の作詞作曲、オトナの土ドラ『リカ ~リバース~』主題歌および映画『リカ ~自称28 歳の純愛モンスター~』主題歌「99」の作詞を手がけるなど、パフォーマンスのみならず、共にクリエイティブ面でも評価を受けている。  今回のOPテーマ「Break it down」も、花村想太が作曲を、花村想太とLil’Fangが共作で作詞を手掛けており、疾走感溢れる力強いバンドサウンドに2人の最大の魅力であるハイトーンボイスを十二分に詰め込んだパワフルな一曲に仕上がっている。  歌詞は、「間違いと笑われた夢」「いくつもの死線越えて叫べ」などTVアニメ『オリエント』の世界観を丁寧に表現しており、作品を心から愛する2人だからこそ書けた内容となっている。  また、同日夜20時に公開されたリリックビデオは、戦いに挑む武蔵たちの勇姿が描かれており、逃げずと決めた覚悟が滲むサウンドと言葉の強さも相まり、挑戦するすべての人を鼓舞するようなパワフルな映像に仕上がっている。  なお、Da-iCEの花村想太とFAKYのLil’Fangがタッグを組んだ楽曲「Break it down」は、各サブスクリプションサービスにて配信中。TVアニメ『オリエント』第2クール淡路島激闘編は、テレビ東京で毎週月曜25:30に放送中だ。 ◎映像情報 YouTube『Break it down』 https://youtu.be/NJELX1zr1k8 ◎番組情報 テレビ東京『オリエント』第2クール淡路島激闘編 テレビ東京・2022年7月11日(月)毎週月曜25:30 BSテレ東・2022年7月14日(木)毎週木曜24:30 AT-X・2022年7月12日(火)毎週火曜23:00 ※AT-X リピート放送:毎週木曜11:00/毎週月曜17:00
billboardnews 2022/07/12 00:00
日本ゴルフ界の「新星」は出世間違いなし? 世界アマランク1位の“偉大な先輩”たちに続けるか
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日本ゴルフ界の「新星」は出世間違いなし? 世界アマランク1位の“偉大な先輩”たちに続けるか
日本ゴルフ界期待の中島啓太  昨年の国内男子ツアー、パナソニックオープンで史上5人目となるアマチュア優勝を飾った中島啓太。それ以来、国内ではツアープロを凌ぐ人気で注目を浴びている。  今年は松山英樹が優勝した米ツアーのソニーオープン・イン・ハワイで41位。国内ツアーでは、中日クラウンズで7位タイ、BMW日本ゴルフツアー選手権森ビルカップで11位タイなどの成績を収めている。海外メジャーはマスターズ、全米オープンとも予選落ちを喫したが、スター不在と言われる男子ツアーの中では、人気・実力ともにトップクラスと言えるだろう。  中島の人気と実力を認めているのは、国内ファンや関係者だけではない。1月には米国のマネジメント会社であるエクセルスポーツマネジメントと、日本人、そしてアマチュアゴルファーとして初めて契約。ソニーオープンの会場で契約書にサインしたことは話題となった。  エクセルスポーツマネジメントは、スポーツマネジメントで有名なIMG出身のマーク・スタインバーグ氏らが率い、ゴルフではタイガー・ウッズ(米)、コリン・モリカワ(米)、ジャスティン・トーマス(米)らが所属。日本人ではMLBヤンキース時代の田中将大、その他ではNBA、そしてNFLでプレーするビッグネームも名を連ねる。  ゴルフ界では、今年からアマチュア規定が改定され、アマチュア選手でも企業と契約したり広告活動をすることが可能になった。今回の中島の同社入りは、そうした事情も念頭に置いてのこと。中島は、Netflix(ネットフリックス)が制作・配信する海外メジャーなどで選手たちに密着するドキュメンタリーのメンバーとなることも発表されており、こうしたことからも世界のゴルフ関係者の中島に対する期待のほどがうかがえる。  そんな中島は現在、世界アマチュアゴルフランキングのトップに君臨している。初のトップは2020年11月のことだったが、一旦、頂点の座を譲ると2021年4月21日に再びNo.1になり、64週連続でトップに立っている。在位週は合計77週にのぼり、これは金谷拓実の55週、松山の1週を凌ぐ数字。2007年のランキング導入以降、この中島の在位週が最長となっている。  このアマチュアゴルファーとしての実力も、エクセルスポーツマネジメントが日本人、そしてアマチュアで初のアスリートと契約した理由なのだろう。  では、これまでこのアマチュアランキングでトップとなった選手はプロ転向後にどのような活躍を見せているのだろうか。  中島に次ぐ在位週を誇るのがスペインのジョン・ラームだ。ラームが初めてトップになったのはアリゾナ州立大時代の2015年4月。ここから25週連続で1位をキープし、一度陥落したが、再びトップになるとそこから35週連続でNo.1を維持した。合計の在位週は60週となっている。  ラームは翌年にプロ転向すると、着々とキャリアを重ねて2020年7月に世界ランキングでトップに立った他、昨年の全米オープンでは初のメジャー制覇も達成。これまでPGAツアーで7勝、欧州ツアーで6勝しており、元アマチュアランクNo.1の実績をそのままプロでも発揮していることになる。  ラームのように世界アマチュアランキングと世界ランキングともにトップになったのは、過去にラームを含め、男子で3人、女子で1人だけいる。初めてこの快挙を達成したのは、ローリー・マキロイ(北アイルランド)だ。マキロイがアマチュアでトップになったのは2007年2月で、17歳9カ月2日の時。在位期間はわずか1週だけだった。  これはマキロイが同年にプロ転向していることも関係しているだろう。プロ入り後のマキロイの活躍はご承知の通りで、2012年に22歳で世界ランクトップに立った他、これまでメジャーで4勝を記録。PGAツアーでの勝利数も21としており、世界を代表するトッププロに成長している。  両方のランキングでNo.1となったもう1人の男子プロがジョーダン・スピース(米)だ。2012年6月にアマチュアランクの頂点に立った時のスピースは18歳10カ月24日。ここから5週に渡ってトップをキープした。  スピースもその後すぐにプロ転向すると、2015年のマスターズ制覇などメジャー3勝を含むツアー通算13勝をマーク。2015年に22歳20日で世界ランクトップとなっており、こちらもマキロイのように、元アマチュアNo.1の実力をプロでさらに磨きをかけたプレーヤーと言える。  女子で両ランキングトップという快挙を達成したのが、ニュージーランドのリディア・コだ。現在25歳のコが、アマチュアランクでトップとなったのは2011年4月で14歳の時。ここから130週連続でこの地位をキープし、そのままプロ転向した。  コはこの間に米女子ツアーで2勝するなど既にプロツアーで活躍。プロになってからは2015年2月に世界ランクでトップに立つと、その後はエビアン選手権などメジャーで2勝し、ここまでツアー通算17勝を記録している。女子でプロ、アマの両世界ランキングで頂点を極めたのは、未だにコだけ。その実績は十二分と言えるだろう。  現在、日本体育大学4年生の中島は年内でのプロ転向が確実だ。果たしてプロ入り後の中島は、世界のトップに立つ元アマチュアランクNo.1の“先輩”たちの足跡をたどることができるのだろうか。少なくともアマチュアでの実績と世界の中島に対する期待度は、その可能性の高さを示している。
dot. 2022/07/11 18:00
若い世代の政治参加をもっと当たり前に 「NO YOUTH NO JAPAN」代表・能條桃子
若い世代の政治参加をもっと当たり前に 「NO YOUTH NO JAPAN」代表・能條桃子
地元、神奈川県平塚市の海辺で。「やりたいことが分からない時期が長かった。今が人生でいちばん楽しい」(撮影/山本倫子) 「NO YOUTH NO JAPAN」代表、能條桃子。21歳の時、留学先のデンマークで若い世代を含む「みんな」が選挙を一大イベントとして楽しむ熱気に触れた。この熱気を日本の若い世代にも伝えたいと、活動をスタート。「わかりやすくポップに」をコンセプトにインスタで発信。今では、8万人強に響くメディアへと成長したが、まだまだ道半ば。誰もが生きやすい社会を目指し、笑顔で前へ進む。 *  *  *  その2階建てのシェアハウスは、車一台がやっと抜けられる、都心の路地の奥まったところに立っている。  5月中旬の夕刻、三々五々人が集まってきた。彼らは、「NO YOUTH NO JAPAN(NYNJ)」の大学生メンバー。若い世代の政治参加をもっと当たり前のものにするため、インスタグラムなどのメディアで発信している団体だ。学生を中心に60人ほどのメンバーで運営している。4人が食卓を囲み、ぺちゃくちゃおしゃべりを交わしながら食事の準備を始めていた。  乾杯のフルーツカクテルをグラスに注ぐのは、NYNJの代表で慶應義塾大学大学院生でもある能條桃子(のうじょうももこ)(24)だ。メンバーの一人が「行列に並んで買ってきた!」とドーナツを皿に盛ると、スイーツ談議に花が咲く。部屋に甘い香りが広がる。  能條との打ち合わせで訪れていた友人で、発信活動をともにする福田和子(27)も一緒に手伝う。後から、環境問題で活動する仲間もシェアハウスに来て、食事会に加わった。リモートの会議で中座する人もいて、自由な雰囲気。能條が外部団体の代表とパソコンの画面越しにしゃべりながら、食事会のメンバーを紹介する場面もあった。  能條にとって、こうした会はオンとオフのどちら?と私が尋ねると、 「えーっと、今日はどっちかな。これがオフじゃなかったら、私の日常にオフなんてあるのかな?」  自虐も交え、屈託なく笑った。  2019年7月以降、能條の日常は劇的に変わった。参議院選挙直前に立ち上げたNYNJは、若い世代の投票率を上げるキャンペーンとして、グラフィックを多用し、「U30世代にも選挙のことがひと目でわかる」まとめインスタグラムを発信。「20代のための政策が後回しになるのはなぜ?」「そもそも政治って?」といった話題を取り上げた。 自室での能條。NYNJのメンバー60人とは、コミュニケーションツールのSlackとZoomを使ってやりとりするのが標準。「Zoomは息をするようにやってきた」というデジタルネイティブ世代だ(撮影/山本倫子) 森発言に「悔しい」の声仲間と抗議署名を集める  コンセプトは、わかりやすくポップに。「政治+インスタグラム+デザイン」という打ち出し方は当時日本にはまだなく、インスタを開設して2週間で1.5万人のフォロワーを集めた。DMで「こういうのが欲しかった!」「おかげで初めて投票に行きました」などの声が届き、能條は手応えを感じた。20年に一般社団法人化し、現在フォロワー数は8万人を超えた。 「活動するほど、いろんな人と『ともにやる意味』が大きいと実感できて、どんどん新しい世界が見えてきた。最初は2週間限定で活動する予定だったので、仲間からは『2週間限定って言ってなかった? 詐欺だよ』ってからかわれます」(能條)  次第に大手メディアから意見を求められる存在に。地上波放送でコメンテーターを務めるレギュラー番組を持ち、ネットメディアのイベントで座を仕切るファシリテーターを務めることもある。  結成から4年目を迎えた今年、再び参院選の季節が巡ってきた。  7月10日の投開票を前に、自身がU30社外編集委員を務めるハフポスト日本版の企画で主要7党を順々に訪ねた。能條は、国民民主党の代表・玉木雄一郎へのインタビューで、そもそも給料の水準が低いのに可処分所得が低くなっている若者の現状について、 「就職した友達からは『社会保険料が高すぎてビビる』という声をよく聞きます」  と、若者の温度感そのままに不安をぶつけた。  政治専門の広告会社「POTETO Media」代表の古井康介(27)はこう話す。 「能條さんは若い世代にとって、ジャンヌ・ダルク感がある。普段からめちゃくちゃ勉強して考えを深めてる上、実際にアクションもしていて、思考と行動の両面があるからなんでしょうね。根深い課題に本質的なアプローチで迫っていくところが、僕はすごくいいなと思っているんですよ」  能條個人に注目が集まったのが、21年2月、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会会長だった森喜朗の「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」という「森発言」への抗議署名だった。森の言葉に、SNSで抗議の声が上がった。能條は思った。  ──「ああ、またか」で済ませてよいの?  森発言のあった日、能條は前出の福田が開いた音声SNS「Clubhouse」に参加していた。福田は、日本の若者が当たり前に性の健康を守れる社会づくりに取り組む「#なんでないのプロジェクト」の代表で、ジェンダー研究にも携わる。Clubhouseでは、「私も身近な人からのこんな発言で悔しい思いをした」などと深夜零時をまわっても次々と声が上がり続けた。能條は、終了後、福田に即連絡を取った。 「わたしたちで、何かできないかな?」  福田と思いが一致し、人びとが声をあげやすい社会を目指す団体「Voice Up Japan」代表の山本和奈(25)にも声をかけた。福田は留学先のスウェーデンから、山本はチリから、日・欧・南米と地球をまたいで話し合った。  能條は3人の意見から行動の方向性を「声を可視化するには署名がいい。森会長個人の問題ではなく、組織の問題だから、女性理事の割合の改善と再発防止を組織委員会に求めよう」と集約。福田と山本が署名の文案を書き上げた。そこから賛同人が加わり、翌日夜にはSNSで署名運動がスタート。10日間で15万7千筆を集めた。 幼い頃からニュースに関心作文のコンテスト荒らしに  署名提出後の記者会見で、能條はこう語った。 「こんなことで怒らなければならないのは、私たちの世代で終わりにしたい」  森は辞任し、後任に橋本聖子が就任した。福田は言う。 「桃子は仲間への声かけが上手い。ネット時代のアクティビストは、出方によっては批判にさらされる。実際、一部に批判はあったけれど、彼女は本質的なところに焦点を当て、いい温度感で周りを巻き込みました。あの出来事で私たちはガッチリ横でつながって、もう、ほんとに戦友ですね」  社会のニュースには小さいころから関心があった。ゼネコンに勤める会社員の父と専業主婦の母のもと、神奈川県平塚市で育つ。多忙な父と平日に夕食を食べた記憶は、ほぼない。一時期は父子の交換日記でコミュニケーションを取っていた。読書家の父の影響で本好きになり、小5から池上彰のニュース解説本はほとんど制覇した。  自分の考えを文章や言葉にするのが好きになり、「入賞賞金が小遣いがわりになるぐらい」の作文コンテスト荒らしに。「妄想好き」が高じて、親戚の子に「きかんしゃトーマス」のパロディーの物語を創って絵本にしてあげた。親戚の誕生日の度に、2歳下の妹と誕生日会を計画し、近所に住む祖母(81)の家に集まっては、折り紙の花でいっぱい飾って、司会進行も買って出た。  祖母の家には毎日のように遊びに行った。今ではLINEも使いこなす「ポジティブおばあちゃん」は、自転車の置き方が上手というだけで褒めてくれ、そばにいると自己肯定感が上がった。親戚の多くが父方のルーツである平塚の近所に暮らす。運動会は親戚一同が応援に駆けつけた。 「今思えば、自分の存在自体が大事にされ、地域で人との豊かな関係の中で育まれた」(能條) デンマークに留学して選挙の熱気に刺激受ける  受験して私立豊島岡女子学園高校に進んだ。東大合格者ランキングで上位にあがる中高一貫校。入学後は中学からの内部生がみんな優秀に見えた。それまで地元では「頭がいいキャラ」と思っていた能條は、劣等生意識に苛まれる。それに加え、自分が育ってきた環境に罪悪感のような感情も芽生え、モヤモヤした。  高校ではみんな家庭の環境は似ていた。親が一様に教育熱心で、比較的安定した家庭で育った子が多かった。なかには「東大以外は大学じゃない」といった価値観で育てられた子もいる。  地元の公立中学と明らかに環境が違った。中学の友だちには、生活保護世帯や親の世話などで不登校になった子もいた。目の前の子たちには想像もつかない世界だろうな──。  自分だって高校受験のために、高い塾代を親に払ってもらった。自分には「自動ドア」が開いていただけだと、初めて社会の階層を意識した。  悩み多き高校時代、人生や社会のことを語り合える友人が増え、深いところで共感し合える知己を得たことは、救いだった。平野佑季もその一人。平野は能條との思い出を、こう話す。 「当時、持ち物は指定の肩掛けに入れる決まりで、私たちは『教科書が重過ぎてよろける』って身体への負担を学校に訴えたんです。それで、リュック登校を認めてもらえて。思春期特有のプチ反骨。あの時から、ちょっとしたアクティビストだったねと、この前、ももちゃんと話してたんですよ」  大学は慶應義塾大学の経済学部に進学した。サークル活動など、大学デビューの浮かれた熱は「あっという間に冷めた」。それより、自分の将来を考え、「将来子どもを産んだら、キャリアが一回止まる?」という焦りが募った。  専業主婦の家庭で育った能條は、「お父さんみたいにバリバリ働ける人になりたい」と考えてきた。高校時代にシェリル・サンドバーグの『リーン・イン』を読み、ジェンダー格差の是正に課題意識を持ったが、「私が大人になるころには解決してるかな」と淡い期待を寄せていた。  ところが、「女子が2割」(能條)の経済学部に入り、男女の格差をより意識するようになった。経済学は、際限ないコストカットを強いる資本主義の強者の論理に立っているとも感じていた。  インターンシップで早くから企業経験を積んだのは、「前倒しで人生設計するため」。仕事の面白さにのめり込んだが、やがて「今後経済成長が期待できない中で、男性に追いつく発想で働く社会が、本当にいい社会なのか」と疑問を抱いた。また、近しい同世代の子が自殺したことに心を痛めた。その子だけに限らず、若い人の生きにくさをつくる「わたしたちを取り巻く社会の壁」に思いを馳(は)せた。少子化、地域のつながりの減少、エリート偏重社会……と壁は至る所にあると感じた。  さらに今はもうない、若者と政治をつなぐ団体に参加しても、男性ばかりで馴染(なじ)めなかった。 「結局自分は何もできてないなと。文句ばっかり言ってる自分が嫌になった。この時期が一番苦しかったんですよ。人生に悩み過ぎて、何回泣いたかわからない」  ある勉強会で、デンマークの幸福度ランキングが高く、若者の4人に1人が行くと言われる「フォルケホイスコーレ」という、高校でも大学でもない全寮制の「民主主義の学校」があると知った。  現地の若者たちと暮らしながら、自分と社会の接点を見つめ直したい──。  19年4月、大学3年生の時に休学してデンマークに留学。その年は12年に一度のEU議会と国政のダブル選挙があり、デンマークではEU議会選で20代の投票率が50%を超えた。若者の多くが投票した緑の党が大きな勢力へと躍進。国政選挙での若者の投票率は80%ほどに上った。選挙前、学生同士が気軽な会話で政治のことを話題にしていた。留学した学校で世論調査を行ったり、学内の新聞紙上で選挙のジョークをネタとして扱ったり。  若者たちが、楽しみながら社会を変えていく光景を目のあたりにした能條は、強く思った。 「この熱気を、日本の若い世代にも伝えたい!」  ダブル選挙の後、能條はデンマークで知り合った瀧澤千花、高槻祐圭、黒住奈生の4人で現地の島を旅していた。日本の参院選の2週間前だった。 「そういえば、夏の参院選があるね」 社会の「余白」を残したい75年先の日本を思い描く  夜、宿泊先で雑談するうちに、能條はNYNJの活動を思いつく。宿で他の3人が就寝中に、「深夜の高いテンション」で企画書を書き上げた。瀧澤いわく「『私はこうやりたい!』を書き殴った演説でしたよ」という企画書には、若者目線の政党比較をつくる。発信はインスタグラムとグラフィックを使う。U30世代の投票率を上げる呼びかけを……などと書かれていた。「若い世代なくして日本はない」という意味を込めて団体名をつけた。 (文・古川雅子) ※記事の続きはAERA 2022年7月4日号でご覧いただけます
現代の肖像
AERA 2022/07/03 17:00
【書評】ディープ京都の息吹に触れる 通崎睦美の『天使突抜おぼえ帖』
【書評】ディープ京都の息吹に触れる 通崎睦美の『天使突抜おぼえ帖』
 ノンフィクション作家の後藤正治さんが『天使突抜おぼえ帖』(通崎睦美著、集英社インターナショナル 2200円・税込み)を読んだ。 *  *  *  著者の通崎睦美さんとは面識があり、マリンバの演奏会をのぞいたり、夕食を共にした日もある。ほがらか系の人で、本書を読みつつ、かのごとき活発にして多才なご婦人を生んだ源は、京の下町文化であるようにも思えてきた。  タクシーに同乗した帰り道、運転手に、「西洞院松原(にしのとういんまつばら)下ル」とおっしゃる。降りたった地は、下京区の町屋がびっしりと並ぶ狭い通り、天使突抜(てんしつきぬけ)1丁目──である。 「天使突抜」とは実在の地名である。伝承では、豊臣秀吉の時代、都市改造で五條天神の境内を突き抜けたことによりそうなったとか。町衆が自主的につくった街路だったという説も有力である。  通崎さんの両親は風呂敷製造の職人だ。自宅に届けられた反物を母が裁断し、父がミシンで三ツ巻縫製する。  北隣は「配膳(はいぜん)さん」。茶事や宴席のダンドリを仕切る裏方で、当地だけにある職であろう。その隣は「悉皆屋(しつかいや)さん」。着物のシミ落としや染めかえなどを請け負う呉服なんでも業。界隈、かような職人衆が暮らしている。  頭に花籠を載せて、白川女(しらかわめ)が「花、いらんかえ──」と売り歩くさまはドラマでもお馴染みだ。通崎家では、つい先ごろまで、御仏花(おぶつか)は北白川から荷車を引いてやって来るおばさんから買っていた。京野菜を届けてくれる「桂善(かつらぜん)のおじさん」もいたとか。  こんな町中で育った通崎姫、音楽の才は天賦だったようである。  マリンバを習いはじめたのは5歳の時、近くのお寺で開かれていた教室だった。市立小学校から同志社中学に進むが、すでに演奏家になりたいと思っていたという。高校への内部進学を辞退し、市立堀川高校音楽科へと転身する。案じる親にこう答えたとある。 《「もし、堀音(ほりおん)を落ちたら、女子プロレスラーになります」》  さもあらんと思う愉快な会話である。  打楽器を専攻して京都市立芸術大学大学院を卒業、以降、演奏家の道を歩んできた。寄り道も好きなようで、アンティーク着物の収集家としても有名だ。世界的な木琴奏者、平岡養一の遺族から木琴の名器を譲り受け、評伝を書き、木琴奏者ともなった。  本書の第一部は「天使突抜の人々」とあって、レッスンで出入りするお弟子さんたちについて触れている。子供たちから大学生、主婦たちとさまざまであるが、名刹・青蓮院(しょうれんいん)の奥方が市バスで通って来ているというのも京都ならではの風景であろう。  第三部は「通崎家の京都百年」。冒頭に、《京都のお店は、百年続いてようやく新参ものとして老舗(しにせ)の仲間入りを認められるという》とある。  通崎家と京都のかかわりは、大正期、曾祖父が富山の在所から当地に来たことにはじまり、通崎睦美で4代目、ようやく100年を経るとある。  父・弘さんは3代目。本書では病を抱えた高齢の日々が記されているが、評者は面識がある。温厚で風情のある「京男」で、謡(うたい)を愛する。どうしてこんな娘が育ったのですか、という問いにこう答えたことを思い出す。 「好きなようにさせていたらこんな風になってしまって……。われわれ庶民のできることはたかがしれてます。心がけてきたのは、音楽でも能でも歌舞伎でも、本物に接して育つようにと思ってきたことでしょうか」  それがなんであれ、一流を尊ぶのが京都人だ。近年、界隈に目立つのは新しいマンションで、町屋の棲み人も高齢化してきた。伝統的風習もすたれつつあるが、それでも積年の都が培った、下町人の気概は健在である。久々、ディープ京都の息吹に触れた気分。※週刊朝日  2022年7月8日号
週刊朝日 2022/07/02 17:00
私たちは真逆な「豆とにんじん」 夫が自宅で妻のカウンセリングをすることも
私たちは真逆な「豆とにんじん」 夫が自宅で妻のカウンセリングをすることも
 AERAの連載「はたらく夫婦カンケイ」では、ある共働き夫婦の出会いから結婚までの道のり、結婚後の家計や家事分担など、それぞれの視点から見た夫婦の関係を紹介します。AERA 2022年7月4日号では、関西学院大学建築学部で助手を務める那須(司馬)麻未さん、関西学院大学で大学職員として勤務する那須博樹さん夫婦について取り上げました。 *  *  *  2016年、夫32歳、妻28歳で結婚し、二人暮らし。 【出会いは?】夫の職場の先輩が開いた食事会で出会う。 【結婚までの道のりは?】夫から食事に誘い、二人で会ううちに意気投合し、約2カ月後に交際。結婚を意識していることを互いに伝え合い、半年後に夫からプロポーズして結婚。 【家事や家計の分担は?】料理や家事全般は主に妻、水回り掃除やごみ捨ては夫。状況に応じて、できる人ができることをする。財布は別で、夫が生活費を出し、妻の分を貯蓄に回す。 妻 那須(司馬)麻未[34]関西学院大学 建築学部 助手 なす(しま)・あさみ◆1987年、兵庫県生まれ。武庫川女子大学大学院生活環境学研究科生活環境学専攻博士課程修了、博士(生活環境学)。2021年から現職。建築計画を専門に、シェア居住における人間関係の形成過程や住まい調査から研究し、他大学で非常勤講師も務める  私の職は5年の任期があります。先の安定がない中でキャリアを積んでいくのに、夫の支えは励みです。家では互いに今日の出来事を話しますが、カウンセリングしてもらっている時もありますね。夫は客観視できる人で、悩んだ時も夫からの一言が前に進むきっかけになったり、新たな見方を教わったりもします。  料理が好きで、「めっちゃおいしい。幸せや」と夫が言ってくれる時間も好きで、家ではホッとできる場を作りたいと思っています。ですが今は研究の傍ら、他大学で非常勤講師もして慌ただしい毎日。余裕がなくて感情が表に出る私を、夫は「人間やなぁ」って(笑)。家事もより協力してくれているので、頑張りすぎないようにしています。  私たちは「豆とにんじん」のような関係。映画「フォレスト・ガンプ」で知った表現ですが、アメリカではよくその二つを合わせて煮込むことからいつも一緒にいる例えで、独特な言い回しが気に入っています。年老いても、そう言い合える二人でいましょう。 夫 那須博樹[38]関西学院大学 大学職員 なす・ひろき◆1983年、大阪府生まれ。関西学院大学大学院文学研究科教育心理学専攻博士課程前期課程修了。民間金融機関を経て現職。2012年からキャリアセンターで、学生支援プログラムなどの企画・運営、学生面談、企業対応、保護者向けイベントでの講演などを行う  元々、人の心に興味があって、大学では心理学を学び、キャリアコンサルタントや公認心理師などの資格を取りました。ファーストキャリアは重要ですし、自分でしっかり考えて道を選んでいく考え方を学んでもらえたらと思い、学生の支援を大切にしています。家では仕事のつもりはないんですが、妻から聞かれたら助言して、本人の意思を尊重しながらサポートします。  調和を重んじるタイプの僕に対して、妻は素直でまっすぐな人。役職者になった時、周りとの調和を考えるあまり、物事が決まらずに悩んでいたら、「ちゃんと自分の意見や考えを大切にした方がいい」と妻が助言をくれて、前に進めたこともありました。  感情豊かで、ストレートに自分の気持ちを出せる妻は、羨(うらや)ましくもあり、人間らしいなっていう思いも。性格は真逆で、互いに無いものを補い合っていますね。妻が着実に研究者の道を歩んでいるのが自分の事のように嬉(うれ)しいし、互いが自分らしく、二人らしく生きていけたらと思います。 (構成・桝郷春美) ※AERA 2022年7月4日号
はたらく夫婦カンケイ
AERA 2022/07/01 18:00
ジェーン・スー「キャリアプランと出産 働き始める前に知っておきたいいくつかのこと」
ジェーン・スー ジェーン・スー
ジェーン・スー「キャリアプランと出産 働き始める前に知っておきたいいくつかのこと」
働き始める前に知っておきたいいくつかのこと(イラスト/サヲリブラウン)  作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。 *  *  *  今年の頭から少しずつ単発のお仕事をセーブして、半期かかってようやく少し楽になりました。どうしてもやりたい案件もいくつかあったので、それらは昼夜を問わず頑張りましたが。  来年で50歳になります。長期的なプランなど皆無のまま、目の前のことを片づけていたら、あっという間でした。しかし、気力体力は圧倒的に低下している! 年月!  就職活動中の若者から、「キャリアプランが思いつかない」という相談を受けることがあります。「そんなの当然だから気にするな」と私は答えます。そりゃあ大学や高校在学中から先を見据えて人生設計をする賢人もいるでしょうが、計画なんてものは思い通りにならないもの。とにかく目の前のことを頑張っていれば、道は拓ける。40歳まではそれでいいのでは? と、私は思ってしまうのです。 (イラスト/サヲリブラウン)  と言いつつ、私は出産する気がなかったからそんなことが言えるのだとも思う。なので、先のアドバイスを女性にするときには「出産についてどう考えるかは念頭に置いておいて」と伝えます。我ながら漠然としており申し訳ない。  まだ起きてもいないことを心配するなとよく言われますが、出産に関しては、ある程度リミットに目星をつけておいたほうが良いという人も少なからずいる。自分の体を使って妊娠出産をするのであれば、生物学的に限界があるのは間違いありません。  たとえば私が30代前半で妊娠したら、そこから2年くらいはある程度仕事をセーブしなければならなかったと思います。体力的にも無理が利く、働き盛り第1期とも言える時期に。しかも、のんびりはできない。様々な武器を過積載した働き盛り第2期に仕事をセーブし「楽になった」と一息つくのとはわけが違います。  理論上、育児は複数の手で行うことができますが、出産は違います。回復にも個人差がある。この時期をどう乗り越えるかの知見を、就活中の女子と行政と経済界に授ける経験者が数多く必要なのではなかろうか。特に女子学生は、働き始める前に知っておきたいことだと思います。  自分の可能性には未確定要素が多く、ギチギチにプランを立てる必要はないこと。出産を念頭に置く場合、仕事のペースが崩れる時期があること。女性がこのふたつのバランスをうまくとる方法が「ひたすら頑張る」なんですよね、まだ。さすがにヤバいと思う。 ○じぇーん・すー/1973年、東京生まれ。日本人。作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニスト。著書多数。『揉まれて、ゆるんで、癒されて 今夜もカネで解決だ』(朝日文庫)が発売中。 ※AERA 2022年7月4日号
ジェーン・スー
AERA 2022/06/30 18:00
新リーグへの移籍決断「金銭面は大きく関係」 丸山茂樹が選手の心境を推量
丸山茂樹 丸山茂樹
新リーグへの移籍決断「金銭面は大きく関係」 丸山茂樹が選手の心境を推量
丸山茂樹  丸山茂樹氏は、PGAツアーから新リーグへの移籍問題、女子が男子に勝利したヨーロッパツアーについて語る。 *  *  *  新リーグの「リブゴルフ・インビテーショナルシリーズ」の第1戦(6月9~11日、ロンドン・センチュリオンGC)が始まるのに合わせて、米PGAツアーから重い発表がありました。新リーグに参戦する17選手に対しての、事実上の「追放宣言」です。  そんな中で開催された新リーグの初戦は、3日間54ホールのストロークプレーで争われ、南アフリカのシャール・シュワルツェル(37)が通算7アンダーで優勝。4人組の12チームで争う団体戦でも優勝し、合わせて475万ドル(約6億4千万円)の賞金を手にしました。  日本勢トップの13位だった木下稜介(30)でも31万5千ドル(約4200万円)ですからね。すさまじい金額でビックリしちゃいます。  それにしても、どうなっちゃうんですかね。お互いの意見もあるんでしょうけど、ほんとに難しいですね。我々の立場では何とも言えないなあ。  PGAツアーコミッショナーのジェイ・モナハンのコメントにあるように「(新リーグは)同じメンバーで3日間、毎回エキシビションマッチをやってるような大会」と言われればそうかなと思うし、PGAから新リーグに移った選手が「家族といる時間を大事にしたい」と言えば、確かにそうだなと思うし。  本音は言えないでしょ、選手は。「生活があるから、お金は必要だ」なんて。でも実際、金銭的な面は決断に大きく関係してると思いますよ。自分がそこの立場だったらと、いろいろ考えてみましたけどね。ほんとに難しい。前にも触れたように、年齢も関係してくるでしょうね。  ある程度の年齢になってたら、PGAツアーに区切りをつけて、新リーグのツアーで余生のゴルフを楽しみますという判断も十分にありうる。両方出たいから何とかしろ、なんてのは都合がよすぎるのかなあなんて感じもしますね。 新リーグの初戦で勝ったシュワルツェル(左、Getty Images)  28歳のブライソン・デシャンボーも7月1日スタートの第2戦から、新リーグに参戦します。もう全米オープンに勝ったからいいのか、莫大(ばくだい)な金額が動いたから「これは仕方ない。人生だ」と思ったのか。分からないですけどね。ハハハ。  さて、ヨーロッパツアーの「ボルボ・カー・スカンジナビア ミックス」(6月9~12日、スウェーデン・ハルムスタードのハルムスタードGC)で、このツアー初の女子優勝者が誕生しました。男女78人ずつが出て、スウェーデンのリン・グラント(23)が2位に9打差をつけての圧勝でした。  もちろん女子は、ティーショットを男子より前から打ってます。今回はちょっと女子の距離を短くしすぎたんじゃないかなと思います。グラントがティーショットを打ったら目の前がグリーンってのが、いくつもありましたから。  ただ、彼女のゴルフは完璧だった。アイアンショットを打てばピンにベッタリつくし、ティーショットもうまいですし。言うことのない内容だったと思います。 丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。 ※週刊朝日  2022年7月1日号
丸山茂樹
週刊朝日 2022/06/26 07:00
加藤登紀子「ミニスカートで東大に通ったら、“人心を惑わせる”と国から注意された」 大宮エリーとの対談で吐露
加藤登紀子「ミニスカートで東大に通ったら、“人心を惑わせる”と国から注意された」 大宮エリーとの対談で吐露
大宮エリーさん(写真右)と加藤登紀子さん(撮影/大野洋介)  作家・画家の大宮エリーさんの連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんぼのもんかと考えます。3人目のゲストは、在学中に歌手デビューした加藤登紀子さんです。 *  *  * 大宮:大学時代、部活とかしてました? 加藤:演劇をしようと思って入学早々部室を探したんだけど、女子ボート部に勧誘されて。これがみんな美人だったの。先輩が「ボート部に1年入ると美人になる」って言って。 大宮:え、で、まさかボート部に? 加藤:入ったわよ。男子ボート部の先輩がコーチをしてくれて、すっごいすてきだった。でも、ボートを担ぐときは一切手伝わない。スポーツだから自分たちでやれって。 大宮:それでやめたとかじゃないですよね?(笑) 加藤:結果的には、やめたの(笑)。私が入学した1962年は大管法(大学管理法)反対のデモがあったの。私、16歳で学生運動やってた人として有名だったから、勧誘がきて。「ボートなんかやってんじゃない」と、汚い学生寮に連れていかれ、学生運動に入っちゃって。 大宮:昔の仲間……(笑)。 加藤:例えば戦後、GHQに占領されて、そのときデモしたのは東大生。 大宮:なんかうれしいなあ。でも学生の反対運動が起こっても(60年に)安保は通っちゃった。 加藤:兄がそのとき「負けた」って言ったら、母が「勝つつもりだったの? 相手は日本、しかもバックにアメリカがいる。こんなものは敗北には入らない。負け続けてもやらなきゃいけないんです」って。母の演説、私の心のシーンになりました。 大宮:参加した大管法は? 加藤:あれは、勝ったんだと思う。 大宮:本当ですか。要するに学生の意見が国に聞き入れられた? 加藤:押し返した。安田講堂前のイチョウ並木が学生でいっぱいになった。その頃の学生のエネルギーはすごかった、それをあなたに伝えたい。 大宮:はい。熱気感じます。 大宮エリーさん(写真左)と加藤登紀子さん(撮影/大野洋介) 加藤:その一方で、私、クラスの自治委員に立候補して演説したの。「皆さん、100%正しいなんていうことは世の中にありません。だから私は自分の行動が100%正しいなんて言わない。ちょっとでも正しいかもしれないことをわかるためには、行動しなきゃだめです。デモに行こう」って演説したわけ。そしたら誰も投票してくれなかった。対立候補の「私たちは絶対正しい」に負けた。 大宮:えー! 加藤:これで東大生はインテリと呼べるのかと思いました。実存主義のサルトルやボーヴォワールの時代に、自分が絶対正しいみたいなことを言うなんて時代遅れじゃん、と。それで学生運動をやめました。そのあとは演劇研究会に入って、演劇をやめた後は歌も歌うようになって。 大宮:きっかけは? 加藤:父です。「女で東大に行って、そんなおもろない人生を送ってどうするねん」と言って、父がシャンソンコンクールに申し込んじゃった。 大宮:お父さんが才能を見抜いていたんですね。 加藤:もしかしたらね。歌手になって、ますます授業に出なくなり、6年目。55単位を1年で取らなきゃならず、大学に行くようになったら、所属事務所の社長のところへ、文部省(現文部科学省)から連絡がきてね。「ミニスカートでキャンパスの中を歩くのをやめさせなさい」って。 大宮:うわー国から? びっくり! 加藤:びっくりでしょう。デビューしたばかりで花柄のミニワンピとか着てたけど、それが人心を惑わせるんだって。ある先生は「君が来ると、僕もそわそわするから、単位はあげるから授業に来なくていい」って。 大宮:ずるいじゃないですか。 加藤:当時の東大は女性がまだ少なくて、男ばっかりの世界だったわね。 ○大宮エリー(おおみや・えりー)/1975年、大阪府出身。99年、東京大学薬学部卒業。脚本家、演出家などを経て、画家として活躍。瀬戸内国際芸術祭に出展作家として参加中。また、クリエイティブのオンライン学校「エリー学園」「こどもエリー学園」の学長も ○加藤登紀子(かとう・ときこ)/1943年、ハルビン生まれ。65年、東大在学中に歌手デビュー。68年に東大文学部を卒業。6月18日に東京・渋谷でコンサート「時を超えるもの」を開催。ウクライナ支援アルバム「果てなき大地の上に」を緊急販売中 ※AERA 2022年6月20日号
東大ふたり同窓会
AERA 2022/06/19 17:00
元テレ朝アナウンサー・大木優紀さん 転職後は「メディアに出たくなかった」理由
元テレ朝アナウンサー・大木優紀さん 転職後は「メディアに出たくなかった」理由
元テレビ朝日アナウンサーの大木優紀さん(撮影/加藤夏子) 元テレビ朝日アナウンサーの大木優紀さん(41)は、40歳を超えてからベンチャーの旅行会社「令和トラベル」に転職した。その挑戦の理由を聞きたいと取材依頼をすると快諾してくれたが、こんな言葉も口にした。「実は私、転職後はメディアに出て話すことはやめようと思っていたんです」。その言葉の真意とは? 自分なりの働き方を模索し続けた転職後の思いを聞いた。 「前編」から続く *  *  * ――2022年1月、大木さんはテレビ業界とは全く異業種の旅行会社「令和トラベル」に転職されました。同社は海外旅行予約のスマホアプリなどを開発・提供するベンチャー企業ですが、そもそも、海外旅行について高い関心があったのでしょうか。  すごくありました。テレビ朝日時代には年に2回の長期休暇は必ず海外旅行に行っていましたし、週末も何回かは弾丸ツアーで海外に行っていました。海外旅行に行くことをモチベーションに仕事をがんばっていたところもありました。ですから、コロナ禍になり、海外旅行に行けなくなってからはフラストレーションが溜まっていました。友達には「優紀は海外旅行に行けないから転職したんじゃないか」と言われるくらい(笑)。  私は旅前に綿密に計画を立てることが好きで、実際の旅はその“答え合わせ”をしに行くような感覚なんです。私自身はその手間が好きだったけれども、旅前の部分を簡単にして、手間を省きながらも海外旅行のワクワクを提供できるシステムにものすごく魅力を感じました。そのサービスを提供しようとしているのが今の会社でした。弊社のビジョンは「あたらしい旅行をデザインする」というものなのですが、それにすごく共感できるところがあって、もっとこのワクワクを広めたい! と思ってこの世界に飛び込みました。 ――テレビ朝日とは企業の規模も風土も違うとは思いますが、実際に入社してみてギャップを感じるところはありましたか。  ギャップというか、スキルも含めて何もかもが足りないと感じました。私は会社のビジョンに惹かれ、情熱だけで飛び込んでしまったので、新卒の学生さんのように自分の適性を考えたり、入社までに必要なスキルを鍛えたりすることはしてきませんでした。ですから、入社直後は本当に大変でした。まず、みんなが使っている言葉の意味がわからない。SlackやNotionが何のツールなのかもわからなかったくらいです。だから、本当にゼロから聞きまくって一つ一つ教えてもらって勉強していく毎日でした。でもそのレベルだったので、中途半端なプライドもありませんでした。「自分はわかっている」というプライドが少しでもあったら、もっと苦労したと思います。 大木優紀さん(撮影/加藤夏子)  環境の違いでいえば、オフィスにテレビが1台もないことにも驚きました。テレビ局はどこの部署にも10台くらいモニターがあって、すべての局の番組が常に流れています。だから最初は、テレビがなかったら世の中の動きがタイムリーでわからないのでは、と不安でした。「今、総理が何か重大発表をしたり、戦争が起こったりしたらどうするの?」なんて思っていました。でも実際に働いてみると、あらゆるツールを使って最新の情報を集めて、それをみんなで共有する仕組みができていました。テレビの前にいなくても、リモートワークで最新の情報に触れる環境になっていたので、またそれにも驚きましたね。 ――今は主に広報を担当されていますが、最初から広報志望だったのでしょうか。  転職する際には、入社後の具体的な業務までは考えられていなくて、採用をしてくれた人事の責任者に“お任せ”状態でした。リクルート出身の人事のスペシャリストがいると聞いていたので「それなら私を適材適所に置いてくれるだろう」みたいな(笑)。現在は広報という仕事を任せてもらって約5カ月たちますが、その間にもいろいろと自分なりに悩むところがあって、正直、先月くらいは結構落ちこんでいました。 ――どんなことに悩んでいたのでしょうか。  実はテレビ朝日を辞めた後、私は「もうメディアに出ることはしたくないな」と考えていたんです。アナウンサーも辞めて、違う仕事をすると決めたのだからメディアに出て話すこともやめようという気持ちでした。私が元アナウンサーという変わったキャリアを持っているがゆえに、イベントなどにお声がけいただくこともあったのですが、生意気ながら、最初は「元女子アナが~」みたいに書かれるのはちょっと違和感があったんです。  それと同時に、スキルも何もない自分が広報という仕事を任されていることへの自信もなくなっていて「経験者を採用していればもっときちんとしたPRができて、会社も飛躍するのではないか」などと思うようになっていました。今の会社でPRを任されているのは私一人なので、余計にそういう重圧を感じていた部分もありました。 大木優紀さん(撮影/加藤夏子)  ただ、6月に入ってから気持ちがふっきれたんです。たとえば、転職直後に旧知のジャーナリストである石戸諭さんからインタビューをして頂いたのですが、そのときは「メディアに出ていいのかな」と悩んでいた時期でもありました。でも結果的には、とてもいい記事に仕上げてくださって、その後、会社の知名度が上がったり、ホームページの検索が多くなったりという効果にもつながっていることがわかりました。  また、元アナウンサーという変わったキャリアがあるからこそ、新人広報なら会えないようなPR界の大御所の方が会ってくださったり、興味を持ってくださる方もいます。こうして取材に来て頂けるのもそうですよね。そういうことも含めて、最近は「私だからできる広報」というものがあるのではないか、と思えるようになったんです。恵まれた環境で働けるのも、やはりテレビ朝日でアナウンサーという仕事を経験したからですし、それをポジティブに捉えられるようになりました。 ――では、大木さんがこれから広報として目指したいものは何ですか?  すごく先のことを語れるわけではないのですが、5年先の目標としては、海外旅行予約アプリ「NEWT(ニュート)」が当たり前のように知られて、みんなが使っている状態にすることです。渋谷で若い人に聞けば、ほとんどの人に「あの海外旅行のアプリだよね」と言ってもらえるような状態にしたいなと思っています。 ――かつては「35歳転職限界説」などと言われたこともあり、40歳以上で転職をする人はまれでした。大木さんが40歳を超えて異業種に飛び込んだ今、キャリア転職を考えている人にはどんなメッセージを送りたいですか。  とても楽しいので本当にオススメですよ! 私は40歳の誕生日を迎えたときに、人生の山を登ったその先の景色が見えてしまったような感覚があったんです。でも、仕事を変えたことで、そこからまた新しい山に登れるような、もう一度人生をやり直せるような気持ちになりました。二回目の社会人生活が始められるのですから、こんなに楽しいことはないですよ。 大木優紀さん(撮影/加藤夏子)  年齢のことも気にしなくて大丈夫です。アナウンサー時代は「何年目」という見られ方をすることが多くて「何年目だからこの仕事をしていなくてはダメだ」みたいに年齢を意識する場面が多かったのですが、周りがキャリアを背負って入社してくる環境であれば、逆に年齢は関係ありません。転職してからの方が、むしろ年齢からは自由でいられるような気がします。  私はアナウンサーという特殊なキャリアしかなかったですし、一方で、アナウンサーとしては地味な存在だったと思います。それでも18年間で積み重ねたものは決して小さくはなかったと思います。表に見えるスキルだけでなく、ひとつの仕事を続けていく中で、自分では気づかないうちに蓄積されている“強み”は絶対にあるはずです。長くコツコツと働いているだけでも、それはすごいことです。みなさん、本当に自信を持っていいと思います。と、私が言うのも変な話なんですが(笑)。 (構成=AERA dot.編集部・作田裕史) ◎大木優紀(おおき・ゆうき)令和トラベル PRグループGM。1980年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、2003年にテレビ朝日に入社。アナウンサーとして『GET SPORTS』『やじうまテレビ!』『くりぃむナントカ』などを担当。2度の産休・育休を経て、復帰後の18年からABEMA『けやきヒルズ』、翌19年から『スーパーJチャンネル』を担当。21年末に同社を退社し、令和トラベルに転職。海外旅行アプリ「NEWT」のPRに従事。小学生の長女・長男の2児の母。
テレビ朝日令和トラベル大木優紀
dot. 2022/06/18 11:30
世界の「アイコン」エリザベス女王のユーモアな素顔 「お勉強」ではないドキュメンタリー映画公開
世界の「アイコン」エリザベス女王のユーモアな素顔 「お勉強」ではないドキュメンタリー映画公開
鮮やかな色合いのファッションと帽子がトレードマーク/2011年4月1日(写真:PA Images/Alamy Stock Photo)  英国史上最長となる在位70周年を迎えたエリザベス女王。祝賀ムードに沸く英国からユニークなドキュメンタリーが届いた。AERA 2022年6月20日号より紹介する。 *  *  * 「一番驚いたのは、若き日のエリザベス女王が実にグラマラスだったことでしょうか。あのポール・マッカートニーに『10代の僕らにとって、彼女がどれほどイケてるアイドル的な存在だったか!』と言わせるほどに」  と笑いながら語るのは、プロデューサーのケヴィン・ローダー氏(66)。本作の始まりは故ロジャー・ミッシェル監督のアイデアだった。ロックダウンで様々な映画の撮影がストップするなか、「アーカイブ映像を使ったドキュメンタリーなら作れる!」とひらめいたという。 「女王をテーマにすることが決まったとき、ロジャーは『ありきたりな王室ドキュメンタリーではなく、機知に富んでいてサプライズがある作品にしよう』と言いました」(ローダー氏)  たしかに本作は一般的なドキュメンタリーとは趣が異なる。女王の歴史を時系列で紹介するといった手法はとらず、「自宅にて」「馬上で」「ラブ・ストーリー」などのチャプターごとに、膨大なアーカイブ映像がテンポよくつながれていくのだ。  実際の映像に加え、王室メンバーそっくりのキャストが話題になったネットフリックスのドラマ「ザ・クラウン」や、映画「英国王のスピーチ」、コメディー番組などのシーンが数多く盛り込まれ、いかに女王が「アイコン」であるかがうかがえる。 戴冠式の日のエリザベス女王とエディンバラ公フィリップ殿下/1953年6月2日、バッキンガム宮殿(写真:The Print Collector/Alamy Stock Photo) ■ユーモアセンスが抜群  ここで女王の生涯を振り返ろう。1926年4月21日、ヨーク公夫妻の長女として生まれ、4歳違いの妹マーガレットと育つ。英国では毎年6月の第2土曜日に女王の「公的な誕生日」を祝う習慣があり、今年は「プラチナ・ジュビリー(70年の祝祭)」として盛大なイベントが開かれた。  女王が生涯の伴侶となるフィリップ殿下と出会ったのは13歳のとき。第2次世界大戦では女子補助地方義勇軍に入隊し、戦後は南アフリカへの外遊など海外を飛び回る。47年に結婚、52年に父ジョージ6世の崩御に伴い、25歳で女王に即位した。 婚約中のエリザベス女王とフィリップ殿下。おしどり夫婦として有名だった/1947年、バッキンガム宮殿 (c)Elizabeth Productions Limited 2021  長男チャールズをはじめ4人の子の母として、そして英国君主として人生の大半を過ごし、96歳の現在も現役。昨年亡くなったフィリップ殿下とのおしどり夫婦ぶりもよく知られている。  映画には公務室での雑談やインタビューに答えるおちゃめな姿、競馬場で「あの馬に賭けたのよ! 賞金がもらえる!」とはしゃぐ様子など、人となりがうかがえる映像が満載。そこから見えるのは、幼少期からスッと姿勢よく、ユーモアを忘れず、妹や周囲に気を配る「姉キャラ」な一面だ。ローダー氏も話す。 「とにかく印象的だったのは、彼女のユーモアセンスです。あまり面白みのなさそうな公務のときにも、自身のユーモアを使ってどこかに面白さを見つけようとしている様子が映像からも見てとれるのです」  特に貴重な映像は王室関係者が自ら撮ったホームムービー。BBC(英国放送協会)が撮影した宮殿内部の映像なども許可を得るのに苦労したそうだ。 ■ダイアナ妃事故の教訓  英国民にとって、女王とはどんな存在なのだろうか。 「世代による違いはもちろんありますが、基本的にイギリス国民は女王に対して愛情とリスペクトを持っています。彼女は在任中に間違った行動を一度もしていない。家族に対しても公務に対しても、全く非難する余地のない生き方をしてきたからだと思います。唯一、例外があるとすると、97年にダイアナ元妃が亡くなったときです。あのときだけは女王と王室は、国民のムードを適切に把握できていなかったように感じます」  ダイアナ元妃が交通事故で死亡した際、英国ばかりか世界中に衝撃が走った。だが、王室はコメントを出さず、宮殿に弔旗も掲げなかった。この対応に英国民の怒りが沸騰した。映画には多くの人たちの献花であふれるバッキンガム宮殿の前で女王が車を降り、人々と対話するシーンが映し出される。 エリザベス女王とフィリップ殿下、子どもたち/1960年9月9日、スコットランド東部バルモラル城(写真:World History Archive/Alamy Stock Photo) ■活躍する女性の象徴 「あれはまったく計画されていなかった行動で、先例のないことだったそうです。さらに、この後すぐに女王は映像を通じて国民に話しかける場を持った。ロイヤルファミリーは、国民がそこまで怒りを感じていることに対してショックを受けたのではないでしょうか。そして状況を見誤ったことを自覚し、すぐに対処したのだと思います」 Roger Michell(左):1956年生まれ。映画監督。「ノッティングヒルの恋人」(99年)などで知られる。2021年9月22日、本作完成後に65歳で急逝/Kevin Loader(右):1956年生まれ。プロデューサー。「ウィークエンドはパリで」(2013年)ほか10本以上のミッシェル監督作品を製作  この出来事から英王室は国民との関係を見直すようになった、とローダー氏は推察する。 「ウィリアム王子をはじめ、若いロイヤルファミリーは国民のムードを敏感に察知し、常に国民と同じ水の中で泳いでいなければいけないと考えています。国民と同じ感覚を失わないように努力していると感じます」  およそ100年におよぶ女王の人生を振り返ることは、そのまま世界の近代史を振り返ることでもある。英連邦王国の長として、さまざまな国や人とコミュニケートしてきた彼女は、女性活躍の先駆者でもある。 「イギリス人の誰一人として『彼女がもし男性だったら、より良い仕事ができた』と思う人はいないでしょう。使い古された言い方ではありますが、彼女は『フェミニスト・アイコン』です。女性であることが、その成功に重要な意味を持っていると私は思っています。母親的な存在や視点で、さらに人間味のある人柄で、国を率いることができたのでしょう」  残念ながらミッシェル監督は、この映画の公開を待たずに昨年9月に急逝した。女王の人柄を身近に感じられる本作はまさに監督自身のようだ、とローダー氏は話す。 「機知に富んでいて温かく、人間味がある。そしてちょっとしたいたずら心やユーモアがあるところもロジャーそのものです。この映画は『お勉強映画』ではありません。エンターテインメントとして楽しみながら、女王について考えたり、『もしも自分が女王だったらどんな感じだろう?』と感じたりしてもらえればうれしいですね」  映画「エリザベス 女王陛下の微笑み」は17日から全国公開。(フリーランス記者/中村千晶) ※AERA 2022年6月20日号
AERA 2022/06/18 08:00
“番狂わせ”起こすのは? サッカーW杯「ダークホース」になりそうな5チームを選出
三和直樹 三和直樹
“番狂わせ”起こすのは? サッカーW杯「ダークホース」になりそうな5チームを選出
カナダ代表のデイビス(写真/gettyimages)  今年11月開幕のサッカーW杯カタール大会。大陸間プレーオフが終了し、出場全32チームが出揃った。英ブックメーカー「ウィリアム・ヒル」が今年4月に公開したオッズ通り、FIFA ランク1位のブラジル、前回王者のフランスの2カ国を筆頭に、イングランド、スペイン、ドイツ、アルゼンチン、ベルギー、ポルトガル、オランダまでが優勝候補であり、この列強国の中から優勝チームが誕生する確率は高いだろう。だが、ベスト4、ベスト8に視野を広げると、予想外のチームが勝ち上がる可能性は、過去の大会同様に大いにある。では、今大会で“番狂わせ”を起こすダークホースはどの国になるのか。(文中のFIFAランクは2022年3月31日発表のもの)  俄然、注目を集めているのが、36年ぶり2回目のW杯出場となるカナダだ。FIFAランク38位。アイスホッケーとメープルシロップで有名な国であるが、サッカー人気も高く、自国開催(3カ国共催)となる2026年W杯へ向けた長期的強化を進めて来た中で、今大会の北中米カリブ海予選でメキシコ、アメリカを抑えて首位通過を果たした。チームには、アフリカにルーツを持つ選手が多く、特に圧倒的なスピードを持つ21歳のMFデイビス(バイエルン)、22歳のFWデイヴィッド(リール)の2人は、世界的にも注目されている若き逸材。その他の面々もMLSのレベルアップとともに確かな実力を持っている。グループF(ベルギー、クロアチア、モロッコ)を勝ち抜く難易度は高いが、女子代表を世界の強豪に押し上げたハードマン監督の下でチームの結束力も強く、サプライズの材料は揃っている。  その隣のスポーツ大国、アメリカも侮れない。FIFAランク15位。前回のロシアW杯では最終戦に敗れて予選敗退となる悲劇を味わったが、それまで7大会連続のW杯出場で、その間4度、決勝トーナメントに進出した。そして現チームには、FWプリシック(チェルシー)、FWレイナ(ドルトムント)、MFマッケニー(ユベントス)、DFデスト(バルセロナ)とビッグクラブに所属する選手たちが多く、個々のクオリティーは高い。今回の北中米カリブ海予選では3位通過となったが、2021年夏のゴールドカップではグループリーグ3戦全勝から決勝トーナメントでジャマイカ、カタール、メキシコをいずれも1対0のスコアで下して優勝。堅守速攻のスタイルでグループB(イングランド、イラン、ウェールズ)を突破すれば、過去最高のベスト8(2002年日韓大会)以上も見えてくる。   同じグループBになるが、プレーオフから勝ち上がったウェールズも可能性を秘めたチームだ。FIFAランク18位。今回、欧州予選E組でベルギーに次ぐ2位に入ると、プレーオフでオーストリア、ウクライナを破り、64年ぶり2回目のW杯出場を決めた。この「64年ぶり」は史上最長間隔。これまで何度も打ちひしがれ、“名手”ギグスの時代にも届かなかった本大会行きの切符を手に入れた選手たちのモチベーションはかつてなく高い。来季の所属が未定のFWベイルのコンディションは気になるところだが、この男の左足による“一発”があれば、どの強豪国が相手でも勝つチャンスはある。イングランドとの英国対決をライバル心剥き出しにして制することができれば、一気に勢いに乗り、旋風を巻き起こせる。  毎大会ダークホースとして名前が挙げられるアフリカ勢の中では、セネガルが最も力がある。FIFAランク20位。爆発的なスピードと高い決定力を持ち、今夏のバイエルン移籍が秒読み段階と言われるFWマネ(リバプール)をエースに、GKメンディ(チェルシー)、DFクリバリ(ナポリ)、MFゲイエ(パリSG)と各セクションに欧州の一線級プレイヤーを揃え、今年の年始に行われたアフリカネイションズカップでは決勝でエジプトを下して初優勝を果たすと、W杯予選でも再びエジプトとの激戦を制して2大会連続3回目の本大会出場を決めた。堅守からのカウンターの切れ味は非常に鋭く、グループA(カタール、オランダ、エクアドル)と組分けにも恵まれた。20年前の2002年日韓W杯の開幕戦でフランスを破り、最終的にベスト8まで勝ち上がったディウフたちのチームを上回る成績を残す可能性は大いにある。  欧州予選A組を無敗(6勝2分敗)で首位通過したストイコビッチ監督率いるセルビアは、間違いなく強い。FIFAランク25位。伝統的に技術と体格に恵まれた選手が多いが、現チームで特筆すべきは前線の充実ぶりだ。22歳のFWヴラホビッチ(ユベントス)は今大会注目のストライカーであり、ここに魔法の左足を持つMFタディッチ(アヤックス)と高い技術と得点力を持つMFサビッチ(ラツィオ)が絡み、さらにミトロビッチ(フルハム)、ヨビッチ(レアル・マドリー)が控える陣容は実に豪華だ。守備陣に課題を抱えるが、同国の英雄“ピクシー”が絶対的なカリスマ性でまとめ上げたチームは、上位進出の資格を間違いなく持っている。まずはグループG(ブラジル、スイス、カメルーン)を突破することから。初戦のブラジル戦は注目の一戦になる。  その他、MFモドリッチ(レアル・マドリー)を擁して前回W杯準優勝となったクロアチア(FIFAランク16位)、EURO2020でベスト4入りしたデンマーク(FIFAランク11位)は非常に洗練されたチームであり、7大会連続で決勝トーナメント進出中のメキシコ(FIFAランク9位)、経験豊富なベテラン勢とFWヌニェス(リバプール)らの新鋭が融合する南米予選3位のウルグアイ(FIFAランク13位)などは、ダークホースと呼ぶには有り余る力がある。その中で開催国のカタール(FIFAランク51位)の戦いぶりも注目される。そして何より、日本(FIFAランク23位)はダークホースとして波乱を起こすことができるのか、それとも単なるアウトサイダーとして大会を去るのか。約5カ月後のカタールの地で、日本だけではなく多くの国が“番狂わせ”を目論んでいる。 (文・三和直樹)
W杯
dot. 2022/06/17 18:00
体育座り、重いランドセル……根深い“昭和の管理教育”が子どもの考える力を阻む要因に
体育座り、重いランドセル……根深い“昭和の管理教育”が子どもの考える力を阻む要因に
「体育座り」は体に負担がかかると指摘する声が専門家からも上がっている  多くの人がなんの疑問もなくやっていた「体育座り」。ところが、専門家は体に負担のかかる座り方だと指摘する。学校で、体に悪いルールがまかり通っているのはなぜなのか。AERA2022年6月20日号の記事を紹介する。 *  *  *  学校の集会などの定番の座り方といえば「体育座り」。ひざを曲げて両手で抱え込むあの座り方だ。だが、嫌な思い出を持っている人も少なくない。栃木県在住の女性(33)もその一人だ。 「体育館での集会や講演会で、長時間体育座りをした際は、硬い板の床とお尻の骨が当たり、痛みと不快感が出て、終わるまで耐えていた」  千葉県に住む56歳の女性も次のように振り返る。 「私はガリガリにやせていたので、尾てい骨が痛くて、長いこと体育座りができませんでした。動くとしかられた時代でした」 ■呼吸も行いにくくなる  アエラが5月に行ったウェブアンケートでは、子育て中の世代からも「子どもも痛いと言っていた」など、体育座りによる痛みについてのコメントが複数寄せられた。  座った時の痛みについては調査も行われている。国際医学技術専門学校(名古屋市)で教壇に立つ理学療法士の増田一太博士が2014年に小学5年生から高校3年生までの939人に実施したアンケートでは、腰痛を感じると答えた子どものうち、66.4%が「座ったときに痛みを感じる」と訴えた。そのうち、「体育座り」の時に痛みを感じるとした児童・生徒は52.3%(複数回答可)と、半数以上を占めたのだ。 「股関節を屈曲した状態で、両手で両膝を抱え込むため、背骨が曲がりやすい姿勢です。呼吸も行いにくくなることに加え、その姿勢で長時間いると腰の痛みを発症しやすくなります」(増田さん) ■長時間同じ体勢がダメ  多くの子どもたちが痛みを感じているにもかかわらず、なぜ、今日にいたるまで「体育座り」を改善しようという動きにならなかったのか。増田さんは理由の一つに、子どもの腰痛に対する認識を臨床現場も持っていなかったことを指摘する。 AERA 2022年6月20日号より 「当時の子どもの腰痛の認識は、専門書を見ても、整形外科的観点では骨折ぐらいでした」  増田さんによれば、各自治体で子どもの医療費軽減の動きが活発化した11年頃から、整形外科を受診する子どもの数が増加したという。腰痛を訴える子が多くみられたので、調査を始めたところ、腰の痛みを引き起こす原因の一つに「体育座り」があることが分かった。  それなら、あぐらなど別の座り方なら良いかといえば、そういうわけではないという。 「腰に負担がかかるのは、長時間同じ体勢でいることです。『体育座りがダメであぐらが良い』ということではなく、ちょっと痛いなとか、苦しいなと思ったら、自分で座り方を調整してもよいという本人や学校の認識が大事になります」(同)  体育座りのほかにも、学校には、体に良くないルールや慣習がある。例えば、増田さんは、学校で使われている机についても、見直しが必要だと指摘する。座った姿勢で机の板が肘の位置とほぼ同じ高さにくるのが正しい高さだと習っているが、実はこの高さだと鉛筆でノートを書くには低すぎるというのだ。 「鉛筆の場合、書字の際に必ず肘が机に置かれた状態で文字を書きます。この姿勢で考えるならば、机はもっと高い位置にあるほうが、腰が曲がらず、体への負担が少なくなります」  アエラのアンケートでは「重たすぎるランドセルによる通学」を指摘する意見もあった。特に近年は小学校でもデジタル化の影響でタブレットやノートパソコンを持ち歩くことも多くなった。既存のノートと教科書だけでも重かったランドセルがさらに重くなり、子どもたちの肩にのしかかっている。  今年、子どもが小学校に入学したばかりだという都内在住の女性は言う。 「もうすぐ1年生もタブレットが配られると聞いています。今でも十分重たいカバンがこれ以上重くなるのは体に負担にならないかと心配です」  別の保護者も疑問を口にする。 「海外のように布製のリュックではだめなのかなと感じます」  だが、増田さんによれば、重い物を運ぶ観点で見た場合、ランドセルは理にかなっているという。 「ランドセルは底がしっかりしているので、硬い面で荷物が支えられ、形状としては悪くありません。そのことよりも、学校への持ち物の取捨選択が必要で、中に入れる量があまりにも多ければ、腰が曲がり、腰痛の原因になってしまいます」 ■体温調節一律おかしい  高額という金銭的な問題はあるものの、荷物を運ぶ道具としては一級品。となると、自分で重さを考慮して、持ち帰る量を調節できるようにすることが大切になりそうだ。  福岡県在住の中学生と高校生の母親(46)が疑問を抱くのは、下着に関する慣習だ。  女性の子どもが通う学校では、体育の授業で体操服に着替える際、体操服の下にはなにも着ないようにというルールがあったという。都内在住で小学5年の女児を持つ母親も、同じルールが腑(ふ)に落ちない。 「汗をかいて下着がぬれた状態で服を着ると風邪をひくといった理由だと思いますが、学年が上がると女子は胸も気になります。娘に下着を着けたらと勧めても、『着ちゃいけないルールだから』とかたくなに拒む。おかしいですよ、やっぱり」  前出の福岡の女性もこう疑問を呈す。 「冬寒くてもひざ掛けも使えない。体温調節に関することが一律で決められすぎている」  一律の決まりがあれば管理はしやすくなる一方で、子どもが自分で考える力は削がれていく。下着を着るのを拒む女子児童のように、周りと違うことはいけないという刷り込みにもなる。  本来は、こうした身の回りのことを考えることこそ思考力を養う練習になると話すのは、『世界のエリートが学んできた「自分で考える力」の授業』の著者で慶應義塾大学などで講師を務める狩野みきさんだ。 「子どもの考える作業を阻む要素の一つが、“そういうものだから”と大人がルールを押しつけることです。下着を着るか着ないかについて言えば、目的は風邪をひかないことでしょう。ぬれた下着を着ないということならば、下着の替えを持っていくなど、別の案でも工夫できます。一律にしてしまうよりも、ゴールに向けてクリエイティブに頭を働かせるほうが、思考力をつけられます」  昭和の管理型教育から抜け出さない限り、日本の子どもたちのクリエイティビティーを育てるのは難しい。学習もさることながら、生活面においての指導も変わらなければ、思考力豊かな子どもの育成は、指導要領の文言だけで終わってしまう。 <体に悪い学校のルールここがヘン!> ※アンケートは5月にAERAネット会員を通じて実施。寄せられた回答の中から意見を抜粋した ●子どもの学校では体育で着替える時下着は脱いで体操着だけ着る。冬寒くてもひざ掛けは使えない。体温調節に関することが、ルールとして一律に決められすぎている。管理しにくいという理由でルールが厳しくなっているが、かえって取り締まりに時間を割いている印象があります。(46歳・女性・福岡県) ●「健康な子どもになってほしいから、一年を通じて半袖半ズボン」という校長の鶴の一声で、真冬もその格好でいさせられた。南国でもないのに、非常につらく風邪もひいた。先生たちは冬に着こんでいるのに、生徒に対する思いやりはゼロかと理不尽さを感じた。(54歳・女性・千葉県) ●体育着のシャツインは放熱を妨げてしまう。校外での活動や移動中、暑さと紫外線から守るために必要な日傘やサングラスの使用が不可なこと。5時間目の体育は、昼食直後は消化活動が活発なため、運動には適さない。(38歳・男性・東京都) ●子どもが中学校の吹奏楽部で、バリトンサックス(約8キロ)を演奏時には首から下げていたこと。成長期の子どもの首に2キロ以上の重い楽器を下げて吹かせるのは相当な負担になると思った。(59歳・男性・岡山県) ●全校集会はそもそも全校生徒を1カ所に集める理由がわからないのと、立ったまま話を聞かせたいのなら10分程度にするべきだと思っていました。毎回必ず何人か倒れるのに、どうして学校は改善しようとしないんだろう、と疑問でした。トイレを素手で掃除させられたのは、今でも嫌な思い出です。(49歳・女性・東京都) ●子どもは、まだ衣替えでないからと、暑い日に制服の上着を着て登下校するように言われ、下校時顔を真っ赤にして帰ってくる。気候が年々変わっているので、移行期間を長くしたり、年中自由にしてほしい。(女性・鳥取県) ●体育館での集会や講演会で、長時間体育座りをした際は、中盤から硬い板の床とお尻の骨が当たり、お尻に痛さと不快感が出ていた。終わるまで耐えていたことも含め、心身ともにしんどかった。(33歳・女性・栃木県) ●子どもが運動会での組み体操で中学受験前に右手を骨折。ルールや慣習に対して保護者が意見を言っても検討もしない、考えようともしない。(62歳・女性・東京都) (フリーランス記者・宮本さおり) ※AERA 2022年6月20日号
AERA 2022/06/17 08:00
絶対行くべき北海道のおすすめゴルフ場6選を紹介
絶対行くべき北海道のおすすめゴルフ場6選を紹介
大自然が魅力の北海道。冬場は雪の影響でゴルフ場がクローズしているため、北海道のゴルフ場は4月から11月がシーズンです。広々とした土地を生かしたゴルフ場が多く、プロトーナメントが開催される人気コースも多数あります。夏場も気候が穏やかなので、快適にラウンドできるのも魅力です。 今回はそんな北海道にあるゴルフ場のなかから、おすすめのゴルフ場を紹介。雄大で美しい自然を楽しめる北海道のゴルフ場は旅ゴルフにも人気です。次のゴルフは温泉や海産物、観光も同時に楽しめる北海道で、プレーを満喫してみてはいかがでしょうか。 ※外出の際は、手洗い、咳エチケット等の感染対策や、『3つの密』の回避を心掛けましょう。 ※新型コロナウイルス感染拡大の影響で外出の自粛を呼び掛けている自治体がある場合は、各自治体の指示に従いましょう。 ※お出かけの際は、各施設の公式ホームページで最新の情報をご確認ください。 北海道ポロトゴルフクラブ(北海道白老GR) 樽前山と太平洋の美しい眺めを楽しみながらラウンドができるロケーションに恵まれたゴルフ場です。自然と調和したリゾートコースで、心も体もリフレッシュしながらゴルフが楽しめます。クラブハウスには温泉やサウナも設置されており、樽前山と太平洋を望みながらラウンドの疲れを癒せるのも魅力。新千歳空港からは道央自動車道で約44分とアクセスも良好です。 ■スポット情報 北海道ポロトゴルフクラブ(北海道白老GR) 所在地:北海道白老郡白老町社台292-157 問い合わせ:0144-82-5515 営業時間:記載なし 千歳空港カントリークラブ 3つのチャンピオンコースからなる10457ヤードの千歳空港カントリークラブ。「はくちょうコース」はチャレンジングなレイアウトでビギナーからシングルプレーヤーまで楽しめるコースです。「せきれいコース」は森を生かしたロングコースで、マイナスイオンを浴びながらラウンドが楽しめます。「おしどりコース」はベテランプレイヤーも唸る本格コースで、テクニックが要求されるコースです。中村寅吉氏が設計した個性あふれるレイアウトで、コースごとに違うゴルフの楽しみを感じられます。 ■スポット情報 千歳空港カントリークラブ 所在地:北海道苫小牧市植苗291 問い合わせ:0144-58-2011 営業時間:記載なし ゴルフ5カントリー美唄コース(旧アルペンGC美唄) ピート&ペリー・ダイ両氏が設計したゴルフ5カントリー美唄コースは、スコティッシュ・アメリカンスタイルのコースになっています。7つの湖と独特なアンジュレーションからなるレイアウトが魅力で、自然の美しさを生かしたコースは、ビギナーからベテランまで挑戦しがいのあるコースです。冬場には土日祝限定で、雪上ゴルフが楽しめ、小さなお子さんが楽しめるスノーアクティビティも充実しています。 ■スポット情報 ゴルフ5カントリー美唄コース(旧アルペンGC美唄) 所在地:北海道美唄市字茶志内250-1 問い合わせ:0126-65-2889 営業時間:記載なし 北海道ゴルフ倶楽部 全く表情の異なる2つのコースからなる北海道ゴルフ倶楽部。アメリカンタイプで美しい景観とフラットな土地を生かしたイーグルコース、スコティッシュタイプでマウントが大小のラフで構成されたライオンコースがあります。どちらもゴルフコースのデザイナーとして知られる加藤俊輔氏が設計しました。 白壁が映えるクラブハウスは景観に溶け込んで美しく、開放的な雰囲気の練習場でラウンド前の練習から楽しめます。戦略的なゴルフを楽しみたい方におすすめです。 ■スポット情報 北海道ゴルフ倶楽部 所在地:北海道苫小牧市錦岡440-1 問い合わせ:0144-67-6811 営業時間:7:00 ~ 18:00 樽前カントリークラブ アコーディアグループの樽前カントリークラブは、1963年に開場した歴史あるゴルフ場。上田治氏が設計に携わっており、カジュアルにゴルフを楽しめる中難易度のコースが特徴です。フラットなコースレイアウトとなっており、どのホールからでも雄大な自然が楽しめます。2007年には日本女子オープンも開催されました。 樽前山と太平洋を眺めながら、豪快なショットを楽しむことができます。コロナ禍の対策として、現在はスループレーのみとなっています。 ■スポット情報 樽前カントリークラブ 所在地:北海道苫小牧市錦岡491 問い合わせ:0144-67-0131 営業時間:記載なし ザ・ノースカントリーゴルフクラブ 2021年にセガサミーカップゴルフトーナメントが開催されたオールベント芝のコースです。オールベント芝のコースは、国内でも数コースしかありません。青木功氏が集大成と語っているチャレンジングなコースで、スコットランドの伝統とアメリカの最新の手法を取り入れて、北海道の土地を生かしたフラットなレイアウトが魅力。コースには8の池が配されており、最終3ホールは水の名物ホールとしても知られています。新千歳空港から10km以内とアクセスが良好で、旅ゴルフにもぴったりな立地です。 ■スポット情報 ザ・ノースカントリーゴルフクラブ 所在地:北海道千歳市蘭越26 問い合わせ:0123-27-1111 営業時間:記載なし 大自然でゴルフを楽しみたいなら北海道のゴルフ場がおすすめ! 北海道のゴルフ場はどのゴルフ場も雄大な土地を利用して設計されており、自然を感じながらゴルフを楽しむには最適です。オープンしている時期は限られていますが、自然と向き合いながらプレーするゴルフの魅力を最大限に感じることができるでしょう。 ゴルフのスケジュールが決まったら、当日の天気が気になりますよね。tenki.jpの全国のゴルフ場の天気なら、ゴルフ場の天気がピンポイントでチェックできます。1時間ごとの気温や降水量の変化も一目でわかるので、ゴルフに行くときにはぜひ活用してみてください。ゴルフライフがもっと快適になりますよ。
tenki.jp 2022/06/11 00:00
日本初のUFC王者なるか MMA界の“新星”平良達郎に「無限の可能性」感じるワケ
日本初のUFC王者なるか MMA界の“新星”平良達郎に「無限の可能性」感じるワケ
平良達郎(中央)のUFCデビュー戦でセコンドに付いた岡田遼(左)と松根良太(右)(写真は岡田遼氏からの提供)  日本時間5月15日、沖縄の本土復帰50周年となったこの日、那覇市出身の平良達郎がUFCデビュー戦で勝利した。現在、国際舞台で苦戦が続く日本総合格闘技だが、平良は11戦11勝無敗の戦績はもちろん22歳と若く、日本初のUFC王者を期待される選手である。そんな平良の先輩であり、UFCでのセコンドを務めた第11代修斗世界バンタム級王者・岡田遼に、平良の人となり、そして今後の戦いについて聞いた。 「結局、松根良太さん(平良の師で所属するTheパラエストラ沖縄代表)も言ってましたけど、達郎のデビュー戦は100点だったんじゃないかと」  UFC以前の10戦では10勝のうち3KO・5つの一本勝ちとフィニッシュ率の高さも魅力の平良だが、デビュー戦となったカルロス・カンデラリオ戦ではバックからチョークを獲りかけるも一本ならず判定勝ち。なぜ、その試合に100点をつけるのか。 「UFCのオクタゴンで5分3R、やれる最大限の時間を使って戦って、すごくよかったんじゃないかと思います」  2020年11月の清水清隆戦こそ3Rの判定勝利だった平良だが、その後は21年3月の前田吉朗戦、同年7月の福田龍彌戦、11月のアルフレド・ムアイアド戦といずれも1R一本勝ちを収めており、もつれて競った試合でまだ試されていない側面があった。 「本人も長いラウンドのシンドい試合をしたことがないっていうのがコンプレックスだったみたいです。なので、ずっと念願だった試合ができてよかったんじゃないですかね」  2R、バックに回りチョークを狙うも獲り切れず、ここでのエネルギーロスから最終Rの動きが懸念された平良だが、カンデラリオのギロチンを逃れ、再びバックに回ってチョークとフェイスロックを狙って終了。30-26、30-27、30-27とジャッジによっては4点差をつける大差で完勝を果たした。 「(2Rで力を使い疲れてしまってないか)僕も心配だったんですけど、松根さんはそこまで見えていて。『決定的なチャンスが来て極めに行くけど極められないっていうパターンもある。その時に“あぁ疲れた、ダメだ”じゃなく、15分しかないんだから15分やり続けよう』っていう話はずっと松根さんがしてました。達郎もそれがあったから“これも想定の範囲内だな”と思ったみたいです」  デビュー戦でセコンドおよび、サポート役として同行しただけでなく、岡田は平良と1カ月の海外修行もともにしてきた(今年1月~2月)。 「向こうでは2部練・3部練をして朝から一日練習だけの生活をしてるんですけど、“この子スゴいな”と思うのは、家に帰っても、あいつはまた格闘技の動画を観始めるんです。帰ってからは余暇で何もしなくていいのに、義務じゃなく、好きで本当に楽しみながら観ているんです」  練習場所としたメガジムでは有名・無名、様々なUFCファイターと遭遇。その選手の試合を帰った後で“あの選手はどんな試合をするんだろう”と観ているのだという。そんな平良を岡田は次のように喩える。 「格闘技が本当に好きで、もう空気のようになってますよね。付き合いたての彼女ってすごく好きでずっと一緒にいるのが苦じゃないですけど、長くなってくるとだんだん自分の時間がほしくなってくる(笑)。達郎は始めてもう7年で、戦績もこれだけ積んでいるのに、付き合いたての彼女みたいに格闘技と付き合ってます。朝から晩まで1日中やってるにも関わらず、終わってからまた格闘技を観る。僕にはできないし、ちょっと普通じゃないです。好きで始めた格闘技もずっと練習ばかりしていると“息抜きがほしい”ってなってしまうのに、彼はそれがなくて格闘技に一途なんです」  岡田はまた、自身が見聞きしてきた王者たちの話を付け加える。 「以前ATT(堀口恭司も所属するフロリダの名門チーム)へ行った時、ちょうど女子ストロー級チャンピオンだったヨアナ・イェンジェイチックが試合前で、鬼気迫る表情で毎日とんでもない熱量で練習をして、プロ練が終わっても練習するんです。佐藤天くん(UFCウェルター級ファイター)は現UFCウェルター級王者のカマル・ウスマンと元々チームメイトだったので『どんな感じなんですか?』って聞いたら、『ウスマンは練習が終わっても練習してます』って言ってました。扇久保博正さんも練習が終わってもずっと練習するんです。達郎も練習が終わっても練習するので、そういう共通点はあるなって。松根さんのイズムを存分に受けてると思いますけど、純粋に格闘技が好き、“もっと強くなりたい”“もっと上手くなりたい”っていうピュアな向上心だったり探究心が彼はすごくあるんです」  UFCフライ級での今後の戦いについてはどうだろう。 「今回は相手のカンデラリオもUFCデビュー戦でしたけど、フライ級もランキングに入ってなくてもメチャクチャ強いやつがいっぱいいます。最近UFCと契約したムハマド・モカエフっていう選手も達郎と同じ無敗でメチャクチャ強くて注目されてます(強豪が多く輩出されるダゲスタン共和国出身の21歳)。他にも、フライ級でランキングには入っていないけど『エクストリーム・クートゥア』の練習では俺も達郎もやられた選手もいましたし、ランキングの14位にはマネル・ケイプもいます。そこら辺が壁になってくるんじゃないですかね。でも、どの選手と当たっても、UFCに弱いやつはいないので」  現在フライ級のランキングを見渡すと、王者デイブソン・フィゲイレード以下、1位はブランドン・モレノ、2位はカイ・カラ・フランス、3位はアレクサンドル・パントージャとなっており、上位1位~3位は平良と岡田の先輩である扇久保と2016年にリアリティ番組「The Ultimate Fighter」(TUF)のトーナメントで争った因縁を持つ。 「スゴいですよね。あの時TUFに出ていたモレノ、カイカラ、パントージャが1位、2位、3位にいますから。でもこの3人はあの時のTUFでは扇久保さんより戦績が下です(扇久保は準優勝)。モレノは1回戦負けで、カイカラは2回戦負け、パントージャは3位で、優勝したティム・エリオットがちょっと下で今11位です」  TUFから6年が経つが、扇久保同様に各選手息の長い活躍を見せており、平良との対戦が実現すれば興味深い顔合わせとなる。  一時は廃止の憂き目を見たUFCフライ級だが、再開するとUFCで初のメキシコ人王者となったモレノや前述のモカエフのように世界各地から強豪が集い、他の階級同様“修羅の国”の様相を呈している。 「もちろんチャンピオンになってくれると信じてますし、可能性は無限大だと思ってます」  日本が誇る“スーパーノヴァ”はUFCでも輝きを放てるか。大きな期待を担い、戦いが始まった。(文/長谷川亮) ●プロフィール長谷川亮/1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」 編集部を経て2005年よりフリーのライターに。 格闘技を中心に取材を続けている。 そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『 琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督、格闘技・プロレスのインタビューチャンネル『 青コーナー』の運営も。
MMAUFC格闘技
dot. 2022/06/10 18:00
戦後77年皇室と祈り 祈りは、過去の大戦を学び続ける愛子さまと悠仁さまに引き継がれ
永井貴子 永井貴子
戦後77年皇室と祈り 祈りは、過去の大戦を学び続ける愛子さまと悠仁さまに引き継がれ
22年5月30日に千鳥ケ淵戦没者墓苑で遺骨を納める拝礼式に参列した秋篠宮ご夫妻(撮影/写真映像部 松永卓也) 「戦争の責任の一端は、昭和天皇にもあると感じています。その子どもや孫である皇室の人たちが祈りを捧げることに意味はあると思います」  練馬区遺族会会長を務める真田立穂(さなだ・たつほ)さん(82)は、そう思いを吐露する。5月30日、第2次世界大戦の戦没者の遺骨を納める拝礼式が、東京都千代田区の千鳥ケ淵戦没者墓苑で行われ、秋篠宮ご夫妻が出席した。  収集されたものの身元がわからず、遺族に引き渡すことのできない遺骨が納められるのが、ここ千鳥ケ淵の戦没者墓苑だ。この日は、ロシアやマーシャル諸島などで収集したものの、身元が判明しなかった217人分の遺骨が新たに納められた。これで墓苑に納骨されたのは37万269柱となる。  秋篠宮ご夫妻は遺族に頭を垂れ、祈りを捧げた。  この日、真田さんは遺族席に座り、秋篠宮ご夫妻の祈りを見守った。真田さんの父親は、激戦地となったフィリピンのマニラ湾口のコレヒドール島で戦死した。 「所属は海軍で佐世保(長崎)からフィリピンに向かいました。海軍でしたが現地で飛行機に乗せられた。残っている遺影は、プロペラ機の前に立つ姿です。最後どうだったのかはわからない。人間魚雷のように敵艦に特攻させられたのかもしれません」 ■遺族と皇室への複雑な思い  真田さんの父親の遺骨の行方ははっきりしていない。 「陸ならば命を落としても誰かが拾ってくれる。しかし、海で戦死した場合は捜すことが難しい。だから、政府が行っている遺骨収集の活動についても、本音を言えばピンとこない部分はあります。天皇のために-、と死んでいった犠牲者を思うと慰霊に参列する皇室に対して、感謝だけではない思いもあります。それでも、皇室が犠牲者の魂に祈り続けることが大切であると思う」  今年、日本は戦後77年の夏を迎える。   上皇ご夫妻をはじめ皇族方は、昭和の皇室が残した負の遺産に向き合い、犠牲者に祈りを捧げてきた。  2005年6月28日。当時、天皇陛下と皇后美智子さまは、平成の慰霊の旅のなかで、サイパンを訪れた。  北マリアナ諸島サイパン島の北部、マッピ山。  低木林が両脇に密集する細道を標高200メートルほどの高さまで登ると、スーサイドクリフと呼ばれる断崖の先端に出る。のぞき込むと目がくらむような垂直の崖。眼下に広がるのは、米軍に追い詰められた日本人が身を投げた岩地だ。その先には、バンザイクリフと紺青の海が広がる。   2005年6月平成の両陛下 戦後60年の慰霊の旅。多くの日本人が身を投げたサイパン島のスーサイドクリフの崖に向かって黙とうし、海を見つめた  その日は、午前中から南国の太陽がじりじりと照りつけていた。両陛下は切り立った崖の先端で歩を止め、丁重に黙祷を捧げ、海を見つめた。そのとき、シロアジサシに似た鳥が3羽ほど、静かに、ゆっくりと飛んでいった。  のちに美智子さまはこのときの様子を、皇室医務主管を務めた故・金沢一郎氏に、こう振り返った。 「この場所で命を落とした人びとの魂が、思いを残しているように感じました」  1942年にミッドウェー海戦で敗れた日本軍は、翌43年にガダルカナル島から撤退。44年6月15日にサイパン島南部から米軍が上陸すると、日本兵や民間の日本人は島の北部に追い詰められ、断崖絶壁へと向かった。赤ん坊を抱いて海に飛び込む母親や、手投げ弾で自決する家族ら、遺体が崖の下で重なりあった。7月7日に玉砕するまでの約3週間、日本兵と軍属約4万3千人、民間人約1万2千人、そして3500人を超す米兵が命を落とした。戦後、日本政府は島の北部にあるスーサイドクリフの下にサイパン、グアムや周辺の海域で戦没したすべての犠牲者を慰霊する「中部太平洋戦没者の碑」を建立した。 ■身を投じる女性の足裏思う  当時、悲劇のサイパン戦から61年の歳月を経ていた。旧日本兵や民間人の遺族らが見守るなか、両陛下は碑の前に進んだ。日本から持参した白菊の花束を献花台に捧げ、深く礼をした。シロアジサシに似た鳥が舞ったのは、そのすぐ後のことである。  美智子さまは帰国後、絶望的な戦況の中で島の果ての断崖から身を投じた女性たちのことを思い、和歌に詠んでいる。 <いまはとて島果ての崖踏みけりしをみなの足裏思へばかなし>  侍従長として平成の両陛下に仕えた故・渡辺允氏は、両陛下が頭を垂れたその背中を、一歩下がって見守っていた。  生前の渡辺氏に、皇室の慰霊について取材をしたことがある。渡辺氏は、美智子さまが和歌に詠み込んだ「足裏(あうら)」という表現に、はっとした。 身を投げる場面が目に映っているかのような力を持っていたからだ。 「人びとが命を絶ったその地に自らの足で立ち、彼らの悲しみと苦しみに心を寄せたからこそ、生みだされた表現ではないでしょうか」  令和の皇室と未来を担う若い皇族方も、戦争と向き合い続けている。 2015年8月に都内で千開かれた特別展「伝えたい あの日、あの時の記憶」を鑑賞した両陛下と愛子さま  昨年の8月15日、天皇皇后両陛下は、日本武道館で行われた全国戦没者追悼式に出席した。天皇陛下は、 「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い――」  とおことばを述べた。  天皇家の長女・愛子さまも戦後70年を迎えた2015年、ご両親と戦争体験者らから直に話を聞き、また戦後70年の特別企画展を訪れている。  学習院女子中等科の卒業記念文集では、「世界の平和を願って」と題した作文を掲載し、平和への願いをつづった。 <原爆ドームを目の前にした私は、突然足が動かなくなった。まるで、七十一年前の八月六日、その日その場に自分がいるように思えた。ドーム型の鉄骨と外壁の一部だけが今も残っている原爆ドーム。写真で見たことはあったが、ここまで悲惨な状態であることに衝撃を受けた(略)>  秋篠宮家も戦争の記憶と向き合い続ける。  13年、秋篠宮ご夫妻は、7歳の悠仁さまを連れて沖縄本島南部の糸満市摩文仁にある「平和の礎」を訪れた。悠仁さまは紺のスーツとネクタイ姿。ご夫妻は、24万人の名前が刻まれた石碑を見ながら、犠牲者について説明している。 秋篠宮家は、夏には学童疎開船・対馬丸の犠牲者を慰霊するつどいや沖縄戦を考えるつどいに何度も参加している。 ■「なぜ戦争に」と悠仁さま  17年には、紀子さまと悠仁さまは小笠原諸島で戦争の塹壕や軍道などを巡り、翌18年には広島県で被爆者の体験を聞いている。  戦史研究家の故・半藤一利さんをたびたび宮邸に招き、話に耳をかたむけた。当時、小学生であった長男・悠仁さまも第2次世界大戦などに過去の戦争への学びを深めていた。 「どうして日本に原爆が落ちたのか」「どうして戦争になったのか」  悠仁さまが質問を重ねるたびに、半藤さんはその経緯を易しく説明した。  冒頭の千鳥ケ淵戦没者墓苑での拝礼式に参加した「平和を願い戦争に反対する戦没者遺族の会」の副会長、平川明雄さん(71)の叔父は、中国で病戦死した。まだ20歳だった。 「第二次世界大戦という凄惨な戦争を経験しても、いまのロシアのウクライナ侵攻のように、人びとは戦いという愚を繰り返す。こうした世の中だからこそ、慰霊の場に遺族がどんな悲しみを抱えて集まっているのかを、若い世代にも知って欲しい」 (AERAdot.編集部・永井貴子)  2013年に沖縄県の「平和の礎」を訪れた秋篠宮ご夫妻と長男・悠仁さま 2018年、紀子さまと悠仁さまは広島市の平和記念公園を初めて訪れ、原爆死没者慰霊碑に拝礼した
天皇ご一家悠仁さま愛子さま皇室秋篠宮
dot. 2022/06/10 17:00
学校現場の大問題

学校現場の大問題

クレーム対応や夜間見回りなど、雑務で疲弊する先生たち。休職や早期退職も増え、現場は常に綱渡り状態です。一方、PTAは過渡期にあり、従来型の活動を行う”保守派”と改革を推進する”改革派”がぶつかることもあるようです。現場での新たな取り組みを取材しました。AERAとAERA dot.の合同企画。AERAでは9月24日発売号(9月30日号)で特集します。

学校の大問題
働く価値観格差

働く価値観格差

職場にはびこる世代間ギャップ。上司世代からすると、なんでもハラスメントになる時代、若手は職場の飲み会なんていやだろうし……と、若者と距離を取りがちですが、実は若手たちは「もっと上司や先輩とコミュニケーションを取りたい」と思っている(!) AERA9月23日号では、コミュニケーション不足が招く誤解の実態と、世代間ギャップを解消するための職場の工夫を取材。「置かれた場所で咲きなさい」という言葉に対する世代間の感じ方の違いも取り上げています。

職場の価値観格差
ロシアから見える世界

ロシアから見える世界

プーチン大統領の出現は世界の様相を一変させた。 ウクライナ侵攻、子どもの拉致と洗脳、核攻撃による脅し…世界の常識を覆し、蛮行を働くロシアの背景には何があるのか。 ロシア国民、ロシア社会はなぜそれを許しているのか。その驚きの内情を解き明かす。

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学校の大問題
AERA 4時間前
エンタメ
〈朝ドラ「おむすび」あすスタート〉長澤まさみや広瀬すずも“とりこ”に!?  橋本環奈の高すぎるコミュ力とは
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橋本環奈
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医学部に入る2024
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ビジネス
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オルカン
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