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戸田恵梨香に巻き起こる復帰待望論 映画原作者も「鬼気迫る演技」と絶賛
藤原三星 藤原三星
戸田恵梨香に巻き起こる復帰待望論 映画原作者も「鬼気迫る演技」と絶賛
戸田恵梨香  10月24日、第35回東京国際映画祭のレッドカーペットにきらびやかなロングドレス姿で登場した戸田恵梨香(34)。久々の主演映画「母性」が11月23日に公開されることにともない、久々に表舞台でのアピールとなった。  昨年7~9月にオンエアされたドラマ「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」に主演して以降、事実上の“女優休業状態”が続いている戸田。同作で共演した永野芽郁と母子を演じた映画「母性」は、実は「ハコヅメ」よりも前に撮影されたもの。SNS上には「久しぶりに動く戸田恵梨香さん見られるのはうれしい」「戸田ちゃんの演技がすごく楽しみ」など、早く戸田の活躍が見たいという声も強い。1年ほどブランクが開く役者は珍しくないが、戸田が“休業状態”となっているのはなぜか。スポーツ紙の芸能担当記者は言う。 「今年に入ってから、戸田さんは降板騒動が相次ぎました。4月にオンエアされた連ドラ『持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~』は主演として内定していたが、降板したと報じられました。また、ほぼ同時期に撮影があった有名映画監督の映画も降りたとされています。『週刊文春』によると、『ハコヅメ』の現場で戸田さんがスタッフと脚本を巡って衝突したり、W主演だった永野芽郁さんがコロナにかかって撮影がストップしたときに座長として現場をまとめるなど、とにかく大変だったそうです。『ハコヅメ』の撮影が終わったときに、所属事務所の社長に、仕事を続行できないと直訴して、決まっていた二つの大きな仕事を降板したと報じられています」  週刊誌でこの件が大きく報じられると、戸田はSNSで「私から発信されるもの以外 そこに事実はありません」とコメントした。 「反論がまた大きく取り上げられたため、事実上の女優休業状態となったと言われています。ただ、戸田さんクラスの人気女優が連ドラと大作映画を立て続けに降板したのが事実ならば、騒ぎ立てられても仕方ない。一部では、心身の不調や妊活ではとの記事もありましたが、約1年ほど表舞台に出てきていなかったのは事実です」(前出の記者)  こうした状況もあり、「母性」の公開には期待が高まるが、いまSNS上では“戸田恵梨香待望論”が巻き起こっているという。テレビ情報誌の編集者は言う。 「主演映画としては3年ぶりで、原作も人気小説家・湊かなえさんの名作ミステリーとあって期待は高い。完成した映画を見た湊さんは戸田さんの鬼気迫る演技を絶賛したということで、業界内でも相当注目されています。また、来年1月にはTBSで1年半ぶりの連ドラ主演が内定したとの女性誌報道もありました。去年から今年にかけて降板騒動などいろいろありましたが、久々に女優・戸田恵梨香の新作が見られるとあって、楽しみにしているお客さんは多い。戸田さんの場合、若くして『LIAR GAME』や『SPEC』で大ブレークし、20代は毎年のように人気作に出演し続けました。アイドル女優ではなく、きちんとお芝居ができる正統派女優として一時代を築き、ほぼ休むことなく作品を量産し続けてきました。少し休んだところで、キャリアには何の問題もないと思います」 ■分岐点となった「スカーレット」  20代で女優としての頭角を現した戸田だが、2019年に31歳で朝の連続テレビ小説「スカーレット」に主演。異色の朝ドラヒロインとして話題になった。そして、20年には人気俳優の松坂桃李との電撃結婚を発表した。 「新人女優の登竜門と言われている朝ドラで、30歳をすぎた戸田さんがヒロインを演じたのだから、話題となるのも当然です。それだけでなく、20代を人気女優として駆け抜けてきた戸田さんが30代になってしっかり作品と向き合ってヒロインを演じ切ったこの作品は、結果的に彼女の代表作になったと思います。すでに知名度もあり、女優としてのキャリアもしっかり積んでいる状態での朝ドラ主演は、相当なプレッシャーがあったはず。キャリアの分岐点となる作品をしっかりとやり遂げてから松坂さんと結婚し、作品だけでなく女性としての幸せな出会いにも恵まれ、女優としても一段階レベルアップしたように思います」(前出のテレビ情報誌編集者)  芸能評論家の三杉武氏は戸田についてこう述べる。 「戸田恵梨香さんといえば、ルックスのみならず、確かな演技力で性別、年齢を問わず幅広い支持を集めています。男性にこびない姿勢や、凛とした美しさ、芯の強さを感じさせるたたずまいなどから、とくに同性ウケに関しては、同世代の女優の中でも突出しているのではないでしょうか。現在はほぼ休業状態ですが、復帰待望論がファンの間から巻き起こるのもうなづけます。人気女優ということで独身時代は私生活も騒がれましたが、結婚してファンが離れるようなタイプの女優さんでもありません。復帰すれば、女優としてより大きな存在感を放っていくことでしょう」  圧倒的な演技で、再びファンを魅了する日は近そうだ。(藤原三星)
戸田恵梨香東京国際映画祭母性
dot. 2022/10/28 11:30
公立出身の父親がハマった「中学受験沼」の末路 息子は不登校&退学になり妻との関係も冷め切った
公立出身の父親がハマった「中学受験沼」の末路 息子は不登校&退学になり妻との関係も冷め切った
息子からは陰で「お父さんは嫌いだ。でも怖いから勉強する」と言われていた。写真はイメージ(PIXTA) 「沼にはまる」という言葉がある。何らかの対象に夢中なることを意味するが、時には、沼にはまりすぎて、仕事や家庭がないがしろにされ、崩壊寸前までいく人もいる。ライターの沢木文さんはそんな人々を取材して11月8日発売予定の『沼にはまる人々』(ポプラ社)にまとめた。同書では美容整形、筋トレ、ホストなど、さまざまな沼にはまった人々の実態が描かれているが、紹介しきれなった人も多い。AERA dot.では、そんな多種多様な「沼の人々」の事例を沢木さんの短期連載として配信する。【前編】に続き、「中学受験」の沼にはまった男性の結末を紹介する。 *  *  * 会社員の中野信雄さん(48歳=仮名)は、5年前に一人息子(16歳)の中学受験にはまった。  小5の4月から受験勉強を始め、最初は偏差値35からの出発だったが、順調に成績を伸ばした息子は半年で偏差値50に到達。小学5年の9月には難関受験に頭角を現している新興塾に転塾し、信夫さんは仕事をしながら息子の生活と勉強を管理する日々になった。  息子は国語が苦手だった。特に小説から感情が読み取れず、成績が上がらない。そこで、物語の追い方、論旨はどう展開するか、解答に結びつくキーワードをどう探すかなどを信雄さん自身が教えることにした。 「しかし、息子は半分寝ている。私が“声に出せ”と言っても反抗的な態度を取る。息子を蹴り飛ばしたのは、私が“傍線を引け”と指示したところとは別の場所にチェックをつけたとき。こっちはフラフラになりながら、必死で教えているのに、その反抗に腹が立ったんです」  沼にはまる要素のひとつに“快と困難のバランスの絶妙さ”がある。中学受験は親にとって、子どもの成績が上がるという強烈な快のほかに、子どもが服従するという快もある。この快を得るために、子どもに勉強をさせるという困難がある。快と困難の層が重なるほど、沼にはまっていく。 「1年間勉強して、麻布や慶応大学付属には手が届かないことがわかりました。有名校は、問題を解くことを楽しむ子どもたちのみに門が開く。そこで、明治、青山学院など有名大学の付属を狙おうとしたのですが、そこでも国語が足を引っ張る。読解力がないと、社会や理科も伸び悩む。得意の算数も得手不得手が目立つようになっており、息子には“あと10カ月だ。そこで、今後の人生が変わる”と話しました。その頃には息子もやる気になっており“絶対に○○に合格するぞ!”と言うようになっていました」  しかし、息子は妻に対しては、「お父さんは嫌いだ。でも怖いから勉強する」と本音を漏らした。息子は朝6時に起こされ、24時近くに眠るという生活を続けていた。ストレスから自分の体毛を抜くようになり、円形脱毛症ができても、信雄さんは「将来のためには仕方がない」と思っていたという。  息子は学校を頻繁に早退したが、そのことがわかると鉄拳制裁が飛ぶとわかっていたのか、妻も息子も黙っていた。受験が近づくにつれて、父子ともに追い詰められていく。 「11月以降の追い込みの時期に志望校の“圏外”判定を受け、息子に向かって“俺の努力、時間、金をドブに捨てた”と言ってしまった。“もうやめようか”と言ったら息子は“やめない”と泣きだしたんです」  それから2月までは息子もよく頑張ったという。塾の合宿にも参加し、毎日勉強をした。1月10日以降は、学校もほとんど休ませて受験勉強に集中させた。 「会社を休むわけにはいかないので、この時は家庭教師をつけました。帰宅途中にコンビニに寄り、B4の過去問題集を当日の試験用紙に合わせてA3に拡大コピーするのが、日課でした」  そこまでしても、息子は第一希望、第二希望に落ちた。そして、都心近郊にある新興の名門校である第三希望に補欠合格した。 「一応、社会的には“すごいですね”と言われる学校なのでいいのですが、不完全燃焼は残ります。そこで息子に“次は大学受験だ”と伝えました。その学校はGMARCH(学習院・明治・青山・立教・中央・法政の六大学の総称)に多数の合格実績がありますから」  だが入学すると、予想以上に授業のスピードが速い。息子は最初のテストで学年最下位レベルの成績だった。しかも行事に力を入れており「みんなで一緒にがんばろう」という校風にもなじめなかった。 「都内の自宅から1時間近くかけて通学するのも苦痛のようで、夏休み明けから学校に行けなくなりました」  信雄さんが怒ってもなだめても、息子は学校に行かない。妻は「もういいじゃない」と息子をかばった。妻と息子で話し合い、中学2年進級時に退学。地元の公立中学校に通うことになった。 「元の木阿弥とは、このことですよ。中学受験に500万円以上をかけたのに、息子は地元中学に通学した。結局、あいつは怠け者だったってことですよ」  その頃から妻と息子が結託し、信雄さんは疎外されているのを感じるようになる。 「私が家に帰って来ると、リビングから人がいなくなるんです。最初は私に合わせる顔がないからそうしているのかと思っていたのですが、2人は私を避けていた」  高校進学のときも、信雄さんは偏差値65以上の都立の名門高校をリストアップして息子に渡した。だが、すでに信雄さんの存在感はなくなっていた。 「妻からは“息子に決めさせてほしい”と言われ、単願推薦という制度で、自由な校風の私立の男子校に行っています。偏差値は62くらいですね。でも、合格実績を見ると、早慶に1~2人、GMARCHすら30人程度。あのまま私立中学に行っていれば、もっと高みを目指せたのにと思います」  信雄さんが「わが子のために」とはまった中学受験沼は、これから家族の将来にどんな影響を及ぼすのだろうか。それが地中深くに埋まった宝物なのか、もしくは地雷なのか、それは誰にもわからない。 ●沢木文(さわき あや)1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。
中学受験麻布
dot. 2022/10/25 07:30
「中学受験沼」にハマった48歳エリート会社員の悲劇 「偏差値35」から“御三家”狙う息子に何度も手を上げた
「中学受験沼」にハマった48歳エリート会社員の悲劇 「偏差値35」から“御三家”狙う息子に何度も手を上げた
子どもの中学受験にハマる父親は以前より多くなっている。写真はイメージ(PIXTA) 「沼にはまる」という言葉がある。何らかの対象に夢中なることを意味するが、時には、沼にはまりすぎて、仕事や家庭がないがしろにされ、崩壊寸前までいく人もいる。ライターの沢木文さんはそんな人々を取材して11月8日発売予定の『沼にはまる人々』(ポプラ社)にまとめた。同書では美容整形、筋トレ、ホストなど、さまざまな沼にはまった人々の実態が描かれているが、紹介しきれなった人も多い。AERA dot.では、そんな多種多様な「沼の人々」の事例を沢木さんの短期連載として配信する。初回は「中学受験」の沼にはまった男性のお話。 *  *  * 会社員の中野信雄さん(48歳=仮名)は、5年前に一人息子(16歳)の中学受験にはまった。  北関東出身の信雄さんは幼いころから勉強ができ、さほど努力もせずに県内トップの進学高校に合格した。 「地元では出身大学よりも“出身高校”で評価されます。私の母校は、地元では東大以上の価値がありました。英国数の3教科しか受験がない私立高校は、県立高校に落ちた人が行く学校で、地元の優良企業には絶対に採用されない。私も父から“私立はバカが行くところだ”と何度も言われました」  多感な時期に公立校至上主義を叩きこまれた信雄さん。当然のように国公立大学を目指していたが、大学受験では全て不合格。結局、名門私立大学に現役で進学した。  東京の名門私立大学に進学してわかったことは「圧倒的に存在価値がないこと」(信雄さん)だった。 「地元ではトップの県立高を出ている私も、東京に出てきたら単なる田舎者の一人でした。その悔しさを就活にぶつけたら、財閥系の不動産会社に内定が決まりました。30歳のときに会社の先輩である東京出身の妻と結婚して、すぐに息子も生まれ、マンションも買いました。その頃は幸せでしたね」  信雄さんの妻は23区内で生まれ育ち、大学付属の小学校から高校までエスカレーターで進んだ。大学は別の名門私立大学を卒業。社会的に成功した人は「自分が受けた教育が最良だ」と決めつける傾向があるが、信雄さん夫妻もその通りになった。  当然、妻は息子に小学校受験をさせようとしたが、信雄さんは「金のムダだし、男は高校までは公立で広い世界を見た方がいい」と小学受験に反対した。 「それが間違っているとわかったのは、息子が小学5年生のとき。同期5人の仲間と飲んだんです。そのとき、私以外の全員が、中学受験の話をしていた。妻の狂気と金、子どもの成績のことなど、愚痴と自慢と半々の口調で話している。私が“公立でいいんじゃないの?”と言ったら、宇宙人を見るような目で見られ、“そりゃ、子どもの人生に圧倒的不利だぞ”と言われたんです」  都心の小学校では、2月1日と2日の私立中学校受験日にはクラスの半分以上が欠席すると言われている。私立に行くのは当たり前、行かなければ負け組という意識は根深い。 「そこで知ったのは、公立中学は先生のレベルに個人差がありすぎること、高校受験時の内申点をもらうために子どもが先生に必死でこびるという現実でした。一方で中高一貫校は高校受験がないので、高校3年のカリキュラムを高2までで終わらせ、残りの1年間は受験勉強に打ち込めることも知りました。これは大きな衝撃でした」  家に帰って妻に相談すると「だから公立は問題が多いって言ったでしょ。でも小5の4月から勉強しても手遅れだよ」と言われた。 「でも息子は学校のテストほぼ100点で、オール5に近い。私はまだ間に合うと思いました。難関校に強いとされるサピックスや早稲田アカデミーなど人気の塾に問い合わせると、すでに満員御礼。そこで、日能研の入塾テストを受けさせると、息子は半分しか解けていない。あれは血の気が引くほどショックでした」  信雄さんは、周囲の人の話を聞き、「息子は麻布学園に入れよう」と思ったそう。自由な校風の男子校で、自宅から通学しやすいし、息子も楽勝だろうと思っていた。 「麻布学園の問題を自分でも解いてみると、全く歯が立たなかったんです。高度な読解力と根気がいる。息子には、こういう問題をやすやすと解いてほしいし、そんなレベルが高い子どもたちと6年間を一緒に過ごさせたいと思ったのです」  そこから、中学受験の“沼”にはまった。息子は受験勉強には順応できた。偏差値35からのスタートだったが、半年で偏差値50まで上がった。5年の9月からは難関受験に頭角を現している新興塾に転塾し、勉強三昧の日々が始まった。 「でも、まだ動画やゲームなどをやっているんですよ。他のライバルは小1から塾に通っているので、4年以上の差がある。5年の5月には、打ち込んでいたサッカーもやめさせました。私は息子のためを思い、心を鬼にしたんです。憎まれてもいいから、息子にはいい将来を与えてやりたかった」  信雄さんは必死だった。仕事をしながら息子の生活と勉強を管理。部下を管理するPDCAサイクルの考え方を息子の管理に持ち込んだ。そして、空き時間に塾の教材を研究。塾の授業の復習と予習の時間を確保するために、息子のスケジュールを作った。隙あらばタブレットとゲーム機に手を伸ばす息子に手をあげたことも何度もあるという。 「私が管理しないと手を抜くので、出張はできるだけ避けていました。当時はコロナ前だったので、みな終電近くまで働いていた。私は息子が塾から帰って来る21時30分に家に戻り、2時間程度勉強を教え、会社に戻るという生活をしていました」 ※【後編】<公立出身の父親がはまった「中学受験沼」の末路 息子は不登校&退学になり妻との関係も冷め切った>に続く ●沢木文(さわき あや)1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。
中学受験御三家
dot. 2022/10/25 07:30
マライア・キャリー、娘とお揃いのヘアスタイルでNYデート
マライア・キャリー、娘とお揃いのヘアスタイルでNYデート
マライア・キャリー、娘とお揃いのヘアスタイルでNYデート  現地時間2022年10月22日の夜、マライア・キャリーが11歳の娘モンロー・キャノンとともに米ニューヨークの街に繰り出し、女子だけのお出かけを楽しんだようだ。  「ママ/娘のお揃いヘア・エクストラバガンザ!!!! #Thehairtales」とキャプションされたインスタ投稿には、カーリーヘアを三つ編みでハーフアップにし、オールブラックの衣装に身を包んだマライアとモンローの姿が写っている。マライアは、お揃いの装いの娘を愛おしそうに見つめており、モンローはカメラに向かって満面の笑みを見せている。  この数週間前、マライアはモンローと双子の弟モロッカンの協力のもと、自宅のジャグジーで撮影したインスタグラム動画で、「恋人たちのクリスマス」をかけ始めるにはまだ早いとユーモラスにファンに伝えていた。この映像で双子たちは「恋人たちのクリスマス」を聞いて、クリスマス・ツリーを飾りたいとマライアを急かすものの、彼女は即座に「まだよ!」と子供たちをたしなめている。  マライアは、現地時間12月11日にカナダ・トロントのスコシアバンク・アリーナ、12月13日に米ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで【Merry Christmas to All!】と題されたホリデー・コンサートを行うことを発表したばかりだ。  一方、モンローとモロッカンには、ここ3か月間で新たに3人の異母きょうだいができた。父親のニック・キャノンには、モデルのブレ・ティッシとの間に息子レジェンダリー・ラブ・キャノン、モデルのラニーシャ・コールとの間に娘オニキス・アイス・コールド・キャノン、そしてモデルのブリタニー・ベルとの間にライズ・メサイア・キャノンが誕生している。  モンローとモロッカンは現在、ニックが6人の女性との間にもうけた10人の子供たちの最年長となっている。彼は忙しい合間を縫って、双子に会う時間も作っているようで、今年8月にはマライアのヒット曲「エモーションズ」に合わせてモンローと踊る可愛らしいビデオを投稿していた。
billboardnews 2022/10/25 00:00
「新井恵理那」熱愛報道もマイナスなし 令和の“最強女子アナ”たるゆえん
丸山ひろし 丸山ひろし
「新井恵理那」熱愛報道もマイナスなし 令和の“最強女子アナ”たるゆえん
新井恵理那  フリーアナウンサーの新井恵理那(32)に突然の熱愛報道が持ち上がった。写真週刊誌「FLASH」(11月1日号)に、都内のスーパーでマッチョな男性と買い物デートをする姿を激写されたのだ。記事では「ほぼ同棲中」という知人の証言も掲載された。一方、新井は自身のインスタグラムで報道について「今回のことは盗撮されて勝手に書かれたもので、わたしとしては怖いです」「お相手のこともありますし、間違った内容も多くとても不快に思っています」と胸中を明かし、報道された内容とは食い違いがあることを指摘した。  熱愛報道に対してネット上の反応を見ると、ショックを受けた男性ファンは散見されるものの、「ぜひ幸せになってほしい」「見守ってあげてほしい」など、好意的な声も目立っていた。  新井といえば、「2019上半期テレビ番組出演本数・女性タレント部門ランキング」(ニホンモニター調べ)で1位を獲得するほどの人気アナ。現在は朝の情報番組「グッド!モーニング」(テレビ朝日系)のメインMCを務めるほか、バラエティー番組にも引っ張りだこだ。  新卒で受けたキー局の面接では全滅するも、卒業後に女子アナが多数在籍する事務所に所属し、出演番組を増やすことで今の地位を確立してきた“苦労人”でもある。今ではトップクラスの人気を誇るフリーアナとなったが、安定した人気の秘密はどこにあるのだろうか。 「番組での立ち回りがとにかくうまいという印象です。例えば、サッカー日本代表の田中碧選手が公式プロフィルで好きな芸能人に新井を挙げていたのですが、彼女が番組でインタビューした際に『1つだけどんなところが好きか、聞いてもいいですか?』とかなり前のめりだったんです。ところがその直後、田中は人気モデルとの交際が発覚。後日、同番組で共演者から『先月は、新井さんの大ファンだとうれしそうに話していましたが』と振られると、新井は『私、いろんなところで、“お似合いだったよ”とか言ってもらえて。“9歳も離れているから”とか言いながらも、浮かれていた』と振り返り、『そんな自分をビンタしてやりたい!』と、自虐を交えて現場を盛り上げていました。本人にとっては少々恥ずかしくなってしまう出来事でも、しっかり返して笑い話にする手腕はさすがです」(テレビ情報誌の編集者)  こうした人間味がある素直さには、好感を持つ人も多いだろう。また、過去の恋愛トークからも気取らない性格がうかがえる。 「なりゆき街道旅」(フジテレビ系、5月29日放送)では、「最初はいい感じなんですけど、私がいざ好きになるとフラれます」と明かしていた新井。相手から好きと言われ、自分も振り向いていって「付き合うのかな」と思ってると“ナシ”になってしまうとか。また、別のバラエティー番組では、「好きな男性のタイプ」について「ちょっと変態なほうが好きです」と答えたこともある。 「『マイふんどし』を愛用しているなど、実は男性ウケを狙ったようなコメントも多く、ぶりっ子に見えるしぐさも少なくない。なのに、なぜか女子アナに厳しい主婦層をはじめ、女性視聴者から敵意を向けられないところも彼女のすごさ。そのあたりは“苦労人”だった頃のイメージがプラスに作用しているのかもしれません。もし彼女が局アナだったら、TBS時代の田中みな実のように女性からかなりバッシングされていたでしょうね」(民放バラエティー制作スタッフ)  過去の“下積み時代”に関しては、本人がテレビで明かすことも多い。 「新人時代は仕事がなく、給料は歩合制なので月6万円だったと以前バラエティー番組で明かしていました。『一生知られないまま、仕事ないままなのかな』と思っていたとか。また、8月に放送された番組では、下積み時代は衣装も自前で、アクセサリーも節約のため自作していたと告白。自宅で使う10kgのパーテーションを買った際、タクシー代や配送代を節約するため、自宅まで歩いて運んだこともあったそうです。女子アナでこうした苦労を経験した人は少ないでしょうね」(同)  芸能評論家の三杉武氏は新井についてこう評価する。 「新井さんの魅力は、容姿端麗なのにお高くとまったところがなく、気さくでサービス精神が旺盛なところ。リップサービスとも取れる発言も、番組やその場の空気を盛り上げようという強いプロ意識が感じられます。バランス感覚もあるので、同性の視聴者を敵に回さないように色気を前面に押し出しすぎない戦略も見事です。このプロ意識をつくりあげたのは、ミス青学グランプリという実績がありながら、キー局4社のアナウンサー試験にすべて落ちた“挫折”があるからかもしれません。フリーになってからもレギュラー番組を1年ほどで降板になったり、まったく仕事のない時期が3カ月近く続くなど苦労も多く経験した。だからこそ、売れっ子になってもおごったり、浮かれたりすることなく、脇を締めているのだと思います」  熱愛報道が出ても、浮つくことなく毅然とした対応をした新井。地に足がついたこの堅実さこそが、人気ナンバーワンでいられる秘訣なのかもしれない。(丸山ひろし)
アナウンサー新井恵理那
dot. 2022/10/24 11:30
小島よしおが「人前に出ると頭が真っ白になってしまう」と悩む高1女子に伝えたい、緊張のほぐし方
小島よしお 小島よしお
小島よしおが「人前に出ると頭が真っ白になってしまう」と悩む高1女子に伝えたい、緊張のほぐし方
小島よしおさん「ボクといっしょに考えよう」(撮影/松永卓也=写真部)  高校1年生のととむさんは、「音楽の先生になりたいけど、人に笑われてから人前に出ると緊張してしまう」という相談を送ってくれました。数多くの子ども向けライブを開催し、YouTubeチャンネル「おっぱっぴー小学校」も人気の小島よしおさんが子どもの悩みや疑問に答えるAERA dot.の本連載。自分も緊張しやすいという小島さんの緊張との向き合い方とは? さらに、人から笑われる個性が「うらやましい」という理由は? *  *  * 【相談26】私の悩みは、どうしたら人前に出ることに対して緊張しなくなるのかということです。私の将来の夢は、学校の音楽の先生になることです。学校の先生は、人前に立つのが得意な人がなるべき職業のような気がします。また、音楽の先生になるために、楽器の実技で大学を受けようと思っているので、受験のときに緊張している場合ではありません。実は私は人前に立つと汗が止まらなくなって、頭が真っ白になるんです。小学生のころは前に出ることは得意だったのに、自分のしゃべり方が変だ、立ち方が変だ、そんな声を聞いて、笑われているのを知ってから人前に立つのが怖くなりました。でも、だからといって夢は変えたくない。先生になって音楽の楽しさや豊かさを一緒に感じたいんです。(ととむ・高校1年生・女子) 【よしおの答え】  ととむピーヤ、素敵な夢を持っているんだね。向き不向きよりも、「なりたい!」って気持ちのほうが大切だと思うんだ。よしおも、芸人という仕事はどちらかというと不向きだなあ、って思っていた。大喜利とか苦手だし。だけど、「芸人になりたい!」って気持ちでここまでやってきたから、ととむちゃんの夢も必ずかなうはず! どう緊張と向き合っていけばいいのか、一緒に考えてみようか。  実はよしおも、もともとすごく緊張しいなんだ。「海パン一丁で人前でネタを披露しているのに!?」って驚くかもしれないけど、本当の話。まずは、これまでよしおがどうやって緊張と向き合ってきたのかを話すね。  その原体験は小学生のころ。よしおは野球をやっていたんだけど、試合でバッターボックスに立つと緊張してセカンドゴロを連発していた。どうしたら打てるのかわからなかったとき、コーチに「遠くを見ろ!」って言われたんだ。  バッターボックスに立つとき、いつもピッチャーばかりを気にしていたけど、コーチのアドバイス通りに遠くを見たら、はじめてセンターが見えた。そうしたら、ふっと周りも見渡せるようになって、球を打つことができたんだ。緊張すると、目の前のことで気持ちがいっぱいになって、視野が狭くなる。体ってすべてつながっているから、目線の使い方で気持ちも変わるんだなあ、ってことを実感したよ。  芸人になってからも、この方法はとても役に立った。ピン芸人の大会「R-1」の決勝戦に出たときの緊張はものすごくて、数メートル先のスタッフさんの姿さえ目に入っていなかった。だけどよしおは野球のコーチに教わったことを思い出して、できるだけ遠くを見るようにしたんだ。緊張が一瞬でなくなるわけではないけど、ふっと周りが見渡せるようになったら心に余裕ができたよ。  他にも深呼吸とか、無理やり笑顔をつくるとか、体をまず意識してみると心が落ち着くこともあるよ。これをしたら落ち着く、っていうルーティンワークをつくるのもいいかもしれない。 ■緊張するときとしないときの差  ただ、緊張をほぐす方法を知ったとしても、緊張しいの人がいきなり緊張しない人になるのはすごく難しいよね。緊張しいのよしおだけど、あまり緊張しないときもある。その差ってなんだろうな、ってよしおなりに考えてみた。  たとえばネタを披露するとき。一番緊張するシチュエーションは、新しいネタをテレビ番組で収録するとき。一番緊張しないのが、大学の学園祭や商店街でのイベント、ショッピングモールでの催し物なんかの営業でいつものネタをするとき。  前者は「初めてのネタ」「普段とは違う環境」で、さらに「うまくできるかな」「どんな反応をされるかな」っていう心配事がある。一方後者は、「いつもやっているネタ」「慣れている環境」なんだ。何度もやっているネタならどこで盛り上がるのかもわかるし、慣れている環境だとだいたいの流れも頭に入っている。つまり違いは「経験」なんじゃないかな、って考えた。 小島よしおさん(撮影/松永卓也=写真部)  同じことを何度も繰り返すことで口や体がそれに慣れて、緊張の度合いも下がっていくんだろうな、って思うんだ。だからととむちゃんは、その経験をどう積んでいくかを考えるといいのかな、って思ったよ。  ととむちゃんは人前に立つ機会が定期的にあるのかどうかわからないけど、まずは自分の夢や、やろうと思っていることを、友だちや家族に話してみるのはどうだろう。目標を口にすることで、後に引けなくなるのはもちろん、自分でも覚悟が決まっていく気がするんだ。  決心がついたら、次は人前で話す練習だね。自分を100%出しきるのってなかなか難しいかもしれないけど、よしおの経験上、「すごく仲がいい人の前」と「全く知らない人の前」だと、緊張の度合いは低めなんだ。すごく仲がいい人だったらどんな自分も見せられるし、一方で全く知らない人だったら「もう会うこともないしな」ってふっきれるんだよね。  大学受験で必要な楽器の実技の練習は、家族でも、友だちでも、まずは誰か1人の前でもいいから披露することを積み重ねてみてはどうだろう。たとえばピアノだったら、「緊張しないでピアノを弾く練習がしたいから、1曲聴いてくれない?」ってお願いすれば、聴いてくれる人はいるんじゃないかな。  全く知らない人に声をかけるのは難しいと思うけど、いまってストリートピアノとかあるよね。知っている人が誰もいない土地に行って、「もう誰も会わないしどんなふうに思われてもいいや!」って気持ちでチャレンジしてみるのもいいと思う。バンジージャンプみたいなもので、一回飛び降りたら案外平気かもしれないよ! ただ、それで心が傷ついちゃうようなら無理は禁物! ■笑われるのはつらいけど、個性があるということ!  そもそもととむちゃんには、緊張の前に、人に笑われるのが怖い、って気持ちがあるよね。たしかに、笑われたりからかわれたりするのはつらいし悲しい。思春期という時期も重なって、気になってしまうのもすごくわかる。だけど、それってよしおはすっごくいい武器になるんじゃないかな、って思うんだ。  ととむちゃん、お笑いライブには行ったことある? 行ったことがないなら、きっとすごく驚くはず。舞台上でおかしなことをやっている芸人がたーくさんいるから。お客さんに覚えてもらえるように、いろんな工夫もしている。眼鏡をかけたり蝶ネクタイをつけたり、よしおみたいに半裸になったり……。どうやって自分の個性を出して、キャラクターを確立しようかと、悩んで、もがいているんだ。  その点、ととむちゃんはすでにキャラクターがある、って考えることもできる。だからね、芸人からするとうらやましくてたまらないんだ。 「音楽の先生は芸人とは違う」って思ったかな? でもさ、よくよく考えてみて。音楽って、「うまい・へた」じゃなくって自分を表現することがとても大事だと思うんだ。そうじゃないと伝わらないから。送ってくれた相談に「音楽の楽しさや豊かさを一緒に感じたい」って書いてくれているね。そう思えているなら、怖がらずに自分を表現することが大事なんじゃないかな。舞台に立っておかしなことをやっている芸人くらいね。  思い返すと、よしおが教わってきた音楽の先生って、子どもから見たら笑ってしまうこともあるぐらい、大げさな表現で教えてくれる人が多かった気がする。生徒が自分を表現するのをためらわないよう、先生が率先して大げさに表現していたのかもしれない。先生が一番の表現者であることが、生徒の表現力を伸ばすことにもなるからね。だから、「うまくやろう!」よりも、「自分を表現しよう!」って思えたらいいよね。ととむちゃんの、君にしかない個性を思いっきり表現してほしいな、って思ったよ。 ■弱さがあるからこそ相手に寄り添える  最初にも話したけど、よしおはもともと緊張しい。どうやって緊張をほぐしているかも話したけど、ネタのはじめに「ウィ~~~~」ってやるのは緊張をほぐすためなんだ(笑)。「そんなの関係ねぇ!」ってギャグも、ネタを忘れてもそう言っちゃえば成立するようになっているんだよね。緊張しいだからこそたどり着いたネタなのかもしれない。  弱みは強みっていうのかなぁ。緊張してしまう、っていう弱さに気づけたととむちゃんは、これから向き合って克服していくことができる。先生になったとき、それは絶対に強みになると思うんだ。先生って、子どもの気持ちに寄り添うこともすごく重要でしょ? 自分に弱いところがあるからこそ、相手に寄り添うことができる。ととむちゃんは緊張する子の気持ちがわかるし、克服したら、その姿だって見せられる。だから、緊張するのはきっと悪いことじゃないんだよ。  それに、少しずつ改善してきたよしおでも、いまだに緊張する場面はたくさんあるよ。クイズ番組に出て頭が真っ白になったり、ネタ番組に出てガチガチになったり。ぶっちゃけ、つい最近の収録でもね……。41歳のよしおでもそうなんだから、ととむちゃんは心配ご無用! ととむちゃんには、ととむちゃんなりの「ウィ~~~~」(緊張のほぐし方)を見つけてほしいな! ……って、僕は思うんだけど、君はどう思うかな? (構成/濱田ももこ) 【質問募集中!】小島よしおさんに答えてほしい悩みや疑問を募集しています。お気軽にお寄せください! https://dot.asahi.com/info/2021100800087.html
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AERA with Kids+ 2022/10/21 16:00
マリニンの4回転に宇野昌磨、三浦佳生も刺激 坂本花織は貫禄の首位、紀平梨花は全日本選手権に焦点
マリニンの4回転に宇野昌磨、三浦佳生も刺激 坂本花織は貫禄の首位、紀平梨花は全日本選手権に焦点
三浦佳生(17)/男子シングルで3位の169.94点(88.62、81.32)。2022年四大陸選手権銅メダル、同年世界選手権はけがで欠場  日本、北米、欧州の3地域対抗団体戦・ジャパンオープンで、イリア・マリニンが公式練習で「4回転6種類7本」のジャンプ構成をやってのけて注目を集めた。男女シングルで争われた本大会は互いに刺激を受け合う内容となった。AERA 2022年10月24日号の記事を紹介する。 *  *  *   ジャパンオープン男子シングル最終滑走のイリア・マリニン(17、米国)に目を奪われた。演技前から笑顔で、緊張する様子をまったく見せない。冒頭の4回転半は手を着いたものの、何よりその高さが印象的だった。残る4回転4本は、すべてを軽やかに決め不安要素を感じさせない。柔軟性をアピールするスピンや、片手側転など、見どころのあふれるプログラムだった。 「今日の4回転半はうまくいきませんでしたが、跳び方の感触はつかめています。ミスした時はどこに課題があるのか考え、解決する練習をしてきたので、理論は理解できています」  4回転半に刺激を受けたかと尋ねると、宇野昌磨(24)はこう答えた。 「華やかな新しいジャンプに目がいきがちだと思いますが、僕が刺激を受けたのはほかの4回転のほうです。マリニン選手はすべてのジャンプをすごく楽に安定して跳んでいて、なにかやり方があるんじゃないかなと思いました。4回転半は一度練習してみましたが、僕にはできないな、というのが結論でした」 ■余裕があれば5回転も  マリニンと同じ17歳の三浦佳生(かお)も続ける。 「たしかに3回転を跳ぶかのような軽さで4回転が跳べちゃうので、どうしてそんなに軽く跳べるのか、何かがきっとあると思うので、それを見つけたいです。そして僕は4回転半をやろうなんて思っていませんが、5回転サルコーを一度だけ締めたことがあります。半回転くらい足りずに転倒して身の危険を感じたので、マリニン選手はチャレンジ精神がすごいと思います」  日本の2人からほめられ、マリニンも笑いながら答える。 「5回転についてはチームでも相談はしましたが、今季はまず自分が自信を持てる4回転5本に集中していきたいと思います。シーズン後半には4回転7本に挑戦するかもしれませんし、気持ちに余裕があれば5回転も試すかもしれません」  得点は、技術点はマリニンが106.84点で首位。ただし、演技構成点は宇野が計90点台、マリニンは計80点台で、宇野が総合首位となった。宇野は言う。 イリア・マリニン(17)/男子シングルで2位の193.42点(106.84、86.58)。9月のUSインターナショナルクラシックで史上初の4回転半成功 「僕は、マリニン選手のほうが僕より素晴らしい演技だったと思います。マリニン選手はこれからどんどん演技構成点も伸びていくし、この1、2年で圧倒的な存在になる。ライバルと言われるマリニン選手に置いていかれないようにしよう、というメンタルがプラスになります」  ライバルの存在がお互いを刺激し、スケート界全体のレベルが上がっていく。ここから4年間の新たな戦いを予感させる生暖かい空気が会場を包んでいた。  一方、女子はこれまでの4年とは違う勢力図を描くシーズンが始まった。国際スケート連盟はウクライナに侵攻したロシアの選手の参加を認めておらず、4回転を武器にしてきたロシア女子は不在。確実なジャンプ、滑りの質、演技力といったトータル力が改めて問われることになる。すると世界女王の坂本花織(22)は、スピード感とダイナミックさを武器にしたプログラムをパーフェクトに演じ、笑顔を見せた。146.66点で9月の初戦より14点以上伸ばし、貫禄の首位に立った。 「この演技をできたのは奇跡です。練習では調子が悪く、集中すればここまでできるんだという発見ができたことが良かったです。自己ベストに近づけるよう調子を上げていきたいです」 ■全日本選手権に焦点  右足首のけがから復帰した紀平梨花(20)は、まだ3回転2種類に抑え、113.44点でのスロースタート。けがが完治していないこともあり12月の全日本選手権に焦点を当てる。 「練習量はすごく控えていますが、ジャンプの感覚は良くなってきました。健康を大切に、でも期待に応えられるように頑張っていきたいです」  選手たちはこの一戦を糧に、10月下旬からのグランプリ(GP)シリーズに挑んでいく。 (ライター・野口美恵) ※AERA 2022年10月24日号より抜粋
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AERA 2022/10/21 11:30
内村航平の母・周子さんが都内で体操教室を開くワケ 「航平にも教えた」”周子メソッド”と過去の反省
内村航平の母・周子さんが都内で体操教室を開くワケ 「航平にも教えた」”周子メソッド”と過去の反省
内村周子さん(撮影/写真映像部・高野楓奈)  体操男子の五輪金メダリスト・内村航平さんの母、内村周子さん(60)。故郷・長崎で、航平さんも学んだ「スポーツクラブ内村」にて体操やバレエを指導するかたわら、実は都内でも毎週、渋谷区と江東区で子ども向けの「内村周子体操教室」を開いている。「365日中、休み0日」という超多忙な日々を分刻みのスケジュールで駆け抜ける周子さん。都内でのレッスンをのぞき、航平さんのころから続いている“周子メソッド”について聞いた。 *  *  * (撮影/写真映像部・高野楓奈) ――2017年から東京都渋谷区で未就学児とその親を対象に、今年4月からは江東区で未就学児・小学生を対象にしたレッスンをされています。都内でも指導を始めようと思った理由は?  自分から都内で教室を開こうと思ったのではなく、声をかけてもらったからです。長崎に住んでいる私が都内でお仕事をするというのは大変なこと。でも、必要としてくれる人がいるならぜひやってみよう、と思いました。 ――長崎と東京を毎週、往復されているのでしょうか。  月曜の夜に長崎から移動し、火、水は東京で指導、そしてまた長崎に帰って長崎の子どもたちを教えています。合間に全国での講演などもあります。今年は365日休みなしです。  ――ご自身も選手として大会に出場し、9月18日に第55回全日本シニア・マスターズ体操競技選手権大会のマスターズ60代女子個人総合で、1位を取られました。 全日本シニア選手権60代の部で優勝した内村周子さん  ありがとうございます(笑)。自分の時間は朝しかないので、コーチの夫に見てもらいながら朝に走ったりしたのですが、最近は本当に練習時間が取れなくて。でも、日々子どもたちとの授業で体を動かしていますので、それが練習代わりですね。 ――4月から始まった江東区の教室は、子どものみを対象としたレッスンです。どんなことをされていますか。  3~4歳児の年少クラス、4~6歳の年中・年長クラス、小学生クラスを持っています。“周子メソッド”では、体操の技術を身に付ける前に、気力、忍耐力、非認知能力を育てることを一番大切にしています。 絵本を使って集中力を育てるのが、周子メソッドの一つ(撮影/写真映像部・高野楓奈)  非認知能力とは何かというと、集中力、空間認知能力、状況を判断する力、協調性などです。テストの点で出てこない能力ですね。実は航平も、幼いころは運動神経が飛び抜けてよかったわけではなく、周りと比べても体操がすごくできるという感じではなかったのです。小学校1年生で、体操の団体戦に出たときは、一人だけバック転ができなかった。でも、幼いころから集中力だけはズバ抜けていたんです。  その集中力をどうやって養うかというと、私は「絵本」を使ったんです。『こぐまちゃんのみずあそび』とか『のりものいっぱい』とか、昔からありますよね? ああいう絵本を使って読み聞かせたあと、パッと本を開いて、「そこに何が描かれていた?」「クマちゃんがいたねー」というようにクイズを出して子どもたちに説明してもらうのです。それを繰り返すことで集中力が鍛えられ、右脳のトレーニングにもなる。  複雑な体操の技を実現するには、その技の一コマ一コマを切り取って体の動きを理解することが重要なのですが、航平は昔、体操のビデオを繰り返し見ながら、紙にコマ割りの絵を描いて覚えていました。「集中して瞬時に場面を覚える」という当時の絵本トレーニングが役立っていたのかなと思います。実際に今、年少クラスでも、長崎では小学生にも、運動を始める前に絵本を読み聞かせています。 江東区のレッスンで子どもたちにお手本を見せる内村周子さん(撮影/写真映像部・高野楓奈) ――レッスンを見ていたら、1~2分ごとに子どもたちに違う動きをさせていました。  大切なのは、子どもを飽きさせないこと。次から次へと、前回りだ開脚だ鉄棒だ……とテンポよくやっていくのが“周子メソッド”です。説明も長くしてはダメ。さっと聞いて、体で理解するのが一番だと思っています。  あとは、【人の話を聞き、そして、お友達のわきを通って鉄棒にぶら下がったあと、自分の場所につく】というような、一連の動作も大切にしています。「ここを通ると人とぶつからないんだ」と理解することで、空間認知能力が育ちます。順番を守り、きちんと座るといったルールを何度も繰り返すのは協調性や状況判断力を鍛えるためです。レッスンの様々な動作が、非認知能力を育てることにつながるように工夫しています。 一人ひとりの性格に合った声掛けをしている(撮影/写真映像部・高野楓奈)  だってね、災害時や緊急事態が起きたとき、状況を正しく判断できなければ死んでしまいますよね。体操の技ができる・できないは、実は二の次。まずは人として、生きることに必要な能力を身に付けてほしいと思っています。体操の前に、この世を生きていかなきゃいけない。「生きていればなんとかなる」が私のモットーです。 ――レッスンのなかで、「よくできたね~」と大きな声で子どもを褒める姿が印象的でした。  あまり大げさに褒めすぎるのもよくないんですが(苦笑)。褒めすぎてもダメだという性格の子は控えめに褒め、もともと運動が苦手で「自分はできないもん」と言っていた子には「やればできるじゃない。あなたはできるんだよ!」とプラスで褒めて自信をつけてあげます。それぞれの子で求めるもの、必要なことが違うんです。それを見極めるのは指導者の力量。   私はたくさんの子どもを見てきているので、しばらく様子を見ていると、その子どもの特徴を理解できるようになりました。ただ、多くの指導経験はあるけれど、学問的な知識がない。もっと指導者として向上したい、子どもの心を理解することは絶対に必要だと考え、2020年4月から今現在も、長崎純心大の大学院に通って児童心理学を勉強しています。 ――航平さんが幼かったころと今とで、“周子メソッド”は変わっているのでしょうか。  基本的には変わっていません。英才教育をするのではなく、「一つのことに集中する」ってことだけを徹底してきました。でも昔は、もうちょっと叱っていたかな? 今のほうが私も経験を積んだぶん、うまくやれているような気がします(笑)。  過去の反省は一つだけ。怖がってやらない子に、できるまでやらせたことがあったんです。その子は結局、数年後に体操をやめてしまった。我が子だったら、「まあいいか」となっていたと思うのですが、ほかのご家庭の大切なお子さまだからこそ、結果を出さなければいけないと思ってしまいました。「この演技を入れないと試合に勝てない、じゃあやらなきゃいけないでしょ」と。今は、やりたいならとことん付き合うけど、怖くてやりたくないなら別の得意な技を伸ばそう、という考えができるようになりました。 (撮影/写真映像部・高野楓奈)  彼が辞めたことを、ずっと自分のせいだと悔いていました。でも先日、20年ぶりに彼に会いました。航平と同い年の子です。「12歳で辞めてしまったけれど、体操は楽しかった、辞めなきゃよかった」と言ってくれました。つらい思い出でなく、楽しい思い出になっていたと知って、私は泣きました。  ――航平さんも3月に引退され新たな道へ進まれました。親として思うことは。  どんな新しい人生を歩むのか、親としても楽しみにしています。もし必要とされることがあるならば、応えられるようにしておきたいなと思います。  体操しかしてこなかった子ですので、これから大変だと思います。でも、体操以外にもいろいろな世界があるということを知っていってほしい。この間、「ゴルフが楽しい」と話していました。すごく下手らしいですが(笑)、楽しいと思えることに出合えて、「ああよかったな」と思いました。  世界は広いです。人生も長い。一度、航平に「お母さんは長く生きているぶんだけ、伝えられることもあるかもしれないよ」と言ったことがあります。子どもが必要としているとき、母として言葉を送るなどして、子どもが安心できる人生を送るサポートをしてあげられたらと思っています。 ――保護者への講演会活動で全国を飛び回る周子さん。人を育てるうえで大切なことはどんなことだと思われますか。  よく講演会でお母さん・お父さんたちにお伝えするのは、「あなたらしくいてください」ということです。自分の子どものことを一番よく知っているのは、お父さんお母さん。人を参考にするのはよいですが、真似をしたり比べたりするのはきついですよね。子ども一人ひとり、特性がまったく違うのですから。子どもとしっかり向き合い、心を理解するように努めて自分流に努力していけば、きっとお子さんも安心していろいろな世界に飛び込んでいけるのではないでしょうか。 (取材・文/AERAdot.編集部・平井啓子) 〇内村周子(うちむら・しゅうこ)/元体操選手・内村航平さんの母。1992年に夫・和久氏とともにスポーツクラブ内村を開設。1歳から大人までの体操を指導。クラシックバレエも教える。2017年4月から東京都渋谷区で、2022年4月から東京都江東区で幼児・児童の体操教室の指導も行う。また、指導者・母親として、子育てに悩む保護者や一般向けに全国で講演会も行っている。
体操内村航平
AERA with Kids+ 2022/10/16 09:00
「フワちゃん」はもはや芸人ではない! タメ口キャラからは見えない“戦略家”の本性
丸山ひろし 丸山ひろし
「フワちゃん」はもはや芸人ではない! タメ口キャラからは見えない“戦略家”の本性
フワちゃん  9月25日に放送された「行列のできる相談所」(日本テレビ系)で、女子プロレスデビューすることを発表したお笑いタレントのフワちゃん(28)。デビュー戦の舞台は10月23日に行われるスターダムの東京・アリーナ立川立飛大会のリングで、4カ月間トレーニングに励んでいたという。  どんな芸能人にもタメ口で話しかけるハイテンションで自由奔放なキャラクターから、2020年の冬には「週刊女性」(主婦と生活社)の企画「嫌いな女ランキング」で、1位になったこともあるフワちゃん。一方、プロレスデビューに対してSNS上では、「フワちゃんのチャレンジは応援したい」「フワちゃんが、やられてるの見るの辛い」「フワちゃん頑張りすぎ~!心配だよ…」など、温かい声が目立っている。  デビュー直後は、その振る舞いに賛否が巻き起こったが、現在は好感度もアップし、そのキャラが受け入れられているようだ。 「タメ口キャラという印象が強いフワちゃんですが、体力系の番組で極限まで頑張っているところに好感を持っている人は多いはずです。昨年放送された『炎の体育会TVSP』では、オードリー・春日俊彰とペアを組み、全日本エアロビクス選手権大会に出場。見事、一般ペア・グループ部門で銅メダルを獲得しました。今年も同番組の企画で、エアロビクスのアジア大会に挑み、難しい大技を完成させるため7キロの減量をしたそうです。また、『アイ・アム・冒険少年』の、自力で無人島から脱出する『脱出島』企画では、脱出成功経験もあり、精神力と体力の強靭さを見せつけました。普段はおちゃらけている人が、真剣に体を張る姿はかっこいいというギャップも好感につながっているのでしょう」(テレビ情報誌の編集者)  また、子どもに接する際の優しさも好感度に影響しているのかもしれない。「水曜日のダウンタウン」(TBS系、2月16日放送)の「ハッピーサプライズを仕掛けた相手がウレションしたら、仕掛け人のほうが一瞬で真顔になる説」というドッキリ企画では、フワちゃんのファンだという11歳の少年が“ウレション”をすると、動揺しつつも「替えのズボンある?」と気遣う様子を見せたフワちゃん。さらに、彼女が貸したショートパンツを履いて少年が登場すると、「いいじゃん! 似合う似合う!」「大丈夫、私も漏らすから。お漏らし同盟だね。学校で言ってやんなよ。“フワちゃんとお漏らし同盟を組んだ”って」と励ましたのだ。これに多くの視聴者は感動したのは言うまでもない。 「実は礼儀正しい常識人だという点もポイントでしょう。バラエティー番組などで、芸人仲間から暴露されていますよね。友人のミキ・亜生がフワちゃんについて、お会計をしてもらった人に対し、90度以上体を曲げて礼をすると『おしゃれイズム』で明かしていました。また、同番組MCの上田晋也さんのことを“上田”と言っているが、亜生らと食事をしているときは“上田さん”と言っているそうです。他にも市川海老蔵さんや、紅白に出場したミュージシャンからもブログやSNSで『実はすごく礼儀正しい』ことが報告されています」(同) ■声優の才能を開花させた  今や、フワちゃんの活躍はバラエティーだけにとどまらない。最近ではテレビ出演以外でもマルチな活躍も見せ始めている。 「9月に公開された、ブラッド・ピット主演のハリウッド映画『ブレット・トレイン』の日本語吹替版で、毒使いの暗殺者・ホーネット役の声優を担当しているんですが、実力派声優がそろう中、聞き取りやすく全く違和感のない演技で、見た人からは『フワちゃん吹き替えうまいな…全然気が付かなかった』『度肝抜かれた』と称賛の声が集まっていました。ただのふざけたタメ口キャラ芸人ではないということを前提として見ると、あの明るいキャラクターに嫌悪感を抱くことはないでしょう。キャラを売り出す時から、そこまで計算していたとすれば、すごい頭脳の持ち主だと思います」(同)  お笑い評論家のラリー遠田氏は、フワちゃんについてこう見ている。 「フワちゃんの強みは、セルフプロデュース能力の高さ。もともとSNSやYouTubeを使いこなしていた彼女は、テレビやラジオも自分を発信するためのメディアであると位置づけていて、そこでどう振る舞えばいいのかを戦略的に考えて行動しているような感じがします。ずっとテレビに出続けていると、彼女の性格的な部分も少しずつ見えてくるので、最初は違和感や嫌悪感を持っていた視聴者も、だんだん見慣れてきて、好感を持つようになったのではないでしょうか。現在の彼女は、ただの芸人でもYouTuberでもタレントでもない、“フワちゃん”というひとつのジャンルを確立していると思います」  もちろん、どこまでが“戦略”で、どこからが“素”なのかはわからない。でも今は、それもフワちゃんの魅力のひとつなのかもしれない。(丸山ひろし)
フワちゃん
dot. 2022/10/12 11:30
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大谷百合絵 大谷百合絵
Aぇ! group 30歳JKの長女とアメリカンポリスの結婚の行く末は……!?【コント「Aぇ家族物語」超詳細レポ】
「Aぇ家族物語」コント後に歌った「サムシング・ニュー」(ジャニーズWEST)で、よし子(佐野晶哉)とリチャード3世(草間リチャード敬太)は無事に結婚式を決行。幸せいっぱいのなか、小島家の、父(小島健)、母(正門良規)、せーちゃん(末澤誠也)、そして犬に変装した泥棒(福本大晴)と記念写真をパシャリ  9月28・29日、関西ジャニーズJr.・Aぇ! groupのアリーナ公演「西からAぇ!風吹いてます! ~おてんと様も見てくれてますねん LIVE2022~」が開催された。そこで披露された約20分にわたる爆笑コントの模様をお届けする[取材は28日夜公演。以下、ネタバレあり]。 「Aぇ家族物語、は~じまるよ~!」の呼びかけとともにスタートしたコントの設定は、「大阪にあるごく普通の家族、小島家の物語」。ジャニーズWESTの「道頓堀一丁目中間んち物語」のオマージュとも受け取れる家族コントに、関西ジャニーズの先輩後輩間で継承される歴史が垣間見える。  最初にステージに現れたのは、母(正門良規)。割烹着&トラ柄のスカートに完璧なおばちゃん口調で、“おかん”になりきる。「あの人ったらどこ行ったのかしらねえ。お父さーん!」と呼ばれて出てきたのは、ハゲ頭のカツラをかぶった父(小島健)。股の前でピースをし、「ちゃー[裏声]」と言う謎の決めポーズで、会場の笑いをかっさらう。 父:これで数々の女を落としてきたんや。お母さんもそうやろう? 母:そう……そうだったわね、お父さんのちゃーにやられてかれこれ数十年。  と、衝撃のカミングアウトをしたおかんは、息子も召喚。「あの子ったら変なとこ行ってないかな。せーちゃーん!」。幼稚園児姿の長男(末澤誠也)が「パパー! ママー!」とかわいらしく駆けてきたかと思うと、「はぁはぁはぁ……ちゃー」と気だるげに股ピース。「やめなさい、せーちゃんまでそんな。ダンディなちゃー、ええのよ」と母にたしなめられたせーちゃんは、「そんなことよりね、犬がおったから拾って帰ってきた」と報告する。「おいでー犬ー」と呼ぶと、犬(の着ぐるみ姿の福本大晴)が「あーんあおーんあんあん!」と四足歩行で登場した。せーちゃんは犬の言葉がわかるらしく、「僕かわいいでしょって言ってた」などと通訳する。  そこに、制服姿の長女(佐野晶哉)も帰宅。「どうも、JKよし子でーーーす!よし子実はJKだったんだー」。Aぇ! group結成以来約3年半、様々なコントで登場してきたよし子。今回はセーラー服の上衣をたくしあげて腹筋を丸出しにした、だいぶトガッた女子高生の設定だ。そんなよし子は、この日、家族に紹介したい人がいるのだとか。「リッチャードさーーーん!!」。バックステージから、警察官の格好をしたリチャードが花道を疾走してくる。 父:なんやねんこいつー? よし子:彼の名前はリチャード3世、よし子の、彼氏です。 全員:えー! リチャード:どうも初めまして、リチャ―ド3世です[ルパン3世のモノマネで]。アメリカンポリスやってます。 父:ちがう3世や、その紹介の仕方。お前ら一体どこで出会ったんや? リチャード:なにわ男子のライブで。  どうやらよし子のほうから、アンコール後に逆ナンパしたらしい。父に結婚を頼み込むよし子と、「わしゃ絶対認めへん」と突っぱねる父。急にピリつきだした雰囲気のなか、リチャードがぶっこむ。「今日は大事な話があって来たんです。最近噂になってる泥棒を知ってますか? その泥棒がここに逃げ込んだ可能性があるんです。しかもその泥棒は変装の達人で、この家族の中に紛れ込んでいる可能性があります」。わかっている泥棒の特徴は、「雨に反応する」こと。すると、あまりにタイミングよく、雨がパラパラ。突然犬が吠え出す。 犬:あん、あん、あんあんあんあん……ワイパー!![※福本の一発ギャグ] 全員:[犬を指差しながら]おったー! 犬:ばれたー! くっそー長年やってたギャグが反応してしまった。俺が最近噂の泥棒やー![犬の着ぐるみを脱ぎ、「泥棒」と書かれた黒のTシャツ姿に] 全員:えー! 泥棒:来いガキ! こいつは人質にもらった[せーちゃんを引き寄せる]。 せーちゃん:パパママー! 父:せーちゃんを返せ! 泥棒:返すわけないやろ人質やねん。  なにやらすごい展開になってきたが、せーちゃんを取り戻すべく、「今世紀最大の対決、小島家VS泥棒さん」が始まる。よし子が作った特設リングに上がったのは、父。「ワイパー!」と叫びビームを放つ。泥棒は「俺の技を真似するとは……」と吹っ飛んだが、すぐに必殺技「ビバ、コビバ[※小島の一発ギャグ]」で反撃してきたため、父、ノックアウト。 「ちょっとお父さんなに負けてんのよ」と、手厳しいよし子。そして父に代わりリングに立つと、「あちょー!」。「ほっほっほっ」という掛け声とともに、ハイキックや跳び蹴りなどアクロバティックなカンフーで泥棒を圧倒する。なお、20秒ほどのカンフーシーンは、実は当初2分間の予定だったそうで、佐野は後のMCで「マジで稽古4時間ぐらいやったからなー」と明かしている。  さて、このままよし子の勝利かと思いきや、泥棒は急に刀を持ち出し、切りかかってくる。絶体絶命のピンチにリチャードが飛び出し、身を挺してよし子をかばう。「オゥマイガーーー!!」。ターミネーター風に海老反りで倒れ込むリチャード。「来世でまた会おう」と言い残し、目を閉じる。よし子、激昂。「よくもあんた、私のリチャードさんのことを! あー、うわー!」。サイレンが鳴り響くと、太い三つ編みがちょんまげのように頭から生えた「スーパーよし子」モードに変身し、再び戦闘開始。ついに泥棒を追いつめ、「リチャードさんの仇!」とトドメを刺そうとした、そのとき。いつの間にか立ち上がっているリチャードが、「待って!!」とよし子を制止する。 リチャード:罪を憎んで人を憎まずです。もう十分でしょう。 よし子:リチャードさん……。 リチャード:人は誰しも、失敗をするものです。 よし子:でもあなた、こんなに切られたのに。泥棒さんのこと、許してあげるの……?  するとリチャード、満面の笑顔を浮かべ、泥棒を刀でプスリ。 泥棒:うわー! リチャード:許しませ~ん。やっていいことと悪いことがありま~す。 よし子:リチャードさん、これにて一件落着ね。お腹もすいたし、ご飯にしましょー! リチャード:行こう行こう![去り際、泥棒に近づき、]痛いやろー? 泥棒:痛い……。 リチャード:塩振ったろか?[目だけが笑っていない笑顔] 泥棒:うぁああああ怖い!! リチャード:行こうかー、ははははっ![せーちゃんを残し、小島家退散] せーちゃん:俺のこと忘れてない!?  次の日。よし子は恥ずかしがるリチャードに膝枕をし、家族の面前で思いっきりイチャついている。父はそんな二人を受け入れられない様子だが、母は「二人の愛の力のおかげで泥棒を退治できたんだから、結婚を認めてあげましょう」と口添えしてくれる。「よし子は平成4年4月5日[※445、つまりよし子]に生まれてきたんや……」と、娘の思い出に浸りはじめる父。ここで、よし子が実は30歳だったという「エグい設定」(佐野)が明るみに出るが、ひとまずそれは置いておいて、一同は父に結婚を頼み込む。 リチャード:お父さん、僕はよし子さんを幸せにすると誓います。だから娘さんを僕にください。 よし子:よし子からもお願いします。 せーちゃん:パパ、お願い。  ぎゅっと横並びで土下座する3人。泥棒も「なんか知らんけど、俺からもお願いします」とちゃっかり乱入し、せーちゃんとよし子の背中に乗って頭を下げる。「じゃあ私も入るわ」と、今度は母がよし子とリチャ―ドに乗っかるも、下から「うぉっ……」という声が漏れる。 よし子:けっこうお母さんがすごいのよ? せーちゃん:あっ、あー!!! 背骨が折れそう。 泥棒:僕、左足浮いてます![※母の体重も支えるよし子の負担を軽くするためだが、その分せーちゃんに重みが加わる]  どうにか5人がピラミッド状に組み上がった“立体的土下座”が完成したところで、ついに「わかった!」と父が折れ、結婚を認めてくれることに。みな大喜びするなか、泥棒がある「お願い」を切り出す。 泥棒:僕を家族に入れてくれませんか? ちゃんと犬もやりますんで。 母:ちゃんと犬もやるって、もう無理やわ。 泥棒:[再び着ぐるみの中に入りながら]こうやってこうやってこうやったら、わんっ、わぉん、くぅーん。 せーちゃん:あーほら、ほんまに家族になりたいって言うてるよ。 犬:わん。 母:いやいやいや、せーちゃん人質に取られてたのよ? あの人に。  すると泥棒、改め犬は、実力行使に。しずしずと母に近づき、セクシーなタンゴのメロディーに乗せて誘惑しはじめる。せーちゃんは通訳で協力。 犬:がるるるる。 せーちゃん:奥さん。 母:なんや、なにこれ? 犬:がるるるぅ。っあーーーん。 せーちゃん:俺のこの筋肉、すごいだろー[吐息]。 母:誰かせーちゃん止めて、この犬も。 せーちゃん:俺のさあ、一番色っぽいとこ見せてあげるわ[犬、キョトンと困惑した表情]。耳のほう見て、もっと近くで見て。 犬:がるるる。 母:どっちの耳やねん。 せーちゃん:左耳見て。きれいなもみあげだろう? 犬:がるるる、っふぉーーー!!! 母:全然かみあってへんから二人とも。 せーちゃん:いいから、奥さん[ピンクのライトのもと、母に顎クイする、犬]。 母:何してんのって気持ち悪いもう。 せーちゃん:落ち着いてー。奥さーん! 母:やめさせなさいせーちゃん、このわんちゃん捨ててきなさい早く。 せーちゃん:あぁ、もう仕方ないなー。チュッ[と投げキスをお見舞いする、犬]。 母:ずっと何してんねん、二人して。もうお父さんもなんか言うてよ! 父:俺ら、えぇ家族やなあ。 母:どこが!?(笑) ~終幕~  日ごろから「家族よりも一緒におる」(末澤)というメンバーたち。はちゃめちゃで息ぴったりな「小島家」の姿は、もしかすると、6人の日常とあまり変わりないのかも……?  面白すぎるコントからクールなライブまで幅広くこなすAぇ! groupが表紙を飾る10月4日発売の「週刊朝日」10月14-21日号には、この「家族物語」の写真3点を含む、23点ものカットで初アリーナ公演の模様を振り返るライブスナップ、撮り下ろしグラビアにインタビューなどが満載。大ボリュームでその魅力を紹介している。 【この日のライブ全体の詳細レポートはこちら】 【この日のライブのMCレポートはこちら】 (本誌・大谷百合絵) ※週刊朝日オリジナル記事
Aぇ! group佐野晶哉小島健末澤誠也正門良規福本大晴草間リチャード敬太
週刊朝日 2022/10/04 20:07
万城目学『あの子とQ』 女子高生の吸血鬼を主人公にした裏には、アニメ『ときめきトゥナイト』の影響も
万城目学『あの子とQ』 女子高生の吸血鬼を主人公にした裏には、アニメ『ときめきトゥナイト』の影響も
まきめ・まなぶ/1976年、大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。化学繊維メーカーの経理職を経て、2006年にボイルドエッグズ新人賞を受賞した『鴨川ホルモー』でデビュー。小説に『鹿男あをによし』『プリンセス・トヨトミ』『悟浄出立』『ヒトコブラクダ層ぜっと』など。エッセーに『べらぼうくん』『万感のおもい』など(photo 写真映像部・高野楓菜)  AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。 『あの子とQ』は、万城目学さんの著書。人間社会に溶け込んで高校に通う吸血鬼の弓子のもとに、トゲトゲした形のQという物体が現れ、弓子を監視し始める。男女4人で海に行った弓子は事故にあい、吸血鬼と人間の間で究極の選択を迫られ、Qの正体を知ることに。青春と冒険を描いた長編小説。万城目さんに同書にかける思いを聞いた。 *  *  * 吸血鬼の一族に生まれた弓子はもうすぐ17歳。人間社会に適応するための「脱・吸血鬼化」の儀式を控えたある日、謎の存在Qが現れ、弓子が人間の血を吸っていないか監視を始める。  万城目学さん(46)が高校生の女の子、しかも吸血鬼を主人公にしたのには理由がある。4年前に映像関連のプロジェクトに参加し、「少女と、その横にいる、この世のものではない存在」の物語を考えるよう依頼されたからだ。 「16、17歳の女の子が何を思い、何に悩んでいるのか僕にはわからない。でも吸血鬼にすれば学校での友人関係とか人間社会になじむ苦労とか考えられるかなと。小学生のとき妹がはまっていたアニメ『ときめきトゥナイト』の影響もあるかもしれません」  いくつかのプロットを提案したが、コロナの影響もあってプロジェクトは空中分解してしまう。没になった案を小説にしてはと編集者にすすめられ、「週刊新潮」に連載したのがこの作品だ。 「今までは弁当箱のサイズも中身も全部自分で決めていましたけど、今回はよそ様からのオーダーで始まりました。主人公の性別、年齢、準主役の在り方を自分で考えなかったのは初めてです。面白くなるのか懐疑的でしたが、望外の出来になりました」  ストーリー展開は理詰めで考える。主人公を監視する存在はなぜトゲトゲした形なのか、最後はトゲトゲがどうなるのか、ここには自分の未来と友だちの命を天秤にかける厳しい状況が必要というふうに少しずつ組み立てていく。  吸血鬼については古今東西の映画や本を調べた。 「最近は血の誘惑を抗い難いものとして描く作品が多いんですよ。人間の血を見たら意識が引っ張られて、もう自分には止められない。シリアスな描写が印象に残りました」 『あの子とQ』 (1760円〈税込み〉/新潮社) 人間社会に溶け込んで高校に通う吸血鬼の弓子のもとに、トゲトゲした形のQという物体が現れ、弓子を監視し始める。男女4人で海に行った弓子は事故にあい、吸血鬼と人間の間で究極の選択を迫られ、Qの正体を知ることに。青春と冒険を描いた長編小説(photo 写真映像部・高野楓菜)  歴史好きの万城目さんは吸血鬼の歴史をひもとく。彼らは迫害されている絶滅危惧種であり、人間社会に遠慮しながら生きている。日本の吸血鬼第一号も登場し、弓子は大物吸血鬼が集う館に乗り込む。  いつもは長編を仕上げると2カ月ほど休んで旅行などを楽しむが、今回は前作『ヒトコブラクダ層ぜっと』を3年半かけて書き終えた4日後に新作執筆が始まった。1週間のうち5、6日はこの小説を書き、あと1日はエッセー執筆。夕方5時から朝の5時まで机に向かう日々が続いた。 「何でこんなに働いてるんだろうと思っていました。でも、ストレスが掛かっている時のほうがいいものが書ける。生活の満足度と作品の質は反比例すると思います。沖縄の青い海を見ながらのんびり書いても小説は面白くならないんですよ」  ハリー・ポッターのような完全に異世界の話より、「日常生活の中にちょっと変なやつがいる話が好き」という万城目さん。弓子もQも変なやつだが、二人の間に生まれる感情は本物だ。(ライター・仲宇佐ゆり)※AERA 2022年10月3日号
AERA 2022/09/29 11:30
「3C・4低・3強・3生」という高い壁…結婚したくても結婚できない日本人男性が増える根本原因
「3C・4低・3強・3生」という高い壁…結婚したくても結婚できない日本人男性が増える根本原因
※写真はイメージです(GettyImages) 「生きづらい」とこぼす日本人男性が増えている。『男が心配』(PHP新書)の著者で、20年以上にわたり、男性の生きづらさを取材、研究してきた近畿大学の奥田祥子教授は「依然として『男らしさ』に縛られている人は多い。20年前は少しは笑いに変えられるような希望があったが、いまはまったく笑えない深刻な状況になっている」――。 20年たってやっと「男が心配」と言えるようになった ――なぜ「男性の生きづらさ」を研究するようになったのですか。  大学院修了後に新聞社に入社し、30歳代になって、30~50歳代のサラリーマン男性を主な読者とする週刊誌に配属されたのですが、そこで一般的なサラリーマン男性の中には「男らしさ」を実現できずに苦しんでいる人がたくさんいることに気がつきました。ポスト削減が始まっていた20年前にも、出世できないという仕事の悩みや、ずっと仕事一筋でやってきたために家庭にも居場所がないと嘆く声はすでにあったんですね。  私は女性が極めて少ない時代に新聞記者としてキャリアをスタートして、警察や政治家といった権力に毅然とした態度で対峙(たいじ)して弱音を吐かない先輩たちに憧れていましたから、強い存在と思い込んでいた男性が仕事や家庭の悩みで弱り果てていることに激しく心を揺さぶられたのです。  しかも、男性の生きづらさは経済動向や雇用情勢の悪化によって起きている問題ですから、看過されている社会の問題です。にもかかわらず、男性記者は同姓の男性のつらさを取り上げたくないのか、手を挙げる人はいない。それで私がやるべきなんじゃないかと考えたのです。  新聞社での仕事とは別に個人活動として取材を始め、その後研究を再開して大学教員となった今まで、週末を使って全国を回ってインタビュー調査を行い、夜から朝にかけて調査データを分析、執筆するといった生活を続けてきました。取材者総数は男性だけでも約1000人に上ります。このうち500人を超える男性が一度で終わることのない継続インタビューで、最も長い方で20年余り追い続けています。 ――『男が心配』という本のタイトルはインパクトがありますね。  今でこそ『男が心配』というタイトルの本を出させていただいていますが、取材を始めた当初は「心配」という言い方ができない状態だったんですよ。  女性が男性の生きづらさを追うことに対して、男性からは「なんでお前に分かるんだ」というお叱りを受けますし、女性からは「今、女性の差別撤廃が必要なのに女性のあなたがなんで男に同情するの?」と言われる。最近になってようやく、男女ともに共感を持ってくださる方が増えて、時代が変わってきたなと感じています。 5年、10年と取材していくなかで語られる“男性の本音”  自分の実績が評価されずにポストに就けないことに苦しむ男性も少なくありません。バブル崩壊を機に始まった新卒採用減が、2000年代前半ごろからリストラへと進行し、さらに法律に抵触しないよう、巧妙にリストラに追い込んでいくケースが増えていきます。同期は出世したのに自分は左遷、出向、転籍という憂き目に遭ったと嘆く人もいました。  2015年に刊行した『男性漂流 男たちは何におびえているか』の中でも紹介しましたが、「長年勤めた会社からいろんな手を使って退職に追い込まれたら、会社を恨んでしまうから、あえて感謝して別れるために、先に自分から会社を辞めたんだ」と話された方のお話には胸を打たれましたね。 ――本書の中では、普段聞くことのない悲痛な本音が吐露されています。  皆さん、1回会っただけでは本音を明かしてくれないんです。最初は「大丈夫ですよ」と明るくお話されていても、会う回数を何度も重ねて、5年、10年と月日が流れていく中で「やっぱりつらいんです」という本音を打ち明けてくださいます。  もちろん「大丈夫」とおっしゃった時の表情や身振りなどノンバーバル(非言語)の部分を観察し、取材者として「本心ではないな」とは思いますが、臆測で対象者の心情を書くことはできない。だから、「眉間にシワがよった」「頬がピクピク動いている」といった観察記録を書き留めておくわけです。初めてお会いしてから20年経って、「あの時、本当はつらかったんです」と本音を話してくれた方も少なくありません。  弱音を吐かない、出世しなければいけない、妻子を養わなければならない。そんな旧態依然とした「男らしさ」に縛られているがゆえに、誰にも悩みを打ち明けられずに自分をここまで追い込んでしまうのではないかと思うと……。男性がすごく心配という気持ちは、今も昔も変わりません。 出世圧力に追い詰められ自信をなくしていく ――なぜ多くの男性が「出世しなければならない」と感じてしまうのでしょうか。  旧態依然とした「男らしさ」のジェンダー規範に沿おうとすると、男性はどうしても出世して社会的評価を得なければならなくなりますよね。また、人間には人から認められたいという承認欲求があるとされています。男性の場合は、社会から高く評価されたいという承認欲求と、自分は「男らしさ」を具現化するための勝負に勝ったんだという自負が結びつきやすい。出世は、まさに「男らしさ」を認めてもらう究極の象徴なのです。  ただ、最初に申し上げましたように、ポスト削減は昔から始まっているし、多くの人は給料も上がらないし、人件費削減がどんどん進んでいるので一握りの人しか出世できません。「男らしさ」を実現するのがかなり難しい状況の中で、出世圧力に追い詰められる男性が増えているのです。 「正規雇用になれば結婚できる」と考えていた40代男性  非正規雇用の男性にとっては、正規登用されることが出世に近い状態です。しかし、運よく正社員になれても、「男らしさ」の呪縛からはなかなか解放されません。  学卒期が就職氷河期と重なってしまった小川さん(仮名)は、非正規雇用で、派遣スタッフや契約社員の職を転々としてきました。経済力がないことを理由に女性に対する自信を失っていた小川さんですが、2013年に施行された改正労働契約法の「無期転換ルール」を追い風にして18年にジョブ型正社員に登用され、さらに翌年44歳で同業他社に正社員として転職を果たしました。  それを機に、「雇用形態に負い目を感じて女性から逃げなくても、堂々としていられます」と、精力的に婚活を始めます。しかし、いざ婚活を始めてみると、正社員であること以外にも女性から求められる条件の多さに疲弊し、「まるで粗探しをされているようだ」と、女性に対する自信を再び失ってしまいました。  その後、小川さんはこれまで以上に仕事に邁進し、周囲に遅れながらも46歳で課長に就任します。仕事を女性に好かれるための手段ではなく、仕事自体にやりがいを感じられたのは幸いでしたが、「出世圧力」と、「男たるものモテなければいけない」という「モテ信奉」の根深さを感じた取材でした。 かつては「半径5メートル以内」で相手が見つかった ――男女ともに結婚できない人が増えている印象があります。なぜ結婚できない人が増えているのでしょうか。  国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」では、「結婚できない理由」として最も多い回答は男女ともに「適当な相手にめぐり会わない」という傾向が20年以上続いています。しかし、出会いの数が多すぎることがかえって結婚を遠ざけていると私は考えています。  昔は、職場など身近な半径5メートル以内で巡り合った人をいい意味で、“運命の人”だと思えました。出会いに溢れた現在は、そうした尊さが全くありません。「来週また婚活パーティーがあるから」などと思うと、男女ともに相手の良いところを見つけるのではなく、粗探しをしてしまいやすく、「選択」ではなく、「排除」に陥ってしまっているのです。 出所=『男が心配』  2020年の国勢調査を基に国立社会保障・人口問題研究所が算出した男性の「50歳時の未婚割合」は28.3%と、3人に1人に迫る勢いです。結婚したいのにできない人の割合が、なおいっそう増えています。現在の状況が続けば、男性の孤独や孤立を強め、自殺者数の増加といったより深刻な事態につながりかねません。 女性が求める男性の条件はますます厳しくなっている ――本書では女性が求める「理想の男性像」がさらに厳しくなっていると指摘されていました。  女性は変わったと言われていますが、男女のマッチングにおける本音の部分は変わっていません。これは既存の意識調査などでは女性が本音を明かさないケースが多いため、ほとんど出てこないことです。学歴と経済力は依然として重要ですし、それに加えて家事力や育児力を求められていることを考えると、条件はむしろ厳しくなっています。  例えば本書では、先行研究などから、女性にとっての男性の新しい理想像として、高身長に目をつぶった代わりに家事などへの協力を重視した「3C」や、女性にとっての負担やリスクを軽減する「低さ」を求めた「4低」、女性を経済面・体力面・生活面で守る「強さ」を兼ね備えた「3強」、生存力・生活力・生産力を重視した「3生」などを挙げています。 プレジデントオンライン編集部作成  経済力に関して変化があるとしたら、年収の高さよりも、リスクの低い職業に就いているなどの安定性が求められるようになったことですね。現在はハイスペックのサラリーマンでも収入の伸びには限度がありますから、自治体の正職員のように、リストラされずに収入を常に入れてくれる男性に人気が集まりやすくなっています。 「男のプライドにかけて女性の条件は下げられない」 ――「結婚できないのではなく、しないだけ」と語っている高スペック男性のエピソードも印象的でした。  いわゆる「高スペック男性」の苦悩については、いままで多くの取材を重ねてきました。本書で紹介した男性はそのうちの一人です。大手ゼネコン営業課長の佐藤さん(仮名)は、38歳にして同世代と比べて収入も高かったですし、コミュニケーション能力も抜群で、婚活市場では“超”がつくほどの“優良物件”でした。ただ、会って開口一番「僕は結婚できないんじゃない。結婚しないだけですから」と能力不足で結婚できないのではないと釘を刺してくる。典型的なパターンですね。  しかも、「男のプライドにかけて女性の条件は下げられませんよ」と堂々とおっしゃって、お付き合いする女性の条件として「美人で料理がうまくて家庭的、聡明で短大か女子大卒」の「20歳代」を挙げていました。当時の女性が結婚相手の男性に求める条件を兼ね備え、合コンに出向けば、逆に女性から声をかけられるという。「男はモテなければいけない」という「男らしさ」を具現化できていることに誇りを持っていたんでしょうね。  その5年後、佐藤さんは「効率性」を求めて結婚相談所に入会していたのですが、収入など外面ばかり注目され、中身を見てもらえない婚活に疲弊している様子でした。そこに、部長昇進間近と目されていた時期に、うつ病で休職していた部下から「佐藤さんに過重労働を強いられていた」と人事部に訴えられ、譴責(けんせき)の懲戒処分を受けたことが追い打ちをかけます。  佐藤さんは「花形部署を離れて、出世も見込めないなんて、女性にモテるわけがない」と心をひどく痛めていました。 20年前は笑いに変えられる明るさがまだあった  ポストが削減されている現在、実際には「高スペック男性」は部長まで昇進できればまだいいほうですが、彼らの中には社長は無理でも、せめて役員にはならないとダメという認識の人も少なくない。だから、高スペックは、どこかで終わってしまう期限付きのものなんですね。高スペックの期限に気付いていない男性たちを前にしても、取材者という立場上、何も言えないことをいつももどかしく思っています。  15年前に『男はつらいらしい』を刊行したときは、取材相手の男性に怒られながら取材する大変さがあった一方で、文字にしてみると、男性からもクスっと笑ってもらえるような明るさがまだありました。  ですが、現在は最悪、男性が孤独死する状況が明日にでも待ち受けている状況なわけです。男性も年齢が上がれば上がるほどマッチングの可能性が低くなってしまいますし、自信もやる気もなくなり、最終的には孤独感に苛まれながら、周囲から孤立してしまいかねない深刻さをとても危惧しています。それでも、次にお会いしてインタビューするときには状況が良くなっているかもしれないと願いながら、取材を継続しています。 (構成=佐々木ののか) 奥田 祥子(おくだ・しょうこ)近畿大学 教授京都生まれ。1994年、米・ニューヨーク大学文理大学院修士課程修了後、新聞社入社。ジャーナリスト。博士(政策・メディア)。日本文藝家協会会員。専門はジェンダー論、労働・福祉政策、メディア論。新聞記者時代から独自に取材、調査研究を始め、2017年から現職。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程単位取得退学。著書に『捨てられる男たち』(SBクリエイティブ)『社会的うつ うつ病休職者はなぜ増加しているのか』(晃洋書房)、『「女性活躍」に翻弄される人びと』(光文社)などがある。
プレジデントオンライン 2022/09/28 18:00
紀子さま24年不変のショートカット、その合理性と愛と
矢部万紀子 矢部万紀子
紀子さま24年不変のショートカット、その合理性と愛と
宮内庁提供  女性皇族で注目される事柄の一つといえば、髪形の変化だろう。愛子さまがボブヘアにしたときも「イメージチェンジ」と話題になった。一方で、ヘアスタイルに変化がない場合は世間に注目されにくいが、変わらないことの意味とは? 紀子さまについて、コラムニストの矢部万紀子さんが考察した。 *  * * 佳子さまはこの夏、髪を切った。腰に届きそうだったのが、7月の「全国都市緑化祭」では肩と同じほどの長さに。これはショートヘアへの道?  上皇さまの孫は4人いるが、うち3人の女性(小室眞子さん、佳子さま、愛子さま)はみなロングヘアだ。愛子さまはボブにしたこともあったが、すぐに元のロングになった。ショートヘアは女性らしさに欠けるという“自主規制”が働いているのかもしれず、打ち破るとしたら率直に自分の思いを語る佳子さまでは? そう勝手に期待。  が、ある日、突然気づいた。それを言うなら紀子さまは、ずっとショートヘアではないか、と。  9月11日、紀子さまが56歳の誕生日を迎えた。その日に公表された宮内記者会への質問に答える文書には、眞子さんについてこうあった。 <庭の花の世話をしながら、木香薔薇のアーチを作り、いつか娘と一緒にゆっくり庭を歩くことができましたら、と思っております>  木香薔薇は眞子さんが皇族だったときの「お印」で、紀子さまはアーチを作るための手入れをしている、と報じられていた。「納采の儀」も「一時金」もなく旅立っていった眞子さん。親心と薔薇が重なり、読んでいて切ない。  だが、合わせて公開された写真は、1年前のそれより表情が柔らかくなったようだった。アーモンド形の目、柔らかなほほ笑み。少しは気持ちが軽くなったのだろうか、醸し出される雰囲気がふんわりとしている。1989年の婚約内定後の記者会見を思い出した。「秋篠宮さまが初恋の人ですか」と聞かれ、「そうでございます」と恥ずかしそうに答えていた川嶋紀子さん。あのとき紀子さんは、たっぷりと長い髪の毛を紺のバレッタで留めていた。そうだ、紀子さまといえばロングヘアだった。忘れていたのは、現在の髪形がすっかり定着しているからだろう。ずーっとあの髪形なのだ。そう、分け目は右側で、前髪はつくらず、耳にかける。それが紀子さまスタイルだ。 1989年 婚約が決まり、記者会見する礼宮さま(当時)と川嶋紀子さん(同)  令和になってすぐ、雅子さまを特集する週刊誌に林真理子さんがこんなことを書いていた。 <いつのまにか紀子さまがヒール役を担わされてまことにお気の毒である。ご婚約の時の、愛くるしく清楚な「紀子ちゃん」を知っている者にとって、昨今の「皇室顔」となられた紀子さまにはあまり親近感がわかない。それでもいつのまにかヒール役を負わされていて、私は憤っているのである>(「週刊文春」2019年8月15日・22日号)  確かに紀子さまの表情は、あまり変わらない。笑っているのに笑ってないような、本音を出さないぞというような。そこに髪形が影響しているような気もする。紀子さまはいつからあの髪形だったのだろう。たどってみることにした。  振り返ってみると、幼いときから紀子さまはほとんど長い髪をしていた。1990年6月に皇室に入ってからもしばらくはロングヘアで、まさに<愛くるしく清楚な「紀子ちゃん」>だ。が、その時代は案外短い。2年ほどでセミロングになる。  きっかけは眞子さん誕生だ。91年10月に眞子さんが生まれている。出産後、宮内庁病院を退院するときは、長い髪を一つにまとめていた。が、翌年8月に生後9カ月の眞子さんを抱っこした軽井沢での紀子さまの髪は、肩のあたりまでになっている。単純に分析するなら、子育てにはセミロング、ということだろう。94年12月には佳子さまが生まれた。97年11月、秋篠宮さまの誕生日に公開されたご一家4人の写真では、小さい姉妹も紀子さまも、みな肩までのセミロング。姉妹お揃いの赤いカーディガンがとてもキュートだ。  その翌年、紀子さまはショートヘアになる。4月、眞子さんの学習院初等科入学式に臨んだ時点で肩上10センチほどの長さになっていたのだが、このときはまだ耳が隠れている。が、8月にご一家で静養した須崎御用邸(静岡県)では、さらに5センチほど短くなり、耳を見せる今のスタイルに。以来、24年間、紀子さまはずっと同じ髪形を守り通している。  髪を切るにあたり、何があったのかはわからない。佳子さま出産から1カ月もたたない95年1月に阪神・淡路大震災が起こった。その半年後には紀子さまも被災地を訪問、97年からは追悼式に出席した。そのような経験を通じ、皇族としての役割を体に染み込ませていった。<愛くるしく清楚な「紀子ちゃん」>ではいられなくなる。その延長線上に、「髪を切る」もあったのではないだろうか。そんな気がしている。  そして紀子さまは、合理的な方なのだと想像する。短い髪は長い髪より、ずっと手入れが楽だ。パッと洗えて、サッと乾く。忙しい人向け、と言っていいだろう。紀子さまは、まさに忙しい人だ。 2015年1月14日歌会始の儀  公務の話は後述するが、勉強にも熱心に取り組んでいる。1990年6月に結婚、その5年後に学習院大学大学院の心理学専攻博士前期課程を修了している。そして2009年にはお茶の水女子大学で研究を始め、2013年には博士の学位を授与されている。94年から結核予防会総裁となったことを足場にし、10年から結核予防に関する意識調査を実施、それをまとめた論文で博士号を得たのだ。  06年に悠仁さまが生まれた。次世代では唯一の男子が、天皇家の「次男」の家に生まれた。その“ねじれ”にメディアがつけこみ、紀子さまへの風当たりが強くなる。そんな中、紀子さまは子育てし、勉強し、公務をする。努力の人だ。 「紀子さまほど、実像とかけ離れた姿が描かれる方はいないと感じている」と書いたのは、朝日新聞の島康彦さんだ。紀子さま50歳に際して出版された『清淑なる紀子さま 50年のご足跡』(宝島社)という写真集へ、当時の宮内庁担当記者として寄せた文章でそう書いている。タイトルは「『嫌われ者』に徹する知られざる紀子さまの素顔」だった。  そこで島さんは、出版前年の9月10日から16日を例に紀子さまの多忙ぶりを説明する。週末の10日から1泊で宮城県を訪問、12、13日は宮邸で公務、15日は日帰りで兵庫県、16日は午前中、宮邸で公務、午後から福岡県へ。その上でこうまとめた。 <こうした動静はめったに報道されることはないが、日常的に過密日程は続いている。その多忙さは皇室いちと言っても過言ではないと思う>  この状況は令和になっても同じだった。コロナ禍前の19年7月を例にとると、6日にポーランド、フィンランド訪問から帰国、8日には帰国の参拝を賢所で済ませたのちに、赤坂御所で結核予防関連の研修生と懇談、9日に宮邸で2件の説明を受けて、10日から1泊2日で石川県へ。15日は都内でレセプション出席後、悠仁さまと「国際地図学会議」の展示へ。  これはもう、ショートヘアしかない。髪形は時短が一番。だから、今日までスタイルは不動。そうに違いない。そして紀子さま、意志が強い。24年の間に、髪型を変えたいと思ったときもあったはずだ。だって、女子だもの。だけど変えない。強い意志とは、つまり「仕事ファースト」なのだと思う。写真集で島さんは、こう書いている。 <紀子さまに近い関係者によると、紀子さまは殿下やお子さま方が矢面に立たないよう、あえて周囲に厳しい姿勢で臨み、「嫌われ者」になることもいとわないのだという> 2022年9月、英国へ向けて離陸した天皇、皇后両陛下が搭乗した政府専用機を見送る秋篠宮ご夫妻  紀子さまの「夫、子どもファースト」を表しているとも読めるが、私は「成果ファースト」なのではないかと思う。今どきの表現になるが、皇室が果たすべき役割=成果だろう。それを実現することが一番。だから「嫌われ者」も引き受ける。髪形を変えるという個人的思いは二番以下になる。成果達成には合理的だし、紀子さまにとってはそれが日常なのだ。島さんの文章はこう続いていた。 <紀子さまの奮闘ぶりの心底にあるのは何か。長く交流のある一人は「やはり秋篠宮さまへの愛情でしょう」と明かす>  愛情とは双方向。9月11日に公表された写真には、秋篠宮さまとお二人で絵本を見る写真があった。そこで秋篠宮さまは、頬杖をついていた。すごく楽しそうで、とてもくつろいでいることが伝わってきた。人が心からくつろげるのは、好きな人の隣だろう。秋篠宮さまの隣で紀子さまも笑っている。紀子さまの横顔に、つややかな髪が映えている。(矢部万紀子)
皇室紀子さま髪形
dot. 2022/09/25 09:00
<ライブレポート>GENIC、ファンと踊りつくした満員御礼の初Zepp公演
<ライブレポート>GENIC、ファンと踊りつくした満員御礼の初Zepp公演
<ライブレポート>GENIC、ファンと踊りつくした満員御礼の初Zepp公演  GENICが、9月11日に【GENIC LIVE TOUR 2022 -Ever Yours-】を東京・Zepp DiverCity (TOKYO)にて開催した。  “avexのDNAを継承する”男女7人組ダンス&ボーカルグループであるGENIC。2020年5月のデビュー以降、リアル/配信ともにコンスタントなライブ活動を続けてきた彼らだが、この東京公演が自身最大規模での単独ライブとなった。昼夜2公演で開催された同公演のうち、本稿では昼公演の模様をレポートする。  会場に流れるSEが徐々に大きくなっていくと、紗幕に大きな時計が映し出され、オープニングムービーが流れ始めた。今回のライブグッズにある、腕時計を模した「ブレスレットライト」とリンクした演出に、会場のテンションも上がってくる。幕が落とされるとGENIC7人のシルエットが現れ、イントロからダイナミックなダンスを披露。そのさまに目を奪われていると、さらに紗幕が落ちて7人が登場。この瞬間、観客のボルテージも一気に上がった。  そのまま大きな手拍子に煽られながら、重いビートとスラップベースがクールな「Aventure」からライブがスタート。続けて、全員でばっちりと揃うターンと、ラストの増子敦貴の低音ロングトーンが見事な「Supersonic」、<Hey!>の掛け声にあわせ、観客と声のないコール&レスポンスを決めた「UPDATE」を披露した。  MCパートでは全員で横一列に並び、まずは「こんにちは! GENICです!」と明るく挨拶。そして、初めてのZepp公演をソールドアウトで迎えられたことへの感謝を述べた。金谷鞠杏は「お客さんとしては来たことがあるけど……」、増子は「おとといから興奮して寝られなかった!」と、自身最大規模となった同会場の広さに、全員が改めて感動を隠せない様子をみせた。  「次は一緒に踊れる曲です。まだまだ一緒に楽しんでいけますか!?」とのリーダー・西本茉生の煽りに観客が大きな拍手で答えると、「We Gotta Move」へ。西本の言葉通り、手振りが中心の振り付けは多くの観客が真似をしていて、会場全体で一緒に踊っている一体感が楽しい。そのままノンストップで「Shaky Shaky (DanceRemix)」に入ると、観客のテンションもどんどん上がってくる。それに比例するように手も高く上がり、ブレスレットライトがより明るくキラキラ光っていたのが幻想的だった。  これまでの楽しく盛り上がれるようなテイストから一転、「BURNIN’ BURNIN’」では燃え上がるような赤い照明のなか、ハードで妖しい一面をみせる。そのあとは、金谷、宇井優良梨の女子コンビが大人っぽく舞う「My BABY」、小池竜暉のしっとりしたアカペラから始まり、男子チームがステージいっぱいにダイナミックなフォーメーションダンスをみせた「U&I」と、男女混合グループならではの振り幅のあるステージを繰り広げた。  ふたたび全員がステージに登場すると、雨宮翔がおもむろに「U&I」で振り付けを間違えたことを告白。このあと続いた質問企画パートでは、増子の「動物“館”」との言い間違いにメンバーが笑い転げたり、観客にどこから来たのかを尋ね、全国各地から集まっていることに感激したりと、平均年齢約20.6歳とまだまだフレッシュな彼らならではの青春感あふれるわちゃわちゃには、思わず吹き出してしまう観客も。  サビでタオルを振り回す「ジリジリSUMMER」、メンバーの「せーの!」との掛け声に合わせて自然とファンとの手振りが揃った「まわりみち」と、それぞれ全員で恒例の振り付けを楽しんだあとは、桜が舞うムービーをバックに「春うらら」を披露。そして疾走感あるメロディに、時折聴こえる風鈴の音がセンチメンタルさを加速させる「夏の聲」で、ライブ本編を締めくくった。  アンコールでは、全員がトップスをグッズTシャツに着替えて登場。「READY GO」と「夏恋」を続けて披露したあとは、事前告知もあったとおり、事務所の先輩であるDa-iCE・工藤大輝と、小池、西澤呈のクリエイターコンビが共作した最新曲「TALK」を初パフォーマンスした。そして最後に披露したのは、1stアルバムのラストを締めくくる1曲「TOGETHER」。手を左右に振る振り付けでは、観客全員があわせて真似をし、会場全体が揺れているようだった。  特に印象的だったのは、7人のダンスパフォーマンスをただ見つめるだけでなく、観客もそれを真似して、同じ目線で楽しんでいたことだ。ステージ上の7人と、会場いっぱいに集まった観客との双方向のコミュニケーションから生まれる一体感や親密さが、この公演には確かにあった。「東京ドームでのワンマンライブ」という大きな夢を掲げ、このZepp DiverCity (TOKYO)公演も通過点のひとつと語る彼ら。GENICの物語は、まだまだ始まったばかりだ。 Text by Maiko Murata ◎公演情報 【GENIC LIVE TOUR 2022 -Ever Yours-】 2022年9月11日(日) 東京・Zepp DiverCity (TOKYO)
billboardnews 2022/09/22 00:00
池江璃花子は順調に“前進”しているのか パリ五輪まで早くも2年、世界の勢力図も変化
池江璃花子は順調に“前進”しているのか パリ五輪まで早くも2年、世界の勢力図も変化
パリ五輪でのメダルを目指す池江璃花子  世界中から奇跡だと言われていた、池江璃花子(ルネサンス/日本大学)の東京五輪出場から早1年。気づけば、2024年開催のパリ五輪までは2年を切った。  新時代からさらに新しい時代へと移行しつつある今、パリ五輪を目指す池江の現在地を探ってみたい。  先日会期前競技として行われた、とちぎ国体水泳競技。競泳は9月17~19日の3日間で開催された。そこに出場していた池江は、成年女子100m自由形、成年女子4×50mリレー、4×100mメドレーリレーの3種目に出場。記録的に池江が納得できるのは、4×50mリレー時、アンカーで泳いだときの24秒48。引き継ぎはあったが、そのタイムは0秒40(前の泳者がタッチしてから次の泳者の足がスタート台から離れるまでのタイム差)。通常のレースのスタート時で、池江はだいたい0秒60程度だ。引き継ぎというテクニックは、当然数字だけでは表せない部分もあるが、それでも単純計算で4月の日本選手権同等かそれ以上の24秒6~7程度では泳いでいたことになる。  この国体が競泳種目における夏シーズンの締めくくりでもある。あらためて今シーズンを振り返った感想を聞かれた池江は「良くないシーズンではありました。思うような結果もでなかったですし、あまり自分のなかで納得できるようなレースがなかったかな、と思います」と少し困ったような表情で答えた。だが、こうも続けた。 「4×50mリレーで24秒台前半を出せたことは、50mに対しての自信がすごくついたレースでもありました」  4月の日本選手権でFINA世界選手権の代表は逃したものの、大学生の五輪とも言われるワールドユニバーシティゲームズの代表には選ばれていた。だが新型コロナウイルス感染症の影響で延期に。夏に予定していた大会がごそっとなくなってしまった。  さらに、8月末に行われた日本学生選手権(インカレ)前には足を捻挫。直前までほとんど練習ができない状況下に陥ってしまう。国際大会がなくなっても、自分のやることは変わらない、と真摯に取り組んできたものが、崩れ去る音が聞こえた。  そんな不安もあったが、インカレは50m、100m自由形で2冠。4×200mリレーでも3位に貢献し、主将として迎えたインカレの役割は十分に果たした。ただ、記録は思うようなものではなく、到底池江自身が納得できるものではなかっただろう。  だが、それはあくまで記録的な見方だ。身体を見てみれば、背中側や下半身はまだまだ発展途上だが、上半身の前側、特に肩周りは随分としっかりしてきた印象だ。その甲斐があってか、1ストロークの力強さは増している。だからこそ、急なスピードアップにも耐えられるのだろう。  とちぎ国体の100mのレースは、前半を27秒19でターンして後半は27秒57と、100mのスプリントレースとは思えない展開を見せた。通常は、優勝した池本凪沙(イトマン東京/中央大学)のように、前後半でだいたい1~2秒のタイム差が生まれるものだ。事実、4月の日本選手権で53秒83で泳いだときは、前半が26秒21、後半は27秒62で、そのタイム差は1秒41である。  ただ単純に前半をゆっくり泳いだからといって、後半をほぼ同じタイムで泳ぐのは至難の業。それをやってのける勝負の嗅覚というのか、“仕掛ける”タイミングを嗅ぎわける能力の高さが池江が池江たるゆえんでもある。そして、その仕掛けに耐えうるだけの身体能力を取り戻しつつある、ということもこのレースからは見て取れる。  だが、メンタル的にはどうだろうか。インカレまでの練習は順調だっただけに、捻挫によるトレーニング中断は、気持ちが切れるのには十分だっただろう。国体でも、どこか記録や勝負への執着が薄れていた。それはコメントからも見て取れる。 「予選が終わったあと、優勝は狙っていないとコメントしましたが、やっぱり口にするとそれが現実になっちゃう。悪い方に現実になってしまったというか。自分の現状を見ても優勝は難しいと思って泳いでしまっていました」  池江は復帰してから、誰よりもひたむきにトレーニングに励んできた。今までの自分に早く戻りたいという気持ちと同時に、焦ってはいけないという気持ち。ライバルたちの活躍を見て、もっと頑張らねばと、誰よりも自分を追い込んできた。だから復帰後1年で東京五輪の切符を手にし、すでに自由形とバタフライのスプリント種目では、国内トップの座を奪還できたのだ。  そういう日本国内だけを見れば、きっと池江は来年に福岡で開催されるFINA世界選手権、そしてパリ五輪の代表になることはそう難しいことではないだろう。  だが、池江が欲しているのは代表ではない。世界のメダルであり、世界の頂点だ。そう考えれば、その道のりは正直遠いのは確かである。今、世界は大きく動き始め、池江のライバルとして日本国内でも有名なサラ・ショーストロム(スウェーデン)ももうベテランだ。その力はまだ世界トップとはいえ、少しずつ若手に切り替わっている。事実、ハンガリーの世界選手権の100mバタフライを制したアメリカのトーリ・ハスケは19歳。100m自由形はショーストロムを抑えて18歳のモリー・オキャラハン(オーストラリア)が優勝を果たした。  そういう並みいる世界の強豪たちと戦うためには、2018年の池江に戻るのではなく、さらに進化した新しい池江へとならなけれればならない。それには、残り2年という歳月は非常に短いと感じる。  しかしながら、2020年に練習を開始して以来、たった1年で五輪代表になり、2年で学生記録を塗り替えて、それまでの自己ベストに1秒以内に迫る記録を叩き出した池江に、この2年という時間での進化を期待しないのが、どだい無理な話である。 「きっと池江ならやってくれる」  そういう世間の声に応えてくれるのも、池江というアスリートの素晴らしいところである。  五輪を契機に変わりつつある世界の勢力図。そのなかにあっても、世界のライバルたちに早く追いつきたい、追い越したい、ライバルたちと肩を並べ、世界中の観客が集まる最高の場所に立ち、全力で戦いたい。そして、ともに称え合いたい。きっと、池江は今もそう思っていることだろう。  だが、もし許されるなら、一度立ち止まっても良いのではないだろうか。練習を開始したのが2020年。そこからまだ2年しか経っていないが、誰よりも濃密な2年だったに違いない。このまま走り続けたら、きっとどこかで疲れてしまう。息切れしてしまう。  それならば、足の捻挫という予期せぬ出来事だったかもしれないが、それを利用して気持ちも休ませる時間を作ってほしい。そうすれば、きっとまた『楽しい水泳』が池江を待っているはずだから。そうして、池江が心から水泳を、レースを、トレーニングを楽しいと思えるようになったなら、その笑顔が世界を魅了するに違いないのだから。(文・田坂友暁)
dot. 2022/09/21 18:00
女子ゴルフ界に「絶対女王」が君臨した時代、“異次元”だった不動裕理の強さを振り返る
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女子ゴルフ界に「絶対女王」が君臨した時代、“異次元”だった不動裕理の強さを振り返る
かつての“絶対女王”不動裕理  近年の国内女子ツアーは、ご存知のとおり毎週のように新ヒロインが誕生するなど混戦が続いている。『〇〇世代』ともてはやされても、その“旬”は短く、次から次へと『〇〇世代』が移り変わっている状況だ。  2015年から韓国のイ・ボミが2年連続の賞金女王になったが、それ以降は、鈴木愛、アン・ソンジュ(韓)、鈴木、稲見萌寧と毎年女王が入れ替わり、今季も2勝している山下美夢有が賞金ランクトップを牽引。また、昨季と今季(9月11日まで)のメルセデス・ランキングトップ20を比較すると、20人中9名が入れ替わっており、シーズンをまたいで上位をキープすることが難しくなっている。  このように週替わりでスターが生まれることは、ファンにとってよりツアーを楽しめる要素だろうが、逆に言うと、昨今は“絶対女王”と呼ばれるプレーヤーがいない。ゴルフファンだけでなく、ツアーのライバルたちにも圧倒的な強さを感じさせる存在がいないということだ。  では、過去にはどのような“絶対女王”がいたのだろうか?  かつての国内女子ゴルフ界は樋口久子の独壇場だった。1980年代に入ると、台湾のト阿玉が5年連続で賞金ランクトップに立ちツアーを牽引。1988年のツアー制度施行後は、平瀬真由美、福嶋晃子が連続賞金女王に輝いた。  そして21世紀に入ると、“絶対女王”と言える女子ゴルファーが誕生する。それが不動裕理だ。  現在45歳となった不動がゴルフをスタートしたのは10歳の時。清元登子氏を師事し腕を磨くと、1996年のプロテストに合格し、同年12月の新人戦、加賀電子カップではプロデビュー戦で初優勝を果たした。1999年の伊藤園レディスでツアー初勝利を挙げると、この年の賞金ランクは4位。「不動時代」はこれが幕開けとなった。  2000年の不動は、6試合で優勝しツアーで初めて獲得賞金1億円を突破すると、初の賞金女王の座に。01年、02年もマネークイーンになると、翌03年にはツアー新記録となるシーズン10勝を記録した。  平均ストローク、平均パット数、パーオン率、リカバリー率など部門別ランキングも史上初めて全部門を制覇した。また、この年は1億4932万5679円を稼いだが、これは男子ツアーの賞金王・平塚哲二を上回る賞金額だった。  この後の不動は04年に7勝、05年には6勝し6年連続で賞金女王に君臨。最近では考えられない勝ちっぷりで、まさに“絶対女王”の名に相応しい強さを発揮していた。  そんな不動は、6年連続賞金女王の偉業があまりにも目立つが、女王の座を降りた後も、色褪せないプレーを見せてくれていた。賞金ランク15位となった06年と同6位の07年に2勝ずつすると、08年は4勝し賞金ランク5位。シーズン4勝は女王となった古閑美保と不動だけで、勝負強さは健在だった。  09年こそ未勝利に終わったが、10年と11年は2勝ずつしツアー通算50勝を達成。生涯獲得賞金額は13億円を超え歴代トップとなっており、浮沈が激しい女子プロゴルフの世界で長い間、ツアーの顔としてプレーしていたことには頭が下がる。  また、不動を語る上で欠かせないのが、宮里藍や横峯さくらなど、今の女子ゴルフ人気の基盤を築き隆盛を極める要因となった新星たちの大きな壁となったことだろう。  特に印象的だったのは04年シーズンの最終戦、LPGAツアー選手権リコーカップだ。4年連続賞金女王で、この時点で賞金ランクトップだった不動に対して、当時19歳だった宮里はルーキーシーズンに5勝し“藍ちゃんフィーバー”を牽引。賞金女王争いは、二人がこの最終戦までもつれこみ、“絶対女王”と“スーパーヒロイン”のマッチレースが期待された。  すると初日からペアリングした二人は、不動が首位発進すると宮里も負けじと、1打差の2位スタート。2日目は二人が揃ってスコアを崩しともに3位で並ぶと、3日目には宮里が単独トップに浮上し、不動は2打差の2位。こうして4日連続で同組、しかも最終日最終組での直接対決が実現することになった。  そして迎えた最終日、不動は一時、5ストローク離されるが、後半に入って宮里が崩れるのを尻目にじわりじわりと差を詰め、宮里が17番でボギーを叩いたことで逆転に成功。最終ホールをパーで逃げ切り、宮里に女王の貫禄を見せつける結果となった。  今をときめくツアーのヒロインたちの多くは、宮里に憧れゴルフを始めた。その宮里は、不動という高い壁を超えるために腕を磨いたことで、『〇〇世代』たちの手本となった。つまり、現在のツアーの盛り上がりがあるのは、不動という存在があったから。 “絶対女王”不動を語る時は、6年連続賞金女王や通算50勝、永久シードなど記録に特化しがちだが、実はこうした次世代への影響力こそが、不動が女子ゴルフ界に刻んできた一番の偉業なのだろう。
dot. 2022/09/20 18:00
新大久保は10代の街にあらず?元祖韓流ブームに嵌ったマダムも「韓国へ行ったつもり」
新大久保は10代の街にあらず?元祖韓流ブームに嵌ったマダムも「韓国へ行ったつもり」
写真1:「シンジョントッポッキ新大久保」のトッポッキ(チーズトッピング)、ギョーザ天ぷら、野菜キンパ(撮影:工藤早春)  前回の「台湾」に続き、「韓国」にも行った気になれるガイドブック『おでかけ韓国in東京・京阪神』(以下、『おで韓』)片手に行ってきました、東京の韓国タウン「新大久保」。ちなみに記者は、一度も韓国には行ったことがありません。2003年頃の元祖韓流ブームの際、初代韓流スター四天王の一人イ・ビョンホンにはまり「美しき日々」「オールイン」を全話通しで見ていますが、それくらいです。その程度の知識で今の韓流を語るなと思われるでしょうが、ご容赦下さい。  ■韓国人なら誰でも知っている韓国料理のチェーン店   JR新大久保駅の改札を出ると、韓国好きにとっての「原宿の竹下通り」が展開されています。歩いているのはほぼ、10代~20代前半の女性。100%とは言ってはいい過ぎかもしれませんが、10人中8人はそうです。しかもみなさん、同じような恰好をしている。ロングヘアに白いワンピースかツーピース(スカート丈は短め)にハイソックスにヒール、です。これすなわち、「韓流女性グループのメンバーがしている格好」だと、後で気がつきます。  しかも平日にもかかわらず、人とぶつからないで歩くのが困難なほど混んでいます。そこも竹下通りと表現する由縁です。平日なのになぜ? ……というのも訪ねたのは平日といっても8月29日の月曜日。夏休み最後の平日を新大久保で過ごしたいという女子中学生、高校生でいっぱいなんだと、納得です。  そんな女の子たちの間をぬって、最初に向かったお店が、韓国に700店以上あるという韓国料理のチェーン店「シンジョントッポッキ新大久保店」。  入ると、お客さんはいますが、店員さんは誰もいません。セルフサービスのお店のようです。注文は入ってすぐにある自動販売機で食券というかチケットを買ってするシステムです。『おで韓』によると、「トッポッキ」(マカロニのような形状をした餅入り辛いスープ)が名物とのこと。おすすめとされているので、トッポッキにチーズをトッピングして注文(800円・税込み)、これもまた『おで韓』で紹介されている「ギョーザ天ぷら」(300円・税込み)と「野菜キンパ」(韓国風のりまき700円・税込み)(写真1)も追加します。  チケットをカウンターへ出したら、あとは少し待つだけ。呼び出しベルがなって受け取りにいくと、トレイにのった料理を渡されます。 『おで韓』に「ギョーザ天ぷら」をトッポッキのスープに浸して食べるのが本場流と書かれているので、そうしてみます。まずは一口。お、なんというか、ポテトチップにサルサソースをつけたような感じで、おいしいです。  トッポッキ+チーズトッピングはチーズがとろけて伸びること伸びること。スープの辛さを「まろやか」という一番下というか辛くないものを選んだせいか、マイルドかつコクがありチーズによく合います。  最近では日本のコンビニでも売られている韓国版のり巻き「キンパ」も、さすが本場ものは違います。具の野菜がシャキッとしています。いつも食べているコンビニのあれは、ちょっとしなっとしている(それがおいしかったりもしますが)ので、これが本当のキンパなんだと初めて認識しました。  一通り食べ終わりまわりを見ると、前述したロングヘアの10代の女の子たちが、次から次へ入ってきます。中には韓国語でおしゃべりしているグループも。聞けばもともと新大久保は韓国からの留学生や、日本へ働きにやってくる韓国人が多く住む街なのだとか。ここは地元に帰ったような気持ちで入れるお店なのかもしれません。  ところで、韓国ドラマを見ていると、どんなにセレブ(財閥の跡取りとか検事とか)な男性でも、女性との食事は韓国料理だったりします。ここにいる10代の女子たちも、一見ピザだハンバーガーだを食べそうな雰囲気ですが、食べているのはトッポギやキンパ。韓国の人たちにとって韓国料理よりおいしい料理はない!という強い自負を感じます。そこはデートというとなぜかイタリアンやフレンチが定番の日本とは違うものを感じました。  【DATA】 電話番号:03-6709-6940 東京都新宿区百人町1-7-5座ビル2階 新大久保駅から徒歩5分 写真2:「韓国広場」で購入した韓国のりセット、マッコリ、チゲスープの素(撮影:工藤早春) ■韓国食材ならなんでも揃う老舗スーパー  ほぼ炭水化物のランチで満腹になったところで、次に向かうのは職安通りにある韓国スーパー「韓国広場」。名前の通り、韓国の食材がなんでも揃うスーパーです。入ってみて驚いたのは、よくある海外食材店と違って、非常に広いことです(150坪あるそうです)。  聞けば1993年からある老舗スーパーで、開店以来、韓国から日本にやってくる人たちに故郷の味を提供し続けてきたんだと思えるラインナップの充実感。キムチは白菜だけでなくキュウリ、かぶ、大根と、ざっと十種類以上ありました。ほか、マッコリ、チャンジャ(韓国風塩辛)、韓国のり、レンジでチンするだけの冷凍チーズハットグと、ありとあらゆる韓国食材が揃っています。韓流ドラマを見て、韓国料理は焼き肉だけじゃあないんだ、と興味を持った方におすすめです。記者も韓国のりセット(158円・税別)、マッコリ(255円・税別)、チゲスープの素を買いました(398円・税別)(写真2)。チゲスープの素は、鍋に入れればなんでも「チゲ」(コクがあって辛い鍋)になるそうなので、冬になって使うのが楽しみです。 電話番号:03-3232-9330 東京都新宿区歌舞伎町2-31-11 新大久保駅から徒歩10分 東新宿駅A1出口から徒歩4分 ■韓国にもあるスイーツブーム 「太っちょマカロン」に苦戦  「韓国市場」を出て「イケメン通り」と呼ばれるカフェ、レストラン、韓流スターグッズ、韓国の化粧品などがひしめく細い道を通って「大久保通り」へ。人波に疲れたところで休憩しようと、『おで韓』で“韓国で流行している「太っちょマカロン」ことトゥンカロンが名物”と紹介されているカフェ、「MACAPRESSO新大久保本店」へ。  カウンターで注文するスタイルですが、やはりここも混んでいる……見た ところ全席埋まっているので、持ち帰りにしようかと悩んでいると、レジの女性に「4階まで席ありますから、座れますよ、大丈夫。ただ先に席をとってください」と勧められました。外階段をあがると、テラスのある3階があり、その上の4階までテーブル席がありました。おかげで席をなんとかキープ。再びレジへ向かって、やっと注文です。 MACAPRESSO新大久保本店の「太っちょマカロン」ことトゥンカロン(撮影・工藤早春)  厚さ10センチはある(通常のマカロンは2センチ程度)トゥンカロンが10種類以上並んだショーケース。その中から人気ナンバーワンの「クッキー&クリーム」のトゥンカロンとアイスコーヒーのセット(アメリカーノセット800円・税込み)を頼みます。トゥンカロンは、「太っちょ」と言うだけあって、厚いし大きいしで、一口では食べられません。マカロンも間に挟んであるクリームもあえて重くしてあるというか、歯ごたえがしまくります。頭の中に「マカロンってそもそも軽さが売りなんじゃなかったっけ?」と「マカロン」を「あえて大きくする」というコンセプトへの疑問が過ります。ただ周囲を見ると、ひとり2個3個とペロッと完食している。そんな女性たちを見ると、この程度で重く感じるような奴は、この店に来ちゃいけないのかも……と反省し、席を立ちました。  【DATA】 電話番号:03-6380-3875 東京都新宿区百人町2-3-21(2階で注文と会計。席は2~4階にあり) 新大久保駅徒歩2分  半日かけて新大久保を巡った感想は、「今の韓流ブームは若者のもの」ということです。少なくとも新大久保はそうです。食べるものはなにもかもが、重いというか、40歳以上には少々ボリュームがありすぎますように感じました。ただ、流れてくる韓国語の韓流音楽(BTSも東方神起もBLACKPINKも英語や日本語ではなく韓国語で歌っています)を聞きながら、若い人たちのキラキラした目を見ていると、「若さって素晴らしいなぁ」としみじみ。なんとなく若返ったような気(気です、あくまでも)がしてきます。  最後に。「新大久保にはほぼ10代しかいない」、と書きましたが、唯一違った層がいました。40~50代のマダムです。おそらく私のように元祖韓流ブームに嵌った人たちでしょう。ユジンやチュンサン(わからない人は「冬のソナタ登場人物」で検索して下さい)になりきって、韓国料理に舌鼓をうつのには、最適。お子さんの付き添いとして来ているらしき方もちらほらいました。そういう意味では、新大久保は世代を超えて楽しめるのかもしれません。実際の韓国の繁華街よりは年齢層が明らかに低い気もしますが、韓国ドラマの中にいる気分になれることは間違いありません。ぜひ一度、熱気が冷めないうちに『おで韓』を参考に出かけてみて下さい。熱気が冷めてからだと、混んではいないかもしれませんが、若い人のキラキラした目を拝むことはできませんよ! 『おでかけ韓国 in 東京・京阪神』(朝日新聞出版) (本誌・工藤早春) ※週刊朝日オンライン限定記事
新大久保韓国
週刊朝日 2022/09/17 11:00
『トリセツ』黒川伊保子が語る子どもの早期教育 「文字も数字も息子にはいっさい教えませんでした」
『トリセツ』黒川伊保子が語る子どもの早期教育 「文字も数字も息子にはいっさい教えませんでした」
黒川伊保子さん 撮影/高橋奈緒(写真映像部) 『妻のトリセツ』がベストセラーとなった脳科学・人工知能研究者の黒川伊保子さん。自身は一人息子(31)を育てた母。ユニークな子育て法を聞いた。 ※記事前編<<『妻のトリセツ』黒川伊保子が語る子育て 息子を「将来の妻に好かれるいい男」にする育て方とは>>より続く ――息子さんはどんなお子さんだったのですか?  今はワイルドでタフに育ちましたが、子どものころはおっとり、というかぼんやりで、宿題を出されていることに気づかない、習い事に興味を示さない、成績はよくない、走れば最下位……みたいな。小1の2学期のある日、帰宅するなり「今日ね、不思議なことがあったんだ。学校についたら2時間目だったの」って。えー! あなた8時に家を出たんだよ!? 10時までどこに行ってたの、と(笑)。何かに夢中になっていたんでしょうね。実は、ぼんやりするのは、とても集中力があるということ。集中力や想像力がありすぎて外界に戻って来られないので、このぼんやりは才能だと思って見守りました(笑)。 ――ひらがなや漢字を入学前に教えるなど、早期教育はされていましたか?   いえ、まったく。読み聞かせはたくさんしましたが、文字はいっさい教えませんでした。数字も教えなかったような覚えがあります。私の父が、私にそうしてくれたから。父は教育者で、「学校で習うことを、親が小賢しく先に教えたら、学校で退屈するだろう」と、おおらかに笑ってました。脳の発達から見ても、文字を身に付けるといった記号論的な学習は、6~8歳の言語機能完成の最終段階で十分間に合うので、私は、小学校にお任せしました。  それともう一つ。これは研究で証明できることでなく私の実感ですが、脳が好奇心を発する前に情報を与えられた場合と、自分から興味を持ってから学んでいく場合とでは、脳が受け止める場所が違うのではないかな、と。私は、息子の脳が「おもしろい」と思えるときまで待ってあげたいと思ったんです。  きっと世の中には早く始めると得することもあると思う。でも、早く始めてしまうともったいないこともある。私の場合、子育てのタイミングは研究者としても脂ののっている時期だったので、文字を教えている余裕がなかったし、子どももぼんやりだったので、「これはラッキー」と思って遅く始めるほうの利益をとりました(笑)。 可愛いお孫さんとのショット 撮影/高橋奈緒(写真映像部) ――息子さんが出合うまで待ったのですね。  それが我が家の方針でした。成績は平凡でしたが、小2のとき、お風呂でオナラをして「ママ、泡が浮くのは、泡に浮く力があるからだけど、水にも泡を押し出す力があるよね」なんてアルキメデスの原理に気づいたり、お風呂のお湯の表面に、手のひらを広げてぺたぺたと触りながら「水には一塊になろうとする力があるんじゃない?」と表面張力を発見したり……。小1のときは、7と8を足すと15になることがおもしろかったようで、「7と8って半端な数字なのに、足すとぴったり15になるんだよ!」とくすくす笑って私に説明してくれましたね。 ――息子さんを怒ることは?   私は息子を育てると同時に人工知能も育てていたので、例えば子どもがコップのジュースを何度もこぼしても、ティッシュを永遠に引き出しても、うどんを手首に巻いても「え! 人間の赤ちゃんて、こんないたずらができるの!」と感心するばかり。いわゆるいたずらで腹を立てることはなかったですね。自発的にいたずらできる人工知能のつくり方なんて、想像もつきませんでしたから。  でも、まぁ、ぼんやりして車にひかれそうになったとか、命に関わることであれば、もちろん叱りますし、私自身のイライラを息子にぶつけてしまったこともあります。人間ですから。  でもね、怒りはネガティブなことではないんですよ。喜怒哀楽の感情を知ることで脳の神経信号が多方面に機能し、感性の回路ができていきます。ニコニコだけのママでは、子どもの感情の地図がうまく育たない。私が育児中のころ「今日から叱らない子育て」っていうのがはやって、これでは喜怒哀楽を知らない子が育ってしまうと私は本気で心配しましたが、大丈夫、丸一日怒らないお母さんなんていなかった(笑)。  ――そう言われると、ほっとします。私はしょっちゅう息子に「パンツ穿きなさい!」と怒っています。パンツを嫌がるって、脳科学的に何か理由があるのでしょうか……? 「子どもが大きくなってからも愛の言葉は有効」と話す黒川伊保子さん 撮影/高橋奈緒(写真映像部)  パンツ、うちの息子も嫌がってました。6カ月の孫(男の子)も、オムツを外すと嬉しそうにしていますよ。パンツを嫌がる理由は、脳を持ち出すまでもないのでは? おちんちんがついているんですもの。あんなふうに、ぴょんと飛び出しているものがついていたら、オムツもパンツもストレスでしょうよ、と思いますよ。 ――息子さんは、今どのような大人に?  子どものころはぼんやりだった息子は、とてもワイルドな大人に育ちました。中3の夏休みには100キロメートルの自転車旅行に一人で出かけたり、大学院の卒業旅行ではネパールに行ってバイクでヒマラヤを見に山越えをしたり……。小さいころのレゴブロックの基地の延長か、今は栃木の日光に森を買って、友達と山の家を造っています。理系の大学に行ってエンジニアになり、今は私の仕事のサポートをしてもらっています。素敵なおよめちゃんも来てくれて、パパとしても奮闘しています。 ――最後に、子育て中のみなさんにメッセージをお願いします。  脳科学の研究をベースに私が実践したことをお話ししましたが、お母さんが心地いいと感じることをするのが一番。子どもが大きくなってからも愛の言葉を伝えるのは効果がありますし、「ああしておけばよかった」との後悔は無用です。すべてのお母さんが幸せで、自分の人生を楽しんでほしいですね。そうすれば、きっとお子さんは魅力的に育つはず!  (聞き手/AERA dot.編集部・平井啓子) 〇くろかわ・いほこ/脳科学・人工知能研究者、(株)感性リサーチ代表。1959年、長野県生まれ。奈良女子大学理学部物理学科卒業後、コンピューターメーカーにてAI開発に従事。男女の脳のとっさの使い方の違いに注目し、研究結果をもとにした『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(ともに講談社)が話題に。『娘のトリセツ』『思春期のトリセツ』(ともに小学館)ほか著書多数。
妻のトリセツ黒川伊保子
AERA with Kids+ 2022/09/14 08:00
女子ゴルフ界が「ヒロイン量産時代」に突入 未勝利選手で“次に来そう”なのは誰だ
dot.sports dot.sports
女子ゴルフ界が「ヒロイン量産時代」に突入 未勝利選手で“次に来そう”なのは誰だ
“新たなヒロイン候補”として期待される菅沼菜々  女子ゴルフにまた新たなヒロインが誕生した。  11日まで京都府の城陽カントリー倶楽部で開催されていた国内女子ツアーの日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯で、ツアールーキーの川崎春花が通算16アンダーで優勝。ツアー初勝利をメジャーの舞台で飾った。  最終日を4打差4位タイで出た川崎は、8番パー4で2打目を直接入れるスーパーイーグルを奪取し通算10アンダーまでスコアを伸ばすと、後半は12番から4連続バーディ。さらに17番もバーディとすると、18番でもロングパットを真ん中から沈めて、8アンダー64で回ってみせた。終わってみれば2位の山下美夢有に3打差をつける通算16アンダー。4打差を逆転する圧巻のゴルフで地元優勝を果たした。  ゴルフファンの中でも、川崎はノーマークの存在だったのではないだろうか。大阪学院大学高卒で19歳の川崎がプロテストに合格したのは昨年11月。今季は、レギュラーツアーとステップアップツアーでプレーしていたが、レギュラーツアーでは今大会まで10試合中6試合で予選落ちしていた。  一方、ステップアップでは2位(タイを含む)に2度入ると、先月26日まで行われた山陰ご縁むす美レディースで初優勝。今回は、その勢いのまま公式戦の舞台に乗り込み、偉業を達成したというわけだ。  ここ数年の国内女子ゴルフは、今回の川崎のように毎年、新たなスターが誕生し目の離せない試合が続いている。渋野日向子がAIG全英女子オープンで快挙を達成した2019年のメルセデス・ランキングトップ20を眺めてみたが、今年の同ランク(9月11日現在)にも名を連ねているのは、稲見萌寧、小祝さくらなど8名だけだ。  3年前と上位の顔ぶれがガラッと変わっており、つまりはそれだけ新陳代謝が激しいということ。国内女子ツアーでは「黄金世代」、「プラチナ世代」など“◯◯世代”が台頭しているが、現在の同ランクトップの山下と2位の西郷真央は、2001年生まれの「新世紀世代」でその下の世代。今回優勝の川崎に至っては2003年生まれの19歳でさらに若く、もはやコロナ前に台頭していた1998年度生まれの「黄金世代」ですら、ツアーの中心でいることが難しい状況になっている。  こうなると気になるのは次のヒロインは誰なのか?ということだろう。  まずその候補の筆頭になるのが、同ランク10位につけている菅沼菜々だ。今年がプロ5年目で今季は11試合でトップ10入りを果たしている菅沼は、5月のリゾートトラスト・レディスでは、初勝利に後一歩に迫る2位タイ。日本女子プロでも3位となっており、初優勝が期待されている。  2020-21シーズンに賞金シードを獲得し、ツアーをシード選手として迎えるのは今季が初めてだが、埼玉栄高3年の2017年には、日本ジュニアを西村優菜、吉田優利、山下、笹生優花、稲見など今をときめくプロたちを退けて制した。その潜在能力は高く評価されており、今季の成績を見れば初Vは秒読みと言えるだろう。  同ランク37位の阿部未悠も注目のプロゴルファーだ。2000年度生まれの「ミレニアム世代」の阿部は、北海道出身だが中学、高校は福岡県にゴルフ留学。昨年6月のプロテストに合格し、今季からフル参戦すると5月のリゾートトラスト・レディスではホールインワンを達成し賞金800万円を獲得した。  トップ10入りはリゾートトラストを含めて4回だが、フェアウェイキープ率とトータルドライビングは11位と安定したティーショットが魅力。爆発力もあり、可能性を感じさせる存在だ。  岩井明愛も初優勝が期待できる。今季のNEC軽井沢72ゴルフトーナメントとCAT Ladies2022でいきなり連続優勝を達成した岩井千怜の双子の姉で、パナソニックオープンレディース7位タイ、北海道meijiカップ5位タイと上位進出も果たした。  昨年のステップアップツアーでは、妹の千怜がカストロールレディースで優勝すると、次戦の山陽新聞レディースカップで姉の明愛が勝利するというルーキーながら国内ゴルフ史上初の快挙を達成。平均飛距離253.61ヤードで4位と飛ばせることも、さらなる上位進出、そして初勝利への大きな武器となるはずだ。  最後は安田祐香にも注目したい。アマチュア時代は2017年の日本女子アマチュアゴルフ選手権を高校生で制し、2018年大東建託・いい部屋ネットレディスで3位タイに食い込みローアマを獲得。2019年にはオーガスタ・ナショナル女子アマで3位タイに入るなど、早くから脚光を浴びていた。  2019年のプロテストに合格すると、早くもツアー初勝利が期待されたが、2020-21シーズンはシード入りを逃し、今季もここまでトップ10入りは2回。メルセデス・ランキングも現在50位とアマチュア時代のような活躍をプロの舞台で披露できていない。しかし、その素材とタレント性は非凡なものがあるだけに、安田も次のヒロイン候補と言える。  国内女子ツアーには今回挙げた選手以外にも、昨年11月のプロテストで1位通過した尾関彩美悠や、同4位でプロ入りし日本女子プロ4位タイだった佐藤心結らトップを狙う10代のプロがゴロゴロいる。さらに、16日からの住友生命Vitalityレディス・東海クラシックには、日本人として37年ぶりに全米女子アマを制した17歳の馬場咲希が出場予定で、日本女子オープン、マスターズGCレディースでのプレーも決まった。  どうやら、国内女子ゴルフの“ヒロイン量産”はしばらく続きそうだ。
ゴルフ
dot. 2022/09/13 18:00
48歳で初めて彼ができたが「不倫の関係」だと悩む女性に、鴻上尚史が炎上するかもしれないがと語った「道徳」と「タブー」
鴻上尚史 鴻上尚史
48歳で初めて彼ができたが「不倫の関係」だと悩む女性に、鴻上尚史が炎上するかもしれないがと語った「道徳」と「タブー」
鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑)  初めて彼ができたが「不倫の関係」と悩む48歳女性。別れるべきだが「彼がとてつもなく好き」と懊悩する相談者に、鴻上尚史氏が語る「正義」と「人間のどうしようもなさ」とは。 【相談157】恥ずかしながら48歳になり初めてお付き合いをすることになりました(48歳 女性 つまらない人間)  初めまして。恥ずかしながら48歳になり初めてお付き合いをすることになりました。しかし、彼には家族がおり不倫の関係です。まさか、男性と付き合うどころか、不倫なんてハードルの高いことが起こるなんて思ってもみませんでした。このまま何もなく死んでいくのだろうな、と思い生きてきました。  私は今まで大きな組織で働いてきました。しかし組織に嫌気がさし、知り合いが起業したので、そこに入れてもらうことになって今は初めて仕事が楽しいと思い、やりがいを持って働いています。  けれど相手はその起業した知り合いなのです。働き始めてすぐに「前から好きだった」と告白されました。もちろん既婚者ですし、自分に自信がない私としてはお断りしてましたが、だんだんと私の方がもっと好きになってしまいました。  もちろん、家族と別れて欲しいとか、結婚して欲しいとか大それたことを考えていないですし、ご家族を一番大切にされていることも理解しています。ずっと続かないであろうことも。  別れるべきなのも分かっています。でも、初めて今仕事が楽しくやりがいを感じ、ストレスなく働けています。そして、彼のことがとてつもなく好きなのです。一緒にいると楽しくて、幸せです。  でも、ご家族のことを考えると申し訳ない気持ち、嫉妬する気持ち、とても複雑な気持ちで苦しくなります。  仕事は辞めたくない、でも彼とは別れなければならない。 鴻上さんは別れるのであれば全ての縁を切るべきであるといつもおっしゃっていますが、私は仕事を辞めたくありません。もちろん、別れも辛いのですが。  正直どうしたらいいのか分かりません。この年での転職も不安です。ご教示頂けたらと思います。 本連載の書籍化第4弾!『鴻上尚史のなにがなんでもほがらか人生相談』が発売中です! 【鴻上さんの答え】 つまらない人間さん。と、書いて頭を抱え込んでしまいました。なんというペンネームにしたんですか。本当に「自分に自信がない」んですね。困りました。 「つまらない人間」を略して「つま」さんにしようかと思いましたが、なにせ相談が不倫なので、妙に意味深になってしまうようで、これまた困りました。  というわけで、「つん」さんにしますね。つんさんは、48歳で初めておつきあいをするようになったんですね。相手のことが大好きなんですね。素敵じゃないですか。  えっ? 不倫だから? うーん。それも、仕事のパートナーなんですね。これは、問題が二つある相談ですね。  大きな組織に嫌気がさして、相手が起業した会社に入ったということは、結構小さな規模の会社ですね。ビジネスパートナーとして、結構、密接な関係ですね。  さて、つんさん。もし、この恋が終わる時が来ても、大人として仕事を続けられますか? 僕の世界で言えば、劇団の中で恋愛関係になった場合に近いです。  劇団という濃密な関係の中で、やがて恋が終わっても、同じ劇団員として関係を続けられるかどうかです。続けられる人と続けられない人が、当然、いますね。ちなみに、僕は続けました。はい。ものすごく苦しかったですけれど、「恋の終わりの痛み」より「仕事の大切さ」を選びました。  つんさんはどうですか? でもまあ、これは、終わってみないと分からないことですね。今から、身構えてもあまり意味はないでしょう。 「鴻上さんは別れるのであれば全ての縁を切るべきであるといつもおっしゃっていますが」というのは、別れる方が明らかにいいと思った時のアドバイスです。  これは、つんさんの場合とは違うと僕は思っています。  で、もうひとつの問題、「不倫」の方ですね。  つんさんは、48歳で初めてつきあうことになったんでしょう。それも、「彼のことがとてつもなく好き」になってしまったんでしょう。「一緒にいると楽しくて、幸せ」なんでしょう。でも「別れるべきなのも分かって」いると思っているんでしょう。 ※写真はイメージです。本文とは関係ありません(iStock / Getty Images Plus)作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします  今はその感情を大切にするだけでいいんじゃないかと僕は思います。つまりは、今の生活を続けることをお勧めします。  ちょっと話はそれるんですが、聞いて下さい。  僕は演劇系の大学で教えています。この前、19歳の女子学生が真剣な顔で相談に来ました。彼女は「友達が法律違反をしているんですが、どんなに楽しそうでも絶対にやめさせるべきですよね?」と言いました。  僕は少し驚いて「法律違反? ドラッグとかか? だったら、やめさせないとな」と返しました。  すると、その女子学生は、「違います。不倫です」と真面目な顔で答えました。 「不倫は法律違反じゃないよ」。僕は驚いて答えました。  彼女は真剣な表情で「だって、訴えられるんでしょう。法律違反じゃないですか」と反論しました。  僕は内心、大人達が「文春砲」に俗情を刺激され、スキャンダルに舌なめずりしている間に、若い奴らの感性はここまで来たのかとため息をつきました。  演劇系の大学の学生ですからね。大胆に言えば、ドラマの半分ぐらいは不倫とか三角関係とか肉欲なんかが絡んでいると思いますね。  やがて、「『アンナ・カレーニナ』は不倫の物語ですから、上演に値しない最低の作品です」なんて言う学生が出てくるんじゃないかと本気で怯えます。  僕がつんさんに「不倫の恋でもいいじゃないですか」と言うと、「不倫は絶対ダメ。人間として最低」と思っている人から、激しい攻撃を受ける可能性が高いです。とくにネットでこの文章を読むと「鴻上はとんでもない。最低の奴だ」と炎上するかもしれません。  でも、「不倫はどんな場合でもダメ」と完璧な正義のルールを主張する人は、不倫する人の気持ちをあまり分かってないんじゃないかと僕は思っています。 「さあ、不倫するぞ」と思って不倫する人はめったにいないと僕は思っています。そうではなくて、つんさんが書くように、人生で「不倫なんてハードルの高いことが起こるなんて思ってもみませんでした」という人がほとんどだと思います。  僕は何人も「まさか自分がこんな恋をするなんて、想像もできなかった」とつぶやく人達を見てきました。みんな真面目に人生を生きていると思われていた人達です。 「自分は自分の予想もつかないことをするんだ」と驚くからこそ、二千年以上も人間は物語を作って、演劇や小説や物語にしてきたわけです。  で、「不倫は絶対ダメ」という人達は、「そうなったとしたら、すぐにやめるべきなんだ」と断定します。  そういう人は理性で自分を完全にコントロールしている人だと思います。ダイエットは簡単にやりとげられるし、仕事をちゃんとハンドリングできているし、仕事と遊びの区別もちゃんとできている人でしょう。ダラダラとテレビを見続けたり、甘いものをつい食べてしまう、なんていうだらしない生き方は絶対にしてない人だと思います。  そういう人は絶対に不倫しないので、不倫している人の気持ちが理解できないんですね。  つんさんが書く「ご家族のことを考えると申し訳ない気持ち、嫉妬する気持ち、とても複雑な気持ちで苦しくなります」という感情は、不倫をしている多くの人の共通の気持ちだと思います。 「不倫は絶対ダメ」と主張している人は、「美味しいところだけを取って、相手の家庭をボロボロにして、何の反省もしてない」と不倫している人のことを思っているかもしれませんが、そんな分かりやすい気持ちの人は本当に少数だと思います。  僕は「不倫している人は苦しんでいるから許せ」と言っているんじゃないですよ。「不倫は文化だから認めろ」と言っているんでもないです。  胸を張って主張できないことは分かっている。でも、好きになってしまったんだ。この感情は真実なんだ。愛おしいんだ。という、「人間のどうしようもなさ」は存在するんだ、と言いたいのです。  でも、この主張も「ふざけたこと言うな」と言われる可能性があります。やがて、こういう主張は、ネットに現れる文章ではもう書けなくなる可能性が高いです。正義の人に攻撃されて、炎上するなんて、みんな嫌ですからね。  だから、表向きは発表できなくなるでしょう。でも、「人間のどうしようもなさ」はなくならないのです。だから、こういう感情は地下に潜って、公には発表できなくなるでしょう。言えないけれど存在する。「人間のどうしようもなさ」がタブーになった世界は、クリーンで道徳的で秩序立って、本当に息苦しい空間になるだろうと思います。  つんさん。だから僕は今の生活を、精一杯生きることをお勧めします。これから先、何が起こるかなんて、誰にも分からないんです。  48歳で初めて経験する「人を愛する喜び」「仕事が楽しいという感覚」を思いっきり味わって下さい。それが僕のアドバイスです。 ■本連載の書籍化第4弾!『鴻上尚史のなにがなんでもほがらか人生相談』が発売中です。書き下ろしの回答2編も掲載!
人生相談書籍読書鴻上尚史
dot. 2022/09/13 16:00
学校現場の大問題

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クレーム対応や夜間見回りなど、雑務で疲弊する先生たち。休職や早期退職も増え、現場は常に綱渡り状態です。一方、PTAは過渡期にあり、従来型の活動を行う”保守派”と改革を推進する”改革派”がぶつかることもあるようです。現場での新たな取り組みを取材しました。AERAとAERA dot.の合同企画。AERAでは9月24日発売号(9月30日号)で特集します。

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働く価値観格差

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職場にはびこる世代間ギャップ。上司世代からすると、なんでもハラスメントになる時代、若手は職場の飲み会なんていやだろうし……と、若者と距離を取りがちですが、実は若手たちは「もっと上司や先輩とコミュニケーションを取りたい」と思っている(!) AERA9月23日号では、コミュニケーション不足が招く誤解の実態と、世代間ギャップを解消するための職場の工夫を取材。「置かれた場所で咲きなさい」という言葉に対する世代間の感じ方の違いも取り上げています。

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ロシアから見える世界

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プーチン大統領の出現は世界の様相を一変させた。 ウクライナ侵攻、子どもの拉致と洗脳、核攻撃による脅し…世界の常識を覆し、蛮行を働くロシアの背景には何があるのか。 ロシア国民、ロシア社会はなぜそれを許しているのか。その驚きの内情を解き明かす。

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〈あのときの話題を「再生」〉サラリーマン家庭で医学部に息子2人進学 親子で目指した合格 父「決意を確かめる意味で違う道も提案」
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S&P500だけではダメ? オルカン一択の盲点は?なぜ日本株にも投資? 初心者の疑問に答えます 桶井道【投資歴25年おけいどん】
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オルカン
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