同窓会といえばホテルの宴会場などで開かれるのが普通だが、シニア世代がターゲットの企画が続々と現れている。人間関係を結び直したり、新たな出会いを求めたり。机を並べた幼なじみ同士が心を開いて語る場を求めている。

 北海道の「ニューオータニイン札幌」は12年ごろから同窓会プランを作成、担当者が専属で同窓会のサポートにあたる。「行ってみたくなる同窓会の7つのポイント」や「同窓会・同期会開催の為のマニュアル」をホームページに掲載する。

「利用者の約8割がシニア世代。幹事の方と相談しながら要望に合わせてプランなどを提案し、当日はお迎えから最後のお見送りまでいたします」(同ホテル担当)

 また帝国ホテル(東京)の同窓会コースの一つ「絢爛」は、1人1万2500円と少し高めだが、人気のフランス料理のビュッフェなどが着席形式でも楽しめるため、立食を敬遠し始めるシニア世代に支持されているという。京王プラザホテル(東京)も11年から、幹事をサポートする「同窓会コンシェルジュ」という専用窓口を設ける。

 飲食業界も活発だ。グルメ情報サイト「ぐるなび」には、「同窓会」をキーワードに登録する飲食店数が、10年から比べると倍以上に増えた。

「同窓会などで利用するシニアの団体客は比較的すいている早い時間帯からスタートするケースが多く、回転率が上がるので、店側も歓迎します。お花や横断幕の準備など積極的にサービスする店も増えています」(ぐるなび広報担当)

 全国に60店舗を展開する居酒屋「北海道」は10年から「昼宴会」というプランを本格展開中。お昼の時間からスタートする宴会コースだが、飲み放題1500円(税込み)が無料となる。ここも利用客のほとんどがシニア世代だ。

「60代以降になると、たくさん飲む方と、そうでない方と、酒量に差が出てきます。飲み放題を無料にしたことで、支払いの不公平感がなくなったのではないでしょうか」(運営するコロワイド東日本の広報担当)

 もともと利用客の少ない時間帯に客を呼び込もうと、ママ友の会や会社員の会議後の打ち上げなどを想定していたが、震災以降、仲間同士での利用が増え、それが同窓会へと発展し、口コミでじわじわシニア世代へと広がったという。今では全体の売り上げの8%ほどを占める。

「それまでこの時間帯の売り上げは全体の1%も満たしていませんでした。シニア宴会需要は非常に高いと考えられます」(同)

 お台場や東京スカイツリーなど東京湾を巡る屋形船「品川・船清」は期間限定で13年以降、65歳以上の同窓会プランを販売している。1人当たりの料金は8900円。女将の伊東陽子さんによると、シニア用プランについては客の要望を積極的に採り入れている。

「ほとんどの方は『ご飯は少なめでいい。そのかわりゆっくり話がしたい』と。なのでお食事は軽めの和食にし、通常運航2時間のコースを2時間半で巡るようにしました」

 船の発着場が品川駅に近いために新幹線や空港へのアクセスが良く、遠方からの人たちにも好評という。

 元球児や阪神ファンへの朗報は、オフシーズンのみだが甲子園球場でも同窓会ができること。「阪神甲子園球場 球“宴”プラン」は球場内のプレミアムラウンジでの食事に加え、球場を巡るスタジアムツアーに参加できる。利用者の多くは地元・西宮市の出身者だが、「象徴である場所での同窓会を望まれるようです」と担当者。

週刊朝日  2014年11月28日号より抜粋