心理学者・小倉千加子氏「専業主婦こそ“普通”の生き方」 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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心理学者・小倉千加子氏「専業主婦こそ“普通”の生き方」

週刊朝日

 心理学者の小倉千加子氏は、仕事と子育てで悩む現代女性の生き方についてこう話す。

*  *  *
 若い女性にとって、「専業主婦になりたい」と言うことは、後ろめたいとまではいかなくても少し憚られるようなことであるらしい。

 専業主婦になることは、仕事を持って社会に出ようと努力している女性たちの足を引っ張ることになるらしいので、「申し訳ないですが、私には子育てしながら仕事もするというのは難し過ぎるのです。自分だけラクな道を選ぶようで本当にスミマセン」と言い訳しなければならない圧力を感じるようなのである。

 考えてみれば、「女性の第一義的な役割は母親になって家庭を守ること」と、専業主婦の生き方を推奨している保守系の女性政治家自身が専業主婦ではないのである。自らの信条や価値観を実践するなら、専業主婦として充足して生きてゆけるはずであり、政治家になどなるはずがない。

「母になって子育てもして、思い余って政治家にもなってしまった」のなら、「敢えてラクではない道を選んだ」ことになるので、「ラクをしてスミマセン」と言うことはできない。

 女性にとって「ラク」とは何かを問う番組があった。NHKスペシャル「シリーズ日本新生 仕事と子育て 女のサバイバル2013」である。

 2012年現在、専業主婦になりたいと答える女性は44%いるという。その3年前は28%だった。「普通に働いて普通に子どもを育てたい」。

 それができないのなら――実際できないのであるが――仕事と子育てのうち子育てを選ぶと女性たちは答える。当然の選択だと思う。

 子どもを育てる間に育児休暇を取ることも現実には難しい。あるメーカーは「リストラで既に余裕がないのに育児休暇を取る人員を抱えている余裕はない」と答えており、ある上司は個人的に「実績がないのに小休止する権利ばかり主張されても……」と嘆いている。

 1階に長時間労働の人がいて、2階に育児休暇を取得する人がいる。1階の住人であるフルタイムの男性とフルタイムで子どものいない女性はずっと働き、2階のフルタイムで子どものいる女性とパートタイムの女性は小休止しながら働いている。

 2階の住人は家に帰ると子育てと家事があり、トータルすると1階の住人と同じくらいの時間働いてはいるが、2階のフルタイムの女性住人には保育所のサポートが必要である。しかし、保育所一揆が起こるほど、保育所確保は難しい。

 ここから先はNHKの番組ではなく、私が勝手に考えたことである。

「普通に働いて普通に子どもを育てたい」と女性が言う時の「普通」とは、フルタイムで子どもを保育所と学童保育に預けながら働くか、結婚しないか、結婚しても子どもを持たないという選択肢の中には存在しない。「専業主婦」こそ「普通」の生き方なのである。

 できれば3人は子どもを産みたい。夫は尊敬できる人であってほしい。

 一番下の子が幼稚園の年長になった頃から仕事への復帰を考える。できれば週に何回か趣味や資格を活かした短時間の仕事を始めたい。夕方には帰れる仕事で、土曜日は絶対に休みたい。

 そういうとても「常識的」なものである。

 NHKは「オランダモデル」を日本新生の鍵と結論づけていたが、フルタイムもパートも同じ賃金になって、結婚後も全員が「中時間労働」することを女性が望んでいるとは思わない。妻の人生には充電のために中休止が必要であるが、夫には家族のため、世の中のために必死で働いてほしい。夕方から家にいる人を尊敬できるだろうか。

週刊朝日 2013年5月31日号


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