薬や手術で進行をいかに遅らせるかがポイントであるが、場合によっては十分な治療結果を残せないこともあった緑内障治療。治療が点眼薬、レーザー、手術など多様化するなか、近年、新たに保険診療が可能となった手術法に注目が集まっている。

「視神経は再生しない組織です。一度損傷して、視野が欠けると、それを取り戻すことはできません。薬や手術で眼圧を下げ、進行を少しでも遅くするのが、緑内障治療の目的となります」

 と話すのは、昭和大学東病院眼科准教授の植田俊彦医師だ。

 緑内障の外科手術はいくつか種類があるが、これまで一般的に実施されてきたのが「トラベクロトミー(線維柱帯切開術)」と「トラベクレクトミー(線維柱帯切除術)」という二つの方法だ。いずれの手術も眼球表面の粘膜と強膜を切開して実施する。トラベクロトミーは目詰まりしているフィルターを切開し、もともと備わっていた排出管へ房水を流れやすくする。トラベクレクトミーはこのフィルターの一部を切除して結膜の下に房水を流す新しい排出管をつくる。日本では毎年約5万件の緑内障手術が実施されているが、その大部分がトラベクレクトミーだ。

「トラベクレクトミー手術で開けた結膜と強膜部の排水部分は、からだにとって傷となります。生体には傷を治そうとする力があるので、せっかく新しい排水管をつくっても、いつか癒着(ゆちゃく)が起きて下がった眼圧が再上昇することがあります」(植田医師)

 そこで、結膜と強膜を切開しないトラベクトーム手術がある。簡単にいうと、トラベクロトミーを最新の機器で実施するのがトラベクトーム手術で、日本では10年から保険診療となった。

「トラベクトーム手術は技術を習得するための訓練を要すること、機械が高価であることが欠点です。今後普及していくと思いますが、現在トラベクトーム手術が受けられる国内の施設は32施設です」(同)

週刊朝日 2013年3月1日号