伊藤まさこさん(右)と、聞き役のアエラ編集長
伊藤まさこさん(右)と、聞き役のアエラ編集長

『AERA』で「おいしい時間をあの人と」を連載中の伊藤まさこさんによるトークイベントが、6月29日にMARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店で行われた。昨年末からスタートした「おいしい時間をあの人と」は、スタイリストの伊藤まさこさんが「美味しい時間を一緒に過ごす」をテーマに、ゲストを迎えて食事を囲みながら対談をする連載。これまでに多くの雑誌で、スタイリングやお店取材の連載をしてきた伊藤さんだが、意外にも対談の連載は初めて。表紙やインタビューなどで様々な人を取り上げる『AERA』ならではの企画を、という伊藤さんの思いから実現した連載だ。

「雑誌や書籍のお仕事はすごく好きで、最初から最後まで関わりあいたいタイプ」と話す伊藤さんは、ゲストの人選から携わり、こだわりを見せている。これまで、穂村弘さん(歌人)、寺久保進一朗さん(京都・有次社長)、川内倫子さん(写真家)、依田龍一さん(洋菓子舗ウエスト社長)、是枝裕和さん(映画監督)、片桐はいりさん(女優)、菊池亜希子さん(モデル)と個性的な面々が登場。年齢も職業もバラバラだが、「地道に自分の好きなことをやっていたら世界が広がった、というような人に興味がある」と話す伊藤さんの人選だけに、納得の顔ぶれだ。

 ゲストと何を食べるかということについても、伊藤さんのこだわりが貫かれている。プロの料理人も足しげく通うことで有名な調理道具店の老舗「有次」の寺久保社長との対談では、「伝統のある名店はすでによくご存知なので、いつものイメージとは少し違うお店はどうかと思って、『KAFE工船』というコーヒーショップにしました」。長年のお付き合いがあるという寺久保さんとの対談はこれが初めてだったという。「父のように優しく諭してくださる方です。錦市場のお店で包丁を研ぐ姿が素敵で、立ち居振る舞いも美しくていらっしゃるんですよ。ある時、『道具を大事にするってことは、心が美しいってことなんだよ』みたいなことをおっしゃられて、確かにそうだなって。道具を大事に扱うということは、食べ物や人に対しても丁寧になりますよね。それからは、家で包丁を研ぐたびにその言葉を思い出します」。

 また、初対面となったウエストの依田さんには、こんな印象を持ったのだそう。「お店の佇まいがきちんとされていて素材選びも丁寧ですよね。有次の寺久保さんも仰っていたのですが、会社の規模をこれ以上大きくしたら目が届かなくなってしまうから、と。ウエストの居心地の良さは、たぶんそんなところにもあるんじゃないかなぁと思いました」。

 さらに、これから対談してみたい人として、エッセイストの阿川佐和子さんと俳優の杉本哲太さんの名前が挙がり、「杉本さんは昔から好きな俳優さんなのですが、すごくかっこいいですよね。阿川さんは、著書『おやつのない人生なんて』の帯を書いてくださったんです。以前、阿川さんをテレビで拝見した時に、『いろんなことに対して、反省はするけれど後悔はしない』というようなことをおっしゃってて、すごく素敵だなと思いました」と熱く語った。

 トークの後半は、料理や雑貨など暮らしまわりのスタイリングを手がける伊藤さんだからこそ話せる、心地良い暮らしにまつわるエピソードが語られた。参加者35名のイベントだったため、まるで伊藤さんとおしゃべりしているような雰囲気の中、トークが終了。あなたも「おいしい時間をあの人と」を読んで、大切な友人や仲間との“おいしい時間”を過ごすためのヒントを探してみませんか?