次は取り上げ方の問題である。情報ワイドショー番組では、一部週刊誌の特ダネ報道を取っ掛かりに内容や事実関係を十分に検証することなく、誌面や内容をそっくり伝えてしまう手法が定着している。「報道引用」という隠れ蓑の「安全地帯」に身を置いて報道しているつもりだろうが、仮に引用元に誤謬や名誉毀損、人権侵害などが認められた場合には、それを引用・報道したメディアにも責任が及ぶことは最高裁の判例が示すところだ。

 本来メディアの生命線は、埋もれた事実を独自の取材で発掘し、それを初報として伝えることにある。ところが、昨今の情報系番組は「〇〇砲」「△△砲」などと一部の週刊誌を持ち上げて「特ダネは週刊誌、後追いの膨らまし報道はテレビ番組」という構図を自ら創り上げているようにさえ見える。主要な報道機関として、真に在るべき姿と言えるだろうか。

 それに加え、今回の報道では各局とも松居氏のブログやSNS上の動画を興味本位で垂れ流してきた感がある。虚々実々の情報が乱立するネット情報をそのまま放送することの危うさは言うまでもない。正確性を欠き、不適切な表現が溢れるネットとは一線を画すべきテレビ放送が、そんな無責任でいいのだろうか。むしろ一連の報道はネット情報の拡散に力を貸し、松居氏の自己宣伝に加担する結果を招いた、と言っていい。

 私が最も危惧した点は、放送の公平公正さを担保できていたかどうかにある。恋愛の破綻や離婚という私的な事柄の場合、当事者の双方に、それぞれの言い分がある。しかし、どの番組を視聴していても、松居氏の言い分がそのまま一方的に放送され、船越氏の主張は置き去りにされたという印象を受けた。松居氏は夫婦間の出来事を客観的な裏付けなしに公開し、それが船越氏の名誉を傷付けている恐れさえある。軽々に放送で紹介できるような代物ではないはずだ。

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