伊藤友治
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●「松居一代」報道の過熱ぶり 放送しなかったのはNHKとテレ東だけ
7月13日午前8時、洗顔と身支度を終えてテレビ画面に向かうと、女優・松居一代氏の映像が目に飛び込んできた。「負ける戦いはしませんよ。悪魔は必ず罰せられるんです」と、異様な表情でおどろおどろしく語りかける動画に気分が悪くなり、直ちにチャンネルを切り替えた。ところが、どの局も「松居騒動」一色の過熱報道ぶりである。暗澹たる思いになってテレビの電源を切った。
放送の公共性とは何か、報道に値する公益性のある情報と言えるのか、当事者に公平公正な報道か――俳優・船越英一郎、松居一代夫妻の離婚騒動を巡る情報番組の報道ぶりを見ていると、つい、そんな疑念が頭をよぎってしまう。
多くの視聴者も私と同じような疑問を感じているのではないだろうか。「書かずもがな」と思っていたのだが、放送原則の根幹に関わる問題であると考え直し、あえて苦言を呈しておきたい。問題点を指摘する前に、一連の騒動を巡る報道のあらましを振り返ってみる。
あるメディア研究機関の調査によると、最初に松居問題を報じたのは7月4日「直撃LIVEグッディ！」（フジテレビ）だった。翌5日から各局の複数の番組による報道合戦が始まり、全番組の放送時間は2時間半に及ぶ。6日になると、この問題を取り上げる番組の数は倍に増え、その放送時間を合計すると5時間を超える。以後、毎日1～4時間の放送が続き、2週間の放送分量は35時間強に達した。ちなみにNHKとテレビ東京は、この問題を一切放送していない。また日本テレビの番組でも「ZIP!」は一度も取り上げていない。夕方帯の報道番組では「みんなのニュース」（フジ）だけが5日から7日まで3日連続で報道した。
●ブログや動画の垂れ流し 「生活ほっとモーニング」の教訓はどこに
そもそも松居問題の本質は夫妻の離婚騒動にある。船越氏への復讐を目論み、自身のブログや動画を使って個人的な事柄を次々と暴露しながら相手の非難を繰り返すというものだ。テレビ放送で大々的に取り上げる公共性や公益性はいったいどこにあるのだろう。
廣津留すみれ
しいたけ.
ラリー遠田
