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●春の連続ドラマ やや低調

 月間賞になったノーナレ「ミアタリ」(NHK)は、ナレーションなしで展開する新しい制作スタイルがこれまでも度々月評会で話題になっていた。特に今回のテーマは、手配写真だけで犯人の顔を記憶して探す刑事を取り上げていたために、映像に集中することができたなどと評価された。同じく月間賞となったETV特集「“原爆スラム”と呼ばれた街で」(NHK Eテレ)は、戦後広島の本川沿いに拡がったバラック街の実相を明らかにする。「原爆スラム」と呼ばれた街は、一般の人は寄り付かない危険地帯とみなされていた。しかし、番組はかつての住民を訪ね歩き、原爆被災者などが生きるために働き、温かさのある街であったことを明らかにしていく。

 その他のドキュメンタリー番組では、NHKスペシャル「人工知能 天使か悪魔か2017」(NHK)は、将棋の電王戦を事例にして人工知能の現在の到達点をわかりやすく解説する一方で、人間の管理に使われる怖さなどを伝えていた。NNNドキュメント'17「シンちゃんTV奮闘記」(テレビ信州)は、放送1万回に到達した西軽井沢ケーブルテレビの30年を追う。「町の記録係に徹する」姿勢が、地域とテレビの関係を問いかける。

 今月は連続ドラマが最終回を迎える月でありながら、複数の委員が月間賞に推奨するドラマが少なかった。そのなかで月間賞となった「架空OL日記」(読売テレビ)は、バカリズムの脚本家としての実力がもはや揺るぎないものであることを示した。バカリズムが画面上にOL役で登場しても違和感なく受け入れられる演技の秀逸さ、最終回にバカリズム演じるOLと本人がすれ違うラストシーンの切なさが評価された。その他のドラマでは「フランケンシュタインの恋」(日本テレビ)は、脚本の大森寿美男の作家性を感じさせた。また「デリバリーお姉さんNEO」(テレビ神奈川)は、舞台を見ているような演出で気持ちの揺れ動きを描く新味のあるドラマで、放送後にGYAO!で独占配信された。

 バラエティ番組では「水曜日のダウンタウン」(TBSテレビ)の「先生のモノマネ、プロがやったら死ぬほど子供にウケる説」が月間賞となった。モノマネ芸人が実在の先生の特徴を徹底的に研究して、生徒の前で演じてみせる。芸人が真剣に取り組み、モノマネができあがっていく過程が見られるという収穫があった。

 そのほか日曜ビッグバラエティ「池の水をぜんぶ抜く!」(テレビ東京)は、池の底から何が出てくるのかを検証するというなかなかできないことにチャレンジするテレビ局の企画力、エネルギーを感じた。(藤田真文)

※『GALAC(ぎゃらく) 9月号』より