もちろん、丁寧なコンタクトののち、事前にきちんと打ち合わせして改めて本番当日に臨む番組もあって、そういう時は出た側も満足感がある。だがそんな番組は少数だ。

●根本にあるのは各人の“自覚”

 Yahoo!に書くようになって増えたのだから、検索したら出てきた私の名前を見て連絡しているのだ。簡単に探し出せるから、交渉も安易で扱いもぞんざいなのだと思う。

 クレームを伝えると、番組の責任者が出てきて丁寧に謝ってくれたりする。礼儀正しい方たちだ。だが逆によくわからない。こんなに礼儀正しい方たちの番組で、なぜ失礼な仕打ちを受けるのだろう。

 これについて愚痴を言ったら、友人の制作者は「関係ができなきゃお願いできませんよね」と言った。別の友人は「ぼくは必ず自分で交渉しています」と言う。その通りだと思う。悪いのは、ADの質でもなくネットでもない。作り手の自覚の問題だ。

 誤った情報発信と、私の愚痴は、実は同根だと思う。自分の番組に責任があるのは自分だ。そんな当たり前の自覚が、ネットで簡単に情報収集ができるようになったがゆえに、失われていないか。よくよく考えてほしいと思う。

境治(さかい・おさむ)/1962年福岡市生まれ。東京大学文学部卒。メディアコンサルタントとしてフリーランスで活動中。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」で最新情報を発信している。誌名を検索してぜひご購読ください !