6月11日の日本テレビ「真相報道バンキシャ!」はその舞台裏について取材メモを元に再現してみせた。安倍首相、菅官房長官ら6人の官邸内の会話をドラマ仕立てで再構成したのだ。

安倍「あの文書が存在したとしてもたいした話じゃない。ここは徹底的に調査させよう」

菅「総理のおっしゃる通りに」

出席者「松野文科大臣の話を聞いて決めたことにしましょう」「調査はあくまで文科省主導ですから」

 実際の会見でも台本通り松野文科大臣が「私から安倍総理に追加調査を提案した」と発表。モヤモヤが残った加計学園問題に報道側が一矢を報いた報道だった。

 とはいえタイミングはあまりに遅い。国会で最大の懸案だった「共謀罪」ことテロ等準備罪の新設法は参議院の委員会採決を省略して本会議で可決、成立した。政権幹部は報道取材に応じた前川氏や文科省職員らに「国家公務員法違反」の罰則適用も匂わせ、報道の自由をめぐる課題を残したまま国会は18日に閉幕した。

 翌19日、NHK「クローズアップ現代+」が新たな内部文書をスクープ報道。萩生田光一官房副長官が文科省幹部に「官邸は絶対やると言っている」と迫った記録の文書が出てきた。本来なら鮮やかなスクープだが、国会閉幕後のタイミングでは忖度があまりに露骨だ。

※『GALAC(ぎゃらく) 8月号』より

水島宏明(みずしま・ひろあき)/上智大学文学部教授(テレビ報道論)、元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター兼解説委員、札幌テレビ・ロンドン特派員、ベルリン特派員。近著に『内側から見たテレビ』