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 人も味も景色も、新たな出会いより再会のほうが心躍る年頃になったが、ドラマはさにあらず。過去も現在も「続編はまだか」「似た作品が見たい」と再会を望むことは一度もなかった。

 その意味で、日本テレビの春ドラマに「どうした?」と言いたい。3本すべてが「特に嫌いではないけど、会いたいわけでもない人と再会してしまった」ようなドラマなのだ。

 まず「母になる」は、子どもの誘拐と母子の絆をめぐる物語というテーマが「八日目の蝉」「mother」を想起。次に「フランケンシュタインの恋」は、怪物が主人公という点で「妖怪人間ベム」「怪物くん」を思わせ、一部の演出やスタッフが重なる。さらに「ボク、運命の人です。」は、主人公が神様の助けを受けてヒロインを射止めるという流れが「プロポーズ大作戦」と似ているうえに、両作の脚本家は同じだ。

 しかも、これらはすべて10年以内に放送されたものであり、心地よい懐かしさを伴うような再会ではない。実際、ドラマフリークたちの間で、「他局よりドラマ枠の少ない日テレがなぜ?」という疑問の声が飛び交っていた。ただ1つフォローを入れると、今期の3本はいずれもオリジナル。つまり「原作に頼ろう」という気持ちを排した意欲作なのだが、だからこそ「なぜ再会のようなテーマになったのか」と思ってしまう。本来オリジナルの選択肢は無限であり、プロデューサー、脚本家、演出家にとっては腕のみせどころ。それだけに「どこかで見たような……原作があるのかな?」と視聴者をミスリードするテーマ選びはもったいない。

 今春、再会した3作は、鮮度を除けばそれなりに質が高く見応えがある。なかでも「母になる」は、近くて遠い母子の距離感が一歩ずつ縮まっていく過程を描いた良作だ。セリフや事件がてんこ盛りの忙しい作品が全盛のなか、「じっくり向き合えるいいドラマに出会えた」とさえ感じる。「再会と思っていたけど、ちゃんと話してみたら新たな出会いだった」のかもしれない。

 しかし、現代の視聴者は、私のようにドラマばかり見ていないし、「どこかで見た?」と感じたものならなおのこと。ネットの発達で情報過多になり、視聴前の"第ゼロ印象"でバッサリ斬り捨ててしまう人が少なくない。言わば、「話して内面を知る前に外見だけで拒絶されてしまう」ようなものだ。そんなすれ違いを避けるために、「いかに再会ではなく、新たな出会いと感じさせるか」が重要な時代になっているのではないか。制作サイドにはこれまでとは違う意味で、テーマ選びのセンスが問われている。

※『GALAC(ぎゃらく) 7月号』より

木村隆志(きむら・たかし)/その点、「ひよっこ」(NHK総合ほか)は、初恋の人と出会ったころを思い起こさせるフレッシュな仕上がり。「戦争前後の偉人伝との再会はお腹いっぱい」だったこともあり、毎朝ヒロインたちにときめいている。