新たな潮流の源は米英両国だ。特に英国がEU(欧州連合)の単一市場から完全離脱を決めたことの意味は大きい。1月28日の米英首脳会談では「新しい絆」を世界に向けて宣言。両首脳の固い握手は、英国が近くの隣人(EU)より、大西洋を挟む遠方の親戚(米国)を重視する姿勢に転じたことを強く印象付けた。

 第二次大戦後、米英両国は一貫して「多国間の協調と連携による共存と繁栄」を旗印に、自由主義陣営の秩序と体制を主導してきた。だが今や、その基軸国が共に「国益最優先」の方向に舵を切った。今後、両国は米英基軸の新たな世界秩序の再構築に向けて、さまざまな分野で独自の動きを加速させるのではないか。

 仏国の動静も不気味だ。大統領選挙の世論調査で首位に立つ国民戦線のルペン党首は、「4月の選挙で当選すれば国益を最優先し、EU離脱に向けた国民投票を実施する」と公言している。独連邦議会選挙も年内にある。「国益第一」主義は極右勢力の台頭著しい欧州大陸にも蔓延する公算が大きい。

 3点目。このところ、日本メディアの中東報道に物足りなさを感じることが多い。だが、世界の火薬庫(中東)にもっと目を向け、より厚みのある報道に注力してほしい一番の理由がある。トランプ大統領の対イスラエル政策には、地雷原を歩くような危うさがあるからである。

 「イスラエルの首都はエルサレム」と言い放ち、テルアビブの米国大使館をエルサレムに移す意向を表明している。それは火に油を注ぐ行為であり、もたらす結果は重大だ。第5次中東戦争の勃発さえ絵空事ではなくなってしまうだろう。

●民主主義とジャーナリズム 価値を護るために

 4点目は、国民に信頼されるメディアとして、テレビ報道が一義的に果たすべき役割(真偽の振り分けによる真実の探求)をいかんなく発揮することである。

 トランプ大統領が会合などで発言する内容やツイッターで発信する情報には、事実とは異なる部分や誤謬が紛れ込んでいる。厄介なことに、影響力が絶大なだけ、それらは独り歩きしてしまう。日本のテレビメディアだからといって遠慮は禁物だ。容赦なく米国指導者の不実や誤謬を指摘し、訂正すべきである。

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