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 このところ堤真一、唐沢寿明、阿部寛ら50代主演俳優に対する無茶振りのような連ドラ企画が続いている。さすがに苦労するだろうと思いきや、さもありなんと思わせるその技量には、ただ魅了されるばかり。本人たちからすれば「この程度は無茶振りではない」のだろう。

 一方、当作は正真正銘の無茶振り。日ごろ主演を引き立て、作品に安定感を添えている6人のバイプレーヤーに難題が投げかけられた。

 ベースは、主演、本人役、シェアハウスでの共同生活という無茶振り3点セット。慣れないポジションで、世間が抱く自分のイメージを、似たキャリアの俳優と、演じ合わなければいけないのだ。実際、彼らほどの手練でも塩梅とさじ加減に試行錯誤している姿が垣間見える。

 さらに彼らの頭を悩ませているのが、各話のテーマ。共演NG、キャラかぶり、文春砲、名作パロディー、アクション中のケガ、勘違い監督、撮影中止などの“俳優あるある”をどう演じるのか。いずれも視聴者が「一度は噂を聞いたことがある」ものだけに、どんな着地点を見せるのか、俳優としてのセンスが問われる。

 そして、彼らの演技をより難解にしているのは、31歳の松居大悟による脚本・演出。バイプレーヤーたちは、ふたまわりも年下の手のひらで、転がされているのか。それとも転がしているのか。虚実の間をゆく彼らの演技を見れば見るほどわからなくなっていく……。そんな曖昧さが、当作の魅力なのかもしれない。

 とはいえ、女子会ならぬ“おっさん会”で少年のようにじゃれ合う姿を見るだけでも十分面白い。演技と素の割合はさておき、それらはふだん彼らが見せない脱力した姿であり、仕事疲れのたまる金曜深夜にしっくりくる。

 ここまで彼らは誰一人として前に出たがらず、他のメンバーを押し出すような自然体の演技を見せてきた。その姿は「さすが歴戦の兵」であると同時に、「戦友6人の間にライバル心はない」のだろう。その意味で当作は「彼らにとって無茶振りではない」のかもしれない。いや、むしろバイプレーヤーたちは無茶振りに慣れていて、「もっとやってくれよ」と求めている気さえしてくる。彼らの存在は単なる品質保証ではなく、攻めの一手になりうることを再確認したテレビマンは多いのではないか。

 よく「テレビ東京だから実現できた企画」という声を聞くが、本当にそうとは思えない。「おっさん6人じゃ駄目」「実現できないでしょ」なんて反対されるんだろうな。そんな各局プロデューサーのあきらめ顔が浮かんでしまう。

※『GALAC(ぎゃらく) 4月号』より

木村隆志(きむら・たかし)/エンディングの「バイプレトーク」は文句なしの素。裏話や無駄話も楽しいが、「鶴瓶のスジナシ」のように、映像を振り返りながらのフリートークも見たい。