電通過労自殺事件 多面的に展開可能な労働問題 なぜ民放テレビは淡白だったのか

水島宏明GALAC
●民放対応に電通への配慮かと憶測 積極的に報道したNHK

 教え子が数多くマスコミ業界に進む大学教員として見過ごせないニュースだった。2015年12月のクリスマスに電通の新入社員・高橋まつりさん(当時24歳)の過労自殺。労災認定を受けて16年10月7日に遺族が記者会見したことが報道の最初になった。彼女がツイッターに残した言葉の数々が痛々しい。

「はたらきたくない 1日の睡眠時間2時間はレベルが高すぎる」「もう4時だ 体が震えるよ… しぬ もう無理そう。つかれた」

 東大在学中から週刊誌のPR動画にも登場する活発な女子学生で、当時の映像や画像が残っている。

 入社した電通の社員心得『鬼十則』(1951年制定)「取り組んだら放すな、殺されても放すな……」などは今も社内に蔓延する精神論の証拠と言える。こうしたニュース用の“素材”は数多く、通常ならばテレビの報道番組や情報番組で当初から大きく扱ってもおかしくなかった。

 ところが会見当日の「news.every」で1分程度報道した日本テレビを始め、各社の扱いはごく短かった。翌朝は一面トップで扱う新聞社があってもテレビ各社は控えめな扱いだった。10月14日に電通本社に抜き打ちで東京労働局の立ち入り調査が入り、17日に子会社にも立ち入り調査が入った事実が公表された時もニュースでは調査の事実を短く伝えるだけ。問題の背景を掘り下げた民放のテレビ報道はほとんどなかった。日頃こうした労働問題を多面的に展開するテレビ朝日「報道ステーション」やTBSテレビ「NEWS23」でさえ、ある程度時間を割いて放送したのは11月7日の強制捜査の時くらい。営業で日頃、世話になる電通への配慮があったのではと憶測を招いた。民放では情報番組の「めざましテレビ」(フジテレビ)で「鬼十則」を説明した(10月18日)のがネット上で話題になり、民放番組なのに勇気があるとされたが、長時間労働そのものを俎上に載せたわけでない。

続きを読む

TwitterでAERA dot.をフォロー

FacebookでAERA dot.の記事をチェック