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 今回の月評会でもっとも議論を呼んだのは、NHKスペシャル「終わらない人 宮﨑駿」だった。かの宮﨑駿監督に700日にもおよぶ密着取材を敢行して撮影された映像は、引退後3年を経てCGアニメに挑む巨匠の日常生活をごく自然に活写して新鮮だ。だがその一方で、生活に入り込み過ぎて被写体との距離感を見失っているのではないかとの疑義も呈された。ドキュメンタリーにおける作り手と対象の距離感を考えるうえで興味深い議論となった。

 NHKスペシャル 廃炉への道2016「調査報告 膨らむコスト~誰がどう負担していくか~」は、国も東京電力もメディアも発表しない廃炉のための膨大なコストと、それを国民が背負わされているからくりに肉薄したことが評価され、月間賞に。同じく月間賞に選ばれたNNNドキュメント'16「いのちいただくシゴト~元食肉解体作業員の誇りと痛み~」は、本県民テレビの制作。小学校で講演活動をする元食肉解体作業員の姿を通して、命をいただくことの意味や差別の現実を伝える良作だ。月間賞には届かなかったが、アナザーストーリーズ 運命の分岐点「ロマンポルノという闘い 日活・どん底からの挑戦」(NHK BSプレミアム)も、1970年代に日活ロマンポルノの制作に携わった監督や俳優の証言により、戦後文化史の一面を描き出したとして評価された。

 ドラマでは、東日本大震災のその後を描いた「五年目のひとり」(テレビ朝日)が注目を集めた。メッセージ性が強すぎるといった批判も出たが、山田太一と堀川とんこうコンビの熟練の技が評価されて月間賞に。ほかには、長谷川博己主演の「獄門島」(NHK BSプレミアム)の、虚ろで醒めた金田一耕助という現代的な造形に賛否両論が出た。また、「クローズアップ現代+」でも取り上げられた「逃げるは恥だが役に立つ」(TBSテレビ)、第三シリーズとなっても快進撃を続ける「勇者ヨシヒコと導かれし七人」(テレビ東京)、オープニングをエンディングに配置した大河ドラマ「真田丸」第44話(NHK)など、放送中の番組も話題になった。

 バラエティでは、アメトーーク!「情熱大陸出たい芸人」(テレビ朝日)が、他局の番組を芸人の憧れの対象としながら遊び倒す姿勢が評価され、月間賞に。60年目に突入した「生放送 月刊きょうの料理スペシャル」(NHK Eテレ)は、平野レミに頼りすぎといった意見も出たが、時代の変化と料理の関係、料理番組のあり方の変遷を興味深く伝えたとして高評価を得た。詳細は太田委員の私評をGALAC本誌にてご覧いただきたい。(文/岡室美奈子)

※『GALAC(ぎゃらく) 2月号』より