芸能界でやってきた間には、先輩の助言はいくつもあった。「おやじのヒゲ」で共演した森繁久彌からは、役作りに悩んだとき「姿形はお前なんだから、お前しか見えてないんだよ」と言われた。それも、表面を繕ったところで、「お客さんには全部見えちゃってる」という意味に違いない。

「僕は芸能界に入ってすぐに、萩本(欽一)さん、堺(正章)さん、藤村(俊二)さん、森繁(久彌)さん、勝(新太郎)さんという一流の人の仕事を間近で見せてもらったんです。その後、こうやって何年も仕事をしていくうちに、面白いもんで、そういう大先輩から教わってたことが、一つになっていくんですよ。一冊の本が自分の中でできあがる。勝さんと萩本さんに言われたことって、実は同じことだったってわかるんです」

 取材では、そんな小堺の大好きな先輩たちの飛びっきりのエピソードが次から次へと飛び出してきて、聞いている側をその飛びっきりの瞬間にいざなってくれる。「かたらふ」世界の出現だ。

「『かたらふ』は、スタッフとの食事会で僕が話している姿から、好きな人についてただしゃべる番組にしましょうってことになったんです。最近、揚げ足とりとか炎上とか、悪い意味でのツッコミって主流になってるでしょ。僕は、何かを肯定してる番組っていいなと思うんです。好きなことをしゃべってるときの顔って、ホントにいいもんですしね」

 そんな番組「かたらふ」の楽しさは、世間にじわじわ浸透しているように感じる。

「テレビって、じわじわ伝わるのが一番いい。結果が出ないと内容を変えたくなっちゃうけど、そういうときはちょっと辛抱。次々に変えてしまうと、見てるほうは『どう見たらいいのよ』ってなると思うんです。だから、このまんまやっていきたいですね。そのためにも、作っている僕らも、同じ方向を向いていないと。それってやっぱりお客さんに伝わると思うんです」

(取材・文/西森路代)

※『GALAC(ぎゃらく) 1月号』より