各局の夏ドラマがリオ五輪の影響をモロに受けて壊滅的な状態のなか、常に視聴率トップを記録。「かろうじてドラマ業界の面目を保ってくれた」という意味での功績は大きい。

 確かに、頭を空にして見られる単純明快な1話完結の構成は、継続放送や毎週視聴の難しい今夏では最善の選択だった。たとえば、五輪中継を優先させて1話見逃したとしても、影響はゼロ。三軒家万智の強烈なキャラクターや、「GO!」の決めゼリフを忘れることはないからだ。

 それにしても、毎話サクサクと家が売れていった。「エッ、もう売れたの?」という型破りな住宅販売も、購入者の問題を解決する“人生リフォーム”も1話の中でキッチリ。これは「いかに三軒家が優れているか」の証とも言えるが、どうしても素直に受け止められなかった。

 その理由は、サクサク問題解決させるためにヒロインを変わり者の設定にしていたからだ。無表情、常に見開いた目、ロボットのような仕草、パワハラそのものの言動……すべては、「人間離れした能力を持たせても違和感を与えない」ためのもの。「普通の人が2~3話かかる問題も、こういう変わり者なら1話で解決できる」ということだろう。いずれにしても、制作サイドにとって都合のいい展開が可能になり、キャストも演技の難易度が高くない割に話題性を集められるなど、メリットは大きい。

 これまでも「水曜ドラマ」には変わり者の主人公が多く、「ハケンの品格」「家政婦のミタ」「ヒガンバナ」などで人間離れした能力が炸裂。変わり者のスーパーな活躍が話題を集めた。さらに今秋も貴族の末裔(TBS)、犬並みの嗅覚を持つ男(NHK)、平成版遠山の金さん(フジ)、30年間の昏睡から目覚めた男(日本テレビ)、家政夫(テレビ朝日)と変わり者が主人公のドラマが勢ぞろい。各局まんべんないところを見ると「さすがに変わり者に頼りすぎじゃないの?」と文句のひとつも言いたくなってしまう。

 ところが最終回で三軒家は、強い態度で家を売るのではなく、「大切なのは私が預かったお客様の人生です」と熱い人情を見せたあげく、会社を退職。中盤から変わり者ぶりやシニカルさが抑えられているな……とは思っていたが、特別な理由もなく言動が変わったのは「最終回だから」なのか。今夏のライトな視聴者にはそのほうがいいのかもしれない。しかし、ドラマ好きの声を拾うと「変わり者にしたのなら最後までやり切ってほしかった」という声が多数派だ。深読みの感もあるが、「もっと“普通の人”の物語も見たい」ということではないか。

きむら・たかし 各指標の視聴満足度が高かったのは、“普通の人”をマジメに描いた「HOPE」。ただし、視聴率はワースト3だったところに各局の悩みがうかがえる。高視聴率=高満足度ではないのが難しいところ。