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テレビが”ネット炎上”を加速する

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法政大学社会学部 メディア社会学科准教授 藤代裕之GALAC

”ネット炎上” はネット上だけで起こる現象ではない。マスメディアこそが炎上に加担し、「火に油を注ぐ」役割を果たしているケースも少なくない。メディアに関わる者のリテラシーが今、問われている。

●釣られるマスメディア

 ネット上で、ある事象に対して攻撃的なコメントや批判が殺到する“ネット炎上”は、ネットメディアが認定し、マスメディアが加速するという構造がある。炎上はネットの問題でもあるが、マスメディアの責任も大きい。背景には、簡単にニュースが作れるネタ元として、ネットを利用しようとするテレビ制作者のリテラシーの低さがある。

 炎上拡大の背景として、ネットの出来事をテレビが積極的に取り上げるようになったことがある。事故や災害現場の様子、事件の被害者の顔写真、「ネットで話題」の面白動画や新商品など、大量のコンテンツがテレビに流れ込んでいる。

 テレビ局のツイッターアカウントは、事件・事故が起きると我先にと現場に居合わせたネットユーザーに素材提供を呼びかける。その様子はまた、「マスゴミが群がっている」などと、ネットユーザーにバカにされている。過去に偽物疑惑が広がったこともあるフジテレビ報道局のアカウント(@fujitv_news)を見ると、ずらりと「画像を提供してください」「取材に応じて頂けますか」という呼び掛けが並ぶ。

 ネットの中でも、リアルタイム性が高いソーシャルメディアはテレビと相性が良い。スマートフォンとソーシャルメディアを駆使する視聴者を使えば、映像は確保できるし、ヘリや中継車を出す機会も減らすことができる。ネットは、早く、低コストで素材を集められる便利なツールだ。

 しかし、玉石混交のネット情報は、「誤報」や「虚報」と背中合わせだ。フジテレビは、東武東上線で起きた脱線事故で、インドネシアの鉄道事故の写真を放送してしまうというリテラシーの低さを露呈した。この投稿者はなかなか巧妙で、ツイートを確認すると実際の事故現場のツイートにデマ画像を紛れ込ませていた。ネット上には、マスメディアを騙して楽しもうという人たちもおり、当然想定されるべき事柄だった。

●急接近したテレビとネット

 ネットをネタ元にしたニュースが溢れる現状は、ソーシャルメディアとマスメディアの関係を追い続けて来た立場からすると驚きである。

 10年前にブログやSNSが拡大していた時期、既存メディアは、ネット上にはコンテンツのコピーが溢れており著作権法違反であるという批判や、何の社会的価値もない便所の落書き発言といった蔑んだ発言を繰り返していた。さらに、ライブドア事件や楽天のTBSへの敵対的買収が起き、テレビとネットの関係はこじれ、ますます距離が離れてしまった。

 しかし、東日本大震災以降、テレビとネットは急速に距離を縮め、ソーシャルメディアとの連携により、情報を収集したり広報に使ったりと、様々な施策が試されてきた。ただ、テレビ局にとって最も重要な「視聴率を上昇させる」という効果は乏しいことが、徐々に明らかになる。

 ソーシャルメディアと連動した番組は2011年から急増するが、藤代ゼミがTBSメディア総合研究所と共同研究で行った調査では、テレビを見ながらソーシャルメディアを利用している大学生ですら、ソーシャルメディアが視聴のきっかけと回答したのは5・8%に留まっている。「ソーシャルで反応があるほど、視聴率が微妙なんですよ」と教えてくれたテレビ局関係者もいた。

 そこで、ネットとの連携は視聴率を上げたり、視聴者にアクションをとってもらったりといったものから、ネタ元としての利用に傾いていく。炎上もネットで起きている事象の一つでしかない。ただ、表面に表れる事件・事故と比べると、報じる難しさがある。ネットは見えないからだ。そこで、炎上に関連するデータとともに、テレビとの関係を見てみたい。


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