●「宣伝」における融合史 ――ネット番宣は「TV視聴」に繋がる?
いわゆる「番宣」においても、ネットの活用はいまや珍しくなくなりました。多くの局や番組がツイッターやフェイスブックやLINEで公式アカウントを持ち、放送時間外でも視聴者と接触することで、視聴者との関係値向上を狙っています。また、各局の名物プロデューサー個人のアカウントは数万フォロワーを抱えることも珍しくなく、番組にまつわるニュースや思いを、ネットで直接視聴者に語りかけることが可能な時代になってきています。
しかし、「宣伝」における放送と通信の融合は、まだまだ答えが見えない難しい分野です。というのも、ネット番宣がどれだけテレビ視聴につながったか、その実数を調査することがきわめて難しいからです(これはテレビ宣伝全般に言えることですが)。
そのような状況において、テレビ番組を認知してもらうために一番注力すべきは、やはり圧倒的なトラフィックを稼ぎ出しているソーシャルメディアとニュースサイトで話題にしてもらうことでしょう。
そして実際にこれまで多くの番組がソーシャルメディアで話題にしてもらうために、さまざまなトライアルをしてきました。そのなかで特に二つのアプローチに手応えを感じています。
一つ目はインフルエンサー(フォロワーの多い人)による番組内容の発信。二つ目はクチコミを発生させる仕掛けの用意です。簡単に言ってしまえば、インフルエンサーに、番組のことを発信してもらうということです。それは出演者であっても、番組名公式アカウントであっても、番組プロデューサー個人のアカウントであってもかまいません。
ソーシャルメディアにおけるインフルエンサーの発信は、ニュースに取り上げられるなど、大きな波を起こすための最初のエネルギーの核になります。彼らに番組について定期的に語ってもらうことは、ネット番宣において確実に大きな成果をあげられるでしょう。
二つ目のクチコミを発生させる仕掛けについてですが、これはとても難しい課題です。というのは、ネット上のクチコミは私たち放送局側にはコントロールできないところだからです。
よくネット上のバズとして取り上げられる「バルス祭り」や「半沢直樹のコラ祭り」は、放送局が意図して作り上げたものではありません。
完全にネットユーザー発の祭りであり、仮にこれを放送局側から提案していたとしても、そのあざとさにユーザーは乗ってくれなかったと思います。というわけで、クチコミを意図的に発生させるためのレシピはないというのが、私としては正直なところなのですが、あえて一つ挙げるとすれば、その番組に「ツッコミどころ」があるかどうか、なのかもしれません。
番組が発したものに対して、ネットユーザーが反応し、ツッコむ行為がクチコミなのだとしたら、そういうツッコミどころを制作側でいくつか用意しておくことで、クチコミの確率を上げていくことも、ソーシャルメディア時代の番組作りに必要な発想でしょう。