「リアル脱出ゲームTV」は視聴者に謎を解かせるという「ひと手間」をかけさせます。この「ひと手間」により、視聴者は番組をリーンバック(受け身)ではなく、リーンフォワード(前のめり)に見ることになり、多くの視聴者を番組の世界に没入させることに成功しました。

 基本的に受け身の姿勢でテレビに接している視聴者に「ひと手間」をかけさせるのは、決して簡単なことではありません。「なんでやんないといけないの?」とか「面倒だな」と思われたらそこで終わりです。

 その意味で〝クイズ〟は、視聴者に自然と「ひと手間」をかけさせ、番組の世界に引き込むきっかけとして、非常に具合のよいものだったのかもしれません。

 このような取り組みを見ると、ネットのインタラクティブ性を活用することで、通常受け身で見ることの多いテレビ番組を、前のめりに没入させることが可能なことがわかります。そして、これは新しい番組作りの可能性を示唆していると思います。ただし、注意しなければいけないのは、最新のテクノロジーを駆使すれば、没入感が高いコンテンツが制作できるというわけではない点です。私が学生時代、SD画質のドラマを夢中になって見ていた頃を思い出しても、別に画質やテクノロジーが人の心を動かすわけではないと思います。

 私たちは新しいテクノロジーに振り回されることなく、使いこなし、新しい仕掛けを考えていくことが必要なのだと思います。

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